おまけ…二代目からのお知らせ

はじめまして。二代目“岩山角三”こと、貝沢出雲です。

「恐怖の雑誌」シリーズ、いかがでしたか。

少しでもご愛読いただけたのであれば、本当にありがたいです。



先代の岩山については、非常に残念に思っています。

私の陳腐でまとまりのない話を、怪談として皆様に呼んでいただけるよう形にして投稿してくれた存在ですので。

あのとき、私が逃げ出してさえいなければ、岩山の運命は違ったものに…

といっても所詮は、後悔先に立たず、でありますが。

まあ、あの状況をなんとかするのは、私でなくとも不可能に近いでしょうから、勝手に責任を感じて悩んでみせるほうが、傲慢なのかもしれませんし。



さて、私こと貝沢が“岩山角三”の名を受け継いで作品の投稿を続けていくわけですが、これからどのような作品を執筆しようか検討中です。

先代の岩山は怪談のみをジャンルとしておりましたが、私は題材・作風の幅を広げるために、異世界ファンタジーや学園SF物など、様々な分野に挑戦していこうかと構想しております。ただ、場合によってはまたホラーを書かせていただくこともあるかもしれません。

連載のペースも文章力もまだまだ未熟ではありますが、何卒よろしくお願いします。



お知らせのついでに、ここで私からも一つ、怪談を書かせていただきます。

…といっても、まとまりのない話なんですがね。


その昔、ヨーロッパのある村に、一人の職人がいたんですよ。

何の職人かといいますと、木製の家具や玩具を作る職人でしてね。大きなものなら、椅子とか、机とか。小さなものだと、手のひらサイズのおもちゃ。彼はどちらかというと、小さいものを作ることにすごくこだわっていたみたいで。作品のモチーフは多岐に渡っていて、村でもそれなりに高い評価を受けていたようで。


…ただ実は彼、持っちゃいけないこだわりを持っていたんですよ。

材木、というか、その…材料へのこだわりが、異常なんです。


最初に彼がそのこだわりを持ち始めたのは、借金の取り立てに、金貸しが訪れたときだったんです。

金貸しの訪れたタイミングがまずかった。作品が、ちょうどスランプに陥っていた時期でしてね。返す金が用意できないのもあって、職人も苛ついていたんですよ。

それで、二人は口論になってしまった。

我慢できなくなった職人は…


殴っちゃったんです。手元にあったトンカチで、金貸しを。


ドサッと倒れるわけです、殴られたほうは。


でもまだ意識がある。側頭部の傷口を手で押さえて、ずるずると立ち上がるんですよ。


でも、職人にしてみたら、

一度トンカチでぶっ叩いちゃった以上、相手を生きて帰すわけにもいかなくて。

血のついたトンカチを、もう一回振り上げて。

目の前の負傷者の頭めがけて、力一杯振り下ろして。

逃げようともがく金貸しの肩を鷲づかみにして、腹の上に馬乗りになって。

何度も何度もトンカチで頭を殴りつけて。


殴れば殴るほど、頭の形が少しずつ歪んできて、殴りやすくなってくる。

それに伴って、一回殴るごとの飛び散る血の量も増えてくる。


とうとう、死んじゃったんです。その金貸し。

だらしなくベコベコになった頭を、血だまりに浸した状態で。


その死体を、職人はノコギリで切り刻んだ。


バラバラにするためじゃない。


骨を取り出すために。


抉り取った骨には、肉の残りかすと血がべっとりついてるから、それらを丁寧に洗った。


きれいにした骨を


作品に使ったんです。バレないように、削って、加工して。


骨以外は、暖炉にぶち込んでしまえば、もう見つからない。


加工した骨は、手のひらサイズの木馬と水車の模型を作るのに使った。


町へ持っていくと、何も知らない貴族達がいつもより高い値で買い取ってくれた。


それ以来、職人は人骨で作品を作るのに夢中になった。

金貸しの骨を使いきってしまうと、今度は村の外から人を招待したり、旅人を寝泊まりさせて、殺害した。

それでも足りなくなってくると、とうとう同じ村の住民にまで手を出し始めた。

特に子どもは格好の餌食だ。騙しやすい上に非力で、突然いなくなっても不自然じゃない。

作品はその芸術性を高く評価され、もっと作ってほしい、と町の連中に頼まれるまでに至った。


でもこんなことを続けていると、バレないわけがない。

黒い噂が広まり始めた。あいつの家に入ったやつが翌朝から行方不明だ、と。

あるとき、村の若い娘が一人、囮になることを決意した。他の者達にもそのことを説明して、反対されたけど、彼女の意思は固かった。

例の家の近くで、村の中でも特に逞しい男達に隠れて待機してもらって、自分は一人で来たていを装って、ドアをノックし、職人に迎え入れてもらった。

数分後、家の中から娘の


神様!!


という叫び声が飛び出してきた。

外で待っていた男達が一斉にその家へ接近し、一人が内側から鍵の掛かったドアを体当たりでぶち破る。

中に突入した男達が見たのは。


娘の上に職人が馬乗りになって、白い華奢な首にロープを巻き付けて左右に引っ張っている!!


男共はすぐに職人を娘から引き剥がす。

窒息しかかっていたが娘はかろうじて意識を保っていた。


結局、罪を暴かれた職人は縛り首にされ、彼の家にあった作品とその“材料”は全て遺体として埋葬された。






…だが、彼の作品のうち、既に流通してしまったものたちは一体どこへ?






















あなたの家にも、木のおもちゃ、ありませんか?
































※このエピソード及び本作「恐怖の雑誌」に収録されているエピソードは全てフィクションであり、登場する人物なども全て架空の存在です。“岩山角三”についても、エピソード内で起こったことは完全にフィクションです。世襲制などではなく、全話通して同じ人物が執筆したものです。


最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!

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恐怖の雑誌 岩山角三 @pipopopipo777

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