第11話 聖地トウテ。

ヴァンの目の前がホワイトアウトをすると目の前に大きな湖の土地が広がる。

ヴァンが「え?」と言うとコーラルが嬉しそうに「ここがディヴァント領よ。そして目の前の街がトウテ。皆はトウテを等しく手を繋ぐ街としたけど結局は聖地としてわずかな人しか入れなくなってしまった」


どこか不満げなコーラルは街の入り口の兵士に何かを見せると兵士は直角に近いお辞儀を返してくる。

「通行証よ。見る?」

コーラルの通行証には「コーラル・スティエット」と書いてあった。


「後でヴァン君の通行証も作ってあげるからね」

そう言うオルドスとゴルディナは顔パスで入り「この子は私の要人だからねー」と言ってヴァンを通す。


「少し見る?歩きましょ」コーラルの案内でトウテを歩くとコーラルは涙目で「懐かしい、ここは昔のままだわ」と言う。入ってすぐに右手を指して「ここが大鍋亭よ」と言う。

興奮するヴァンに「後で入るから他に行きましょう?」


孤児院にはヒノ・トウテやヤオ・トウテ達の石像が立っていて「本来は孤児院なのに今は学校なのよ。各地に建てられた寺院の僧兵や信徒達が、最初にここで学ぶの。まあ言い出したのはシャイニング・トウテやサンフラワー・トウテ達だからいいのかもね」と説明をすると、そのまま工房に行く。

工房では剣を打つ音が聞こえてきていて「今剣を打っている彼は…おじ様?」と聞く。


オルドスが「うん。子孫だよ」と言うとコーラルが「エクシィの師事で成長したシイ・トウテの子孫、道具屋はシヤ・トウテとシーシー・トウテの子孫。武器屋はヨミ・トウテ。シヅ・トウテは本にもあると思うけどオオキーニの復興に旅立ったわ」と説明をしてくれる。


ヴァンは必死に本を開き、人物図鑑を見ながら「凄い…ありがとうコーラル!オルドス様、ゴルディナ様!」と言う。

ヴァンが見つけた中でオルドスは「真式」、ゴルディナは「金竜」と書かれていた。


「じゃあ後はリーダーに会ってから大鍋亭にいきましょう。おじ様、リーダーは日課かしら?」

「うん。代替わりしても欠かさずにやっているよ」


北西の墓地に行くとたくさんの石像のひとつひとつをタオルで拭きあげる男がいた。男はすぐにオルドス達に気付くと手を止めて挨拶に来る。


「ご無沙汰しております。こちらの方はもしや…」

「うん。さっき蘇ったんだよ」


男は恭しく頭を下げると「お会いできて光栄です。祖父や父から話は聞いておりました。私がセルース・マーヌの子孫、ハラキータ・マーヌです」と自己紹介をする。

コーラルも胸に手を当てて「コーラル・スティエットです。お世話になります」と挨拶をする。


「こちらの少年は?」

「私を助けてくれてラージポットまで導いてくれた…」

「ヴァン、ヴァン・ガイマーデです!」


「それはそれは、ありがとうございます。コーラル様の事はずっと気にかけておりました」

ヴァンはハラキータの穏やかな顔を見ると伝説のセルースはどんな人かと気になってしまった。


「本日はお参りですか?」

「その後で宝剣を授かりに来ました。アクィお婆さまの剣はありますね?」


驚きの表情でコーラルを見るハラキータは「…名乗られるのですか?」と聞く。

コーラルはしっかりと頷いて「ええ、準備をしてください」と言った。


ハラキータは「わかりました!」と駆け出すとコーラルは石像の前に立ち「ひいひいお婆さま達の石像はお爺様の子孫達とシヤ様達が作ってくださったのよ」と説明をする。

コーラルによく似た剣士がアクィだろう。

「アクィひいひいお婆さまの横がライブひいひいお婆さま、真ん中がミチトひいひいお爺さまのでその横がリナひいひいお婆さまとイブひいひいお婆さま。メロひいお婆さまやラミィひいお婆さま、タシアひいお爺さまも居るわ。スティエットは皆死後望めばトウテに埋葬されるのよ」


「コーラルの家族は?」

「ザッと見たけど居ないわ。グラスもスティエットを名乗ってもサルバンの地に還ったのね」

グラスの名を呼んだ時にコーラルは泣いていた。

どうしても妹を思うのは他の先祖を思うのとは違うようだった。


コーラルは涙を拭うと大鍋亭に向かう。

大鍋亭の一階は食堂のままだったが二階は各々の部屋が記念館のようになっていて、リナの部屋にはミチトに贈られた黒鉄包丁や後年贈られた結婚指輪が大切に飾られていた。

ライブの部屋には数多くのダガーナイフとローサ・ディヴァントに贈られた洋服やドレス、そしてミチトと選んだアクセサリー達が並んでいる。

イブの部屋に入るとコーラルは借りていた白明吸収剣を返す。イブの部屋もライブに近い感じで武器と洋服が所狭しとあった。


次はミチトの部屋だった。

聖剣と呼ばれるまでになったシャゼットとミチトが自分で打った交換用の刃が並べられていた。後年父の遺品のナイフ型のシャゼットを使っていて。ナイフ用の交換用の刃も並べられていた。

そして宝物とされた師の手甲、先生の手紙が残されている。

だがヴァンには古代語の知識は無いのでなんて書いてあるかは読めなかった。


メロの部屋はミチトが打った剣、軽神鉄で作られた調理道具、ミチトの選んだドレスから何からが置かれていた。


「横と裏にも子供達と暮らす用の離れも作られてるのよ。タシアお爺さまやラミィお婆さまのお部屋はそちらよ」


そう言いながら通された最後の部屋はアクィの部屋だった。

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