熱い戦いで不利になったので、猫の手を借りようと思います!

!~よたみてい書

猫の手を借りたケンカ

 青い髪をした女性が息を乱しながら建物内の階段をのぼっていた。


(うー、疲れるー!)


 青髪女性は二十歳くらいの姿をしていて、百五十八センチメートルくらいの身長。前髪は眉まで垂らし、両側頭部に後ろ髪をまとめて長い尻尾を二つ吊るしていて、鳥のマスコット型のヘアピンが前髪に付けられている。目尻は少し垂れ下がっていて、青い円が目の中心に刻まれていた。軽い生地の白い衣装で身を包み、胸部に少し膨らみを作っている。また、左手に大きな長方形の盾を、右手にハリセンを装備していた。


 青髪女性は壁に描かれている【8】を見つめながら段差を登り続けていく。すると、突然足をすくわれてしまい、顔面を階段に強打させる。


「ふぁぐっ!」


 階段に赤い液体が広がり、盾が重い音を鳴らしながら階下に転がっていく。


 青髪女性@9は身を起こし、顔を押さえながら階段を見つめる。


(一体何が起こったの!?)


 階段付近に途切れている細い物体に手を近づけた。


(うん、糸、かな? ……罠を仕掛けてたんだね。用心深いことで。まぁ、見事に先制取れてるから、正しいんだけど)


 眉尻を下げて引きつった顔を作り、盾を拾いに階段を下りていく。そして、階段先にある扉に向かって段を上っていった。




 青髪女性は扉をゆっくりと少しだけ開け、隙間から外の様子をうかがった。


(敵は……居る)


 建物の屋上に、鎧を着た者が道具をいじっている。

 

 青髪女性は呼吸を整え、静かに敵に忍び寄った。


(油断してる……。背中ががら空き)


 青髪女性が歩を進めていくと、張り巡らされていた細い糸を足で引きちぎっていく。そして、近くに設置されていた鈴が軽い高音を鳴らし始める。


 青髪女性は目を見開きながら慌てて鈴に視線を向けた。


(んんっ!? また罠!?)


 鎧を着た者は振り返り、青髪女性に視線を向ける。


 鎧を着た者は身長百七十センチメートル程。金属の仮面で顔を殆どおおいつくし、目の横あたりから斜め上に羽を模した部品が伸びている。全身を黄金こがね色の薄い金属鎧で守りを固め、二メートル程の槍をたずさえていた。


 眉をひそめながら盾を構える青髪女性。


「あなたが放火しまわっている方ですか?」


 仮面人間は無言で青髪女性を見つめ続けた。


 青髪女性はハリセンを突き出しながら語気を強める。


「みんなの代わりに、あなたをらしめに来ました! 今日から改心するというなら、わたしは何もせず、すぐ帰ります!」


 無言を貫き続ける仮面人間。


 眉尻を上げながら仮面人間を睨む青髪女性。


(あれ、無視?)


 しばらくの間、二人は言葉を発せず、静寂に包まれた。


 そして、仮面人間は槍を強く握りしめたら、青髪女性に向かって走り出していく。


 それから、槍の先端を勢いよく突き出していくけど、青髪女性も盾で進路を妨害した。


 仮面人間が無防備を晒してる間に青髪女性もハリセンを振るう。ハリセンは仮面人間の腕に衝突し、軽い大きな音を立てていく。


 青髪女性は眉尻を下げながら不安そうな顔を浮かべる。


(あれ、わたし不利じゃない!?)


 青髪女性の横に回ろうとしていく仮面人間。


 しかし、青髪女性も盾を仮面人間に向け続ける。


 仮面人間は一瞬足を止め、そのあとすぐに地面を強く蹴った。そして、宙に跳び上がりながら槍を振り上げ、青髪女性の頭上に振り下ろしていく。


 青髪女性は身をかがめながら盾を斜めに構え、全身を守る。


 仮面人間は盾を勢いよく殴打していき、周囲に重い音を響かせていく。


 青髪女性は仮面人間の足が地面に着地したと同時に、ハリセンを金属で守られていないすねに向けて振るう。やや鈍い大きな破裂音を鳴らしながら、ハリセンは脛に見事命中した。


 仮面人間は一瞬体を硬直させながら声を漏らす。


いたっ!」


 (えっ、女性?)


 仮面人間@10は槍を何度も横に振りながらゆっくり下がっていく。


 そして、槍の先端を青髪女性に向けながら、柄に備わっているボタンを押す。すると、先端付近から小さな弾が発射されて行き、青髪女性の盾に直進していく。弾の残りはあと一発。


 青髪女性は真剣な眼差しを作りながら盾で弾を防ぐ。


(うっ、飛び道具も持ってるの!? でも、なんとか防げ――)


 それから、青髪女性の周囲の地面に炎が発生し、気温が上昇していく。

 

 表情を固めさせながら周囲に視線を巡らせる青髪女性。


(火!? やっぱり、この人が放火の犯人に間違いない!)


 青髪女性は眉尻を上げながら地面を見つめた。


(それより、このままじゃわたしが不利なだけ! ……場所を変えなきゃ!)


 火の横を通って仮面人間に接近を試みる青髪女性。そして、顔をしかめながら悲痛の声を漏らす。


あちっ!」


 青髪女性@8は顔を歪めながら前進していく。


(無事に脱出完了――)


 ハリセンの先端が炎に包まれていて、徐々に持ち手部分に近づいていった。それから、青髪女性の手を火が優しく撫でていく。


 青髪女性は再び顔を崩壊させながら持っていたハリセンを放り投げる。


あっちっ!」


 全体を赤く染めたハリセンが地面に投げ出された。


 青髪女性@7はハリセンを見つめながらたじろぐ。


(えっ、えっ!? あっ、ハリセンに火が……燃え――)


 仮面人間は青髪女性に素早く駆け寄り、力強く槍@1を横に振るう。


 盾を横方面に構えながら歯をかみしめる青髪女性。


(うぅ、反撃できない)


 仮面人間は何度も槍を振るい続けた。


 また、青髪女性も盾で槍をしのぎ続ける。 


 そして、仮面人間は槍を床に放り、盾を両手で掴んでいく。それから、盾を前方に押して、盾を青髪女性の顔にぶつけた。


 青髪女性@6は両手で顔を押さえながら数歩後退していく。


 一方、仮面人間は槍を拾い、盾を備えながら槍を構える。


 青髪女性は目を見開きながらうろたえ続けた。


(あっ、わたしの盾がっ! どうしよう、どうしよう……何か、わたしの助けになるモノ、来て!)


 衣服のポケットに手を突っ込み、素早く透明の結晶を取り出す。そして、小さく掲げながら強く握りつぶす。また、細かく砕けた破片が宙に舞っていった。


 それから、青髪女性の手に、三十センチメートル程の棒が瞬時に現れる。棒の先端には、大きな猫の手を模した部品が備え付けられていた。


 目を見開きながら握っているモノを凝視する青髪女性。


(なんじゃこりゃー!?)


 青髪女性は乱雑に猫の手を振り回しながら仮面人間を威嚇した。


(いや、猫の手も借りたい状況だけど、本当に『猫の手』来ないでよ!)


 仮面人間は槍の先端を青髪女性に向けながらボタンを押しこむ。射出された弾が青髪女性に襲い掛かる。


 そして、青髪女性と周囲の地面が炎に包まれて行く。


 青髪女性は頭を抱えながら小走りで横に移動していった。


(熱い熱い熱い!)


 青髪女性は髪と衣服を少し焦がしながら安全な場所に避難し終える。それから、数秒ほどたったら、綺麗な青色の髪に元通りになっていく。


(このままじゃマズいっ。もう一回なにか助けを求めないと!)


 衣装のポケットに素早く手を突っ込ませ、再び透明な結晶を握りつぶす。


 すると突然、近くに金髪の女性が一人現れ、地面に着地した。


 金髪女性は十八歳ほどの見た目をしていて、身長は約百六十センチメートル。前髪は目にかかっていて、後ろ髪を後頭部でまとめて長い尻尾を作っていて、頭頂部と側頭部の間からは三角形の耳が一対生えていた。そして、目尻は吊り上がっていて、黄色い瞳の中に黒い縦が縦に入っている。戦国を彷彿させる黒めの鎧をまとっていて、ももに三十センチメートル程の脇差かたなを備えていた。また、腰の下あたりから四十センチメートル程の尻尾が伸びている。


 金髪女性@8は目を見開きながら火の床から飛び退き、青髪女性を睨みつけた。


『ミャーオ(あなたがワタシを呼んだ人!? これは一体どういうつもり)!?』


(わっ、今度こそは助けになってくれそう!)


 仮面人間は盾を構えながら、青髪女性と金髪女性、交互に視線を向ける。


 笑みを浮かべながら叫ぶ青髪女性。


「お願い、手を貸してっ!」


 金髪女性は腕を組みながら鋭い目を青髪女性に向ける。


『仲良くするつもりが無いって事? なら何で呼んだの?』


 仮面人間は素早く青髪女性に接近し、槍@0を突き出していく。刃は油断していた青髪女性の腹部に容易に刺さっていった。


 青髪女性@5は顔をしかめさせながら声を漏らす。


「うぐぁっ」


 槍を引き抜き、体を宙で一回転させながら飛び退く仮面人間。


 腹部を押さえながら硬い笑みを金髪女性に向ける青髪女性。


「この人に攻撃を……弱らせるだけにしてね」


 金髪女性は尻尾を脇差かたなに巻き付け、さやから引き抜いていく。それから、青髪女性の横を素早く横切っていきながら尻尾を振り、彼女の腕に直線の切り傷を刻み込んでいった。


 青髪女性@4は目を見開きながら腕を押さえる。そして、金髪女性を見つめながら首を傾げた。


「えっ!?」


 金髪女性に続いて、仮面人間も青髪女性に接近していった。




 一方、が地面から立ち上がっている火に突っ込んでいく。


【ガー(んがー)】


 @2は地面に墜落し、数秒後、体を元の状態に戻したら、再び火に向かって飛行していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

熱い戦いで不利になったので、猫の手を借りようと思います! !~よたみてい書 @kaitemitayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ