第7話 災厄の王子・1
(おれが、【災厄の王子】だとか……って一体何の話をしてるんだ……? そもそも【災厄の王子】って何だ……?)
何だか物騒な呼び名が出てきているが、自分に関係があるのだろうか。
キリルが腕を組んで考え込んでいると、
「ああ、そういうことでしたか」
ようやく合点がいったというように、エリオットが手を打った。
「……どういうことでしょうか?」
ニールが真剣な顔で率直に問う。
「ニールは【災厄の王子】の言い伝えについて、どの程度知っていますか?」
逆にエリオットに訊かれたニールは、素直に自身の知っている内容を話し始めた。
「確か、このデルニード国において四番目に生まれた王子、つまり第四王子が【災厄の王子】と呼ばれていて、この国に災厄をもたらす存在だと忌み嫌われているって話ですよね」
「その他に知っていることはありますか? どんなことでも構いません」
エリオットに促され、ニールはさらに続ける。
「……二百年近く前からデルニード王家に言い伝えられているもので、国民には混乱を招かないようにと、その話は隠していると聞いています。でも城の中には言い伝えを知っている者も少数ですがいるらしいですね。俺はエリオット様の世話係として小さな頃からずっと側にいたので、比較的詳しい方だと思っていたんですが」
「……なるほど、大体は合っていますね」
ニールが話した内容をひとつひとつ確認し、頷きながら聞いていたエリオットが納得したように言う。
キリルは頭の中で、懸命にニールの話をメモを取るようにしてまとめていた。ようやく【災厄の王子】というものが少しずつわかってきたが、ある部分でふと思考が止まる。
どうやら第四王子が【災厄の王子】と呼ばれているらしいが、この国に第四王子なんていただろうか。王子は三人ではなかったか。
そして気付く。
これまでの話を照らし合わせると、自分がこの国の第四王子で【災厄の王子】だということになってしまう。
(そんな、まさか……)
突拍子もない話にキリルが青ざめていると、さらにエリオットは話を続けた。
「ですが、実際には【災厄の王子】というものが根本的に間違っていたことがわかったんです」
「間違っていた、とは?」
「少し前から、父上であるローベルト国王に異変が起きているのは知っていますね?」
「あ、それはおれも知ってます! 今まではすごくいい王様だったのに、いきなり税金が大きく引き上げられた、ってじいちゃんとばあちゃんが困ってました」
これまで黙っていたキリルが反射的に手を上げた。
「そうです。これまで善政を行ってきて、国民からの信頼も厚かった父上が急に人が変わったように悪政を始めたんです。僕たちは父上に何らかの呪いがかけられたのではないかと疑っています。昔の文献に似たような話もありましたし」
「そして、このままでは国民の反乱が起きるのも時間の問題になってしまう、ということですね?」
ニールが尋ねると、エリオットは神妙な面持ちで頷く。ユリウスはずっと黙ったままで腕を組み、エリオットの話を静かに聞いていた。
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