第19話 アウローラの鏡
その後、ラウラの許可をもらい、無事に大穴は塞がれた。彼も快く協力してくれたおかげでそれほど時間は掛からなかった。
まだ名残惜しそうなラウラに別れを告げ、来た道を戻るとすぐに分かれ道に出くわした。教わった通り、右の脇道へと向かう。こちらは壁にカンテラがぶら下がっていない、暗い道だ。
この洞窟に入った時と同じように、カンテラを持ったニールが先頭に立って進む。これまでの大きな道とは違い、こちらの脇道は少し狭かった。だが、それでも高さは十分にあったし、横幅も人ふたりくらいなら余裕で通れるくらいはあった。
脇道に入ってから数百メートルくらい進んだところで突き当たりが見えてくる。と同時に、その下の地面に何やら布のようなものが落ちているのが三人の目に入った。
側まで行って確認すると、それはただの布ではなく、皮袋だった。
「これがラウラ様の言っていたものでしょうか? 大分綺麗な皮袋ですが」
ニールは皮袋の前にしゃがみ込み、カンテラで照らしながら首を傾げる。
「どうやら、最近何者かがここに持ってきたという説が正しかったようですね」
エリオットの言葉にニールが頷いた。
「でもそれだと、ユリウス兄さんの言っていたこととは違うことになるんじゃ……」
できるだけ平静を装い、キリルが言う。これ以上、ニールとエリオットに心配を掛けたくなかった。
「兄上はかなり前の話だと言っていましたから、前に一度、いやもしかしたら数回はこの洞窟から持ち出された可能性もあります。そして今回またここに戻された。……まずはこの中身を確認してみないといけませんが」
「でしたら、俺が確認してみます」
ニールは何のためらいもなく皮袋を手に取ると、同じように袋の中に手を突っ込んだ。そうして出てきたものは。
「これが、【アウローラの鏡】……!?」
キリルが息を呑む。ニールとエリオットも同じように言葉を失った。
ユリウスの言った通り、手のひらよりも少し大きいくらいの八角形の鏡だった。それも綺麗に磨かれ、美しい湖面のように輝いている。フレームの部分は年季の入った木でできていた。
そしてそこには、何やら文字のようなものがぐるりと鏡を囲むようにして刻まれていた。
「……これは古代魔術文字ですね」
じっくりとフレームを眺めたエリオットが、眼鏡の蔓を上げる。
古代魔術文字とは今からずっと昔、数百年程前に魔法使いが使っていた文字だという。
自分には読めないが、おそらくは呪いを解くための術式が書かれているのだろう、とエリオットは自身の推察を付け加えた。
誰が、何の目的で、わざわざこんなところに貴重な魔道具を置きに来たのか。
それぞれが疑問に思ったし、気味も悪かったが、今はそれどころではない。すぐにでも城に戻ってローベルト国王を元に戻さなければ。
当然のように意見が一致した三人は【アウローラの鏡】を手に、洞窟を引き返したのだった。
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