真夏の畦道

 じっとりとした暑さが肌にまとわりつく。

 田んぼが広がる中日陰はなく、蝉は遠くの木陰で大合唱をしている。

 じっとり、じわじわ。このまま出来上がるのは人間の蒸し焼きかそれとも照り焼きか。帽子だけではとても命を守りきれそうにない。

 ちろちろと水の流れる音がする。水田を巡る用水路の中、太陽光を受けて眩しく輝く水が鈍足の私を抜き去っていく。

「みず……」

 呟いた私は帽子を取ると、用水路の水へとぷんと浸けた。それが綺麗かどうかを考える余裕はなく、ただ涼を求めて帽子を高く掲げ、頭から水を被った。

 ああ、空が青い。

 ゆらりと立ち上がると、再び歩き出す。

 延々と続く道の終着点は、山の上にある神社。いくつか入口があるものの、家から一番近い入口がどうしても灼熱の畦道を通らないと辿り着けない。

 まだ午前中とはいえ、この暑さだ。すれ違う人はいない。まるで終末の世界のようだなんて考えながらのろのろと足を動かす。濡れた頭も服もあっという間に乾いて、じりじりと焼かれていく。道端のエノコログサが尾を振って私を見送る。

 ようやく入り口の鳥居が見えてきた。

 鳥居の足元には白いワンピースを着て白い日傘を差した少女が、長い黒髪を風に揺らしていた。

 「夏の概念がいる」

 ぼんやりした頭でそんなことを思った。

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久留山家謹製音声通信機能付ぬいぐるみ型監視カメラの記録 燐裕嗣 @linyuushi

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