しつけ

「ただいま~」

「お帰り。もうすぐご飯できますよ」


 主人に迎えられる。

 ほんとに出来た主人で助かっている。


 定年後、時短勤務にした主人は家事を引き受けてくれた。

 おかげで、私はフルタイムで働くことができている。


「あれ?ヒマワリは?」


 いつもなら、”おかえり~”と迎えに出てくる娘の姿がない。


「あぁ・・・ヒマワリなら・・・」


 苦笑して、指さした先。


 和室で娘のヒマワリと猫のハナちゃん(ラグドール)が向かいあって座っていた。

 そして、和室と縁側の間の障子が大きく穴が開いている。



「ニャ!!」”だめじゃない!!”

「だって~、とまれなかったんだもん」

「ニャ!!」”走るからこんなことになるんでしょ!!”

「でも~」


 バシッ


 前足で畳を叩く、ハナちゃん。

 ハナちゃんは猫にしてはかなり大柄である。(ラグドールは大型の猫種です)

 そのハナちゃんが、畳を叩くと迫力がある。


「ニャ~~!!」”ごめんなさいは!?”

「うう・・・ごめんなさい・・・」


 ぽろぽろと涙をこぼす我が娘。


 その夜。

 ヒマワリと添い寝しているハナちゃん。

 仲直りしたようである。



 猫のしつけ。

 うちの場合は人間が猫にしつけられているのだ。


 確かに、私はハナちゃんにうちの娘の面倒を見るようにお願いした。だが、想像していた以上に、面倒見が良かった。


 主人に言わせると、ハナちゃんが子猫のころ主人の飼っていた雫ちゃんという猫にしつけられていたので真似しているのだろうということだ。

 

 本当に、ハナちゃんがいて助かっている。


 でも、猫の手を借りるってこういう意味だったっけ?

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猫のしつけ 三枝 優 @7487sakuya

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