第36話 劉備曰く「田豫の将来が楽しみだ」
袁紹配下の追撃軍が、劉備が籠る城へ殺到し、幾重にも取り囲んだ。追撃軍の軍勢は多く、劉備の軍は少ない。籠城するのがやっとということろだ。
その時も、少年軍師田豫が、包囲を解いて、敵将を斬る策を劉備に進言した。
「劉玄徳様、敵軍の包囲網が完成しないうちに、打って出るべきです」
「うむ。私もそうすべきと思うが、田豫。君によい考えはあるか? 」
「あります。こうしてはどうでしょうか」
田豫が作戦案を劉備に進言すると、
「うむ。その方法が、損害が少ない方法だな。よし、その作戦でいこう」
劉備は、趙雲を呼び、袁紹配下の軍勢の手薄な南門から打って出るように命じ、一方、関羽と張飛には、精鋭を率いて、北門で待機するように命じる。
早速、作戦が実行された。
趙雲は、南門から出ると、兵士たちに旗のぼりを立て、太鼓や笛を鳴らさせながら、砂埃を巻きあげて、敗走するふりを装う。
包囲網の調わない袁紹配下の軍勢は、その様子を見て、
「劉備が逃げていくぞ! 追いかけて捕まえろ! 」
と誰かが叫んだ声に呼応し、わらわらと趙雲の軍勢の後を追いかける。
城を囲む包囲網が乱れたのを見ると、劉備は間髪おかずして、次の命令を下す。
関羽と張飛が北門からも出撃し、気勢を上げたのである。
「ややっ! 北門からも出たぞ! 」
「戻れ! 南門から出た軍は陽動部隊だ! 北門から出た軍が、本隊だ! 」
「違う! 南門から出た軍こそが、本隊だ! 」
袁紹配下の軍勢の指揮系統が乱れに乱れた。
関羽と張飛は、袁紹配下の軍勢の後方から強襲する形になり、趙雲の軍勢も袁紹軍が背を向けた隙に軍勢をまとめて、逆襲する。
袁紹配下の軍勢は、どちらに対しても背を向けたままに挟み撃ちされる形になり、散々に打ち破られ、将は斬られ、逃げる兵士、降伏する兵士が続出した。
このようにして、劉備軍が袁紹配下の軍勢を撃退するための作戦を立案した少年軍師田豫を劉備は、
「田豫の将来が楽しみだ」
と言って、高く評価した。
袁紹と公孫瓚の華北をめぐる勢力争いは、その後も、一進一退の攻防を続けた。
公孫瓚が優位になると、劉備も田楷と共に、斉から勢力を西へと伸ばす。
しかし、袁紹が優位になると、兵を収めて斉に引き返すということを繰り返した。
その様な戦いの最中、劉備は、袁紹側に付く群雄の中で、際立つ群雄と相まみえることになった。
誰と巡り合うことになったのかは、次回の楽しみとしよう。
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