魔ねき猫
いもタルト
第1話
ほう。あなたを捨てた、あの憎い男に復讐してやりたいと。それで私の元をお訪ねになったと、こういうことですか。
かまいませんよ。あなたの願い、叶えて差し上げましょう。
しかし、ただでとは申せません。私もそれなりのものをいただきます。よろしいですね?
さて、先日ご依頼のあった件、方がつきましたよ。ええ、もう終わりました。早いでしょう。
もう少し時間がかかると思っていた?
ククク、この私を見くびってもらっては困ります。
なにせ私は、魔ねき猫。猫が持つ魔力を結集した存在ですから。
人間を猫の沼に沈めることなど、猫の首に鈴をつけるよりたやすいこと。
彼はもう猫がいないと生きていけない体になりました。
猫カフェに入り浸り、全財産を失って、今や路地裏で野良猫たちと一緒に暮らしています。
あんなになってまで、猫が手放せないんですねえ、ククク。
しかし、なんでしょうねえ。そんなに猫がいいんですかねえ。
あなたというかわいいワンちゃんがいながら、猫に走るなんて。ククク。
さて、それでは約束のものをいただきましょうかね。
私はね、あなたたち犬を羨ましく思っていたんですよ。
だって、その魔性の尻尾振りがあるじゃないですか。
我々猫は、そんな風に人間の庇護欲を掻き立てるような尻尾振りはできないですから。欲しいなあと、ずっと思っていたんです。
これより先、あなたたち犬は人間に尻尾が触れなくなります。
え、約束が違う?代償を払うのは私だけで十分だ?
私はそんなこと、言った覚えはありませんが。
ただねえ、少し猫をかぶっていたことは認めますけどね。ククク。
ああ、嬉しい。
これより我々猫は犬の尻尾振りができるようになりました。
これでますます猫を飼う人が増えますねえ。猫廃人も増えますけど、それがどうかしましたか?
猫は傾国の生まれ変わりと言うではありませんか。
おや、そんな悲しそうな顔をなさらずに。猫の手を借りたら、こうなるのですよ。
魔ねき猫 いもタルト @warabizenzai
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