あなたがいるから

卯野ましろ

あなたがいるから

「2022でニャオニャニャ~。今年も猫は、その気にニャればニャにかするよ~」


 私の家族ララは、こうして私と話ができるようになることがある。毎日ではない。猫は気まぐれだから、たまにだ。

 身も心も、くたくたで帰宅した私。癒しを欲していたので、ピンクのプニプニに触れた。もちろん、うがいも手荒いも済ませてからだ。汚い手で、そのかわいらしいお手々を触るなんて御法度だ。


「猫の手も借りたい……か……」


 昔から好きな言葉が頭に浮かぶ。好きな理由は、猫が入っているからだ。それだけ。しかし「どんな人でも良いから助けてもらいたい」という意味には首を傾げたくなる。それは猫に失礼なのでは……? 

 猫は素晴らしい生き物なのに。

 猫の手を借りた結果、私は今ハッピーになっているというのに。


「ほんとほんと。失礼ニャ例えだよねぇ~」

「うん……って、ララ! 私の心が読めるのね!」

「だからぁ~、その気にニャれば猫はニャんでもできるんだって~」


 のびーっとしながら液体はのんびりと答える。その柔らかい体も相当な魅力だ。一体どこをどうしたら、そんなポーズができるの……と聞きたくなる謎の体が愛しい。


「ニャオミちゃんが疲れているのだって伝わっているよ。ほら、どうぞぉ~」


 ララは私を、そのキラキラ丸々とした目で見ている。


「……ララには、もう何でも分かっちゃうのね……」


 ……やれやれ、この子には敵わないなぁ。

 そんな風に思いながらも、お言葉に甘えて私はララに手を伸ばした。


「本当に、かわいいんだから」


 モフモフ。


「♪」

 

 モフモフモフモフ。


「♪♪♪」


 私も幸せだが、ララも幸せそう。


「あ、そうだ! ララ、ちょっと待ってて!」

「ニャに~?」


 一旦モフるのを止めて、私はキッチンへ向かった。あるものを用意するためだ。




 そして数分後。


「ほら、これあげる!」

「わ~、キウイだぁ」


 ララは嬉しそうだ。マタタビの仲間であるキウイは、ララのお気に入りの一つだ。


「はい、どうぞ」


 キウイは皮を剥いて細かくした。食べ過ぎは危ないから、あげるのは本当に少しだけ。猫にとってマタタビやキウイは、人間にとってのお酒だと思われる。


「いただきまーす」


 ちょびっとだけど、それでもララは喜んで食べ始めた。さっきまで飄々としていた彼女も、大好物が目の前に現れたらイチコロだ。その猫らしい様子に、くすっと笑ってしまう。


「どう、おいしいララ?」

「ニャアン」


 あ、戻っちゃった。

 次に会話ができるのは、いつかな。

 また楽しみが増えた私は、これからもまだまだ頑張れる。

 ありがとう、ララ。

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