子育ては、猫の手を借りてみることにしました🐾 KAC20229に参加!
天雪桃那花(あまゆきもなか)
貸本屋さんと看板猫と捨てられた子犬
ここは町の貸本屋さん。
しおりさんとつむぐさんの仲良し夫婦のお店です。
お店は海を眺められる山丘の中腹にあり、こじんまりとしています。
小さなお店ですが、カフェも兼ねています。
つむぐさんの淹れる珈琲としおりさんの作るキッシュやお菓子が絶品で、また気さくな人柄の夫婦に惹かれて、お客が絶えず癒されに訪れます。
二人には子供はいませんでしたが、長年夫婦と共に暮らす看板猫の『
たくさんの子猫を産み、たくさんの捨て猫も育てて来ました。
猫の
猫の
見た目はだいぶ年老いたかもしれないけれど、まだまだ気迫もあるのです。
大事な我が子達と貸本屋さんを守ってきた風格があります。
ある朝、町に雪が降り始めました。
貸本屋さんは日本の南島の町に佇んでいます。
めったに雪が降ることはないのですが、今年の冬は冷え込んで珍しく二度目の雪がふわりふらりと舞い降りてきていました。
やがてしんしんと雪はやむことなく降り続き、町の家々の屋根や木々に緩やかな山を白く染めていきました。
白銀に光る雪。
寒く凍てつく風が時折り声を上げながら、町を駆け抜けていきます。
いたずらな風に積もり始めた雪が舞い上がる。
冷え込む大地――
貸本屋さんの玄関前には可哀想に、ダンボールに入れられた、まだ目も開かない小さな命が捨てられていました。
か細い鳴き声に最初に気づいたのは猫の
(おやおや大変だ)
ガリガリと猫の
「あら……、可哀想に」
雪が綿帽子のようにかぶるダンボールを慌てて開けると、絞り出すような鳴き声で子犬が鳴いています。
毛布は敷き詰めてありましたが、弱々しくクンクン鳴き続ける子犬はガタガタと震えていました。
生まれてまだ数日しか経っていないだろう。
あとわずかでふっと消え入ってしまいそうな頼りなさに、しおりさんの心はぎゅっと痛みました。
しおりさんはあたりを見渡します。
他にも子犬が捨てられていないか、確認したのです。
犬は赤ちゃん犬を複数頭生みますから、この子の他にも捨てられた兄弟犬がいるやもしれないと思いました。
でも、どうやら貸本屋さんの前に捨てられているのは、この子犬一匹のようです。
子犬に寄り添うように、猫の
猫の
最期の力を振り絞るように見えて、慌ててしおりさんはダンボールを
しおりさんの夫のつむぐさんと赤ちゃん犬を抱きしめ温めてやり、看板猫の
しおりさんとつむぐさん夫婦の友達の獣医の飯野さんが、雪の中駆けつけてくれ、子犬の状態を診てくれました。
子犬は弱っていたので、しばらく飯野さんの動物病院に入院することになったのです。
猫の
子犬の心配をしているようでした。
やがて子犬は元気になり、貸本屋さんのおうちに戻って来たのです。
猫の
猫の
家族が増え、しおりさんとつむぐさん夫婦にもますます笑顔が増えました。
活気づいた貸本屋さんには、子犬目当てで子供を連れた家族のお客さんも大勢やって来ます。
いつにも増して賑やかになってきました。
今では看板猫の横に看板犬が仲良く寄り添って、貸本屋さんのお客さんを出迎えています。
子育てに猫の手を借りた結果は、貸本屋さんがもっと繁盛したということです。
――猫の
しおりさんが
「ニャアァァッ」
まるで
そんな自分の家族達を優しい瞳で見つめる夫のつむぐさんも、にこやかな笑顔で笑っていました。
了
子育ては、猫の手を借りてみることにしました🐾 KAC20229に参加! 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE
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