テディを呼んで

マサユキ・K

***

「テディを呼んで、ジョシュ」


おうちの中から、ジェニファーの声がする。


いつ聴いても、きれいな声だなー。


「お散歩に連れて行く時間よ」


「わかったー!」


ジョシュは答えると、テディをさがした。



いたいた


ひとりで、穴ほってあそんでる。


「おーい、テディ!お散歩行くよー。おいでー!」


おーい


おーいってばー



やっと、こっちを向いたぞ。


ははは


あわてて走ってきた。


「あーあ、あんなに穴ポコだらけにしちゃって……」


「まだ小さいんだから、仕方ないわよ」


ジェニファーが、きれいな声で言った。


いつの間にか横にいる。


「それより、今日はマイクも行くみたいよ。さっき呼びかけたら、起き上がったから……一緒に連れて行きましょう」


「そうなんだ。いつもは寝てばっかなのに」


「太ってるから、歩くの苦手なのよ」


ジェニファーとボクは、顔を上げてクスクス笑った。


「じゃ、ちょっとだけ遠出しようよ」


「それはいいけど、マイクがついて来るかしら」


「大丈夫。ボクにまかせて!」


そう言って、ジョシュは嬉しそうに目を輝かせた。


***************


お散歩たのしー


青い空  白い雲


頬をなでる心地良いそよ風


草むらでは、虫たちが障害物競走


小川では、おさかながバトンリレー


大運動会だ


みんな ガンバレ ガンバレ


お散歩たのしー


だからアシタも来るんだー


***************


「ただいまー」


「お帰りなさーい」


マイクの声に、家の中から妻のルイスが顔を出す。


「今日は遅かったのね」


「ジョシュの奴が、いやに張り切っちゃって……なかなか帰ろうとしないんだよ。それで、少し遠出してきたんだ」


「パパったら、ジョシュとジェニファーに引っ張られて、ハァハァ言ってたんだよ」


そう言って、テディはケラケラ笑った。


「あなた太り過ぎよ、マイク。ジェニファーが呼ばなかったら、まだ寝てたでしょう。もっと外に出なきゃ」


「分かった。そうするよ」


ポリポリと頭をかくマイク……


「あらあら、テディ……あなたの手、ドロだらけじゃない」


「さっき、お庭でトンネル遊びしてたんだ」


「ジョシュが呼ばなかったら、服まで汚れてたわね」


「ごめんなさい、ママ」


ポリポリと頭をかくテディ……


ルイスはくるりと振り返り、の前にしゃがみこんだ。


「全く、


ルイスは笑いながらつぶやいた。


頭を撫でられた二匹は、顔を上げてクンと鳴いた。

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テディを呼んで マサユキ・K @gfqyp999

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