第45話 明らかになる事実・2
おそらくユリウスの中でも葛藤があったに違いない。エリオットに相談することも考えたのかもしれない。それでも誰にも話すことなく行動してしまったのは、きっと彼の自尊心から来るものだったのだろう。
しかしそんなユリウスを上手く言いくるめて、裏から操っていたのは漆黒の魔導士だ。ユリウスもローベルト国王と同じく、被害者の一人であることは間違いない。
一同は震えるほどの怒りを懸命に抑えていた。
と、ユリウスが掠れた声で呟いた。
「……キリル」
名前を呼ばれたキリルがユリウスに目をやると、彼は床に両手をついて頭を下げている。
「騙されていたとはいえ、お前に剣を向けたこと、本当に申し訳なく思っている」
「顔を上げて、ユリウス兄さん。おれは全然気にしてないし、本当に悪いのは漆黒の魔導士なんだから」
まだ顔を俯かせたままのユリウスが、今度はエリオットの名を呼ぶ。
「……エリオットも、相談せずに申し訳なかった。もしちゃんと話していればこんなことにはならずに済んだはずなのに」
「まったくです。何でも自分の中に押し込んでしまうのは兄上の悪いくせですよ」
エリオットが腕を組み、呆れたようにユリウスを見下ろすが、その瞳は慈愛に満ちたものだ。
彼だって何でも自分でやってしまおうとするし、今回のようなことがあればきっとユリウスと同じく自分の中に押し込んでしまうのではないか、とニールは心の中で小さく苦笑したが、口にすればその何倍もの反論が飛んでくるだろうことはわかっていたので、あえてそんな馬鹿な真似はしない。
「そういえば、反乱についても兄上の計画だったんですか?」
思い出したようにエリオットが訊くと、ようやく顔を上げたユリウスは被りを振った。
「いいや、あれは漆黒の魔導士が勝手に動いたものらしい」
その言葉で察したのだろう、エリオットが頷く。
「なるほど、確かに反乱が成功してしまうと僕たちの身が危険になりますから、兄上はそんなことはしませんね」
「……そういうことだ」
「で、元凶の漆黒の魔導士とやらは今どこにいるんですか?」
エリオットの問いに、全員がユリウスを見た。
「私も、この城にいるということくらいしか知らないんだよ。勝手に向こうから現れて、勝手に去っていくから」
申し訳なさそうにユリウスがそう答えると、
「それでは、どうしようもないですね」
エリオットが落胆したように肩を落とす。当然その周りにも諦めの色が滲み、揃って嘆息した。
「ただ、漆黒の魔導士は――」
しかしユリウスが何かを言い掛けた時だった。
彼の声を掻き消しながら響いた声に、その場にいた全員が沈黙した。
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