お前のその毛を僕に分けてくれないか。

竜田川高架線

にゃーんwww←うるせえ保健所に持っていくぞ

 僕はいわゆるエアガンいじりが趣味だ。近頃新しいエアガンを家にお迎え、いわゆる軍拡をした。

 さて、使ってみて気付いたのだが、ばね鳴りがひどい。撃つときにピストンを押して弾を発射させるためのばねが、ギアボックスの中で「ばい〜〜んwwwwww」と鳴る。

 

 うるさい上に、バネの振動で銃本体も震える。これは良くない。

 対処法としては、自由長が確保されたばねや、不等ばねという物に交換することが確実。だが交換できるばねは無い。応急処置としては、ばねにグリスを塗ることで多少の改善ができるという。

 

 このエアガンはEMG/APS Noveske space invader というもので、ギアボックスの分解なしに、ストックチューブを取り外すことでギアボックス後部からばねを簡単に抜き取れる仕様だ。

 ばねを抜き出し、マルイの純正グリスを塗り塗り……。

 

「にゃーんwww」

 

 悪魔の声がした。

 部屋の扉から顔を覗かせる黒い悪魔。

 この悪魔、元捨て猫の分際で、暇になれば「相手しろ」とそれはそれはもう上から目線で迫ってくる。

 日々、お前はウチが拾わなかったら野垂れ死んでいたんだぞ、感謝しろよ、と半分になった尻尾と耳を摘みながら教育しているのだが、その効果はなく……。むしろ家で最も高級なソファを独り占めし、家主たる人間を床に座らせているのだ。

 

 そして暇になったこの悪魔は僕がエアガンをいじっているのをみたら、なんと手伝ってくれようとしたのだ。僕が集中している側で、胡座の上にどっかり座り、肉球をちょんちょん……。

 ううん、邪魔くさいなあ。

 僕は猫を抱き上げて退けて、グリス塗り塗り作業に戻った。

 

 ……。

 

 さて、猫を知らない読者様がたに説明申し上げよう。猫とは、四足歩行の動物で、全身に体毛が生えている。そしてその体毛は意図も容易く抜け落ちるのだ。

 

 僕はグリスでベタついた手で猫を抱き上げ、そのグリスは猫の毛をしっかりと含み、そのグリスをばねに塗布した。

 

 僕は悲鳴をあげ、泣き叫びながら床を這いつくばり、やがてウマぴょい伝説を踊り狂った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お前のその毛を僕に分けてくれないか。 竜田川高架線 @koukasen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ