第32話・外


 外に飛び出した俺とリアの背後を岩壁が聳え立ち、それ以外の辺一面は見渡す限りの木々が伸び育った深い森だった。


「今度は森かぁ」


「もぉお、ここは何処なのよ!」


 リアがまた現在地が分からないみたいに、しているので俺は解決策を行なう。


「リアここがどこだかは、直ぐに分かるかもしれないぞ?」


「え!、どうやるの?」


「わぁあっ、ちょっとディオ」


 俺はリアの肩に手を置き抱き寄せる、そして魔力を足元に集中させ円柱の柱のイメージで足元から空に向かって伸ばす。


 俺達二人はあっという間に木よりも高い高度になりどんどん高度を上げていく、そして高さ三十メートルぐらいで止める、これ以上上げるにはこの半径一メートルぐらいの円柱の太さじゃ魔力強度的に不安だ、この高さでも十分に周りは見えるので問題ないだろう。


「たっかーい!」


「落ちるなよ」


「大丈夫だって、これぐらい問題ないよ」


 リアは周りを凄いいきよいで見渡しながら、動き回っていた、高所恐怖症ではないらしい。



「ディオ!ねぇ!!あれみて、みて!」


「ん?」


 両足で交互に地面を足踏み、身体を左右に揺らしながらリアが指を指した方向に目を向け、俺の目に入って来たのは見覚えのある小麦畑だった。


「まさか、俺達の村か!」


「そうだよ、きっと、やったぁあ!私達、帰れるんだ…」


 リアの声が段々涙声に変わり、死の淵から這い戻った感覚に襲われていた。


「帰れたな」


「うんっ」


 まだ家に戻れた訳では無いが、村を視界に収められた周りの魔物なら、手足を負傷していない今の俺とリアなら、油断さえしなければ安全に戻れる。


(にしてもあの場所に畑が見えるって事はここは北側の山って事になるけど、これはこれで、綺麗だな)


「何だか良いね」


 涙を堪えたリアが笑いながら声を出し、並び合う手が触れていた。


「綺麗だな」


 急に同じ事を考えていたであろう事が嬉しく、返しながら触れた手を俺は深く考えずに握っていた。


「冒険者って毎日こんな事してるのかな」


 握り締めた手は握り返され、互いに離れたくない気持ちが現れ、いつもより握る手には力が入り、二つの手は固く重なっていた。


「毎日では無いと思うけど、度々してると思うよ」


「そうなんだ、私ね。また死ぬかもって何回も思ったけど、ディオが居たらから頑張れて、今も生きてる。ありがとうディオ」


「俺の方こそ、リア、居てくれてありがと」


 リアが身体を俺に向け、握り合った手は繋がれたまま、


「どういたしましてっ!」

 

 壮大な景色と、リアの満面の笑みが合わったその光景は目に焼き付き。


 忘れられない記憶が刻まれた。


(ありがとうリア、君で良かったよ)


「帰ろう」

「うん、帰るのだぁあ!」


 太陽を浴びてすっかり元気になったリアを連れて、俺とリアは慣れた土草を踏みしめて、森の中を進んでいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『一人一つ授けられる固有能力で俺は睡眠耐性Lv10(MAX)』で不眠不休の異世界生活のようです! 松井 ヨミ @MatuiYomi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ