猫の手を借りた結果、彼氏が出来ました。
山岡咲美
猫の手を借りた結果、彼氏が出来ました。
彼女は朝早く起き、一匹の黒猫を抱えある男の子の家からその男の子をつけていた。
「さあ行きなさいミュシャ!」
三つ編みセーラー服の中学生非モテ女子
「ちょっと待って結衣果ニャン、アタシ心の準備が!!」
黒猫ミュシャはとっても及び腰だ。
「心の準備なんて知らない、早く行って、親友でしょ!」
黒猫ミュシャの親友、猫借結衣果は親友と言う言葉を強く押して更に黒猫ミュシャのお尻を押した。
「わかった、わかったから結衣果ニャン、自分の自分のタイミングで行くから!!」
黒猫ミュシャは彼女を押しだそうとする親友の手を取り、落ち着かせる。
「わかった、あなたのタイミングでいいわ」
猫借結衣果はそっと住宅地のブロック塀の影からその先を見つめる。
「で、でかいニャ……」
猫借結衣果と黒猫ミュシャの見つめる先には身長一九〇センチはあろうでかい学ランの男の子がそのブロック塀の上にいる白猫を見つめていた。
「いいミュシャ、
ゴクリ
「な、なんか怖そうニャ……」
身長一九〇センチは猫にとっては山のようにでかい、そしてなんか長丈一九朗は武士って感じの凛々しさがあり近寄りがたい。
「何言ってんのミュシャ、優しいよ、ほら猫撫でてる、猫好きだよ、猫好き」
猫借結衣果はブロック塀の上の白猫を撫でる長丈一九朗を指差す。
「まるで頭握り潰そうとしてるみたいニャ」
長丈一九朗先輩のごつくでかい手の中に白猫の頭が覆われ、まるで握り潰そうかのように見える。
「何言ってるのミュシャ、猫をめでる優しい先輩だよ、猫好きだよ」
猫借結衣果は先輩がするようにグリグリ親友の黒猫ミュシャの頭を撫でる、首の骨が折れそうだ……。
「行かなきゃダメかニャ?」
「お願い! 今度ママに秘密で高い猫缶買ったげるから」
猫借結衣果は手を合わせお願いし、黒猫ミュシャは前にブルドックのいる家に落としたナナホシテントウムシのリュック回収作戦の時に得た、キジのジビエ猫缶の味を思い出す。
「あれは美味しかったニャ」
「ね、お願い、親友でしょ♪」
「わかったニャ、アタシをダシにあの男に近付くニャ!」
「さすが親友だね!!」
友情って素晴らしい?
「ニャー、ニャー、ニャー、アタシはさみしい黒猫ニャー、誰か撫でてくれる身長一九〇センチ位の男の子はいないかニャー?」
「ニャー、ニャー、ニャー、アタシはさみしい黒猫ニャー、誰か撫でてくれる身長一九〇センチ位の男の子はいないかニャー?」
見てるニャ見てるニャ、黒猫の魅力に勝てる人間などいないのニャ
黒猫ミュシャはまるで偶然そこに通りかかった野生の黒猫のように長丈一九朗の足にすり寄って行く。
勝った! アタシの魅力にメロメロになるがいいニャ
「あ、一九朗待った」
「お、おお……」
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白猫のいたブロック塀の家からなんだか世界を照らすかのように明るい女の子が出て来た、猫借結衣果のとなりのクラス、
????
「あ、猫ちゃん、どうしたの一九朗その黒猫?」
都成明香里はスカートを膝の所で挟むように手でおりその場にしゃがむ。
「あ、おお、この辺の猫かな、突然現れたっぽいぞ」
長丈一九朗は少し照れたように視線を彼女から反らす。
「へー、知らない子だよ、黒猫ちゃんどこから来たの?」
都成明香里は黒猫ミュシャを優しく抱きかかえ鼻と鼻でご挨拶、なんか絵になる。
「クリムトの彼女じゃないか?」
長丈一九朗は白猫を見てそう言った。
「私達みたいに?」
都成明香里は黒猫ミュシャの手を「パタパタ」動かし意地悪そうにそう言う。
「そ、そうかもな」
長丈一九朗は黒猫ミュシャを都成明香里から取り上げると白猫クリムトの横に並べそそくさと学校への道を歩いていった。
「照れちゃって♪」
都成明香里が嬉しそうに長丈一九朗のあとを追って行く。
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「何これ? ワタシ何を見せられたの??」
猫借結衣果は朝からイチャつく二人を見て急激に愛が冷めるのを感じた。
「ミュシャ、ワタシ学校行くから一人で帰ってね、あと猫缶は無しだから」
猫借結衣果は打算で生きる女の子だ、当然親友に高級猫缶など買いはしない。
「結衣果ニャン、それはいいんだけど……アタシ帰りは遅くなるかもニャ……」
「ミュシャニャン、ボク、キジのジビエ猫缶持ってるのニャン、一緒に食べニャいかニャン?」
黒猫ミュシャは白猫クリムトに言い寄られてます、そしてまんざらでもないご様子です。
「……良かったね、ミュシャ」
猫借結衣果は顔をひきつらせながら余裕のない余裕の笑顔を作りました。
猫の手を借りた結果、彼氏が出来ました。
猫の方に…………。
猫の手を借りた結果、彼氏が出来ました。 山岡咲美 @sakumi
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