お隣さんから目を離してはいけません。
くすのきさくら
幼馴染には注意
12月末。今は大学が冬休みに入ったことにより。俺は自分の部屋で鉄道模型のジオラマ作成をしているところだ。 一度作って見たくてね。大学生になって、ちょっとずつ時間がある時に、地道に独学で作っている。というところだ。
「オトハルー。走らせて良い?」
今もその作業中である。今日は昼間に出かけていたので、夕食後から作業を開始して――まあ数時間くらい経過したところだ。ちなみに時間は23時20分過ぎ。
「オトハルー。買い物付き合ってあげたじゃん。聞いてる?」
結構集中しているので、もしかしたらこのままオール――えっ?なんか声が聞こえているって?あー、そういえば忘れていることがあったな。
俺の部屋には、現在もう一人。幼馴染が居る事をちょっと忘れかけていたが――ちらりと隣を確認すると……もこもことしたパジャマを着ている女子と目が合った。
茶髪で、少し前に「ちょっとだけ髪切ったんだよ!」とか俺に報告をしに来たが――全く変わってないと俺は思っているセミロングの髪を揺らしつつ。俺が作っているものに興味津々の幼馴染と目が合ったのだった。
「うん?何?オトハル?」
幼馴染の
ちなみにクミカの家はお隣さんだ。
大学は違う学校に通っているのだが。2人とも実家暮らしのため――まあ腐れ縁とでもいうのか。接点が未だに残っており。こうして俺の部屋にクミカが居るのは、日常でもある。
部屋に乗り込みやすい。というのもあるのだが――実は俺の部屋とクミカの部屋はそれぞれ2階にあるのだが。どちらの部屋もベランダがあり。ちょっと乗り越えたらお隣さんなのだ。落ちる心配とかなく。普通に「よいしょ」で越えられるレベルだ。
そうそう簡単に自己紹介すると俺は大久保オトハル。大学二年。あっ、クミカも同じ大学二年だ。はい。自己紹介終了。
それでだ。あと、何でこんな時間に幼馴染が部屋に居るのかと聞かれると――説明が難しいというか。この幼馴染、実は今もというか。クミカは風呂上り――って、それはこっちに来た時だから、今は風呂上りとは言わないかもだが――まあほぼほぼ休みの日の風呂上り。この夜の時間は、俺の部屋に遊びに来る。これは昔から変わってない。親ももういつもの事。ということで全く気にもしていないだろう。
なので今日も確か――21時くらいに突然やって来たんだよな「寒いから早く開けてと」閉めたあった窓をバンバン叩かれた。ということがあった。
俺的には、何故に寒いのわざわざこっちに来るかな?だが――まあいつもの事なので俺は普通に部屋へクミカを入れた。
ちなみにクミカが部屋に来ようが。俺は自分の事をする。というのがいつもの事なので、今も俺は初めに言ったようにジオラマ作りをしていたのだが――。
俺の横ではジオラマを興味津々でクミカが見ている。遊ぼうとしている。と、いうのが正しいか。
「クミカ」
「うん?」
「頼むから。今は触らないでくれ。細かい部品あるから」
「えー」
俺はジオラマの一部。道路や木の作成をしていたのだが。その部分は今固めるという作業に入っていたので、頼むから触るなというのと。
固まるのを待っている間に、走らせる車両の方のメンテナンスをしていたため。机の上には小さなネジやパーツが置いてある。
「あっ。これ今日買ってた車両だよね?」
「そうだけど――頼むから今バラしてあるんだし」
「細かいねー。で、何でバラしてるの?」
「中古のやつだから一応埃とかがあるからその掃除」
「細かなことしてるねー」
クミカが机に顔を近づけて見ている。
そうそう、今買い物の話がチラッと出たが。今日の昼間に俺が出かけていたというのは、鉄道模型のお店に行っていたからだ。
まあ何故かそれを察知したクミカも「暇だから」と言って付いて来ていたがね。そして俺の買い物の後、クミカの買い物に付き合うことになり――俺の作業開始が夜になったということだ。
あー、もう一つ説明しておくと。中古の話が出たが。鉄道模型は高い。ジオラマとか大掛かりなことをすると――大変高額となる。
それに俺はまだ始めたばかりでほとんど持っていなし。知らないことだらけだ。
なので――今の俺は基本中古で安くなっていた……あれは――スターターセットというのか。グルッと模型を走らせることが出来るように組まれているセットを買って――自分で掃除。綺麗にしたりして――車両も中古で買ってーという感じだ。
中古で買うと汚れなどがあるが、まあ今の世の中。掃除、車両などの解体方法はネットを見ればたくさん出ているのでね。自己責任となるが――でも今のところ。一つ俺は動力車の解体掃除をしたが。普通に走っている。線路の方もちゃんと綺麗にしたら滑らかに車両は走っているしな。
ってか。うん。俺がそんなことを始めたら――幼馴染も何故かくいついているというのが最近だったりする。
前に線路などの掃除が終わり。線路を組み立てて、走らせてみたら――うん。俺が感動している横で、もう一人もハマっていた。だな。
鉄道模型は操作は簡単で、俺が買ったものはレバー一つで減速加速が出来るものだったので、初めてのクミカでも操作は簡単。なのでこの前はずっと遊ばれていた。
そして今日も走らせたい。という感じでクミカが俺へと視線を送ってきていたのだが――まあ今は作業中。メンテナンス中ということで俺はクミカが触れないようにしていた。
「オトハル。この前の車両でいいから線路に乗せてよー」
「いや、今俺手が離せないというか。そもそも線路が途中で今無いから。よく見ろよ」
俺はジオラマの一部を指差す。その部分はちょっとだが。トンネルにしようと今発泡スチロールが置いてあり。線路は繋がっていない。
「じゃじゃ、行ったり来たりで手前のところで遊ぶからさ」
「——なんかクミカがガキに見えてきた」
「ガキって何さー」
こんなやり取りは幼馴染とはいつもあること。と俺が思っていると――一階から別の声が聞こえてきた。
「オトハルー。お父さんが迎えに来てだって!音がするから起きてるでしょ?オトハルー」
「……なんだよ。もう忙しいのに」
俺は手に持っていたピンセットなどをそっと机の上に置いて――ボンドなどを乾かしているものは落ちないように机の中心へと少し移動させた。
「クミカ。触るなよ?」
「OKです」
「マジでだからな」
「大丈夫だよ。見てるだけ」
「……」
かなり心配があったが俺は声の主。母親が居る一階へとクミカを部屋に残して向かったのだった。
「——親父がなんだって?」
俺がリビングへと行くと――。
「あー、オトハル。お母さんお風呂入っちゃったから。駅前の居酒屋までお父さん迎えに行ってあげて」
「——何で?」
「電車乗り遅れたんだって」
「タクシーは?」
「財布の中400円なんだって」
「……はい?」
親父よ。数日前もそんなこと言って来て俺が車で駅まで迎えに行かなかったか?あの時も酔っぱらい相手めっちゃ大変だったんだが?飲みすぎるなよと、前も言ったはずだが――もう忘れたか?と思っていると。
「とりあえず、パパっと迎えに行ってあげて」
「毎度毎度だな。ホント」
俺はそんなことを言いつつ。とりあえず自分の部屋に向かって――。
「クミカ」
「うん?」
「ちょっと親父迎えに行くことになったから――」
「了解。忙しいオトハルの代わりに私がここの監視してるね」
「いや忙しくないし。ってか――家帰ってくれた方が安心」
「さっき忙しいってオトハル言ったよ?だからー、オトハルのお手伝いしてあげるから。私が模型の監視をしててあげよう。これ乾くまで他とくっついたり。倒れないように見ていたらいいんでしょ?」
クミカが私もできるみたいな感じで言っているが――いやいやマジでクミカに任せるの怖いんだが。と俺が思っていると。クミカが立ち上がるり俺の背中を押してきた。
「ほらほら、おじさん待ってるよ」
結局俺はその後車を運転して10分ほど走り。酔っぱらいを回収した。そしてさあ帰ろうとしたら。母親から電話がかかって来たのだった。
♪♪~
「……どうした?酔っぱらいは拾ったけど?」
『あっ。オトハル。クミちゃん居るなら言いなさいよ。びっくりしたわよ』
「いつものように乗り込まれただけ」
『居るならお菓子くらい出さないと』
「夜にお菓子とか出したら激怒するんじゃない?」
揉めるな。こんな時間にー、太らす気だ!みたいな感じでな。と俺が思っていると。
『とにかく帰りにコンビニでもなんでもいいから何か買って来てクミちゃんに渡しなさい』
「いらないだろ」
『渡すのよ』
ミッションが増えた。だった。結局俺は――真面目にコンビニに寄ってから帰宅。酔っぱらいは寝室にほりこんで――自分の部屋に戻ると。
予想通りの事が起きていた。期待を裏切らないというか……。
「——なっ!?オトハル……早かったねー」
「……今何隠した?」
俺が部屋に戻ると同時に何かクミカが後ろの隠したのだった。予想通りすぎるというか。こいつこの短時間で何かしたな。と俺が思いつつ近寄ると。
「大丈夫。セーフだから」
「何が?」
「いや、ちょっと走らせてみたら――動いたんだけど――バラバラにあははー」
クミカがそんなことを言いながら――先ほどまで俺が解体メンテナンスしていた車両を見せてきた。
「マジでバラバラや!何で解体している車両を線路に乗せた!?そんなの走らしたら、ネジが止まってないんだから、バラバラになるからな!?っか、予想通りの事をするな!」
「遊びたかったからで……」
「ガキかよ。ってことで、罰として。俺がさっき買ってきたコンビニケーキ完食するまで大人しくしろ」
俺はそう言いつつ手に持っていた袋を渡す。
「この時間に!?私を太らせる気!?」
「罰」
「罰って普通に言った!鬼!」
幼馴染に任せるとこうなる。わかりやすい例をありがとうだよ。ちなみにその後クミカはケーキを普通に完食したのだった。
(おわり)
お隣さんから目を離してはいけません。 くすのきさくら @yu24meteora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます