2b


それからレイナが口を開くまで沈黙が支配していたが、彼はその状況を壊すように話を切り出したのだった。

リリアと名乗る少女の言葉を聞いた瞬間に僕は体が凍り付いたかのように固まってしまった。それは僕自身その言葉を聞きたくなかったからである。だが彼女はそれを言ったのであった。そしてその言葉に動揺を隠せない僕にリリアが優しく話しかけてきたのである。

「大丈夫ですよリゼ、私は味方ですよ。リリアとはちょっと縁がありましてね。それでその恩に報いるために私はリリのことを守るつもりなので、今回の一件についてはリリの願いに答えて行動をしているだけでしてね。ですので、リゼを責めるような気持ちは無いですから安心して下さい。私はあくまでもリリの意思を尊重していますので」

僕はリリアに抱き着かれたままの状態でその話を聞いたが、どうも頭が追い付いてこなくて混乱してしまっていた。その状態でさらにリリアは僕の耳元で囁く。

「それにね、私は別にリリスを追い詰めて殺す気もないの。ですので安心してください。リリスは私の大切な友人であり家族ですので。その家族を危険に追いやるなんて事は絶対にありません」と言われる。それを聞いて僕の頭は急速に回転を始めた。その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかったからだ。それからしばらくして、ようやく落ち着いてきたのでリリアに「それで結局何が起こったんですか? リリスとリリアは知り合いだって言うんですか? それならそれで色々と話が変わりますが」と言うと、僕の背中をさすってくれていた手を止めると僕の顔を見上げてくる。

それからしばらく見つめられるが、僕はリリアの顔に見とれていて、それに気が付かない。そして僕が彼女の顔に気が付き慌てて視線を下げるとその時には既に元の雰囲気に戻っており、「そうですね、そろそろ教えても問題なさそうですね。まずはリリスに私の能力を分け与えたことについて説明しなければなりません。その件に関しては後でリゼにも教えるつもりでしたが。先にリゼに教えておきましょうかね」と言って、説明を始めようとする。

そして僕はその言葉を聞くと、真剣な眼差しになり。耳を傾けるのだった。その瞳には覚悟のようなものが込められていたのだ。しかし、そんな僕の様子を見た彼女は苦笑いを浮かべると。こう告げたのである。

「そんなに固くならないでください。そんなに大層なことでもないので、気軽に聞き流してくれればそれで構いませんよ。ではまずはリリアの正体についてお話しさせていただきます。ですがその前にリゼに一つ確認させて欲しいことがあるんですけど、良いですか?」と質問してきたので僕はその問いかけに「うん」とだけ答えた。

するとリリアは嬉しそうな笑みを浮かべると、再び僕の目を見てくる。その瞳には僕がしっかりと映っていて僕もそれがとても愛おしく思えて、心の奥が締め付けられるような感覚に陥るのを感じる。そしてそんな僕の様子を確認してから彼女はゆっくりとした口調で僕にこう尋ねてくるのであった。

「貴方は今から私が話す話を信じることができますか? それどころか今までの常識すら全て否定されてしまいますが、それでも大丈夫ですか? いえむしろ大丈夫じゃ無いかもしれませんが、それでも真実を受け入れてくれる自信がありますか? それを聞いてしまったら多分戻れない場所へと向かってしまいますが、それでもよろしいでしょうか? 私としてはそう簡単に聞いて欲しいとは思ってはいませんので無理に聞かせようと思っていないですよ」

そう言われてしまうと僕はどうすればいいのか困ってしまうが、しかし聞かないという選択肢はないと考えていたのだ。そしてそれを口にするとリリアに抱きしめられ、そして耳元でささやかれるのだった。

「ありがとうございます。私にとってはそれだけ嬉しい言葉なんですよ。だからこそリゼにはこれから話す内容を聞いて貰う必要がありそうです」と、そして少しの間を置いて、語り出す。

その話はまるで物語のようなものだった。

遥か昔にあった出来事。その世界に住む人々は魔族の侵略を受け滅亡寸前にまで追い詰められたのだという。

そんな中、一人の少女が神の声を聞いたらしいのだ。その少女の名前はリリア。彼女は勇者と共に魔王と戦い勝利を掴むことに成功する。その後リリアはその戦いによって受けた呪いにより命を落とし、その魂は神の元へと召されたそうだ。

そこでリリアは神々にこう頼んだのだと、この世界で私と同じ運命をたどることになる人物が現れるだろう。その人物は強大な力を秘めているが、使い方を知らないはずです。もしその者がこの世界を救おうとするならば、その力を貸し与えてはくれないだろうか、そしてその時はこの世界に災厄がもたらされる事を伝えておいて下さいと、そしてそんな願いを女神達は了承すると。この世界に生きる人々に力を与えた。だがそれと同時にリリアに一つの頼み事をしたのである。その者達が現れた時に、その者達を導いてあげて欲しい。それは決して強制はせずに、あくまでも本人が望むように誘導してあげるのが良いと告げられたのである。だからリリアは迷っていたのだと言う。そんな事をしてしまえばきっと自分は死んでしまうだろうと、だから躊躇ったのだが。リゼ達が現れて自分の意思は関係なしに勝手に使命を押し付けられてしまったのである。だがその事に不快感はなかったようで、それを受け入れた。

その話を聞いたリゼは自分の体を触り始めたのである。何か異常がないのかと調べるためだ。だけど、体に異変はなくただ困惑していると、リリアに「心配はいらないのですよ。その体は特別製なのです。ですので多少の事があってもすぐに回復するように作られているので、死に至るようなことがなければ傷つくことはないのですよ」と言われてしまう。

(えっ?)と思った時、急に目の前に黒い穴が出現するとそこに腕が飛び出してきたのであった。それを見て僕が驚く暇もなくその腕がリリアに抱き着くように絡み付く。それから腕はそのまま引っ込んでいったのであった。それを見ていたリリスが悲鳴を上げてしまうが。リリアが「大丈夫ですよ」と言いながら優しく微笑んで頭を撫でてくれるのであった。

それからリリアがリリスの方に視線を向ける。リリスの方は突然の事でかなり戸惑っているみたいだが。その事に関してリリアは気にする様子を見せていない。それよりもリリアの方の方が気になってきて仕方がなかったのだ。

だからその事を尋ねると。彼女はこんなことを口にしたのだった。「今の現象はね。リリスの中にある闇の因子の力を使った物でしてね。ちょっと試したい事があったのでやってみたら成功したみたいなんですよ。ちなみにリゼにも同じように出来るので後々に教えるつもりなので楽しみにしててくださいね」と言う。その言葉を聞いた僕はリリアの言葉が冗談ではなく本当なんだと思い知らされた。

(もしかしてリリスの中に潜んでいる怪物も取り出せたりしないかな)

なんて考えているうちに、いつの間にかリリスの腕が僕の体に絡み付いていた。僕はそのことに驚きながらも。冷静に対処していくことにした。その手から伝わる温もりを感じているだけで幸せになるのを感じたからである。だがいつまでもこうしているわけにはいかないので、とりあえず引き離すことにしたのだ。

それからしばらく時間が経過したが。特にこれと言った事は起こらずに普通に過ごしていた。

「どうしますか? リゼ」とリリアが尋ねてくる。僕はそれに対して「うーん、正直よくわからない」と答えるしかなかった。

「リゼは私のことを疑わないんですね?」

リリアの言葉を聞いて、僕は「うん。別に悪い人ではないと思うし、そもそも悪い人の話だったらわざわざ聞かなくていいからさ」と言う。それに、もしも嘘をついていたとしても僕は気にするつもりもないのである。僕は彼女の事をもっと知りたい。それだけしか今は考えていなかったのだった。その言葉を聞いてリリアはとても優しい笑みを浮かべてから、再び口を開く。

そして彼女はリリアについての説明を再開するのだった。彼女は自分が元々いた世界でも勇者として崇められていた存在であり。その中でも最強と言われていたのだということ。その実力は勇者の中ではトップであり。他の勇者達も彼女に従うほど信頼を寄せられていたということを教えてくれる。

それだけではなく。この世界のリリスもリリアにとても憧れを抱いているような節があることも教えてくれたのである。リリスは僕達の前ではそんな態度を一切見せなかったのにも関わらず、僕の前ではリリアに憧れの感情を持っていると素直に教えてくれたのだ。その言葉に僕は嬉しくなってしまった。

リリスは僕の方を見つめてくる。

それからリリスと二人で話をすることにした。僕は気になったので彼女にどうして僕のことが気になっているのかという質問をすると、その答えはすぐに帰ってくることはなかった。その代わりのように、彼女はリシアが僕に好意を向けている理由を尋ねて来たのだ。僕もその問いに対しての答えを持っていなかった為、何も言い返せなくなってしまう。そうやってしばらくの間お互いに沈黙していたけど。彼女は少し考えた後、答えを返してくれたのである。それは彼女の言葉通りの意味らしい。リリスも僕に惚れてしまっているらしくて、どうにか仲良くできないかと考えているようだったのだ。でも、僕はどうしたらいいのか分からないままでいると、今度はリリスから僕のことについての質問が始まったのだった。リリスの方はリゼのことは何でも知っているという感じで僕の情報を次々と披露してくれる。そのせいでリリスはリゼのことを知り過ぎていて、もはや気持ち悪くなってしまうほどだったが、僕の事を本当に理解しようとしてくれていることだけは分かった。

「ねぇ、リゼ」リリアがリリスのことを抱きしめながら僕の名前を呼ぶ。その声はいつもと違ってとても優しかった。

だから「なに?」と言ってみると、リリスの表情が険しくなる。その事に気づいた僕が慌ててしまうと、リリアは慌てて笑顔を浮かべたのであった。

「ごめんなさい。私は二人きりの時はなるべく甘やかそうと決めてるんです。だって二人は私にとってとても大事な家族ですので、その関係を大事にしていきたいと考えています」と言ってリリスのことを見つめる。その目には慈愛のようなものが込められているのがよく分かるような気がしたのだ。

するとそんなリリアの目を見たリリスは恥ずかしくなってしまい。顔が真っ赤になって俯いてしまう。

そんな様子を僕とリリアは見届けた後で。僕は再び質問をした。「それでリリス。リリアとリゼの関係って何なのか教えて欲しいんだけど、良いかな? やっぱり夫婦とか?」と聞くと、リリアの表情がまた険しくなった。だけどそれも一瞬のことであり。次の瞬間には先程までと同じような柔らかい笑みを浮かべるのであった。そしてその笑顔をリリスに向けた。

その途端にリリスの顔が更に紅潮していく。そして顔を隠そうとするが、そんな彼女をリリアは抱き寄せる。そうすると、その行動でリリスの羞恥心は完全に抑えられて落ち着きを取り戻す。

それからようやく本題に入ることができたのであった。

「私とリゼの関係性ですか。そうですね。私達の場合は主従関係といったところでしょうか。一応私がリゼにお願いをして色々と手伝って貰う形で関係を作っていましたが、その関係は今も変わっていませんよ」と言う。

(あれっ、そうなの?)と思った僕にリリアは再び説明を始めてくれたのである。

リリアとリリが出会った経緯。つまりリリと僕がこの世界に呼ばれた時の話を始めた。その話を聞き終えるとリリスの方はリリアが何故、リゼに付き従うようになったのかがわかったようで、どこか納得したような雰囲気を出し始める。それからしばらくして、僕とリリアはリリスを残して森へと向かうことにしたのであった。

森の中に入った僕はすぐに魔物に襲われた。

襲ってきた相手の正体を知った時。その正体が意外すぎて驚いてしまう。なんとリリスが使役している魔獣だということが分かったのである。しかも魔剣持ちの強力なモンスターばかりであったのだ。僕はそれを見て、リリアと初めて戦った時のような感覚を覚えていた。あの時よりも数は多かったけど。リリスが魔獣達と共に立ちはだかった時と同じように。

「これはまずいかもなぁ。このままだと僕達は負けちゃうかもな」そんな事を呟きながら苦笑いしてしまう。それでも諦めるという選択肢はなかったのだ。だからこそ覚悟を決めると、目の前にいるリリスに攻撃を仕掛ける事にした。その時にふとある疑問が頭を過りそれをそのまま口に出す。リリスはどうやって魔獣達を呼び出したのだろうか。もしかして何か特別な方法で呼び出しているのかと、そう思って聞いてみることにする。

だけどその言葉に対する返答は予想外のものだった。その答えは至極簡単なものであったのだ。「簡単ですよ。魔素を使えば簡単にできるんですよ」と言われてしまう。それに加えて、「そもそも召喚魔術なんていうものが存在しますからね。それにリリスの力を借りることで私は呼び出せるようになりました」と教えてくれる。それなら、と僕は思うと早速リリスからもらった剣に力を使う。その瞬間に、僕が握っていた剣の刃に魔法陣が出現したのであった。そのことを確認するためにその部分に触れる。

そのおかげでその剣の能力を理解することが出来た。どうやらその能力は相手の力を吸い取ることが出来るというものであり。僕の中にあった体力と精神力が同時に回復したのだ。

「これなら勝てそうだね」僕は思わず笑みを浮かべてしまう。リリスのおかげでかなり戦いやすくなったのだ。僕は改めて目の前の敵に向かって構えを取る。そうするとリリスも魔獣たちに指示を出す。それによって一斉に動き出し、戦闘が開始された。最初に襲いかかってくるのは魔剣持ちの二体だ。その魔剣を持った個体から攻撃を受ける。それを受け止めてから蹴りを入れるとその体は宙に浮かび上がってから地面へと落下した。

僕は地面に倒れたそいつにトドメをさすべく駆け寄るが、そこで異変が起きる。

突如として目の前にいたはずの二体の姿が消えてしまったのだった。僕はそのことに戸惑いながらも周りを見渡すが何もない。一体どういう事だと思いつつリリスに目を向けて見ると彼女は驚いた表情をしていた。

どうしたのか聞こうと思っても彼女は答えないどころか動かなくなってしまう。そのことに僕は困惑しながらもリリスの元へ近づこうとすると彼女の後ろから声がかけられた。

「よくも私の大切な配下をやってくれたね」

その言葉を聞いた僕は慌てて振り返ろうとするが、それよりも早く腹部に強い衝撃を受けて吹っ飛んでしまう。僕はなんとか受け身を取ることに成功して立ち上がるが、その際にお腹に痛みを感じてしまう。そして僕の意識はそこで途切れた。

次に目が覚めた時には、なぜかリリスに抱きしめられていたのである。どうしてこんなことになっているんだろうと思いつつも僕はとりあえずリリスから離れるように離れる。その行為が気に食わなかったのだろうリリスは不機嫌になってしまうが、今はとりあえず放置しておいた方が良いと考えた僕はリリスに問いかける。

すると彼女から、リリアが突然姿を消したと告げられるのだった。僕はリリアの事が心配になりリリアの名前を呼んでみる。そうすると、すぐ近くからリリアの声が聞こえてきた。それに安心すると僕は辺りを確認するが。周囲には僕とリリス以外の存在はいなかった。

(おかしいな。リリアが僕の近くにいなくてリリスと二人で森の中に取り残されたっていうのか)僕はそんな事を思いながら再びリリスに声をかけようとすると。彼女は僕から離れようとしない。それどころか抱きしめられたままなのだ。

「あのさ、さすがにもう大丈夫だよ。ほらっ、僕にはまだ魔力があるみたいだし、それにこの前リリアに強化の魔術を使って貰ったばかりだからまだ動けるし」と言ったのだが。彼女は「もう少しこのままで」と言ってくるだけだったのだ。僕は仕方なく彼女のしたいことをさせることにしたのである。

リリスは僕の体を堪能したのかどうかわからないけど。しばらくしてからやっと僕を離してくれた。そうすると僕はすぐに彼女の側に行こうとするが、その前に彼女に止められてしまう。その理由を聞くと、リリアとリゼの二人だけで森の探索に行かせて欲しいということだったのだ。僕はもちろん嫌だった。リリアと離れたくないというのが本音だったのだ。でも僕が駄々をこねるのはあまり良いことでは無いと思うから、必死になって我慢することにしたのだった。

ただリリアと別れることに不安を抱いていると、彼女は僕の耳元で、リゼに強化の魔法を使った後で、リゼに僕がリリアにしたことと同じ事をすればいいんじゃないかと言ってくれる。その言葉の意味はなんとなく理解できたが。それでも少し抵抗があったため躊躇してしまう。だけど、リリスは僕に対してさらに囁くようにして言葉を続けて来た。その声があまりにも心地よいものだからつい聞き入ってしまう。

その声はまるで悪魔の誘いのようであった。僕の頭の中はどんどん麻痺していった。そして最後には僕の意思はどこかに吹き飛ばされてしまうと、気がついた時には僕の中でリリアが欲しいという感情が生まれていて。僕はリリアのことを求めていた。そんな時。リリスが僕に「じゃあ、後は任せたよ」と言って、リゼとリリアのことをどこかへ連れて行ってしまってしまう。そんな二人を見た僕は何も出来ずにその場で棒立ち状態になる。そして、リリスは僕の肩を掴む。

それから、僕の目を見るとニヤリと微笑みかけてくる。その笑みは今まで見たこともないほど妖艶なものであった。そんなリリスに魅了させられている僕はそのままキスをされて、それから服を脱がされていく。

それから僕はリリスによって全身を弄ばれてしまった。そのせいで、しばらく僕は動けなくなってしまっていたのである。だが、その間、僕にはある変化が起こっていたのだ。リリアが欲しくてたまらなくなったのだ。その証拠に僕は森の中を一人で歩いていて、たまたま見つけたオークの魔獣を見つけた瞬間に襲ってしまった。そしてリリアがした事を真似るように、僕の精力を吸収していく。

その結果、僕はオークを倒せてしまう程の力を得ることに成功した。だけど僕はそれだけでは物足りなくなってしまったのだ。それから僕はすぐにリリアを探す。そして運良く、リゼとリリアを発見することに成功すると僕は彼女達の元へ近づいて行く。その時に僕は無意識にリリアに向けて手を伸ばすと、彼女は一瞬だけ嬉しそうな顔を見せたがすぐに顔を背けてしまった。僕はその行動がとても寂しいと思ったのである。僕はその気持ちに抗えずに、強引にリリスを振り切るとリリアの唇を奪う。最初は驚き固まっていたリリスも次第にリリアに合わせるような形でキスをする。そのことによって、リリアが発していた拒絶の言葉は次第に甘い声に変化していき。最終的に快楽の渦へと飲み込まれていった。

それから僕はリリアとリゼの両方と関係を持たされてしまうことになる。それから数日が経つ。その間に僕は森に生息している様々なモンスターと戦ってきたが、それらの力を得てもなお、満足できなくなっていた。僕はその不満を解消するためにリリアと会う度に彼女を激しく求めるようになったのである。

そんなある日の朝のことだった。僕は久しぶりに夢を見てしまう。そこにはリリシアの姿があって、彼女が僕のことを見て笑っている。それなのに僕は彼女の手を握り返すことが出来ないでいる。そして夢の中だと言うにも関わらず僕は涙を流してしまう。その涙の理由を知ることは出来なかった。そうしているとリリスの声が僕の耳に届いてきたのだ。そこで僕は目を覚ますのであった。

僕はすぐにリリスの姿を探そうとしたのだが、それは無駄に終わったのであった。なぜなら僕はそこで自分の体がおかしい事に気がついて愕然としたからだ。その異変というのは。僕のお腹に、まるで何かが取り憑いているような感触があったのだった。しかもそれはだんだんと強くなっていくのがわかる。それを感じた僕はとてもじゃないけど怖くて仕方がない状況に陥っていたのだ。僕はそれを取り除くために、どうにかしてお腹の中にある何かを取り出そうとする。その最中だった。

リリスから僕に電話がかかって来たのだ。その着信に僕は思わず安堵してしまったが。リリスからの頼み事の内容を聞いてから。僕は思わず言葉を失うのであった。

僕と加奈ちゃんは一緒に行動する事になったのですが、その際に一つ疑問に思ったことがあったので質問をしてみることにする。まずはリリスさんとリリスはどうやって僕たちの場所を把握しているのか。それに気づいたリリスが説明を始めてくれました。それによると。どうやら、僕たちの動向を監視するための装置が村の中に存在しているらしく、その監視装置は特定の場所にのみ存在するらしいのだ。

それを知った僕はもしかしてその装置は村長さんの家で手に入れたのだろうかと思いながら確認すると。リリスの言った通りだと答えてくれたのである。その話によると、その道具を使って村の中を監視して。そしてリリスは僕らを見つけ出し連絡を入れたとのこと。そしてリリスにリリアについて聞く。リリアは無事なのか?ということだ。

それに対して彼女は問題ないと答えた上で、リリアは今眠っているのだと教えてくれる。その発言に僕はホッとした。それと同時にリリスから僕が寝言を言っているという話を聞かされたので恥ずかしく感じてしまうのだった。そして僕が眠りにつくとリリスの側にリリアが出現するという事も。その話を聞いた僕たちは驚くと同時に、なぜ僕と加奈ちゃんがこの世界に来てしまったのかわからなくなってしまう。

その理由に関してはわからないという。だけど。僕たちがどうしてリリスが生み出した空間に入り込むことができたのか、という部分についてはある程度見当がつくとリリスは言う。そして彼女は僕たちにそれを教えてくれるのだった。どうやら、その世界は精神の世界のようなものであり、肉体ではなく、魂だけの状態である僕たちになら入ることは容易であるということらしいのだ。

そして僕と加奈が何故入り込めたかと言うと。おそらくだが、リリアを想い続けている心の強さが、二人を引きつけたのかもしれないということだった。僕はその答えにあまりピンとは来なかったが、加奈はわかったようで、なるほどねと言いたげに納得して見せた。ただ、加奈が僕の事を好きだったというのには正直驚いたけどね。だって加奈はずっと前から僕の事を想ってくれていたからね。まぁ、それを直接聞いてはいないんだけど。でも、僕の事を好きなんだって思う事はあったんだよ。

だから、僕はその事を口に出したんだが、加奈からすればそれは予想通りの展開であったようだ。だけど僕の事を心配してくれる優しさは嬉しかった。だから僕はありがとうと言って感謝した。そんな僕に加奈は微笑みかける。その表情が本当に可愛いものだった。

僕たちはその後リリスに案内されるがまま森の中にある洞窟の前に移動する。そこは以前にリリアと共に訪れた場所であったが、リリスはその時にこの先にいる奴らの存在を感じ取ったのだと言った。リリスがこの先に誰がいるのかを問いかけると、リリスのお姉さんだと言われて僕は困惑してしまう。

そんな時、僕はリリアと同じような存在なのかどうかを確かめるためリリスに尋ねると、彼女はリリアが作り出した疑似生命体であることを認めると、彼女の正体についても教えて貰ったのである。そして彼女はリリスの双子の妹なのだということまで告げられるのだった。リリスが僕の方を向き。彼女の口から「姉妹喧嘩に巻き込んでしまったみたいで悪かった」と謝罪される。

僕はリリスに対して、別に謝る必要など無いし気にしないでくれと言っておく。そもそも僕の事を騙してここまで誘導したのは、リゼとリリアと三人で話をするためなんだから、僕を巻き込んだという表現は違うだろうと思ったのだ。

そして、リゼとリリアを会わせても問題ないと僕がリリスに告げようとしたのだが、その時にリリスが僕を抱きしめてくると。突然僕の視界が暗転してしまう。その事に驚いていると。リリスから衝撃的な言葉を投げかけられるのであった。リリスの姉は僕に殺されたからもう復活はできないのだという。

その言葉を耳にした僕はかなりのショックを感じていた。僕の中の魔王に対するイメージがガラリと変わる出来事だったからであろう。だがその言葉が本当ならば、僕はこれから何をすればいいのかが、わからずに困ってしまう。

とりあえず僕はその問題については考えないようにしようと思う。それから、リリスに連れられて僕達はリリアが待っているという小屋に移動する。その道中に僕は気になったことがあったので尋ねてみると、リリスに質問に彼女は素直に回答してくれる。

リリスの話を聞く限り。僕の知っているリリアは僕達が出会ったリリアと同じ人格を持った別の存在である事が判明した。そして、僕の中にあった違和感もなくなるのである。リリスは僕達にリリスが持っている情報を全て提供してくれたのだ。まずは僕の中に入っている魔王が誰かという問題だが、これはリリスの予測では勇者が転生している可能性があると言っていた。ただそれが誰かまでは特定できていないようだったが。

それを聞いた僕は勇者とリリィの二人が僕の中にいて、その二人の力が合わさっている状態で僕は力を手に入れてしまったのではないかと思ったのだ。ただ、それに関してはあくまでも推測でしかないので、確証が得られるまでは黙っていることにした。そうこうしている内に小屋に到着。

そこでリリスから中に入って良いと促されたのであった。

僕はリリアを抱きしめながらキスをしている。彼女のことを優しく包み込むように。そして彼女の頭をそっと撫で続ける。そうしながら、僕の舌は彼女の口内をゆっくりと動き回るのだった。最初は戸惑っていた彼女も今ではすっかり僕に身を任せてキスに没頭してしまっている。

やがて、僕と彼女との間に透明な糸が生まれ始めていく。その光景がたまらなく興奮を煽った僕は、我慢できなくなってしまった僕は彼女を押し倒してしまったのである。

押し倒されたリリアはとても不安そうな顔をしていたけど、僕は安心させる為に何度も好きだという言葉を繰り返し伝えると、少しづつ落ち着きを取り戻していったようである。それからしばらくして、僕とリリアは互いの服を脱がしあい肌を重ね合ったのであった。その最中、僕の体に変化が起こる。リリスによって与えられた力が消え始めたのである。それにより、僕の体に宿っていた力は全て無くなってしまい。僕はリゼの眷属としての力を失ってしまう。その瞬間にリリアの顔色が曇るが、僕はすぐに笑顔で大丈夫だと告げたのである。

僕の変化に一番最初に気づいたのはリリスであった。それを受けて僕はリリスに感謝の言葉を述べると。彼女がリリアに僕の状態を伝えたところ、リリアが泣きながら僕に抱きついてきたのだ。それを見た僕とリゼは苦笑いをしながら互いに顔を見合わせる。だけどすぐに気持ちが通じ合って自然と二人でリリアのことを抱きしめていたのであった。そうしてからリリアが落ち着いたのを見計らってから僕は改めて自分のステータスを確認してみると。リザの名前の下に新たに聖女という文字が追加されており、そこに意識を向けたら能力の説明画面が目の前に現れる。どうやらリリスが言うとおり僕は既に人間じゃないようだ。それに加えて僕はレベルが0になっていたのだが、これもリリス曰く、魔王から力を授かることで経験値を獲得し、一定の条件を満たした上でレベルアップするそうだから心配することはないと説明される。だけどそれはあくまで目安であって。レベルが上がったことで僕自身が強くなっているわけではないらしいのだ。だから過信しないようにとも念押しをされてしまったのである。ちなみに、魔王を倒したらどうなるのかを尋ねたら。僕の中に眠るリザの力が目覚め、そしてこの世界で最強の存在になれるはずだと教えられた。だが、僕はそれを断る。

何故ならリリスの話では、リザの本当の力は封印されている状態のようで、本来ならばこの世界の王たるリリスが所持できるはずのものらしい。だからこそリリスは自分の力の全てを使って僕に魔王討伐をさせなかったのだと理解することができた。だがそのおかげで僕はリリスと会うことができたわけだし。その事は感謝しておかないといけない。それにしてもまさかこの世界に召喚されるだなんて想像もしていなかっただけに、色々と想定外のことばかり起きているけど。今はまだその時ではないような気がするので深くは追及しなかったのである。そしてリリスに今後の行動について尋ねられた。

まずは一度リリスと一緒に家に帰る事になっているのだ。そこで今後の話し合いを行いたいとのことだった。僕はその事に関して了承するとリリスと一旦別れる事にする。その後リリスは僕に加奈とリリアを連れてくるように言ってくる。僕には理由がわからなかったが素直に従ってみることにする。

加奈が僕から離れない様子だったから僕たちは三人ともリリスと共に転移魔法を使用して、村長の家に帰宅する事にしたのであった。僕たちが訪れた時にはすでに夕方を迎えていたため、そのまま僕は家に戻ろうとしていたのだけれど。僕はふとあることを思い出したのでそれを実行することにしたのだ。

それは加奈との再会を果たした際に、僕は彼女にプレゼントをしていたのだけれど。実はもう一つ加奈に贈り物があったのを思い出したからである。加奈に渡したのは僕の宝物だ。その宝箱をリリスの家に置きっぱなしにしていたことを、今になって思い出したのだ。それで僕は慌てて加奈に断りを入れて一人で彼女の元に戻ると、急いでその荷物を取りに行くことにしたのである。

そうして僕はその宝の山の中から目的の品を探し出すことに成功した僕は、再び加奈の元に戻り、その品を差し出したのだ。それを受け取った加奈はその正体を確認すると驚いてみせる。それと言うのも、その品というのが以前リリスから貰った加奈用の武器であったからだ。加奈はそれを大切にしたいという理由で今まで手をつけずに置いておいたらしい。だからその事に僕は申し訳なくなりながらも加奈にそれを使う許可を与えるのであった。

そうやって加奈は加奈の本来の姿で戦えるようになるまでの準備を整えた後。僕たちは家に戻る。その際リリスはミレア達と連絡を取っており、リリィにも僕たちの居場所を教えてくれて合流するように言ってくれたようだ。それから僕たちは家に到着すると、すぐに僕はリリスの事をリザと紹介したのだ。その言葉を聞いた二人は驚くがリリスから魔王との関係について告げられると。今度はリリィが僕たちに質問してくる。その話によると魔王とはどのような存在なのかを。僕とリリアは正直にその質問に答えて見せたのである。リリィとリリスはその説明に納得してくれたようであり。リゼに関しては何か言いたげな表情をしていたが。リリスの話に耳を傾けることにしたのであった。僕とリゼとで旅に出ようとした時だ。僕の中にいたリリアの力が突然消えてしまった。それを受けた僕は戸惑いを隠しきれないまま、僕の中のリリアの存在が完全に失われてしまったのではないかと恐怖してしまう。そんな時だった。僕の事を優しく抱きしめる者がいたのだ。それがリリアである。そしてリリアが僕に言った言葉がとても嬉しい内容であった。それこそが僕の事をリリスの作った疑似生命体だと言ったのだ。つまり、今の僕は魔王とリリスが作り出した疑似生命体という存在であるということだった。その事実を聞かされると僕は少し混乱した。魔王を殺せる存在が僕しかいないということだ。そしてその僕を魔王とリリアが作り出した存在なのだという。リリアがなぜこのような事をしたのかを僕は尋ねたのだが、リリアはその理由を僕に伝えることはなくただ謝り続けたのである。だがそれでも僕は彼女がどうして僕に嘘をついたのかを理解していた。

リリアにとって魔王は特別な存在であると、そして僕が魔王である以上リリアがその僕を死に追いやったのだから罪の意識を感じていたことは想像ができたのだ。僕はその事でリリアが気に病むことはないと言い切ると。ようやく彼女は落ち着きを取り戻し始める。それからしばらく経つとリリスは僕の中に魔王がいるという話を皆にしてみせたのである。その言葉に僕を含めた全員が驚き戸惑うが、すぐに冷静さを欠きそうになる。

だがしかし、リリスが僕の中にいる魔王の力を利用して世界を滅ぼそうとしたわけではなく、逆にその力で僕たちを救おうとしてくれていたことを話してくれると、全員の表情が柔らかくなったのだ。その話を聞けば僕の中にいるのは僕と同じような存在であることが確定するのである。僕はリリスの言葉を疑うことはしなかったのだ。

なぜならば僕も彼女に対して同じ思いを抱いているからである。だからこそ彼女の言っていることが本当だということが確信できたのだ。僕は自分の気持ちを伝えると。リリアが泣きながら抱きついて来てキスをしてくる。僕とリリアはしばらくの間、互いを確かめ合うかのように何度も口づけを交わすのであった。その様子をリリスとリゼは微笑ましく見守っていたのであった。

そうしている内に日が暮れ始めてきたため、僕は夕食の用意を始める。そして食事を終えた後、風呂に入って体を休めることにした。今日はリリィが見張りを行うことになったので僕とミレアで交代で休むこととする。僕たちは寝間着をリリィに渡す。すると彼女はそれを身につけ始めたのだ。僕はリリアと一緒に着替えを手伝うことにしたのである。

その後、ミリアが見張りを行い、リリアが眠りについたのであった。僕はリリアが起きないように優しく抱きしめると。僕はリリアと体を重ね合わせてその幸せに酔った。僕とリリスとリゼの三人で話し合いが行われた結果、明日になったらリリアとリゼを村に送る事が決まったのである。僕としては二人だけでいいんじゃないかと思ったけど、リゼが言うには魔王を倒すには戦力を増強する必要があるそうだ。その件に関してリゼが僕の気持ちを確かめるような発言をするのであった。

リリスとリゼと別れて僕はミレアと二人でベッドに横たわると、彼女が可愛らしく甘えてきたのである。その様子がとても愛おしくなり僕は彼女の唇を奪うと舌を入れたのだ。そうして互いの熱を感じていると次第に興奮が高まっていくのを感じた。だがここで問題が発生する。僕はリリスに操られた時にリリアと結ばれてしまったことで、女性を抱く行為に関して免疫がなく、そのせいもあってか僕は童貞を卒業してしまっていたのであった。だからか、初めて味わう女の子同士の性行為が僕にとっては衝撃的な体験となったのだ。そのためか、その事を考える度にドキドキしっぱなしの状態になってしまう。

僕はなんとか落ち着くようにと心を落ち着けようとするのだが上手くいかない。それどころか、ミレアとの触れ合いで余計に興奮が増してしまう始末。だけどこのまま何もしないのも失礼だと思い。ミレアの事を強く求めることにしたのであった。僕は彼女の胸元に手を伸ばすと揉んでみる。その途端に甘い声を出し始めるミレアの姿を目の当たりにした僕の股間は、完全に戦闘状態へと突入したのだった。その後は我慢できなくなり、彼女の体に手を伸ばした瞬間。僕の意識が途絶えることになる。

目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だったのだ。僕は起き上がるが頭がボーっとしていて思考能力が働かなかった。そうしてしばらく放心状態になる。

「大丈夫ですか?」

そんな僕に心配そうに声をかけてくる者がいた。その者はリリスであり彼女は水の入ったコップを手渡してくれる。僕はそれを飲んでいくと気分が良くなっていく。その事に安堵を覚えた直後。自分が今置かれている状況を把握しようと頭を働かせた。そして僕はリリスと会話をして事情を確認することにしたのである。その結果、リリスの話によれば、僕たちは先ほどリリィとリザによって転移魔法により、この家まで運ばれたのだと聞かされた。

リリィとリリスから魔王討伐の旅に出た僕たちは途中で盗賊団に襲われたらしいのだ。その襲撃の際に僕は魔王に身体の支配権を奪われて、僕の意思とは関係なく行動していたらしいのだ。その事実を知った僕は複雑な心境に陥ったのだ。リリスはその事実に気がついたのか、優しく僕を抱きしめて慰めてくれる。そのおかげなのか少しずつ僕の精神が正常に近づいていった。

その最中だった。突然扉が開かれ誰かが現れたのだ。そこには加奈が立っているのが見える。

リリアに頼まれて加奈にプレゼントをした品を取りに来たのだという。僕がそう告げた瞬間。加奈の瞳が妖しく光るのが見えて、僕は慌てて身構えるが、その前にリリスが立ち塞がって加奈から僕の事を庇うのであった。

加奈の事を睨みつけるリリス。それに対して加奈はニヤリと笑うと、僕に歩み寄ってくる。その光景を見て、僕はリリスに危険が迫っていることを察知したので、慌てて加奈の前に立ちふさがったのだ。すると僕の背中に痛みが走る。どうやら加奈に剣で斬られてしまったらしい。加奈の攻撃を受けて床に倒れこむと、加奈は容赦なく追撃してくる。だが僕はそれに耐えきると加奈の腕を掴んで動きを封じた。

その様子にリリスは驚く。僕たちの様子を確認したリリスはすぐに駆けつけてくれる。そして僕は、リリスと加奈の間に割り込んで彼女を守ろうとするが、その隙を狙われて今度は僕がリリスに襲われてしまった。その事で動揺してしまった僕は抵抗することもできず。彼女に捕まってしまう。そしてリリスはリリスと僕とで同時にキスをしはじめたのであった。その出来事を目にしたリナは怒り狂うと僕とリリスの事を離すように言う。その言葉を耳にしたリリスは僕から離れようとしたが、僕はリリスを抱き寄せるとその唇を奪い始める。その事で僕の中で何かが目覚め始めたのだ。そして、その感情に流される形で僕はリリスの服を脱がし始めたのであった。

リリスは嫌がるような仕草は見せなかった。なので僕はその行為を加速させていく。そのせいで僕はどんどん興奮していき、やがてリリスを押し倒すとそのまま彼女を激しく求め続けるのであった。リリスも僕に抱きつき積極的に応じてくれたのだ。それから何時間が経過しただろうか? その時にはリリスと僕は互いに求めあい続けていたのである。それからリリスが僕の腕の中で気絶すると、ようやく僕の理性は戻ってくる。そして、冷静になった僕の前には、僕と同じようにリリアがいて、僕とリリアが繋がっていることに驚いていたのであった。

それから僕は、リリアとリリスの衣服を着せ替えて、二人が目を覚ますのを待つことにした。その間、僕が二人の傍にいたのだが、僕たちはリシアの家から移動してきたリザの魔法のおかげでこの家に戻ってきたのであった。そしてその事実を聞かされると僕は、加奈に対してリリィの仇討ちがしたいと告げるとリリスとリリアは、魔王である僕の復讐を止めようとするのであった。僕は二人の言葉を無視してリリィを攫われた時の話を持ち出す。その事でリリィの気持ちが分かったのだと。

その言葉に二人は押し黙り、最終的にはリリアは納得したようで魔王の力を使っても構わないと言い出したのであった。だが僕はリリアがその言葉を口にするとは思わなかった。なぜならばリリィが死んだ原因の一端はリリアにあったからである。そのせいで彼女はリリィに謝っていた。その事はリリィに伝えている。しかし、その事についてはもう過ぎたことだと言われて謝罪の言葉を受け取られてはくれないだろうと思ったからだ。しかしリリアはリリィの敵を討つためになら、僕の力を頼ることにも躊躇しないと言ったのである。

その後、しばらくして二人が起きるまでの間、三人で語り合うことにしたのだ。僕は自分の中の魔王に対して、どのような気持ちを抱いて接すればいいか分からず。そのことを尋ねる。リリアは僕に対して、魔王と人間は同じ存在なのだと言ってくる。そしてリリスもまた同じような考えを示した。その言葉を聞いて僕は複雑な心境に陥るのであった。リリア曰く、魔族は魔王の支配から逃れるために生まれたのだと教えてくれる。その事実を知って僕は驚いたが、よく考えてみれば当たり前のことでもあった。なぜならば魔物を生み出すのは全て魔族だったからである。

リリィの話では魔族の国で誕生した全ての魔物は魔王の支配下にあり。魔王が死ねば全て死ぬという話だった。そのため魔族は生まれた時から魔王の支配下に置かれていたということになるのだ。つまり人間の世界で生活している一部の種族も元々は全て魔王の支配下にあったということになり。僕たちの住んでいる大陸では獣人やドワーフなどがそれに該当する。

僕たちの世界が平和だったのは魔王が存在していたからだということがわかり。僕は複雑な気持ちになる。その事を考えると魔王がなぜ、こんな世界を作ったのか理解できない部分があったのだ。そのことについて尋ねてみると。リリアがリリスと共に僕の事を抱き寄せて優しく撫でながらこう言った。それはリリスからリリアへと引き継がれてきた秘密でもあるのだと言われたのである。

その後、リリスとリリアの二人が目を覚ましたのであった。

僕は二人の着替えを手伝った後、加奈の下へと向かったのである。その事を聞いたリゼは一緒に行くと口にしたので連れて行こうかと考えたが、僕一人で行かないと駄目だと思い。僕は一人でリゼと一緒に村に行くことを決めたのだ。その事に気づいたリゼは何があるのかと心配していたが僕は、すぐに戻ってくると告げてから加奈と会ってきたのである。そこで僕は加奈の気持ちを知った。その事実を僕は受け入れることができなかった。

だから僕はその事について問いただしたのだ。だがその返答として返って来たのは加奈にとって僕の存在は必要ないということであった。その言葉で僕の中に憎しみの感情が沸き起こると、僕は彼女に暴力を働いたのだ。そんな僕の行為を見たリリスとリリアが止めに入ってくれる。だが僕はそれでも止めることはできなかった。そうして暴れ回った結果。僕は再び意識を失ってしまった。

その事を思い出して、リゼと二人で顔を見合わせ苦笑いを浮かべたのであった。

僕とリゼの二人で話をした後。加奈が僕の元を訪れる。

「加奈、どうして僕を殺さなかったんだい?」

僕はそう言って加奈を抱きしめる。

加奈が何故、僕を殺そうとしないのかが分からなかったのだ。加奈から受けた仕打ちを考えれば殺されても仕方がないはずなのにだ。それ故に疑問を抱いたのだ。

だけど加奈が口にした答えはその逆であった。加奈は自分のことを僕と仲良しになりたいと思っているような発言をしたのである。

「加奈の気持ちには感謝するよ」

僕は加奈に感謝を告げると頭をなで始める。そんな僕に加奈は顔を真っ赤にしながら喜んでいた。僕は彼女の態度に戸惑いながらも、このままの関係を続けることにしたのである。そうしなければリゼの時のような過ちを繰り返してしまうかもしれないと僕は恐れたのだ。そして、僕たちは村の方に視線を向ける。その方角からリリスとリリアが姿を見せると僕たちは合流することになった。そんな彼女たちに僕は改めて事情を聞くことにしたのだ。

まず最初にリリアから事情を聞き、続いてリリスから詳しい事情を聞かされることになり、その内容に驚かされる事になる。その事を要約すると次のようになる。魔王に身体を奪われた後。僕とリリィの目の前に姿を現したのは、先ほど戦った巨人であった。その時の僕の記憶は完全になく。ただ自分が魔王であることだけを覚えており、僕はリリスに襲いかかろうとするのである。その時に僕の行動をリリアとリリスが必死に阻止してくれたのだ。その際に僕はリリアとリリスを傷つけてしまい。二人に迷惑をかけてしまったことを思い出す。そして僕のせいで二人が怪我を負ったことに気付くと。心が苦しくなった。だがその気持ちはすぐにリリアとリリスによって癒されたのである。その後は僕も冷静さを取り戻すことに成功し、僕はリリスに魔王としての能力を一部だけ発動させたのであった。それによりリリスにかかっていた魔法が解けたので、リリスが持っていた指輪に込められていた加奈の精神支配の呪いが消えることになったのだ。

僕に身体の自由が戻った瞬間。僕の中から溢れ出る力を感じると僕はある事を思いついた。それを実行した瞬間。僕の中に閉じ込められていた巨人の精神を表に出してしまったのである。

その結果、魔王となった僕に加奈が襲ってきたのだが返り討ちにしてしまう。だが僕は加奈を殺すわけにもいかずに、彼女を救う方法を考えた末に彼女の中にある僕の力を解放してあげたのだ。

それから僕はリリスが魔王を倒すまで時間を稼ごうと戦いを挑むが。リリアにあっさり倒されてしまう。そして、僕たちの前に現れたリリアを見てリリィと勘違いするが、僕はすぐに彼女が別人だということに気付いたのであった。

その後。リリアが魔王に攻撃すると僕は魔王の力を使い彼女を封じ込めて、そして封印の魔法を解除するように頼む。

リリアは最初戸惑うものの僕の指示に従い、そして僕が指示を出した内容を実行しようとする。だが僕が止めたのだ。その事に驚くリリアだったが、その理由を説明すると納得して魔法を解いてくれた。その事で僕は、リリアから渡された魔王の力の一部を開放すると、彼女はその場から離脱し、僕の元に駆けつけてくると、魔王に向かってリリスの攻撃をぶつけたのであった。そして僕は自分の中に閉じ込めている魔王の力と融合すると、僕は魔王を完全に乗っ取ったというわけである。だが魔王も諦めが悪くて抵抗を続け、僕も魔王と一進一退の戦いを繰り広げた。その戦いは激しいものだったが、リリアやリリスが僕をサポートしてくれていたので魔王に勝てたのであった。

その説明が終わると僕は加奈とリリス、リリアと共に街に戻り。そして加奈の姉ちゃんに会いに行ったのである。

その日。俺とレイジと加奈の三人は加奈が働いている店に向かった。そして加奈の案内の元、店の前まで行くと扉の前には一人の少女の姿が見える。その事に疑問を持った俺は彼女に近づいていく。その少女の正体は加奈の幼馴染である女性だった。その女性の名前は、月城 結衣。彼女はこの村の出身であり、そして加奈と同じように親を亡くしている子である。そのため俺たちは彼女に声をかけようとしたが。

それよりも先にその女の子が話しかけてきたのだ。

その声の主は俺がよく知っている人物である。それはリリスだ。彼女はこの村に戻ってくると必ずといっていい程、この店で手伝いをするようになっていたのである。だが今回、リリスはお客としてではなく店員として働いていたのだ。そのためリリスの姿を目にした結衣が固まってしまう。そんな彼女はリリスがリリアであると気付いたのか涙目になるとリリスに駆け寄り思いっきり抱き着いたのだ。突然のことでリリスは驚いていたが、すぐに笑顔を見せるとその女の子を優しく包み込むように抱きしめたのである。その様子を見た加奈も同じように笑みを見せながらその光景を眺めていた。そしてその光景はリリスが加奈の友達だと分かったので、リリスを紹介した時よりもさらに強い衝撃が走ったようで、目をこれでもかというぐらい大きく開き、そして頬が真っ赤に染まった状態で二人を見つめていたのである。そしてしばらくすると二人はお互いの名前を交換し合ったのであった。そしてその会話を聞いてリリスは結衣がこの街に来ていることに驚き、そして心配しているのだと理解すると安心させるために何かあったら自分に知らせて欲しいと告げるのであった。その後、リリスと別れた俺達は、仕事があるという結衣を残し店を後にすることにしたのである。だが最後に振り返って、リリスを見送りに来ていた加奈を睨んでいたのでリリスに心配をかけるんじゃないぞと言うと。それに返事を返したリリスに見送られる形で俺たちは店を後にするのだった。

それから数日が経過した頃、リリスの言っていたことが的中して結衣が行方不明になったという報告を受けた。リリスはリリスなりに何とかしようとしていたが結局は見つからず。最終的には警察に相談することになってしまうのであった。そんな報告を聞いたリリスはかなりショックを受けていたのである。だからそんな彼女に元気になってもらおうと。今日一日、彼女と過ごすことを決めたのだ。だがそれは俺の間違いだった。

俺は彼女の行動を止めるべきではなかった。それが今になっても後悔することになるとは思ってもいなかったのだ。

リリスからの報告を受けると。私は急いで家を飛び出します。

その途中にある知り合いの方にリリスの事を伝えました。しかし、私ではどうすることもできないと言われると、その人は申し訳なさそうな表情を浮かべるのでした。その事に対し、何も言うことができないままリリスが心配なので家に帰ることにします。家に帰りつくと玄関の前でリリスと鉢合わせになりました。そして私はリリスの顔を見た瞬間に涙を流してしまうのです。そんな私に対してリリスは心配をかけまいと笑顔を浮かべるのが分かりました。そしてそんな彼女に手を引かれると家の中に入ることになった。その後。リビングに行くとテーブルの上に書類が散乱していました。そしてそれを目にした瞬間にリリスの行動が理解できたような気がして、私の心が締め付けられるのが分かると思わず泣き出してしまいました。そんな私を落ち着けるためにリリスが抱き寄せてくれたので、しばらくの間はそのままの状態で泣いていましたが。ようやく落ち着きを取り戻すと、どうしてこんなことになっているのかと尋ねると。そこでリリスが今まで何をやっていたのかを教えてもらいました。

その内容は、彼女の両親が亡くなった場所を訪れ。そこでリリスは一人の少女と出会ったそうです。その女の子の話を聞く限りでは、リゼという名前のようですね。そして彼女は、魔王に身体を奪われてしまったのだそうです。その事を聞かされたリリスはなんとか助け出そうとしましたが、魔王の力によって逆に捕まってしまいました。その事を気にしたリゼさんは自分の事を忘れるようにと言い、そして二度と関わらないようにと言ってリリスの元から離れていったのだそうです。そしてそんな話を聞かなくてもリリスが必死になっていることは一目瞭然だったので。私にはもう何を言ってあげることもできませんでした。ただリリスが無茶をしない様に願うことしかできなかったのです。そして私は、そんな気持ちのままリリスと一緒に食事を作り始めました。

リリスと加奈さんの話を盗み聞きすると、結衣が行方不明になったというのを知ったそうだ。その事に動揺していた加奈にリリアと相談してこれから一緒に行動することを決め、そして結衣が働いている店まで向かうことにしたらしい。

そんなわけで最初に店に向かう前に結衣に挨拶をしておいた方がいいと考え、店の前に到着すると、そこには二人の人影が見える。

そのうちの一人は間違いなく結衣なのだが、もう一人が分からないので確認してみることにする。だが俺の問いかけに反応した人物を見ると。そこにいる少女に見覚えがありすぎるのだ。だが彼女は、自分が探している少女と全く同じ姿をしているため、別人なのではないかと考えるが、リリスは少女が誰なのかを知っていたので別人である可能性は薄いと思えるのである。だがそれでもまだ確信が持てなかった俺はリリスとリリアに判断を頼んでしまった。

するとリリスがリリアの身体から姿を現したリリィを見て驚愕すると同時に、嬉しそうな笑みを見せると、その女の子の目の前に姿を現すのであった。

リリアとリリィの姿を目にした瞬間にその女の子は驚きの声を上げた。

「あ、あなた達ってまさか。本当に?」

「はい。私たちこそ、あなたと同じ世界の住人ですよ」

そう答えると二人は女の子に近づく。

それを確認したその少女は、俺の方に向かって頭を下げた。俺もそれに応じる形で軽く会釈をする。

そんなやり取りを終えると女の子は再びリリム達の方を向いて話し出す。俺はその内容を聞き取ることができたが内容はあまり理解することができない内容ばかりだったので省略しておこうと思う。

だが一つだけ理解できる事はある。それは、その子は異世界から来た人間だという話だ。つまり彼女はリリスやリリアのように別の世界に転移させられた人間の可能性が高いということになる。そんな話をしていると結衣と目が合う。すると結衣は慌ててその場から逃げ出したのである。そんな彼女を追いかけようとしたのだが、リリィとリリアが俺を呼び止めたのでそちらの方を向くと。二人が真剣な眼差しをこちらに向けていた。そんな彼女たちの雰囲気があまりにも普段と違っていたため。リリア達が何を考えているのかを理解することはできなかった。

リリリスの幼馴染の女の子である月城 結衣が失踪したということで。俺と加奈の二人も探しに出ることが決まった。そして加奈は捜索を手伝うためについて来てくれるという事になったのだ。そんなわけなので俺はとりあえずリリスに連絡を取ろうかと思い。リリア達にそのことを話すと二人に反対されてしまう。その理由は単純で、もしその事で彼女がリリスやリリアのことを思い出す可能性があったからである。そのため俺たちが一緒に行動するだけで、リリスやリリアがこの世界で活動できなくなる可能性が十分にあったというわけだ。そして俺は仕方なくこの場で待機することにした。

ちなみに俺はこの世界の人たちに自分の能力を教えるつもりはない。その理由は俺自身に何かしらの危険があると考えているからだ。それにこの世界でリリスとリリアの正体を明かすということは、俺たちが異世界人であるということを明かしてしまう可能性がある。そのため俺は彼女たちと相談して自分たちのことを明かすのは、何かしらの問題が発生したとき、この世界を去らなければならなくなった時、もしくは魔王を討伐したとき。この三つの場合のみにするべきだと決めている。

そんなわけで、俺たちは結衣を探すためにまずは、この村の人から情報を得ることに決めた。しかし、この村に来てすぐに結衣がいなくなっていることが分かったのだ。だから村の人はみんな結衣のことをよく知っていると思っていたが、結衣がどこに行ったかまでは分からず、唯一知っていると言った人物もリリスの家に向かっていたということ以外何も知らなかったのである。だから俺たちは手掛かりを見つけることができないまま、時間だけが過ぎていってしまうのであった。そして、それからしばらく時間が経過した頃、ようやく俺はリリシアが行方不明になってしまったという知らせを受ける。そして、それを耳にしたリリア達は俺を残して先にリリシアの元に駆けつけたのである。しかし残されたリリスが不安がっているかもしれないと考えた俺は。急いで家に帰るとリリスは俺が帰ってくるのを待っていて。俺の顔を見るなり抱き着いてきた。俺はそんな彼女の様子から、リリスの両親が亡くなったときの事を思い出してしまう。だから彼女を安心させるためにリリスが安心するまでずっと抱きしめていたのだ。

しばらくして落ち着きを取り戻したリリスが俺から離れた。そして改めて家に入ると俺は、今回の事件の詳細を話すようにリリスに尋ねたのである。するとリリスの口から予想外過ぎる答えが飛び出してきて。そしてそんな出来事が起こったという事を知るとリリスに大丈夫かと尋ね、そして今度こそリリスに何かがあったら守ってみせると告げると。リリスが突然泣き出した。だがそれも当然だとは思う。だってリリスにとってリゼと結衣はとても大切な存在であり。その二人の内の片方が消えたという衝撃的な事実が伝えられたのだ。それがどれほど大きな悲しみを生み出すものなのかは想像がつく。だが俺はそんなリリスの事を抱きしめて、リリスがこれ以上辛い思いに陥らないように声をかけ続けたのである。そして俺はそんな状態のリリスと共に食事をすることになったのであった。

そんな感じで夕食を終えた後。俺は今後の事を話し合っていたのだけど。そんな中、急にリリスが立ち上がったのだ。そして俺は、どうしたんだ? と思って声をかけると。少し外に出たいという事だった。

それからしばらくして俺は一人で森の中に入っていた。

何故このようなことになったかというと、リリスがどうしても一緒に行かせて欲しいと言い出したからだ。

なので俺はそんな彼女に負けてしまったので一緒に出かけることになったのだけど。その際に、俺にはある作戦を練る必要があったのでリリスとは別の場所に向かったのであった。

そして目的地まで到着すると、そこにリリアがいることに気付く。

「あら、遅かったじゃないですか?」

そう言ったリリアに対し。

俺がここに来た目的を告げると。リリアは少し考えてから俺にあるお願いをした。その頼みというのは結衣ちゃんがリゼと結託している可能性もあるので、その可能性も考えてほしいということだ。そしてそのことについて俺が納得すると、俺がここにやって来た本当の理由を口にしたのであった。

「そういえば、私もそろそろ動き出そうと思っていましたし。ちょうどいいですね」

リリアのその言葉を聞いて、リリスに何かするつもりなのではないかと警戒する。だがリリアが口にしたのはリリスではなく、リゼの事でした。彼女は俺とリリアの前に姿を現してから、リゼの行方が分かっていない。しかも彼女の行動は謎だらけだそうで。リゼは自分から姿を消したと言っていたけど。それすら怪しいと言っているリリアを見て、俺がリリアに質問をする。すると、リゼの行動には不自然な部分があり。結衣さんにも協力している可能性が高い。だからこそ二人は手を組めばリリスの事を手にかけることも十分に可能だろう。そう考えた俺はリリアに尋ねると。その可能性は低いと思いますがと返されてしまい。だが俺は一応、結衣さんに注意をしておく必要があると感じたので結衣さんの元に向かうのであった。

そんなわけで結衣の元を訪れたのだが、そこで俺は予想外のことに遭遇する。結衣の隣にいたリリスにいきなり攻撃されたからだ。俺はどうしてそのような事をしたのかを確認すると。リリィはリリアの妹ではないと聞かされる。それどころかリリアはリリィのことを妹だと勘違いしているというのだ。そして俺はリリスから真実を聞かされることになる。

俺がリリスの話を聞き終わると、加奈は混乱してしまったようで。俺の方を向いてどういうことなんですかと聞いてきた。しかし俺はそれに対しては何も答えることができなかった。というのも、結衣とリリアが入れ替わっていることに関しては誰にも知られないようにしておきたいと思ったからだ。そのためリリスが言っていたことは嘘だということにしようと思っていたのだが。リリシアが現れてしまい結局のところ話すことになってしまうのであった。

「なるほど、それで私は邪魔になったんですね」

「いや違う。加奈は大事な友人だから。巻き込みたくはなかったんだよ」

「そうですよリリィ。リリアとリリリスは私たちの敵ですから。リリリアもリリアとリリリスの関係を知った人間を排除しようとするかもしれませんし。リリアにリリリアのことを伝えても、そのことがばれる可能性が高いんですよ」

リリアの言葉を受けて俺はリリシアの方を見ると、その意見に間違いはないと言うかのように静かにうなずく。その姿を見てしまった俺達はこの先何があっても絶対にリリシアだけは味方だと確信して、彼女が味方でいる間は俺達がこの世界から離れることはしない。そういう結論に至った。しかしリリシアの正体について俺は聞くことができずにいたが、それでも彼女がこの世界で幸せになれればいい。それだけを考えていた。

俺はこれからやらなければならない事があるため。一度家に帰って荷物を取ってくる。そしてすぐにリリスの家に向かおうと決めて家に帰ったのだが。リリアはついて来てくれなかった。そのため仕方なく、俺は結衣を連れて家を後にする。だがリリスの家は目の前なのだから別にそこまで一緒について来てもらう必要もなかったのかもしれないが。

それからリリスの家にたどり着く。リリスとリリィはすでに帰っていたらしく、結衣が二人と対面する。そしてリリアが結衣に向かって話し始めたのである。

リリアは今までリリィのことを騙していたこと。

本当は、結衣のことを騙していたこと。

そんな話をする中。結衣は黙ったまま何も話そうとはしなかった。

そんな状況に痺れを切らせたリリィが。

結衣を殴り飛ばす。だが結衣はすぐに立ち上がると、結衣はリリィに対して怒るのであった。そんな彼女を見た俺は結衣をリリスの元へ送り届けるために動く。しかし加奈はリリアと話を続けると言ってその場に残り。そして俺は結衣の手を引いてリリス達の所へ行こうと移動を始めたのだが、途中で結衣が立ち止まってしまったのだ。

そして結衣は俺の方に振り返ると俺の顔を見つめて話しかけてくる。

俺はそんな彼女から目が離せなくなっていたのである。そんな俺達の間に静寂が訪れ。俺は何か行動をしなければと思うのだけど。何をしたらいいのかわからなくて困り果てていた。すると突然結衣は俺を殴ってきた。そして俺はそのまま地面に倒れてしまう。だがその瞬間。なぜか俺は懐かしい気分になっていた。しかし結衣はそのまま去っていってしまう。そしてその後をリリリスが追っていったのだった。そんな出来事の後でリリアが加奈の元にやって来てリリスに何かあったのかと尋ねると。何もないと答える加奈であったが。俺にはその様子がとても変に見える。まるで誰かと話しているように思えたからだ。だから加奈に問いかけてみると、リリアに見えないはずの俺の事が見えたというのだ。そしてリリアも俺の事を認識できて驚いたというのである。そんな加奈の事を心配した俺は加奈のことを自分の部屋に連れて行くことにした。そしてリリリアがリリシアの事を気にしていたので俺はリリシアに事情を説明しておく。そして俺は部屋に戻り。そこで俺は自分がこの世界に転生したこと。勇者の力が使えた理由などを説明したのであった。

リリシアは俺が説明したことを信じることができないでいたようだけど。俺はリリアにも同じ事を話すつもりだった。なぜならリリアは俺の知っている限りこの世界の最高神であるからだ。だがそれは俺の勘であるから。あまり信じすぎるべきではない。そう思ったからこそリリシアには話さなかったのだ。それにもしもこの考えが正しいなら。俺がリリアと出会わなかったら。今の俺はいなかったのだから。だから俺としてはその事はなるべく隠した方が良いと考えているのだ。そしてその事を伝えた後で俺は改めて家を出てリリリスの家に向かったのである。だがその途中。俺はリリスの家の前にリリスと加奈の二人が立っているのを発見したのだ。だが俺はリリスと話がしたいと思っていると加奈の方も何か俺に言いたいことがあるような感じだったので。とりあえず先にリリスと会話することにして。そして加奈の話を聞いたのであった。

それからしばらくしてから俺が加奈の話を聞き終えると。

加奈がリリスに何かを伝えるために俺から離れて行く。

そしてリリスの方は俺の側にやって来ると俺に質問してきた。その質問の内容はリリィの事だ。なぜ急に加奈と二人で行動するようになったのか? と聞かれたので俺は加奈に結衣を任せてきた事を話し。リリリスに加奈と結衣の関係について伝えていなかったので、そのことを説明する。だがその時にリリスは少しだけ嬉しそうな表情を浮かべていた。

俺のその答えを聞いたリリスが俺に提案をする。

その内容は結衣を殺さなくても済む方法だった。そしてそれを試すためにもリリスは今からリリィと加奈の所に行ってくるというので、俺は加奈の方の様子を見てくることに決めるのであった。

「それでリリィと結衣ちゃんの仲を取り持つというのはどういうことなんですか?」

加奈が私達にリリシアに言われたことについて確認をしてきます。私はその事を肯定しますが。加奈はその事を信じられないと言い出します。でも実際に私が加奈の目を見ても加奈の目が私を認識することが無かったのです。なので私はリリシアの話は本当の事で。しかもリリアの事を敵視している可能性があるということを加奈に伝えます。そうすることでリリシアに対する印象も変わると思いましたし。加奈がリリシアに対して警戒心を持ってくれると思ったからです。ですから私は加奈とリリィに真実を教えました。ですがそのせいで加奈はショックを受けてしまいました。ですがリリィは冷静な態度を見せて。私の事を責めてきます。そればかりか、リリィは自分の妹はリリアだと嘘までついて。さらには結衣のこともリリアと勘違いをしていたらしいのです。

リリィの言葉に動揺をしてしまうリリア。そして俺はその光景を見ながらリリシアに近づきながら彼女に言う。

するとリリシアが笑顔になって俺の手を握り返してくる。その事に俺はドキドキしてしまい。それだけでなく。その柔らかさに驚いてしまい。さらにリリシアが俺の腕を引っ張ってきたことによってバランスが崩れて。俺がリリシアに押し倒される形になってしまったのだ。そして俺は顔を真っ赤にしてリリアから距離を取ろうとしたが、それよりも早く俺のことをリリシアが抱きしめて動けなくさせてしまう。だがすぐに加奈とリリアの声が聞こえてきたことで。リリシアはすぐに俺の体を放してくれた。俺は恥ずかしさを我慢しながら二人のもとに駆け寄ると。そこでリリシアからある提案を受ける。その内容を聞いて俺はリリスが何を考えているのかわからなくなってしまったのであった。

私はリリシスからの提案を受けてから。私はリリィにリリアのことを打ち明けることにしたの。その理由はリリィには嘘をついていたことを伝えなければ。リリアとの仲直りができないことが分かっていたからよ。そうしないとリリアはリリィと戦おうとしてくれないと考えたからだわ。だけどそれは結局リリアのことを悲しませることになった。だって、リリィにリリアのことを伝えられなかったのだから。それでもリリィに話したのは、リリィの態度からしてもうすでにリリアが偽者だということに気づいていると分かったからよ。

「えっと、リリィはどうしたの?」

「それがね、実はリリィは本当は、リリシアなの」

「はっ? いや、ちょっと待って。本当に、あの、リリア姉様じゃなくて。リリシアなの? いや確かにリリアの体でいるけど。まさか入れ替わってたの?」

私がそう話すと。いきなり加奈がそんなことを言って来た。私はその事について何も答えることができなかった。

するとそんな加奈に対してリリアが説明を始めたのである。リリアは自分が魔王リリシアだと名乗ったのである。そして自分は今までの自分の姿はすべて仮のものでしかなく。本来の姿はこれだと説明したのだ。

そんな話をしながら、どうして自分が魔王だったか。

リリィはどんな風に自分を育てたのか。そしてどうして加奈と一緒に暮らし始めたのかを話始める。その話は途中で私がリリィと加奈の二人の話を交互に聞かないといけなかったけれど。とても長い話で。途中でリリィの話を聞けなくなって、リリィを困らせてしまったかもしれない。でもリリィもリリィの育ててくれた親の事を話せる機会があったみたいで。加奈とリリィの話をリリィが嬉しそうに語っていたのを見て。私もとても嬉しかった。そんな事を考えている間に。加奈とリリィが話をする時間が終ってしまう。そしてこれからどうするかを決めるために話し合いを始めた。

だが加奈はすぐに自分の家に帰ると行って、帰ってしまう。リリィのことは心配なのだけれども、今は加奈が一人で家に居た方が安全だと思ったのだ。リリシアがリリアのふりをしていると聞いて。私は正直にいうと混乱していて何も考えられなかったのである。

だがリリシアが家を出て行く際に見せた寂しげに微笑んだ表情を見て。リリアはリリアなりに何か事情があると思えたので。リリアと話が出来る時間を作ってほしいと。そうお願いすることにしたのである。だがリリシアはしばらく考えてから、無理だという返事を返してきたのだ。しかしそんなリリシアに向かって加奈が話しかけたのである。そして私はそんなリリシアと加奈のことを見ながらリリアと話をしていたのであった。そしてその時私はリリアの事をずっと観察していると気づいてしまっていたのである。リリアは時折何かを懐かしむような表情を見せ。そのたびに少しだけ辛そうな。悲しいような顔になる時が有るのだ。

それはまるでリリシアに嫉妬を向けられているような。そんな感覚を味合わされているような。

でもリリアがどうしてそんな顔をしていたのか私にはわからなかった。だけどその日はそれ以上リリアと話すことができずに終わってしまったのである。

それからしばらくの間私は家で大人しくして過ごすことになる。なぜなら外に出た瞬間にまた誰かに狙われるのではないか? と思ってしまい。外にすら出られなくなってしまったからである。でも家の中で過ごすだけでは退屈だと思っていた。それにお世話になっているばかりというのも良くないと考えていた時に私はミレアの所に相談に行ってみようと思い立ったので家を出ることに決めて行動を開始することにしたのであった。

私が最初にミレニアのところに行くことに決めたのはリリシアが言ってきたからだ。それは私と話をするならリリィの知り合いであるミレアが一番いいと言っていたのだ。だが私は加奈の方にも何か用事があるかもしれないと思い。最初は先にそちらに向かうことにする。

そして加奈の家に着いて私は彼女の部屋の中に案内されて。それからしばらく世間話をして時間を潰すことにした。そうしてある程度の時間は経過をしたのにまだ帰ってこないので。そろそろ私はミレーア達の方に向かった方がいいかな? とも思ったのだが。そこで突然私の目の前に現れた人物によって邪魔されることになる。だがその人はすぐに消えてしまい。私は何が起きたのかよくわからない状況のまま加奈が帰ってくるまでの間は加奈の家で過ごす事になる。そしてようやく加奈が現れたと思ったら今度はリリィが現れるので、私はどうしたらいいのか分からなくなってしまうのであった。

「それでは早速ですが。リリシアはどこにいるのですか? 私は彼女に聞きたいことがあるのですが」

「それなら多分この辺りに居るはずよ。だから私につい来て。私もこの辺りの事はよく分からないんだけど、リリアさんはいつもここに隠れていたの。そして加奈はリリシアの事を覚えていたからリリシアを見つけることができたんだよ。だけどやっぱりリリシアは私達の記憶には無いみたいだけど。だからリリィちゃんも覚えていないんじゃないの?」

私がそう質問をすると。リリシアを探すのを手伝ってくれていたリリィが教えてくれる。そして加奈もリリィに続いて説明をしてくれて。私は少し複雑な気分になりながらその情報を聞くのだった。

「なるほど。そういうことだったんですね。リリア姉様と会うために来たというわけですか。それでリリシアと会えばどうにか出来ると思っているのですか? でも、もしリリア姉様だと偽っていても、もう手遅れだと思いますが。でも私はそれでも、私は絶対にリリア姉様を見つけ出すと決めています。だってリリア姉様が居なければ私は生まれてきませんでしたから。だから私はリリア姉様に恩を返す為に、もう一度会いたいのです。たとえ偽者であっても私はきっと本当の姉妹の様に接してくれると信じてますから。だから加奈さんが何を思っていようとも、私の想いは変わりません」

そう力強く語るリリィにリリィは優しい笑顔を見せて、頭を撫で始めます。そして加奈のことを見つめると、「貴女と仲良くなれたら嬉しいですね」と言いました。それを見た私は胸の奥がきゅっと締め付けられて苦しくなる気持ちになって、それと共に心の中では、リリィの言っていることが正しいように思えるのであった。

俺はリリシアに連れられて、リリシアが魔王だった頃に生活をしていた場所に来ていた。そこは村の中に存在する、一軒の建物で。俺とリリシアはその建物の中に足を踏み入れると。その建物は外から見てもボロボロだったけれど、中には更に酷い状態の物が散乱していたのである。俺は思わず眉をひそめてしまうが、リリシアは特に気にすることなく奥へと向かって行く。

そして一番奥の部屋に入ったところで俺の方を向く。そして彼女は真剣な表情で話を始めたのである。

それは魔王に成り代わったリリシアが、何故こんな風に暮らしているのかという理由であった。

リリシアが言うにはリリシアの体は魔族が暮らす国の王族の娘で、魔王にされた時は本当に大変だったそうだ。しかも、その国は、魔王に成り代わる前にあった国が攻めてきた時に一緒に滅ぼされてしまったらしく。リリシアだけが助かったのだと言う。その後はその国で過ごしていたらしいが。そこで暮らしていた場所は魔物の住処で、リリシアはそこに住む者達に追われながらも生活をしていたようだ。そしてある日リリシアは森で迷子になっていたところをある人に拾われて保護されることになったのだという。

それからの生活についてはリリシアは詳しくは語ろうとしなかった。そして何故か加奈に対して警戒しているように感じる部分もあったのだ。だからあまり詳しいことを話さないのかもしれない。

そしてそんな生活を続けていた中でリリシアの体が変化を始めたのだという。

それがどういったものなのか、それは俺にも良くわからないのだが。見た目が変化して行き。それと同時に体の中に入っている魔力も増えていったそうだ。

リリシア曰く魔王になった影響でリリシアに元々存在していた力が覚醒したのだという。だがそれは良い事でもなく。その力は魔王の力で。その魔王の力を使えば、世界を崩壊させることも出来るほどの物だったのだそうだ。それをリリシアが使ったかどうかは、本人が語ってくれなかったのでわからないのだけれども。

そしてリリシアは自分がそんな魔王にさせられたことで。自分を恨んでいる人が他にも大勢居るのではないかと怯えたのだという。そのため魔王城にいた人達の事も全て捨てて。自分の事を知らない土地へ行こうとしたのだが。その場所を探そうとすればするほど。どんどん自分の住んでいた国から遠くなっていく。そうしてリリシアは自分がどこに向かっているのかもわからなくなり。最終的に、この廃墟となった村にたどり着いたのだと言った。そうしてリリシアはこの村にたどり着いた時には。すでに自分の事を知っていた人しか残っておらず。自分を受け入れてくれた人たちに。リリシアは甘えるようになった。

それからはここでずっとリリィとして生きていく事に決めるのであったが。その前に、どうしてもリリシアは自分の正体を知る人と会わなければならないと考えたのである。なぜならその人たちは、リリシアの事を知っている可能性がある人達であり。そんな相手であれば自分にとって大事な話が出来ると思ったからだ。だがリリシアがそんな話を始めた時だ。

突然目の前に黒い煙のようなものが発生してそこから誰かが出てくる。だがその姿がはっきりと見えるようになると、それは仮面を被った男性でしかない。そう思い込んだ瞬間に。男は俺の方に向かって攻撃してきたのだ。

そしてそんな男の行動に気が付いたリリシアが、即座にリリィに変わって男の方に攻撃をする。だがそんな二人の攻防を見て。この場にいる俺以外の中で誰よりも動揺したのは加奈であった。なぜなら加奈は今の二人の戦いを見て、この場で何が起こったか正確に理解できていなかったのである。

だから今起きている出来事を理解した途端。加奈の頭の中は完全に混乱をしてしまうのだった。加奈は慌ててその部屋から出て行こうとするのだが。その前にリリシアが立ちふさがる。そんなリリシアは悲しそうな顔で。リリィの姿を見てから、加奈を抱きしめる。すると、リリシアの体の中から、突然眩しい光が溢れだし。加奈は思わず目を覆うのであった。

「さようなら、加奈さん。貴方と過ごすのは楽しい時間でしたが。今は貴方に邪魔されるわけにはいきませんので」

そう言い放った後で。リリシアは光の剣を作り出してから。加奈に向けて斬りかかる。しかし加奈の意識はまだ混乱したままだ。なので加奈の頭の中にはどうしてこのような状況になっているのか? そして自分はこれからどうすればいいのか? という疑問が生まれていて、何も考えられなくなっていたのである。

そうやって動けずただ立ち尽くしているだけだった加奈の前に俺が現れてその攻撃を受け止めると。その光景を目の当たりにしたリリィが怒りをあらわにする。そうして俺を敵と認識したリリィの攻撃が始まり。加奈が目を覚ますまでの間の間だけ俺はリリィと戦うことになったのであった。

「お久しぶりです。こうして話すのは本当に久々だと思いますね。ですからまず初めにお礼を言わせて下さい。ありがとうございますと、お父様を助けてくれましたよね? それに私達の事を守ってくれていたんですね? だから私は感謝の気持ちを込めて。お姉様の真似をしてみましたよ。だからどうか怒らないでくださいね? 私が悪かったんですから。私達は貴方の事を騙していたんですから」

そう嬉しそうに告げてくる女性の言葉を聞きながら。僕は目の前の女性を見つめ続ける。

そして女性の話を聞いていて、彼女が魔王のフリをしていた理由がようやくわかった。確かに彼女には魔王になる素質があるとは思うけど。それでも彼女はまだ幼いから、本当の魔王のように、圧倒的な力を持つ事は出来なさそうだ。だけど彼女達を放置しておくと厄介な存在になってしまうのは間違いないから。どうにか説得をしないといけなそうだ。でもその為には僕が魔王のふりをしていると知られないように、どうにか話を続けなければいけないんだけど。でもその話を始めようとしたら目の前の少女は突然涙を流し始めたんだ。だからどうしたものかなと思い。しばらく様子を見る事にしたんだけど。でも、どうやら泣き止んでくれたようで。改めて話をすることに決めてから、今までに何があったのか詳しく教えて欲しいという僕のお願いに対して彼女は快く応じてくれるのであった。

私がリリィちゃんを庇った直後。急に現れた男性は私に対して攻撃を仕掛けてきたの。

それを受けたリリィちゃんも当然だけど、それを見た私は驚いてしまう。だって、男性がこちらに向けた視線は明らかに私を狙っていたように見えたから。もしかしたら、私とリリィちゃんの関係を知っているのではないかと考えて、リリィちゃんを守ろうと咄嵯に動いてしまったけれど。リリィちゃんも、男性の行動が信じられなかったのか、動きが遅れてしまっていたの。そしてその遅れのせいで私は反応できずに。そのまま男性から攻撃されてしまう。そう思っていた。だけどそうならなかったのは、リリィが間に入って攻撃を代わりに受けてしまったからだった。そしてそのおかげで何とか無事に済んだ。

それを受けてからすぐに私はリリィに大丈夫かどうか声をかけたのだけど。そこでリリィの顔色がかなり悪いことに気づいた。そう思った私は急いでリリィに近づきリリィを抱きかかえて。すぐにこの場所から離れる事にした。そしてある程度離れた後で私は、一度深呼吸してからリリィに対して話しかける。でも私の予想では。この先、魔王と名乗る男性と遭遇するのは、もう少し後だと思っていた。

だってあの男性は間違いなく魔王本人だと思う。だからそんな相手と遭遇したら大変な事になるかもしれない。だから出来る限り早くリリィを連れてここから離れた方がいいだろうと考えていたのだけれど。そんな考えが甘すぎた事が直ぐに発覚したのであった。なんと突然目の前に男性の気配を感じ取り。その直後に、リリシアさんに似た女性が私たちの前に現れたのだ。そして女性はいきなり私たちに向けて襲い掛かってきたので、それに対して、私は咄嵯に剣を構える。そしてリリィに下がっているように言うと、剣を構えて戦う姿勢を見せたの。

「あら? まさかこんなところで貴方に会うなんて思いませんでしたよ」

「こっちも驚いたな。もしかして貴女は、以前この村に住んでいたリリスの妹ですか?」

「ふっ。やっぱりお前は魔王だったのか。この村で暮らしてたのは、妹じゃなくて。妹の家族でしかなかったってことなのか。それと俺の事を知ってるのは流石は元勇者と言うべきところだ」

「まあそれはどうでもいいですよ。それよりもどうしてここに現れたのかを説明してください」

どうやらこの目の前にいる男性は。本当にリリシアさんの知り合いであるようだ。それも、おそらくリリアさんの正体も知っているようである。なら、下手なことをするべきではないかもしれないと考えるが。そう考えた直後に。男性は仮面を外すと同時にその顔を晒す。

その瞬間、私とリリィの体に戦慄が走る。

そして仮面を外した男性の顔が、リリシアにとても良く似ていたからだ。だからこそリリィはすぐにその男を警戒し始める。それは私も同様であり。二人はこの場で戦闘が始まるのだと覚悟を決めるのであった。そしてそれと同時に男はこう言葉を口にする。

「久しぶりですねリリシア。そしてはじめまして魔王リリスさん。俺の名前はリクと言います。よろしくお願いしますね? とりあえず俺は今すぐ貴方達に危害を加えるつもりはありませんので。どうかその警戒を解いていただけませんか?」

リリスという名前を出した事で魔王がどういう存在であるか理解している人間だと判断した俺は。その事実を伝える事にしたのだ。

そんな行動を起こした俺に対して目の前にいるリリスとリリシアは動揺を隠しきれない様子で。二人とも何かを言い出そうとしている。なので、そんな二人が口を開く前に、先にこちらから話し掛ける事にしたのである。すると二人のうち、まずは俺に向かって言葉を放とうとしたのがリリシアで、そのリリシアがリリシアと口に出した時に。リリシアはその人物がリリシアであるという事実を知り驚く。そうしてそんな状況の中、次に口を開けたのはリリシアであった。

「貴方は、お姉様とどんな関係なのですか? お姉様のお名前を知っているという事を考えると、私達と同じ存在なのでしょう? それに、その容姿、その魔力は一体? 」

リリシアが問いかけてきた内容についてだが。その事については少しばかり悩ましい問題であった。というのも俺は転生者であるためにリリスの姿になった際に手に入れた力はリリス本来のものとは異なる力となっているのだ。なので、見た目が同じだけでリリスとは別人であるというのがリリシアの誤解を解く為の正解であり。だが俺はそんな真実を二人に伝えるべきか悩んだのである。もし伝えなければリリシアが混乱してしまう可能性もあるが。だがしかし、そんな心配はいらなかったようで。俺は二人から敵意を向けられている事に気づくのだった。

「その質問に答える前に、まずは落ち着いて話をしませんか? このまま戦い続けると。周りを巻き込んでしまう可能性もありますからね。そんな事態を避けるためにもまずは話をしましょうよ? ね? リリシア? 」

そうやって俺は、目の前にいる少女に向かって優しい声で話しかけると、まずはこの場を収めようとしてみたのである。するとその意図に気づいたのか、目の前にいる少女がこちらに向かって笑顔を向けると。すぐに返事をした。

「そうですわね。今は争うよりも話し合いの方が重要ですし。それに私としても色々と聞きたいことがありますので」

こうして俺達はリリスの家に戻りながら、お互いの状況を確認する為に話し合いを行うのであった。その際の会話でわかった事はいくつかあった。例えば、彼女たちの父親が生きていた事。その父親が、魔王軍に殺されていた事がわかったのである。そして他にも魔王軍の情報が手に入れられるかもしれないと、俺達は情報の交換を始めることにした。しかし俺としては、その情報交換の為にも、俺の正体と目的を伝えておかなければならないだろうと判断して。俺は俺の正体を話したのだ。しかし、それを聞いた二人の表情を見て俺は思わず驚いてしまう。なぜなら目の前にいるリリシアは、驚きのあまり固まってしまい。リリシアの姉はまるで俺を恐ろしいもので見るような目つきになり怯えていたからである。俺はそんな反応を受けるような事を言ったつもりはなかったのだが。

「それで? リク殿はこれからどうするつもりなんだ? 俺たちはリリシアが望むのであればリリシアと行動を共にしようとは考えているんだがな。それに、お前の目的次第によってはそれに協力する用意もある」

リリシアの反応が予想外だったのでどうしようかなと考えていた俺に対して。目の前の男性はそんなことを言い始めたのであった。その言葉は嬉しいものであったけど。だけど目の前の男性は何を考えているのかよくわからない。もしかしたら、俺を利用してリリシアに魔王としての振る舞い方を教えるための道具にしようとしている可能性もありえる。でもその可能性が否定出来ない以上。簡単には信じられなかった。だけどそれでもこの人の協力を得られるという事は有難いことに変わりはないと思ったので。とりあえずは話だけはしておこうと考えた。その結果。目の前の男性は俺に協力をしてくれるという話になって。その提案を受け入れることにする。それからしばらくした後に。俺は気になる事が出来たので男性に聞いてみる事にした。

「あのさ。貴方って本当に魔王だったりしないよね?」

この人は魔王本人じゃないかもしれない。そんな考えに辿り着いたのは、目の前に存在しているリリスという女性から感じた気配が、リリスから発せられる気配と一致していないと感じたからだった。そう考えるに至った理由は幾つかあるんだけど。

一番最初に思いついた理由が、先ほど見せた男性の力が普通の人間のレベルではなかったということだった。だからその点について、確認するために、目の前のリリスに質問を投げかけたんだけど。それを聞いて彼女は笑いだしてしまった。そんな彼女の態度に違和感を覚えた俺は彼女に質問を続けたのだけど。

彼女は、リリスという女性の外見をしているにも関わらず中身が全然別人なんじゃないかと思ってしまったのである。だって普通、初対面で、俺に対してこんなに失礼な態度を取るとは思えないし。この女性がリリシアだとしたら。少なくとも初対面の相手に、魔王かどうかを聞くとかそんな無謀なことをするはずがないのだから、だからもしかすると。目の前の女性がリリシアではなく別の人物であるのではないかという考えに至ることができたのだ。そしてそれを確かめてみる事にしたのだ。

「ああごめんなさいね。まさかそんな風に思われてるなんて思わなかったから笑っちゃったんだよ。うん、私の中のリリスは確かに私自身であると私自身も理解しているんだけど。ちょっとだけ性格が違うというかなんというかね」そこで目の前の女性は一旦間を開ける。そして言葉を発する。

「改めて自己紹介をさせていただきます。私の名前はリリス。貴方と同じ元勇者の生き残りであり、現在は魔王と呼ばれる存在である者ですよ?」

「やはりリリスか」その答えはリリスの言葉を聞いた瞬間、リリシアには納得できたらしいが。俺は疑問がさらに深まる事になった。

リリスという名前を俺は知らなかった。だから、目の前に存在している女性が、リリシアでもなく。魔王リリスなのかを判別することができなかったのである。そんなリリスに対して俺はどういう存在なのかどうかを尋ねる。すると彼女は魔王と名乗ってきたのだ。俺はそんな彼女から放たれている魔力や、存在感などから目の前に存在する女性が間違いなく魔王だと確信した。

魔王であるということはわかっている。しかし、その実力はどれくらいのものなのか。それは俺にとって気になっていた部分であった。だから、目の前にいる女性、リリスから、彼女が本当に魔王なのかどうかを確認した。しかし、彼女はあっさりとその正体を認めるだけでなく、その力まで示してくれたのだ。そのせいで目の前にいる相手がリリスだと確信することになってしまったのだが。そんなわけで。目の前にいる人物が、本物のリリスであるという事で確定した。だがそれだけではまだ、本当にこの人物がリリシアなのか? という疑念を完全には消すことが出来ない状況にあった為。もう少しだけ問い質す事にしたのである。そうする事によって、まだリリシアの中にリリスが宿っていて、それが入れ替わったという可能性もあるのではないかと思ったからだ。

俺が、その事を確かめるために。魔王について尋ねようとしたその時。突然背後から強烈な魔力を感じたのだ。そしてその魔力の発生源を確認するために振り返るとそこには俺がよく知っている存在がそこにいたのである。その存在とは俺が今まで戦ってきた相手の中でも、最強の敵であると認識せざるを得ない存在である聖剣を持った勇者。つまり、魔王の天敵の一人であリ。俺が倒さなければならない相手の一人ともなる人物がいたのだ。

俺の後ろにいる人物は俺の仲間達よりも遥かに強い力を持つ人物であった。そんな彼、リリィは今にもリリシアに向けて攻撃を放とうとしている最中であるように思える。なので俺は、そんな彼の行動を止めるべく急いで動き出そうとする。しかしそんな行動をとったのが不味かった。俺は一瞬にしてリリシアの前に立ちはだかる事になる。その結果。彼はこちらを振り向くと、俺の顔を見るなり驚愕した顔を見せる。それもそのはずだろう。俺はリリアの体を使っているのである。そのため今の俺はリリアそのものの姿となっている。そんなリリアの姿をした人物がリリシアと仲良く話し込んでいる姿を目撃してしまったら驚くしかないと思う。だがしかし、そんな事を考えてる余裕はなさそうだ。何故なら俺に攻撃を加えようとしていたはずのリリィが。いつの間にか目の前に現れていて。俺に斬りかかる寸前の状態になっている事に気づいたからである。しかしそんな状態であっても冷静さを保てていたのは奇跡に近い事だと思う。もし俺が少しでも動揺をしていたならば確実にリリシアは殺されていたであろう。そうやって俺はリリシアを守るために行動を起こしたのである。

しかしそんな状況下にあって俺はリリスの事を考えてしまっていた。その理由として考えられるのが。リリスとリリィの二人はリリシアが俺の体を使って蘇らせるまでは面識が無かった事である。それを考えると。もしかしたらリリスは自分を殺しにくる存在が来ることを予想できていたんじゃないのかと思い至ることができたのだ。そう考えれば全てに辻妻があうし、何よりもリリスが俺に対して敵意を持っていたのも納得できる話なのであった。そんなことを考えていたのが原因なのだろうか。俺は自分の首に向かって迫ってきていた刀を防ぐ事に遅れてしまうのであった。そして次の瞬間にはリリィに吹き飛ばされてしまい意識を失ってしまう。そんな状態の俺が最後に見たものはこちらに手を伸ばしてきているリリスの必死な表情と。こちらに近寄ってくるリリィの姿が目に入ったのであった。そのあとの記憶が俺にはないので、その後どうなったのかは知らないが。俺の命が救われたことだけは確かなのだろうと考えるのであった。

俺達が話を終えてリリスの家から帰ろうとした際、目の前の男性は何かを思い付いたかのようにこんなことを言ってきた。その内容は、リリシアを俺たちと一緒に行かせるという話だった。ただ、そんな話を簡単に受け入れたわけではなかった。俺としても、魔王軍がどんな組織かを知っていないのに、いきなり目の前にいる少女を連れて行くというのは不安があったからである。

「大丈夫だよリクさん!お姉ちゃんは優しい人だから!」

俺の言葉を聞いてかリリシアもリリスのことを心配していたようだ。だから俺としてはそんな彼女を安心させる為に言ったつもりだったんだけど。目の前にいる男性は、なぜか驚いたような顔をした後、少し困ったような表情をして頭を掻き始める。そんな彼の態度を見て不思議そうな顔をしているリリシアに対してリリスは自分の事をどう説明したらいいものか悩んでいたのだった。そして結局彼がリリスとリリシアが同一人物である事をリリシアに明かす事は無く。とりあえずこの場での話し合いを終えた後、明日、もう一度話し合いの場を設けるという事になった。その際に、お互いに質問があるかもしれないので、話し合いを長引かせてもいいように俺の家で話し合いをする事になったのだ。俺としても別にリリィを連れて行きたくないというわけではない。リリィは信頼できる仲間だし信用も出来る人であることは確かである。それに一緒に旅をしてきたリリスとも仲が良いという事が確認できている。それにこれから行く場所の地理に詳しいリリイの存在はとても頼りになるし。心強いと思っている。

ただ俺の中では、どうしてもリリシスに対する疑いの心が拭いきれていなかったからこんな態度をとってしまったのだ。それに加えて、この世界で魔王はどのような立場に置かれているかもわからない以上、魔王の関係者であるこの二人と関わり合うことが危険なんじゃないかという思いもある。だけどそれでも。この世界に来て出会った中で、一番長い時間を共に過ごしたリリシアと離れることの方が辛いというのも事実であり、俺は複雑な心境で二人の反応を待つことにしたのだった。

それからリリスとリリィの二人が帰っていくのを見送って家に戻る途中で、リリシアがずっと俯いていることに気がつく。その事に気がついてからは、できるだけリリシアと二人で話ができるように頑張ったが、それでもリリシアの口数はどんどん少なくなっていき最終的にはほとんど喋る事は無かったのである。そしてリリス達が見えなくなったあたりで、俺はとうとう耐えきれなくなって。彼女に問い詰めることにした。

「ねえリリシア?さっきから黙ってばっかりだけど一体どうしたの?」

俺は意を決してリリシアに問いかけてみることにする。本当はそんな風に聞きたかった訳じゃなかったけど、このまま沈黙が続いたままだと気まずいと思ったのだ。

「ごめんね。リリィを誘おうとしてただけなのになんか色々とごちゃ混ぜにし過ぎちゃったみたいで」彼女は悲しそうな声でそう言う。

やっぱり彼女は俺に対して申し訳ないという気持ちがいっぱいになっていたんだろう。そう思うだけで彼女の優しさを感じ取ることができ。そして俺のせいで彼女の気分が落ち込んでしまった事を実感して俺は凄く焦ってしまう。でもそんな事を考えている場合じゃないと自分を奮起させ。俺の思った事を彼女に伝える。そして俺はこうやって彼女から言葉を貰うたびに俺は、自分がまだまだ子供なんだと自覚するのだ。もっと強くならないとダメだって改めて感じる。それは今までの旅の中でも同じことを感じたりしたが。やはり今回は違うと自分では感じている。

「俺の言い方が悪かったせいだ。リリシアは何も悪くないから謝らないで欲しい」俺は慌てて彼女に頭を上げるように促す。すると彼女は泣き出してしまいそうな雰囲気を出しながらも顔を上げて微笑んでくれる。そして彼女はこういったのだ。

「私、怖かった。またあの頃のようになるのかなって。それでリリィに助けを求めたんだよ?リリスと一緒だとリクを守れないと思ったからリリィに声をかけたのに、そしたらリリスからあんなことを言われたせいで私は何も言えなくなっちゃったよ」俺はこの言葉を聞いた瞬間。本当にリリシアは強い子だなと感じた。普通ならあそこでリリスの言ってることを肯定してしまってもいいはずだ。俺が本当にリリスを殺そうとする可能性だってある。そうすれば結果的にリリスとリリィを助けることができる。

でもそれを彼女は拒絶したのである。彼女は俺のことを信じて。自分の妹を助けて欲しいと思ってくれていたのに。その期待に応える事が出来なくなってしまったのだ。そんな彼女を見ると胸が締め付けられる思いになった。そして彼女がリリスに何を言われて。どうして彼女がそこまで俺のことで悩むことになったのか? それが疑問として浮かんできたのである。

「そんな顔しないで。リクが助けてくれると信じてるもん。私が今、こうして生きられているのも、貴方のおかげだよ? 私の願いを聞いてくれたおかげで私は生きる希望を見つけることができたの。

リクのそばに居られれば良いと思えた。でもリリィにお願いされちゃって。だからリクの側に居続ける事はもう出来ないと思ったの」俺はそんな言葉を聞きながらリリアの事を思い出す。彼女と俺は出会ってそれほど経っていないが。確かに彼女のお陰で俺は前を向いて歩むことが出来た。そして今の俺がいるのも間違いなく彼女のおかげだと思う。だから俺は彼女にこう伝えることにしたのだ。「リリィに何と言われたのかは知らない。けれど君が気にすることではないと思うよ。もし君のその行為で何か迷惑をかける人がいても俺はそんな人達を守ってみせる。絶対にだ」「ありがとう。そういってもらえると救われるわ。やっぱりあなたを選んで正解だったと思う。私とっても嬉しい!」

リリシアは満面の笑みを見せて俺の腕に抱きついてくる。俺がそれを見た時だった。リリシアは俺の顔を見つめた後、頬を赤らめてこんな事を呟く。

『大好き。こんなにも人を好きになれたのは生まれて初めてだったの。最初はリクが私の体に入って来たのを知ったときはびっくりしたし。なんでこの人は女になってるのかって思ったけど。そのおかげで私はリクと出会う事ができたのよね』

俺の耳はそんな彼女の声をしっかりと捉えていたのである。俺は思わずリリシアの顔を見て驚く。まさか、リリシアは今の独り言みたいなのを俺に聞かせるためにやったんじゃ無いだろうなと思ったからだ。俺はそんな彼女の表情がとても可愛いらしく見えたのである。そしてそんな事を考えていた俺に対して。突然リリシアは唇を重ねてくる。俺のファーストキスは一瞬の出来事であった。俺と彼女の顔が離れる時に唾液が伸びていく。それはとても卑猥なものに見えるのであった。俺は突然の出来事に戸惑ってしまい何を言う事もできない状況になってしまった。しかしそんな中でも。俺にはどうしてもリリシアに聞いておきたい事があった。それは魔王が俺を蘇らせた方法と、俺に施した強化方法である。それを聞く為のきっかけを作る為に俺はあえてリリィのことを話題に出してみることにしたのだ。俺としてはこの話は魔王軍の幹部が知っている情報として確認したい部分が多かったからである。

しかし魔王の返事は想像とは全く異なるものだった。魔王は俺の質問に対して素直に応えてくれたのである。そして、その回答はとても意外なもので、魔王が言ったことは。俺が思っていたような事とは違い。この世界に蘇生魔法なんてものは存在していなくて、しかも勇者の力を人工的に付与できるような手段は無いらしい。そして俺は、魔王軍の幹部の誰かによって蘇生させられたのではないか?という事を考えており。そんなことをリリシアと話していたところだったのだが。そんな答えが返ってくることになると、逆にこちらが困ってしまうというものだ。つまり俺は、自分の勘違いだったという事になるからである。

俺は、魔王が言ったことの意味が理解できなかったのである。なぜならこの世界では、死人を復活させることはできないという事になっているからだった。だからこそ、俺は混乱してしまう。俺の中に宿っている勇者の力。それに、俺の中に取り込まれたリリスの存在。俺はそんな疑問を解消するためにもう一度質問してみたのだ。すると彼女はそのことについて丁寧に説明をしてくれたのである。そして、リリスもそんなことをしていたという事実を聞かされてしまい。さらに頭がこんがらがりそうになる。

俺はそんなことを考えつつ家に戻っていく。

俺の家に戻るとリリシアも一緒に家の中に入る。俺は、これから起こるであろう面倒ごとに巻き込まれるのは正直御免なのだが。彼女を放っておくわけにはいかないと思い。仕方なくリリシアと一緒に過ごすことを決めたのである。そして俺が家に戻ろうと玄関に手をかけようとしたところで急に家の扉が開かれてリリスが現れる。

リリスが現れた時の俺は凄く驚いていた。何故ならば。リリスは今までどこに隠れていたんだ?と疑問を抱く程に綺麗で可愛くて美しい容姿をしていたのだ。

彼女はまるでモデルのようなスラッとした体型で、長い黒髪で目元を隠そうとしているものの。それでもその端正で、凛々しくもある整った顔立ちが垣間見えるため隠しきれていない。そして、彼女は、俺と目が合った事で、少し照れたような反応を見せてきたのだ。

「おかえりリリス。随分遅かったけど一体どうしたんだ?」

俺はそう言いながら彼女から目を離すことが出来ないでいると、彼女は、俺の問いかけにこう応えたのである。

「ただいま。お兄ちゃん。今日は疲れてて早く寝たかったから早めに帰ってきちゃった」

彼女は俺の質問に、そう答えた。俺は彼女の言っている意味が理解出来ず。困惑したのだ。そして、その発言にどう対処すればいいのか全く分からなかったのだ。

「リリス? ちょっと話がかみ合ってない気がするけど大丈夫か?」

俺は、そんな風に疑問をぶつけてみることにする。しかし彼女はそんな事を意に介さずに俺の手を引いて家の奥へと引っ張っていく。

「リリスは、お兄ちゃんともっと二人きりの時間を過ごしたいって思っちゃったんだよ。リリスの言うことが間違ってるって言うのかなぁ? お姉ちゃんが帰ってきてるんでしょ?」

彼女はそう口にしながら。自分の部屋のベッドの上に座るように俺を促してくる。

俺は、彼女が一体何を考えているのか分からないまま。彼女の言われるがままに部屋に入ってしまう。俺はこの時点で、彼女の様子が変だと感じ始めていたのだ。そんな俺は、警戒心を高めて彼女に話しかけることにする。

「リリス。さっきの言葉を訂正して欲しいんだけど、お前は何か俺に嘘でもついているんじゃないか? 俺に気を使わなくても良いんだぞ? 俺は別に気にしていない」

「やっぱり気づかれちゃってたかー。まあ私からしても、こんな形でしかリリィとお話し出来なかったしね。ごめんね。私本当はこういう形じゃなくてリリィと話しがしたかったの。だからお兄さんにお願いしちゃってるの。本当にごめんなさい」彼女はそう言って頭を下げてくる。そんなリリシアを見て俺は驚いたのである。彼女の行動から、本当に悪いと思っているというのがひしひしと伝わって来たからだった。俺の頭の中ではまだこの状況を完全に把握出来ていなかったにも関わらず、何故か俺は納得してしまい。俺は、そんな彼女の様子を見ていて。このまま彼女を問い詰める事は良くないと判断するに至る。だがそこで、リリスが何かしら企んでいるのではないかという疑いだけは晴らす必要があったのだ。そして、俺は彼女に尋ねる。リリスは何を俺に伝えようと考えているのか?を。

そして彼女が俺に伝えた言葉。それをそのまま伝えようと決めたのである。

リリィはその事を聞いた瞬間。驚きをあらわにする。しかし、彼女は直ぐに気持ちを整えたようで冷静な対応を見せるようになる。そして俺に質問してきたのである。俺がこの家から出て行って何をしようとしていたのか?と。俺は、それを正直に伝えることにした。すると彼女達はお互いの事を話始めるのである。

リリスは自分の母親が勇者だったと言う事に驚く。そしてその母親の力が自分に引き継がれた事を知って喜ぶことになる。リリィが、リリスの事を羨ましいと言っていたのが印象的であった。そんなこんなで俺達三人はリリィの部屋で過ごす事になったのである。俺はリリィがどうしてそこまでリリィに執着しているのかが気になり。彼女の事について聞くことにすると。俺はそんな彼女の過去を耳にすることになる。そしてその事実を告げられて俺は何も言えないでいた。そしてリリスも何か思うことがあったらしく複雑な表情で俯いていた。

俺はリリィの話を聞いていて、彼女に同情してしまったのだ。リリィはリリィの母親に裏切られて捨てられてしまったらしいのだ。俺はその話を聞いた時怒りが込み上げてきてリリィに掴みかかろうとした。だが、そんな俺を止めた者がいた。リリィだ。俺はその時、初めてリリィに対して恐怖感を覚えたのだ。そしてリリィは、俺の事を止めるだけでなく。俺に、この話を他の人間には言わないように懇願したのであった。それは、きっとリリィはリリスに対してこんな風に思いながら育ててしまっていたのではないかと感じたのである。

俺はそれからすぐに。リリアの事を思い出したのだ。そして、その日はそれ以上何もする事が出来ずに終わったのである。

俺がこの家にやってきてから数日が経った。俺は未だに自分の体に宿ってしまった勇者の力で自分がどうなるのか?が不安であった。しかし俺が勇者の力を開放すると、リリスが慌てて止めに入ってくるため、あまり強い力を使える機会は無かったのだ。

そんなある日。俺は魔王の配下の一人である。魔女リリシアと戦闘を行うことになった。その理由は、彼女の実力を測ってこいと命令を受けたからだと言うことだった。そして俺は今その魔女と戦っている真っ最中だった。俺はその光景を見ながら戦慄を覚える。それは俺よりも圧倒的すぎる強さを見せつけられたからであった。

『マスター様! 私がサポートしますので落ち着いて攻撃して下さい』そう言ったのはリリスである。リリスのサポートによって俺は何とか戦うことが出来ている状況なのだ。だが俺はそのことに戸惑いを感じていたのも確かだったのだ。なぜなら、あの魔王の配下の女。見た目が若い割に圧倒的なまでの魔力を持っているのが分かるのだ。俺の予想では、リリスは、彼女と同じくらいかそれ以上の実力者だと俺は考えていた。そして俺は魔王に呼び出されてからずっと思っていた疑問を口に出すことにする。何故リリスの母親はリリシアにあんなことを言っていたのだろうか? それを知りたいと思っていたのだ。リリスにそう伝えると、リリスはこう返答したのだ。

「多分、魔王からの命令だと思うよ。お姉ちゃんからすれば私の存在は邪魔でしかないから。私のお母さんが死んだ後お姉ちゃんがお母さんの力を受け継いだ私を始末しようとしたんだけど。結局私はその前にお兄ちゃんに助けられて生き延びちゃったわけだけど。それにあの時のことがあってお姉ちゃんはもう誰も信用できないって言ってたからね。多分お兄ちゃんを利用して勇者を召喚しようとしてるんじゃない?」

彼女は、俺にそのことを説明し終わると。そう付け足すように説明してくれる。俺はリリスの説明を聞き終えた時に少しだけ考え込んでしまう。なぜなら、リリシアの態度から、リリスは本当にリリシアの事が嫌いなんだろうと感じてしまう内容だったのだ。

そんな会話をしていた俺は目の前の相手と戦うのを忘れていたのだが。それが悪かったのか俺に攻撃を仕掛けてきていたリリスの動きが急に止まったのである。そして俺は、リリスが何をしたのかは分からないが。リリスに何が起こったのかは瞬時に理解できたのである。

リリスの攻撃を止めさせた存在がいた。リリィであった。どうやら、リリィも彼女達の戦いに気付いたらしく駆けつけてくれたようである。そして俺はその事を嬉しいと思いつつも警戒心を高めるのであった。

彼女は突如現れたと思うと一瞬にして消え失せる。その後直ぐに、リリスの前に移動して剣を構えるのだ。俺もそれを見て警戒を強めていく。俺は、リリィが現れて直ぐ。彼女がリリィと同じ聖剣を所持していることに気づいた。それもそうであろう。彼女の手に持つ聖剣は間違いなく神から与えられた物だからだと思われる。そんな彼女がリリスに向かって斬りかかってくるのだと思ってしまうと身震いを起こしてしまうほどだと感じてしまう。しかし、そんな俺の考えをリリスは否定してくれた。そう、リリイから攻撃をする意志を感じられないと言い始めたのだ。俺はそれを聞き少し安堵したが、油断しないでほしいと言われ。俺は少し緊張してしまう。そんなやり取りをした後。彼女達は戦い始めようとしたのだが、リリスの方を見ると彼女は突然笑い出した。俺はその姿を見て少し嫌な予感がしたため。咄嵯の判断でリリスから距離を取る事を選択するのであった。その行動のお陰なのか分からないが結果的に正解の行動であったのは間違いなかったようだ。俺は、先程まで自分がいた位置に巨大な火柱が上がるのを確認したからである。俺は急いで彼女達の方を見る。しかしどうなっているのかは、良く見えず。どう対処すべきか分からずに困惑し始めていたのである。そんな時、リリィがこちらを見てこう言うのだ。

「私に任せて!」

そう言って彼女はリリスの方に突っ込むのである。俺はそんな彼女を見ていたが、やはり様子が変な気がしていた。彼女は、そんなに簡単に隙を突かれるような人間ではないはずだと俺の中で勝手に結論を出していたのだ。そんなことを考えながら俺はリリスとリリィの動向に気を配り続ける。すると俺はまた驚かされることになるのだ。俺がリリスの方を気にかけていて完全にリリィに背中を見せてしまっていたにもかかわらず。リリィが彼女に背後からの一撃を加えようと襲い掛かると。その攻撃を読んでいたかのようにリリスは後ろを振り向きながら彼女の腕をつかんでそのまま地面に叩きつけたのである。俺はその瞬間の出来事に驚き声が出なくなる。

俺はこの時、俺自身が勇者の力を得て強くなったと言うのもあるのかも知れないと思った。俺はそんな事を考えてリリィ達から目を離さないようにした。そして彼女はそんな俺の思考を遮るように。彼女に対してこう告げる。俺にもやらせろ。そう告げる。そしてリリスは、俺の目の前に姿を現したのである。俺は、この状況下で彼女と戦えるのはあり難いとは思った。だが同時にリリスが本当にリリィの体を乗っ取っているという疑いが強くなってきてしまった。そのため俺は、慎重に動くことに決めたのである。そんな俺の心情を知らないリリィは嬉しそうな表情を浮かべているのを目にする。俺はリリィと向かい合い構えると彼女はニヤリと笑う。俺はそんな彼女に笑みを見せると直ぐに動き出してくるのであった。そしてリリィはリリスに負けじと剣技を駆使して攻めてくる。そして俺自身も彼女の剣に合わせて攻撃を繰り出したのだ。すると彼女は、俺とリリスの連撃を防ぎながら攻撃を続ける。そして、ついに均衡が崩れた。俺とリリスが力を合わせ彼女の攻撃を受け止めた瞬間。俺達が攻撃に使っている力と拮抗するように彼女の力が強まっていったのだ。そんな様子を目の当たりにしてリリィは目を見開き驚きの表情になる。俺も同じ気持ちでその様子を眺めていると。俺と彼女の力は互角となり、そこで俺が一気に押し切る形で決着がつくことになる。リリィはその事にショックを受けているように見えた。そしてそれと同時に何かの覚悟を決めたように真剣な眼差しになると俺に攻撃を仕掛けてくる。それは俺も予測できなかった出来事であった為対応できず。俺は彼女の攻撃を受けた。

それから俺が意識を失う直前だった。リリィが俺の元に近づいてきた。俺はまだ気を失わないようにして、彼女に向けて質問をする。何故こんな真似をしたのかをだ。そんな俺の質問に対して彼女は俺を馬鹿にしたような顔をしながら答えてくれる。リリィに自分の体を返すつもりなどないのだと。そして俺はその言葉を聞いた直後に再び意識を失ったのであった。

それから俺はリリィとの戦いの後気絶した。そして俺の意識が戻った時には。すでに夜になっていた。俺は辺りが暗くなり始めていることに気づき慌てて外に出ることにする。リリィはリリィの母親のところに行ってしまったのだと思っていたがそうではなかったようで。家の近くの森に立っていたのだ。俺はリリシアが俺の目の前に現れた事で警戒心を強める。

「私の名前はリリシアといいます」

「お前の目的はなんだ? どうしてリリスに取り憑いている?」

俺は警戒しながらリリシアに対して問いかけを行う。すると、リリシアは俺の言葉を聞いてクスッと微笑むと、俺が聞き慣れない名前を口にしたのだ。その事に対して俺は何も言えなかった。なぜなら、その名前にはどこか見覚えがあったからだ。しかしどこで知ったか思い出せずにいた俺。するとそんな俺の様子を見たからかリリシアは話を始める。

リリスをどうしたかと問われた俺は少し考える振りをして、それから答えることにする。まず俺はリリスとリリィの2人と戦って負けたのだと。そして俺も命を落とすかもしれないと思いながら戦っていたが。何故かリリシアが現れたことで救われた。そして俺の目の前にリリシアが現れるのとほぼ同時に俺は意識を失ってしまうのだったということを。それを簡潔に伝えたのだ。そんな感じに話を終わらせることにした。

するとリリシアは驚いたような顔をして固まってしまうのだ。そして俺の方を見ると震えながら話しかけてきたのである。俺はそんなリリシアに何を言えばいいのかわらずにいたのだ。ただ一つだけわかるのはリリシアにとって俺は脅威にならない存在であるという事だけだと思われる。そう思いながらも俺はこれからの行動を考えると、どうしたらいいものかと悩み始める。このまま放置しておくとリリスとリリスの母親に危険が迫る可能性がある。だからといってここで彼女を倒そうと思っても勝ち目がないという事だけが分かるのだ。

俺はその事に気づくと、とりあえずリリスを家に帰してからリリス達に相談しようと考える事にしてその場から去る事を決める。俺がその場から去ろうとした時、後ろから俺の名前を呼ぶリリシアの声を耳にして、立ち止まると、振り返ってこう告げる。俺は魔王からの指示で動いているだけで。別にお前達に危害を加えるつもりは無いと。俺はリリス達を助けるように命令されている。そう伝えると俺は彼女達の元に戻るのであった。しかし、この時の俺は気づいていなかった。俺の背後にリリシアがいることに。

リリスの母親が眠る小屋の扉の前にたどり着いた俺は、すぐにリリスに声をかけようとするが彼女は、その場にはいなかったのだ。その事を不思議に思った俺は少し考えた後に俺はあることを思い浮かぶ。俺はリリスを探しに行くことを決めたのだ。

しばらく俺はリリスを探すが見つからないため俺は仕方なく一度帰ることにしたのである。そして俺が再び戻るとそこにはリリスの姿が確認できたのだ。俺はそんな彼女に近寄ると。俺は彼女が無事であったことを確認してから俺は、彼女がここに戻ってくるまでに何が起こったのかを聞くためにリリスの元に向かうと。

「あーそういえばさ。貴方は私のお兄さんだったね。すっかり忘れていたよ」

そんな事を急に言い始めたのである。俺が何の事かと思い尋ねてみると、リリスはリリシアに俺のことを全て聞いたらしいのだ。そしてそんな話をした後に、俺とリリスが戦っている時、俺は無意識のうちに彼女の動きを読み取って、先ほどまでの動きが本調子ではない事が分かったそうだ。その事を告げられた俺はリリスを少しばかり尊敬するのであった。そんな彼女と話している間に俺達の目の前に一人の男が姿を現す。俺はその男に見覚えがあった。その男の名はダリル。リリィに剣を伝授した師匠である人物でリリィに剣を教える為にここに来たのだそうだ。そして俺はそんな事を聞かされたあと、俺達はダリルと一緒に小屋の中に入り。話し合いの場を設けようとしたのである。そうする事によって少しでも早く俺がこの村を離れる方法を考えていたからだ。そんな事を考えながら、俺は目の前の3人を眺めながら、今後どうするべきか考えていた。その時ふと思いついたことがあったのだ。リリィが、勇者が持っている聖具を持っていると。その事から俺はあることを思いつくと、ダリルと、そしてリリスにあるお願いをしたのだ。

俺達が話し始めてしばらく経った後。俺の考えを話し終えると。2人とも難しい顔をするのであった。そして俺の提案に対して彼らは俺に協力的ではなくなってしまったのである。しかしそれでも俺は、どうにか協力してもらえるように、色々と言葉を並べてみるが結局上手くいかない。しかし俺が考えを変える気がないことを知ると。彼らもまた何かしらの対策を取ろうという事になったのだ。そんな風に話がまとまったところで、俺は気になったことを彼らに尋ねることにする。するとリリィに剣術を教えているのは彼であり。彼はリリィの父親だという事が判明したのである。そんな彼が、俺達の村に立ち寄った理由が俺達に会いに来たわけではなく。娘の様子を見に来てくれたのだと言われたのである。そんな話を聞いた俺は納得してしまったのだ。なぜなら娘が心配で見にきたのなら、普通は会いに来るはずなのにそれが出来ない事情があると思えたからである。

その後、リリィが眠っている場所に移動し。リリィが目を覚ますまでの間。俺達は会話をしながら時間を過ごしていく。そんな最中。リリスは、俺の方に目を向けて、少し気になることを口にした。俺が、彼女から感じる気配について、何か知っているような口ぶりを見せたのに気が付いたらしく。そのことを俺に聞いてくる。そしてリリスはこうも言ってきた。彼女は今にも消えそうなほどに存在が希薄なのだと。そんな彼女を見て、俺は彼女の力になれないかと彼女に提案をしようとする。だが、その前に俺の中で疑問が生まれたのである。

俺は、俺がリリスと会う前に倒したはずのあの魔人が、何故この場所にいるのかが分からなかったのだ。そして、俺のその質問に対し。俺に倒されたはずの魔人だとリリスは教えてくれた。そして彼女は、魔人の体を手に入れることが出来たおかげで、俺が倒せなかった相手とも戦えると嬉しそうに話す。そして俺に剣の指導をしている時に。俺の力を感じ取り俺とリリスが戦うのをやめさせようとし、リリィに憑依すると、リリスの体に居続けたのだと。

俺は、そんな事を聞かされると。どうしたらリリスに体を返してくれるか質問することにしたのだ。リリスは俺の問いかけに、私を殺すしか道はないと答えてくる。しかし、リリスのそんな言葉を聞いたリリィが反論をする。自分が体を乗っ取ったのはリリスではなく自分なのにも関わらず、自分は殺されても仕方ないのだと口にしたのだ。それを聞いたリリスは俺の問いかけに対して答えを出してくれる。そしてリリスは、彼女に対して謝罪の言葉を口にした後、リリィに向けて、私を殺して欲しいと告げたのである。

そんなやりとりが行われた結果、俺達の間に沈黙の時間が流れてしまった。そんな中俺は、俺なりに、この状況を解決する方法を思いついていて、それを試すことに決めたのだ。そして俺が、リリスに向かって、俺と本気で殺し合いをしてくれと言うが。リリスがその事に戸惑う。そして俺がどうしてそう言うのかと聞かれるので俺は自分の推測をリリスに伝える。リリスが自分の命と引き換えにしてでも俺を止めようとしているのは間違いない。ならば俺もその代償を払っても構わないと、俺も死ねば良いと伝えたのだった。

そんな事を話している間。俺の後ろの茂みに隠れていた何者かは、俺達に襲いかかろうと機会を窺っていたのだが。俺は、俺達に襲ってくるタイミングを測ってから、俺の目の前にいたリリスの首筋に手刀を入れる事で気絶させた。その結果、俺達に襲いかかって来た人物を捕らえたのだ。

俺はそれから意識を取り戻したリリスに対して、彼女が気絶していた時の事を説明し。これからの事を話し始めるのであった。

リリスを気絶させてからしばらくの間、ダリルと共に小屋の外に出て、リリス達の様子を見守っている事にした。しばらくして俺とリリスとリリスの母親。それにダリルの4人でリリスの家へと戻る事に決める。そこでリリスの母親は俺たちにお礼を告げる。俺はそれに対して気にしないでくれと言い返したのだ。俺はそんな事を言ったが、俺はリリスの母親を助けたくてやったわけではない。あくまで俺は自分の意思で彼女を助けようとして行動したのだと思っている。だから感謝されることなど無いと思うのだった。そして俺は、この後、この村を出るつもりだと言っておいたのだ。するとそんな話を聞いていたリリスの父親は驚いていた。

そして俺になぜこの村を出て行くのかと訪ねてきたのである。俺は、その事を話そうとすると、急にダリルが現れ、俺は彼に話を止めるように指示する。リリスの父親の態度がおかしいことに気づいた俺はダリルに対して。俺の事を敵視していないか尋ねたのだ。

するとダリルはその事を認めると。そしてその理由を話し始めた。彼は俺にリリスを任せたいらしい。しかしそんな話を聞いても俺がリリスと関わり合う気がなかったのだ。そんな時リリスが目覚めてしまうと。ダリルが急に苦しみ出したのである。その様子から、もう時間が無い事を悟った俺は。リリスの父親から剣を受け取り。リリスの心臓を一突きにして殺すことにした。リリスを殺した瞬間。リリスの父親の姿が見えなくなると、リリスの母親が悲鳴をあげたのであった。しかし、ダリルの体には変化はなく、ただダリルの様子がおかしかった。俺は急いでリリスの元に向かい回復魔法をかけると。ダリルの苦しみの原因は取り除かれたがダリルは未だに苦しんでいた。だから俺はもう一度だけ回復魔法の呪文を唱えたが。効果はなかったのだ。そこでリリスに確認するために俺は彼女の元へと向かう。そして俺はリリスが倒れていたことと彼女の体が光に包まれていたことを確認すると。俺はリリスに何か異変が起き始めていることに気づくことができたのである。俺はこのまま放って置くとマズイ事になると考え。彼女を家に帰すことを考える。

そして俺とダリルは急いで村長宅に向かうと。そこで俺は、村長から事情を聞くことになったのである。どうやら、リリスの父親が急に倒れた理由をダリルは知らなかったようだ。その事から俺は、先ほど俺が殺した男が関係していることを理解した。しかし彼は何も知らないという。リリィの両親に説明を求められてダリルはすぐに俺の方を向いて、先ほどの出来事を話すように促してきたので俺は、仕方なくリリスの父親を蘇生させる為に殺そうとしたと嘘をつくと。ダリルは納得したような顔を見せ。その後で、すぐに、リリスを連れて家に帰れと言われたのである。そして俺は、素直にリリスを連れて帰る事を決めたのである。

俺はリリスを抱え上げるとその場から逃げようとした。だが、そんな事をすれば、村人達が混乱するのは目に見えていたのだ。そんな時に現れたのはリリスの父親だった。そして彼は、リリスを連れ帰ろうとした俺を見て。俺達の正体に気づく。その後、俺はリリスの父親と話すことになって。俺は、この村を離れるために村を離れようとしたことをリリスの父に告げるとリリスの父は驚いた表情をしていたのだ。そんな反応を見せた理由を俺はリリスの父の口から聞く。実はリリスの母は魔王の娘だったのである。その話を聞かされた後。リリスの父は俺に、リリスを託したいと口にし、俺は、リリスの願いを断ろうと考えていたが、俺の気持ちとは逆に、俺の心の中に誰かの意思が入り込んできたのであった。

俺は突然入り込んできた何かの思考を辿ろうとするが、入り込んでくる力が強すぎるせいなのか、途中で俺の記憶は途切れる。俺は何があったのか理解できていなかったが、目の前ではダリルが何が起こったのかと俺に対して尋ねてくる。だが俺自身もどうしてこんな事になったのか分からない。そのためどう返事をしていいか悩んでいる時に、ふと俺の腕の中にあったはずのリリスの温もりが消え去ったのだ。そんな事が俺に起こったため俺は慌てて周りを見渡すが誰もいない。そんな光景を見たリリスの父親は驚きを隠せない様子であった。

そんな出来事に戸惑いながら、とりあえずはリリスの居場所を探し出さないといけないと思いリリスの家に向かったのだ。そうするとそこには、リリスの姿があり。そんなリリスの姿をみて安心したのと同時に。俺は疑問に思ったことがある。リリスから感じる魔力の量が今まで感じたことの無いほどの量になっていることに。しかもリリスの様子を見て俺は、俺にリリスの事を頼まれてから、リリスの体に一体何かが起きたのではないかと予想したのである。だが俺はその事に気がついていても、それを口にする事をしなかった。なぜならリリスの体の異常事態が起きているとしても、それがリリスの命を奪うものではないと分かったからだ。だから今は黙っている事にしたのであった。

そんな事を考えていた矢先にリリスの母が急に俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。その事に気づいたリリスの父親はリリスを守る為に俺に攻撃をしたのだが。その事で俺達は戦闘を開始する事になり。戦いが始まると、ダリルの意識は、リリスの体に入り込んだ。それにより、今戦っている相手はリリスの母親ではなくダリルとなったのだった。その結果、戦いの最中に、ダリルとリリスの関係が明らかになることになる。

ダリルは、リリスが村からいなくなってからの事を、リリスの視点で語ったのである。それによると、彼女は、リリスがいない間に村の人と交流を持っていたらしい。リリスが居なくなった後の彼女は村の為に必死で働いていたのだ。そしてそんな彼女の努力が認められ。この村を守護する役割を与えられることになり。彼女は嬉しそうにしているのである。しかし、そんな生活を送っているある日。彼女のもとに勇者がやってきたのだ。

「俺はリリス。君に会いたくてここまできた。俺と結婚して欲しい」

リリスはこのセリフを聞いて。彼の事を知っている。彼は昔、リリスと一緒に暮らしていた。そしてその時には、彼が、リリスの事が好きで好きで堪らないというような行動をよくしていたのだ。そんな思い出がよみがえったことで、少し動揺してしまったのである。そしてこの告白に対して、彼女が答えに困っていたとき。彼女が助けて欲しいと思っても。リリスの力は弱っていた。そしてそんなリリスを助けるかのようにリリスの中に何者かが入り込む。

そんな時ダリルはリリスの体に何者かが乗り移る現象を目の当たりにしたのだ。リリィの母親が魔王の娘で、そして今のリリスに体を乗っ取られていることに彼は気がついた。そしてリリスと会話をしたことによってダリルは、リリスに体を奪われたことを知る。そうすると彼はある考えに至ったのだ。もしかしたらリリスは自分の事をまだ愛しているのではないかと言う事を。そんなことを考えているうちにダリルはある決心をする。それは自分の身を犠牲にしてリリスを止めようとすることだ。そんな時、ダリルの前に一人の人物が現れる。それはなんとも言えない容姿をしており、ダリルにこう言ったのである。お前の願いはなんだ?私はなんでも叶えてやる。とな。そしてダリルはその言葉を聞き、自分が死んだら、自分を生き返らせて欲しいと告げたのであった。そしてダリルは命を捨てることで、自分以外の全ての人々を救う事を決断する。その決意を固めた後。ダリルは自身の命を引き換えに世界の崩壊を止める事をリリスの母親に伝え。それと同時にリリスの母親にも、自分の思いを伝えようとしたのだがその直前でリリスの母親の意識を奪い自分の意識を移すと。自分の体が滅びる事を恐れて逃げ出したのである。

それからというものダリルとリリスの体に入ったリリスは二人で村を荒らし回っていた。そしてダリルは最後の力を振り絞りダリルの魂の全てを込め魔剣を創り出すと、ダリルはそれを握り締めたまま。そしてそのまま死んでいったのだ。その後、村人たちはダリルの死体を見つけることができなかったのだ。おそらくはもうすでに、この世界には存在しないと思われたのである。だがその真相を知るものはもう既にこの世を去っていたのだ。そして俺はダリルから聞かされた話を振り返りつつ。目の前にいる二人の戦いの様子を眺める。二人はお互いの能力を最大限に発揮しながら戦いを繰り広げていたのだ。リリスが、剣を使うと見せかけ、拳を繰り出し。それに対してリリスの母親がリリスの剣を受け止め。そして反撃を行う。

そして二人の剣撃により大地は切り裂かれ地形が変わるほどだったのだ。しかしそれだけではお互いに決定打にはならない。だからこそ二人は、剣に魔力を流し込んで威力を高める事に専念する。そしてリリスの魔力が膨大になったタイミングでダリルは動きを変えることにしたのだ。まず初めにリリスの懐に入り込み、そして剣を手放すと、素手で攻撃し始めたのである。だがその行動によって。リリスの攻撃の速度が遅くなったため、簡単に避けることができたのだ。だがその代わりにダリルが攻撃に使える時間が短くなるとダリルは一気に形勢不利に立たされることになる。

それでもダリルは諦めなかったのである。そんなダリルが選んだ道こそが魔法を使い。自身の肉体を強化するという方法だ。これによって一時的にではあるが攻撃力を大幅に向上させる事に成功したのである。その結果として徐々にリリスを追いつめ始めたのだ。しかしこのまま続ければいずれ魔力切れを起す可能性があると考えたダリルは一旦後ろに下がって態勢を整えると、そこから魔法を放ちまくりながらダリルは接近戦を挑んできたのである。

しかしダリルはそこで予想外の行動を取てきたのであった。それはなんと自分自身の身体に風穴を開けてその傷を塞いだのだ。その事により彼は痛みに耐える必要が無くなりさらに速度を上げて攻撃を始めることができるようになる。しかしその行為は危険を伴う行為であり。下手をすれば致命傷を負ってもおかしくはなかったのだ。それ故にダリルは覚悟を決めて行ったのであった。ダリルはそんな状態で戦いを続けていたらリリスが先に倒れると確信して攻撃を仕掛ける。その結果、ダリルの方が先に落ちてしまいリリスの一撃をもろに食らってしまうのであった。その結果ダリルは死ぬことになったのである。しかし、彼は満足そうな顔をしながら倒れていったのであった。

その後、彼は、リリスの母親の意識を乗っとることになんとか成功する。しかしリリスには逃げられてしまったのだ。しかし彼女は村に戻ることなくどこかに行くことになってしまう。しかし、村で暴れまわった結果、村は滅んでしまい。結局、彼女の目的を果たすことはできなかった。しかし彼女は諦めずにある場所に向かうことを決意する。

その行き先というのがここであった。

「ここはどこですか?」

リリスの母親はリリスの姿でそう呟くと。俺の方を見つめてくる。そんなリリスの姿を見て俺は驚いた。なぜなら目の前にいる人物は間違いなく。魔王の体に入っていた存在だと気づいたからだ。俺は目の前に現れたリリスの姿をしている女を見て驚いている。その事にリリスは俺の反応を見て、リリスの姿のまま俺に話しかけてくる。

「私の名前は、ダリアです。私はリリスの母親の体を借りる形で生きている状態になっています」

リリスの言葉を聞いた瞬間。俺は、彼女が本物のリリスではなく偽物ではないかと疑いを持つ事になる。なぜならばリリスはこんな喋り方をしていないからだ。それにダリルから聞いた話とは微妙に違うからである。

「俺が聞きたいのはそういう事じゃないんだ。あんたが本物かどうかが知りたかっただけだ。ちなみに俺の知ってるダリルって男は、もっと男勝りな性格をしているはずなんだけど。どういう事なのか説明してくれるかな」

そんな俺の質問に対してリリスもどきは少しだけ考え込むそぶりを見せた。そんな彼女の様子を確認した後。俺は彼女に事情を聞くことにしたのだ。そうしないと何も始まらないと感じたからな。だから俺は彼女の話に集中することにして。俺の話が終わると、彼女は語り出した。リリスの母親であるダリアがリリスの母になりきっている理由はわからないが、とりあえずは俺は彼女を警戒する必要が無くなったのである。なぜなら彼女は俺のことを敵視してこないどころかむしろ協力的な態度を示してくれたからだ。

それならなぜ彼女がこの場所にやってきて、しかも俺達に攻撃を仕掛けて来たのかと言うと。どうも彼女が俺達を攻撃した理由もリリスのためだったみたいだ。それに加えて、俺とリリスの母親に危害を加えるつもりはないと言ってきたため。ひとまずは信用することにした。

そして、ダリアの話から分かった事は。彼女がダリルの妻だったということと、この世界に何が起きたか知っているということ。あと、ダリルの願いは自分が死んだ後に世界を救いたいというものだったそうだ。つまり彼女は自分の夫であるダリルが死んだことで世界が崩壊してしまうかもしれないと思い。それを食い止めようとこの村に訪れたのだと話すのであった。

そんな話を聞いていたリリスだったが。なぜかダリルとリリスが出会った時にあったことを話し始めていくのであった。その内容はリリスとダリルが入れ替わって生活していたということだ。

リリスの話を聞いた時俺は心の中でやっぱりと思った。だってそうじゃなければおかしい状況が色々とあったからな。

例えば俺が最初に感じた違和感がダリルに対して、リリスが自分の母親だと思い込んでいたことだったりするのだが。その理由としてダリルの行動が挙げられるのだ。

俺が初めてダリルに出会ったとき、俺はダリルの外見を見たときにダリルが若いと感じていたのだ。まあ実際リリスはダリルの娘なんだが。そんな時に、俺とダリルは戦闘を行った。その途中で、リリスは急に意識を失ったかのように地面に倒れたのだ。

そんな時、ダリルは自分の腕に怪我を負わせた状態で、俺にとどめを刺そうとしていたのだが。その時リリスは突然起き上がると、ダリルに向かって蹴りを放つ。

その光景を俺は見たことがあったのだ。リリスは昔は格闘技を習っていたと言っていたからな。

だけどリリスは俺の前で戦うところなんて見せてはくれなかったし、武術を教えてと言ったら絶対に駄目と何度も言ってきたのである。だから俺は格闘技が使えると知っていたけども一度も戦った事がないのだ。しかし今の目の前で繰り広げられているリリスとリリスの母親が繰り広げている戦いを見る限り。リリスの母親がかなりの実力があるのだと思わされるものだった。

それからしばらくしてリリスの母親であるダリアとの戦いが終わったようで、リリスとダリスの母親の体が入れ替わろうとしている。そんな状況をみて俺が何かできないだろうかと思っているうちにダリルが動き出すのである。

そしてダリルの動きを見ていた俺は彼がリリスの母親を庇うように前に出た後、ダリルは剣を突き刺し自らの命を犠牲にする道を選ぶのを目の当たりにする。その事で俺はダリルをどうにか救うことを決意したのだが間に合わなかったのである。そしてダリルは自らを犠牲にする事により、魔王を倒すことに成功したのであったが同時に魔王を封印することに成功したのだった。それからダレア達は自分の娘を助け出しに行くためにある国へ向かうことになるのであるが、そこでリリスの父親に出会うのであった。

「リリス、あなた、私の事をママだと思っていたでしょう?」

そんな事をダレアがリリスに尋ねたらリリスが顔を赤く染める。

「そ、それは、私がお腹にいる頃からずっと、この人の声が聞こえててそれで気になっていたというか。この人はいつも寂しいとか言ってるんですよ!もうほんと、いい加減にしてください!」

そう言うとリリスはさらに続ける。だがそれも照れ隠しみたいなもので本当は嬉しいという気持ちがあったに違いないと思うんだよな。

しかし、そんなことを言っているリリスをみていたリリスの母であるダリアさんが、こんなことを言うのであった。ダリルが死んでからの事を全て話し終わったのでダリアさんは元の体に戻ると宣言をしたのだ。そうすることでダリアはダリルの肉体を手に入れる事ができるのだそうだ。ダリアはダリアで色々と考えていたみたいだが、最終的にリリスを助けるためにこうなったのであると話してくれたのであった。

それからリリスは元に戻る方法を聞き出したらしく、それを実行しようとしたところで俺達が邪魔してしまった。そんな状況を見て、ダリアスさんが俺たちに襲いかかろうとしたところをダリルはダリアに攻撃を辞めるように促す。ダリルがなぜそんな行動を取ったのかと言えばダリルの望みは自分が死ぬことによってこの世界を救うという事であったのだ。それなのにここで自分が死んでしまうのは意味が無いという判断をしたのである。だから彼は、俺に最後の言葉を残した後。魔王の中にいる存在と融合を果たしたまま、そのまま消えてしまったのであった。そんな彼を見送った俺達であった。

「おい、貴様等よく聞け。私は魔王軍四天将の一角であるダークナイトメアだ。魔王様に歯向かった愚か者達よ覚悟は良いか? お前たちの命は今を持って終わることになった。それでは死になさい。暗黒の闇を纏え【ブラックホール】」

「やばっ」

「くっくくく、ふはははは、残念ながら、この程度の力で私には勝てないぞ。さぁてどうするかな」

「な、何が起こったんだ?」

俺達の前には、真っ黒に塗りつぶされたような巨大な黒い球が存在していた。これは、もしかして、ブラックホールっていうものなのかな。いやまあ漫画でなら知ってたけどね。まさか異世界に来て見ることになるとは思いもしなかった。

って、呑気に解説してる場合じゃないだろ。早く逃げないと俺らも、あの中に入ってしまうじゃないか。

俺は咄嵯の判断をして皆の手を引っ張りその場から走り去ろうとしたが遅かった。俺達は一瞬のうちに黒い球の中に吸い込まれてしまうのである。

—-俺は一体何をしたんだ。何も覚えていない。ただ、誰かが泣いていた気がしたがあれは俺の記憶だったのか。俺は、死んだのか。ここはどこだ。

目を開けてみると目の前に広がるのは薄暗い天井だ。辺りを見渡してみると知らない部屋だ。しかも、ベッドの上で寝かせられているようだ。どうやら俺は、この部屋に運ばれたらしい。それにしても何だこの体は!?︎こんなに小さくなって、これじゃまるで子供みたいじゃねえか。でも、なんだ、力が溢れてくる。

とりあえず俺は立ち上がり、周りの様子を確かめようと思ってドアノブに手をかけた。その途端、俺はドアの向こうから感じる気配に反応した。その瞬間俺は反射的に横に飛び退いた。

次の瞬間凄まじい音が俺のすぐそばで発生した。その音と同時に、俺は自分の身体を確認すると俺が立っていた場所の床がひび割れており、そして俺の頭上に拳を振り下ろしていたであろう男の姿が見えたのである。俺を殴ろうと振り下ろされていた男の手の手首を掴んだのは俺の左手であった。そして俺は右手に力を入れると俺の右手から光が放出されていくのを感じ取るのであった。

「くそっ、離せ、は、離しやがれ!!︎」

男はそう叫び、力一杯腕を引き抜こうとするのだが俺はビクともせず、逆に俺の手にさらに力が込められるとその男の手が握り潰されてしまったのである。

「ぐぎゃああああああああーーー!!︎」

男が悲鳴を上げたその隙に俺は男を投げ飛ばしたのである。男は空中に投げ出されたが何とか体制を立て直し地面に着地する。その顔は青ざめていて、信じられないものを見るかのような目でこちらを見ながらも警戒心を露わにしているのが見て取れた。

「な、何だこの化け物は、人間じゃないのか?」

「おいおい、人に向かって化け物扱いするなよな。まあ俺はあんたらから見たら化け物に見えてもおかしくないかもしれんが、少なくとも人間だよ」

その俺の言葉を聞いてか聞いていないのかさっぱり分からないが。その男は突然笑い出した。そして何がおかしいんだと疑問を抱く俺に対してこんなことを伝えてきたのである。

「へぇ、なるほどねぇ。俺が化け物を狩る側に回ったはずなのに今度は化け物が襲ってくるとは世の中分からねえものだな」

そう言ったかと思うと、いきなり殴りかかってきたのである。それを俺は難なく受け止める。そして再び光を放出しようと右手を構えたのだが。突然目の前の男に変化が起き始めたのである。

俺の攻撃を止めたはずの右腕が徐々に変化していきそして最終的には人間の手から大きな鉤爪のようなものへと変化していったのである。それだけでなく左腕も同じようになっていた。その腕はまるで悪魔の手のようになっており、その禍々しい姿からは想像できないほどの怪力を秘めている事が一目瞭然なのだ。俺はその光景を見てゾッとすると共に冷や汗を流していたのである。こいつは、やばい。

そんなことを考えていたのだが。悪魔と融合したような奴は俺に対してこう告げてきたのだ。

「さっきはよくもこの私をぶっ殺してくれたなぁ。お返しだぜぇ、死んじまいな! デスクローション」

すると悪魔と融合したそいつは自分の両腕を思いっきり地面に叩きつけたのである。その光景を見て嫌な予感を感じた俺は即座に後ろに飛ぶ。その直後先程まで自分の足が有った地面が盛り上がり隆起していったのだ。そしてそれが一気に崩れてそこから俺に迫りくる無数の鋭利な尖った土の塊が現れ俺に向かって飛んできたのである。俺に向かって放たれたそれはかなりの数で避けきれないと判断した俺は両手を広げてから光を全開にした。

「ふんっ、無駄な事を」

俺は全ての岩の槍を弾き飛ばす。しかしそれは単なる囮であり本命はこの攻撃の後だったのである。目の前の地面から突然現れた鋭い牙のような物が俺の腹に突き刺さっていたのだ。そしてそれはすぐに引き抜かれ俺を拘束するように巻きついていく。

そして目の前にいた男は勝ち誇った表情を浮かべていたのであった。

だが俺はそれを全く意にも返さずそのまま男の元へ突っ込んだ。そして俺は腹筋を使い勢い良く体を反らすように飛び上がる。その結果腹に噛み付いた魔物はそのまま俺について来る形で上空へと上がっていく事になったのである。

「な、なんつう馬鹿げたパワーを持ってんだよ!普通なら即死レベルの攻撃だったはずだぞ!」

そんな事を言って驚いている男を他所に。俺の右手がまた輝きだす。それを見た男はさらに焦燥の感情を抱いたようである。

だが、俺にだって勝算はある。俺に腹を噛まれた時にこいつも何か仕掛けてきていたが、そっちの方には問題ない。そろそろこの状態から抜けられるから安心しろよな。そして俺は、右手から放つことのできる最大の技を使用することにした。

それは、俺が初めて魔法を使用した時に発現させた必殺技である。その名は、 ———————— —————— ——— —

「——閃光、波動、轟音。これが全てだ。

お前にはもうどうすることも出来ない」

「何なんだこれは、一体俺の身に何が起こってんだよぉ」

——ドガーーン ——ズゴゴーン ——ピカーーン その衝撃はあまりにも大きくその場に立っていることなど出来るわけがなかったのだ。それはもう凄いという言葉ではとても言い表せないくらいであったのである。そんなとんでもない威力の爆発により魔王城の殆どが崩壊してしまったのである。そんな事を引き起こした俺の目の前では一人の男、というより少年が立ち上がろうとしていたのであった。その姿を確認した俺だったが。そこで異変に気付く。

その男の顔はリリスそっくりの見た目をしているのである。いや、正確には少し幼くなったリリスというべきかもしれない。

そんな俺の視線に気づいたリリス似の少年は、驚きの声をあげるのであった。

「うわぁー。この感じはもしかして元の世界に戻ったって事でしょうか? それにこの人は私のパパですよね。

でも一体どうして私の姿になっているのでしょう?」

どうやら元に戻ったようだ。それにしても俺の姿をしているリリスがここにいるって事は、ダリアさんがリリスを元の世界に転移させてくれたってことだよね。俺は嬉しくてたまらなかったのだ。でもこの子も一緒だとちょっと複雑だ。まあこの子は悪くないから許せるけどね。それよりもまずはここから出てから考えようかな。

「ええっと君は俺のことをパパと呼んでいるようだが。一体何の話だ?」

「な、何を言っているんですか。忘れたんですか、私が貴方の子供だと言うことを」

「んん?」

俺は、リリス似の女の子が言う言葉に頭を悩ませながら。そして考えるうちに思い当たることが一つあった。

俺は、リリスと一緒に生活するようになってからというもの。時々夢を見るようになった。しかもその夢の中で俺は何故か赤ん坊になっていたのである。そしてある時は大人になっていて赤ちゃんの面倒をよく見ているといったものばかりだったのである。ただの夢だろうとその時はあまり気にしなかったんだけど、その夢の続きが現実に起こったんだ。まさか本当に俺は子供を育ててるなんてな。しかもその子が自分の娘になるなんて。でもまあ不思議と受け入れることができた。それだけリシアとの一件が大きかったのだろう。まあでも、とりあえず。

「まあいいや、とにかく一緒に外に出ようか」

そうして、俺たちは外に向かって歩き出したのである。その途中で俺の姿を見て驚嘆する兵士達がいたのだが、俺は軽く事情を説明しておいた。この子の正体はまだ明かさないでおいても良かったが。俺の見た目年齢が明らかに若いから信じてくれると思って正直に言ったのだ。まあ俺の息子とまでは言えなかったので。

俺が説明を終えると兵士たちが一斉に膝を突いて、

「どうか、私たちの王におなりください」

と頭を下げてきたのである。俺は別に王になりたいとかそういう願望はなかったから断ろうとしたが、

「お願いします!!︎」

と頭を下げるばかりで一向に引いてくれない。仕方がないので、適当にその場を収めて、それからしばらく城の中を見て回った後、城を後にしたのであった。そして、城に戻ろうと来た道を辿る途中にある湖を眺めていると急に目の前が暗くなっていった。

次に目を開くとそこは、俺の部屋のベッドの上であった。俺は体を起こし周りを見渡すがそこには何も無い。あれは、全部俺の妄想なのか。

「おいおい、そりゃねえよ神様。せめてなんか残してくれても良かったんじゃねえのか。俺はこれからどうやって生きてけばいいんだ」「何を一人でぶつくさ言ってるのですか? あなたは相変わらずおかしな人ですね。そんな事よりもほら早く支度をしてください。学校に間に合わなくなりますよ」

俺の横にいる彼女は何事も無かったかのように淡々と話し始めたのである。

「なあリリス、今何時だ?」

俺が彼女に尋ねると彼女、リリスは自分の左手首を確認してから答えた。

「今は八時半過ぎです」

時計が無いのに何故わかるんだ。

「そうか、分かった、ところで俺はいつ起きたんだ? 昨日の夜何やってたっけか?」

俺は寝起きということもありあまり頭が回っていない。そして俺の言葉を聞いた途端リリスの目がキランと光った気がした。俺は嫌な予感を覚えながらも次の言葉を待っていると案の定嫌な予感の方が当たってしまったのだ。

「覚えていないのですか!? あの時のこと。私達二人が結ばれ、愛の結晶とも言える子供を授かったこと。そしてそれを産み落としたことも。それで生まれた子が可愛くてしょうがなく、私達が二人共子育てを手伝おうと思ったものの、お互い初めての事で上手くいかないところもありつつも何とかやってきたんですよね。それでようやく安定してきたのにまたこうして別世界に飛ばされる羽目になって、しかも記憶を封印されてしまって何もかも思い出せない私を見てあなたは何を思いましたか。そんな状態で私はずっとあなたの側にいなければならないのですから。本当に申し訳ないとしか言いようがないですよ。そんな辛い状況にも関わらずあなたは私を慰めるように優しく接してくれるばかりか。私の為に働いてくれています。そんな優しいあなただからこそ私は好きになってしまったんです。そのせいでついつい欲が出てしまいまして。その想いをどうにか抑えようとした結果、こんな事に。全てはこの世界の神の奴が悪い。いえ違うわ。そもそも悪いのは、」

俺は彼女の口を押さえてから、こう伝えたのである。

「俺がお前の事を愛しているのは本心だ。だからもう自分を責めなくて良いんだよ。そして今まで頑張ってくれてありがとうな。俺はちゃんと分かってるからさ」

「ふぁ、ふぁいっ。ごべんなざい。うぅ〜」

彼女は涙を拭う仕草を見せながら泣き出してしまったのである。俺は彼女が落ち着くまで背中をさすってあげたのであった。そして俺は、

「さあ、いつまでも泣いていないで。学校に行こうか」

俺の言葉にリリスは、涙を手で振り払うような素ぶりを見せた。そして彼女は、こちらに視線を向けてくる。俺は、それに返すようにして微笑んで見せたのである。

「はい!」

俺達はそれから身支度を整えると家を後にしたのであった。俺の格好は学生服を着ておりリリスは俺がプレゼントしてやったワンピースを着ていた。リリス曰くこっちの服装が楽らしい。確かにスカートは動きにくいからね。それにリリスの髪は肩より長いくらいのストレートでとても綺麗だ。そのためリリスは歩くたびに髪の毛先が踊っているように見えたのであった。俺はその姿に癒されつつ歩いているとリリスの方から俺の手を握ってきた。俺の方から握ろうとしていたが。その様子を見られてリリスの方から手を繋がれてしまったのだ。その様子はとても可愛く見えてしまった。そして二人で仲良く歩いていくと俺達の目の前に門のようなものが見え始めた。

どうやらあそこを潜ると、もう俺達は高校生になってしまうらしい。まあそれはリリスから聞かされたんだけど。ちなみに俺は異世界に来る前にこの高校を卒業していて既に卒業している扱いとなっているのだとか。それを聞いて俺が驚いた顔をすると、リリスがクスッと笑っていた。

————————— ここまで読んでいただきありがとうございます。是非感想や評価をお寄せ下さい!励みになりますので、どうかよろしくお願いしますm(_ _)m 俺達がその門の前まで来ると一人の女性が立っていた。女性は俺に気づくと、

「あら? 今日はずいぶん遅い登校ね。一体どこへ行ってたんだい?」

俺の目の前にいた女はまるで先生のように振舞っており。少し腹が立ったのである。俺はこいつに色々聞きたいことがあった。でもその事を口にする前に目の前の女、ではなく担任が話し始めてしまった。

「あんたがそんなに朝に弱いとは思ってもいなかったけど。とりあえずもう遅刻だよ。あと少ししたら教室に向かうんだからそれまではここで大人しく待ってなさいよ」

この人は何を言ってるんだ。まだ授業が始まる時間じゃないじゃないか。

「おい、何ふざけたこと言ってるんだ? 俺は、」

そこまで言って俺は言葉を切った。なぜなら俺の記憶の中にその情報が入ってきて俺自身戸惑ってしまったからである。俺は、その情報が正しいのかどうかをリリスに伝えたのである。俺の様子がいつもと違ったためか、リリスは心配そうに声をかけてきたのだ。

「大丈夫ですか? なんだか顔色が優れないように思えますが」

「ああ大丈夫だ。それよりも今から俺が話すことは事実だと思うか?」

「はい、私にはそう聞こえてきました」

「なら信じて聞いてほしいことがあるんだが」

俺はそこでリリスに自分の考えを伝えることにした。俺の考えは間違っていないはずだ。そして、もしそれが正しかったのであればこの世界を救えるのはおそらくリリスしかいないだろうと思っているのだ。そして俺がリリスに伝えるとリリスは真剣に話を聞いていた。その目はどこか遠くを見ているようで何かを懐かしんでいるような感じだった。リリスは話が終わると小さく笑い。

「なるほどそういうことでしたか。やはり私の考えは間違ってなかったみたいですね。でもその方法を実行に移すとなると少し準備がかかりそうなので。まずはあそこにいる教師とでもお話し合いましょうか。私達にはまだやるべき事がありますよね」

俺はそんなリリスを見て驚きを隠しきれないでいたが。それでも、嬉しさの方が大きかった。俺は思わずニヤけそうになる頬に力を入れて必死で我慢しながら返事をした。

「そ、そうだな。まずはそれをしないとな」

それから俺たち二人は、担任と話をするため職員室に向かったのである。俺たちが職員室の扉の前にたどり着くとちょうど中から出て行く男性の教師の姿を見つけた。そして俺はすぐにその後を追いかけ声をかけたのである。

「すみません」

「ん? 何でしょうか? はて貴方の顔には全く見覚えがないのですが。ひょっとして僕と初対面というわけですか?」

「いえ違います」

「そうですか? ではどちら様ですか?」

「俺は、佐藤亮といいます。今からあなたとお話させてもらっても良いですか?」

俺の名前を聞いた途端、相手の態度が一変したのだ。そして男は、慌てた様子を見せながらも答えたのである。

「失礼ですが何のお話でしょうか?」

「単刀直入に言わせてもらいます。あなたの奥さんについてお伺いしたく存じ上げます」

俺の発言を聞いた男の反応を見て確信を得た俺は、更に話を続けたのである。

「俺は先程あなたの奥さんに会いました。その時あなたから、あなたが異世界転生者である事を教えられましてね。だから俺はここに来たのです」

男が俺の話を聞いて驚き固まっていたところにリリスも会話に参加してきたのである。

「私も同じです。それであなたに尋ねようと思いまして」

「わ、私としたことが。まさか気づかれてしまうなんて。そうか君たちがそうなのか。いやはやこれは想定外ですよ。それにしても随分と早かったですな」

俺は男の言動が気にかかったので、その点についても質問してみた。すると彼は簡単に答えてくれたのである。なんでもリリスのことをリシアと呼び、彼女からはリリシアと呼ばれていたのがリリスに変わったことから気づいたようだ。リリスは最初名前を聞かれた時、リリシスと答えていたため、それを聞いただけでわかってしまったようである。そして俺は、

「なぁ、あんたの望みを教えてくれないか?」

俺の言葉に男性はしばらく悩んだ様子を見せるとこう口にしたのであった。

「そう、ですねぇ。私はただ普通に生きたいと望んでいますよ。それには妻の力が必要なんですよ。彼女は私の理想を叶えてくれる唯一無二の存在だからね。まぁ妻については後々説明するとしますよ。それよりもあなた達をこれからどうしましょうか。流石に私の一存で決めることは出来ないんですよ。一応校長にも話は通しておかないといけないのでね」

「その必要はない」

突如そんな言葉とともに一人の人物がその場に現れたのである。その人物は女性でありながらスーツに身を包んでおり、そしてその容姿は美しいという言葉がよく似合う人だった。彼女はリリムと言い。目の前の男性の妻なのだと言う。彼女はその言葉と同時にこちらへと向かってくるとその腕を振り上げたと思うと。なんとその手にしていた鞄で俺と、なぜかリリスのことを叩きつけてきたのである。俺はその行動に対して反射的に身を守る姿勢を取りリリスの方も俺の盾になるように前に出てきてくれていたが。俺は、リリスを庇いながらその場を離れた。しかし俺の体は思ったよりも頑丈だったらしく痛みを感じることはなく、むしろ怪我一つしていなかったのだ。俺はその事に驚いているとリリスが俺の事を支えてくれながら話しかけてきたのである。

「よかった。今の攻撃を受けて無事だと言える人間がいるとは思えないんですけど。どうやら私の推測は間違いじゃなさそうね。とりあえず今は私に体を預けてちょうだい」

「わかった頼むよ」

俺はそれからしばらくの間彼女に身を任せることにしたのであった。その間に俺はリリムの方を警戒するように睨み続けていたのである。俺は彼女の行動の意味を考えることにしよう。まず彼女がなぜこのような行動をとったのか。それは恐らくリリスの能力に気づくことができたからに違いないと考えているのだ。おそらくはリリスの能力を事前に知っていたか何かしたんじゃないかと俺は思う。それにしても、この人さっきの動きすごすぎない?俺にはその攻撃が見えなかったので。その辺りが気になるところだが、リリスから教えてもらうしかないだろう。

俺とリリスはリリスの指示に従い体を動かしていった。その結果。俺は、目の前にいたはずの女性が一瞬のうちに消え去ったことに気づいたのだ。俺がその状況を理解するためにあたりをキョロキョロしていると背後で音がしたのでそちらの方を振り返る。すると俺の背後にはリリムとリリスがいたのだ。どうやら俺はあの女性の攻撃を受けてもリリスのおかげで無傷のまま切り抜けることが出来たらしい。そして俺の正面にいる二人はリリスに何かしらのアクションを起こしたようで、二人の間には目に見えない衝撃波のようなものが発生されており。リリムは後方に吹っ飛ばされていったのである。それを見た俺が慌ててリリスの方を見るとリリスは俺に向かって笑顔を見せていたのだった。どうやらリリスが守ってくれたおかげで助かったらしい。

それから少しの時間が経つとリリムの方は立ち上がっていて服に着いた埃を払っていたのである。そして、リリスに向かって話しだした。

「やっぱり、この世界にまだ居たか」

リリスはその問いを聞くとリリスに変身してから返事をしたのだ。

「あら? どうして貴方がまだここに? 私がこっちの世界で死んだことくらいは知っているはずでしょ? それにリリシアの魂をどうやってこの世界に引き入れたっていうのよ」

「確かに、私はあんたが異世界に行ったと聞いてからあんたが殺された後に、この世界に戻ってくるまでの間に何度も世界を転移したけど。でもその時にあんたの姿を見つけることが出来なかった。そこで私はあんたがどこかに隠れているんだと思って色々と探すことにした。それでやっと見つけることが出来たと思ったらあんたはすでにこの世界に戻ってきていたってわけ」

俺の疑問に答えるように女性は、淡々と語りだしたのである。

「そういうことです。私はまだ完全にはこの世界を行き来できるような力は持っていないので。あなたにはもう二度と会うことがないと踏んでいたんだけど。どういう風の吹き回しなのかしら?」

「ちょっと聞きたいことが会ってきたんだよ」

そう言ったリリムは俺達の方を向いて話しかけてきたのである。

「ねえそこの貴方達。リリシアから話は聞いていると思うけど、お願いしたいことがあるの」

俺は、そんな彼女の発言を不審な目をしながら聞くことにしたのだ。俺は正直こんな胡散臭い女の話なんか聞くつもりは無いと思っていたのだが。何故かこの話だけは聞いておいた方が良いと感じた。だから俺の代わりに答えて貰うために後ろで成り行きを見ていたリリスに声をかけたのだった。

「悪いが、この話をする前にリリシアと話がしてもいいか?」

俺の言葉を聞いたリリスは不敵な笑みを浮かべるとリリスとリリスの間に立つとリリスを抱き寄せてからリリスの耳元で何やら話始めた。それをしばらく見ているとリリスは小さく首を振り俺の方に視線を向けた。リリスは俺の問いかけに反応する。

「別にいいですけど。でも話を聞き終わっても彼女を怒らないようにしてあげてくださいね。私のせいで彼女かなり苦労しているので」

「ん? どういうことだ?」

「いえ、気にしないでください。それよりお話を始めませんか? その前に確認ですけどあなたは勇者ですか?」

俺はリリスが口にした発言に戸惑いを覚えてしまった。何故なら俺は、その事を隠しておきたかったからである。俺は、リリムを警戒しながらも質問に返事をするのであった。

「そうだが。それがどうかしたか? お前はリリスの何を知っているんだ? リリシアが言っていたことに関係あるんだろ?」

俺は、俺の返答に対して嬉しそうな顔をする女性を見て少し警戒しながら会話を進めていく。

「ええそうですね。実はあなたは、私から見れば完全なるイレギュラー的な存在なんですよ。あなたは、他の転生者とは圧倒的に違い過ぎる存在なんです。それに、リリシアから話を聞いた時私はすぐにピンと来たのです。ああ、こいつが私の目的の相手なんだと。私はすぐにリリシアの頼み事を承諾することにした。私は、あいつが何を考えて生きているのか知りたかったの。私は自分の意思で魔王になったわけではない。まあなったからにはそれなりに楽しく生きて行こうとは思っていたけど。だけどそれだけだった。私はただ自分が面白い人生を送ることができれば良いと思って行動していた。そんな時だったかな。リリスと出会ったのは。あいつはいつも寂しそうにしていてね。それで気がついた時には私はリリスの側にずっと一緒にいるようになった。それで気が付いたんだ。リリスの願いは私が叶えてあげた方がいいんじゃないかって。私にとってリリスは全てだからね。そしてある時、突然、あいつがいなくなって。私は必死で探して。ようやく見つけたと思ったら死んでいて。そしてあいつは別の誰かに乗り移っていて。しかも、その時の記憶が無いとか言っていたんだよ。流石にその時は驚いたね。でも私はその時は何とか耐えることができたけど。流石に二度目は無理だよね。でもそのリリスが、また現れたというのに、そのリリスは私じゃなくてあんたを選んだのよ。本当に許せない」

「待て、そもそも俺はこの世界に戻ってきたばかりだぞ」

「そんな事は関係ないよ。あんたの存在は、私にとっては迷惑でしかないの。リリシアは私の目的に必要な人間だし。私もあんたの役に立ってあげるから感謝して欲しいくらいね」

「それは本当か? それは助かる。それで一体どんな方法で協力してくれると言うんだ?」

俺は、目の前の女性の態度の変化に驚きつつも内心ではこの機会を逃すまいと考えていたのだ。なぜなら俺は、この女性の力を利用しこの世界の仕組みを知りたいと考え始めていたからだ。だがその思考も目の前の女性の言葉によって止められてしまうのであった。

「まず最初に、私の名前はリリムよ。一応魔王をしています」

俺は目の前で微笑んでいる女性が自分と同じ職業に就いているということを聞いて動揺してしまっていた。そして同時に俺は目の前にいる女性が俺に対して攻撃を仕掛けてくるのではないかと考え身構えたのだ。しかしリリムと名乗った女性はそのまま俺に背を向けるとその場から去っていったのである。

それから俺が呆然と立っていると、リリスが話しかけてきた。

「あの人の話は聞いたと思いますけど。大丈夫でした?」

「あぁ問題無い」

リリスの問いにそう答えると俺は、リリスの体を借りて話を始めたのである。

私はリリムと名乗る人物が現れた事でこれからの行動に困ってしまったのだった。なぜなら私の目的は既に完了してしまったような気がしたからである。つまり私の目的を邪魔する存在が消え去ったのと変わらない状況だったから。そしてそれと同時に私の中にあった復讐心に火をつける原因を作ったのはリリムだと理解したのだ。だからこそ、これ以上面倒くさいことをされる前に、さっさとここから離れる必要があると思案した結果、この場所を離れることにした。

私は、リリスの姿を利用して歩き出すと目的地に向かって進み始める。だが私がその場所に向かおうとした矢先。何者かの手によって足を止められるのであった。私はその正体を探りながら後ろに振り返る。するとそこにはリリアさんの姿があったのである。私は、なぜ彼女がここにいるのかわからない状況で固まっていた。そして彼女が私を見つめたまま口を開く。

「ちょっと聞きたいんだけど。なんでリリムちゃんが貴方の姿を真似てるの? まさかと思うけど、リリムちゃんの体を乗っ取ろうとしていないわよね?」

リリアさんの鋭い指摘に思わず私は後ず去ろうとするが。リリムの腕に抱きしめられている状態では、どうすることもできなかったのである。私は、どう答えればいいかわからないまま黙っていると、彼女は私に近づいてきて、私の頬に手を当てると、無理やり彼女の方を向かせてきたのだった。それから、真剣な顔になりこう告げた。

「ごめんなさい。今更謝っても意味ないと思うけど。私、貴女の事誤解しちゃったみたい」

リリアさんは悲しげな表情で、私にそう伝えてきたのである。

私は、彼女の言葉を信じることができず。何も答えなかった。

私がそんな事を考えている間にリリムが、リリスに向かって話始めたのであった。そしてその内容はあまりにも衝撃的な物だったのだ。

「リリス。お前の体は返してもらうからな」

リリスの口から出てきたのは信じられない一言であり。リリスも言葉を失っていたのである。私はその光景を見てリリシアとの会話を思い出していた。確かリリシアの話の中にこんな内容があったのだった。リリアはリリシアに、自分がリリムに乗り移り生きていくつもりだと言っており。そのために私に協力してもらおうとしてきたのだが。私はリリシアが生きていたことに驚いてしまい断ってしまい、リリシアには逃げられたと話してくれていたのである。私はそのことを思い出して焦燥感を覚えてしまった。このままリリスの体が奪われれば私はこの世界で一人きりになってしまう。そうなれば私は元の世界に帰りづらくなるだろう。だから、リリスの体をリリムの手に委ねる事だけは阻止しようと思い。私はリリスに憑依したままでリリムに攻撃をしようとした。だが、そんな私よりも先に動いた人物がいたのである。その人物は、なぜか勇者である男の背後に回っており。彼の背中に触れるとその手に魔力を流し込んでいた。

そしてその直後。勇者が絶叫し始めたのだ。その光景を見た私は何が起こっているのかわからなかったが。勇者に異変が起こり始めている事だけは理解した。そして次の瞬間勇者は自分の体を抱き締めるように腕を回し苦しみだす。そしてそんな勇者に対して魔王は、私達の方に視線を向けて、何かを伝えようとしていたのであった。私は何を伝えたいのかさっぱり分からなかったため困惑してしまうと、リリシアの声が聞こえて来たのだ。

「あなたはリリシアと話をしたいんですよね?」

私はリリシアの方を見ながら小さくうなずくと、リリシアはリリスを抱き抱えて私の側まで歩いてくると私に話しかけてきたのだった。

「わかりました。なら少しの間。この体のことお任せしますね」

「は?」

リリシアの言葉に私は間抜けな声を上げてしまい、それとほぼ同時に意識を失い倒れそうになったので、咄嵯の判断で地面に手をついて何とか踏みとどまったのだった。私はそんな私の行動を無視してリリスの体を地面に降ろすと、私の方を振り向き話しかけてきたのだった。

「お久しぶりですね。魔王。元気そうで安心しました。そして申し訳ありません。リリスに体を取られてしまったようです」

「そのようだな。それで、俺達を助けてくれる気があるってことでいいんだよね?」

私は、この状況に混乱していたので、とりあえず現状の確認のためにそう尋ねることにした。そして私の質問に対してリリスの体を手に入れたリリムは微笑みながら、その質問に答えるのであった。

「そうですね。リリスに頼まれたらしょうがないじゃないですか」

「なるほどな。リリスに頼んで俺と会わせてくれたわけか」

「はい。それとリリシアにも、あなたの側に居てもらうために、この村の人達は私の眷属達に皆殺しにしてもらおうかと思っていたんですけど。それも必要なくなりましたね」

「リリシアは俺の側にいて良いからな」

「はい。よろしくお願いいたします」

私はそんな二人のやり取りを聞きながらため息をつく。なぜならリリスもリリシアも自分の欲望に忠実で私には、この二人が仲良くするイメージが全く湧かなかったからである。そのため、これから二人の間に何が起こるのだろうかと考え、頭が痛くなり始めていたのだった。

私がリリスとリリシアを見ていると。そんな私たちの元に魔王の部下達がやってきたので、私たちは一旦、村から離れ。人気のない場所に移動するとそこで今後の方針について話し合いをすることにした。ちなみに、部下たちについては魔王に全て押し付けたので、今は魔王の配下の者たちをどうするか決めなければならなかったのだ。

私は、この世界に戻ってきたばかりの時、ある場所に向かっていたが。そこは魔族に支配されていて近づけそうになかった。私は、あの場所に行くことができないのならば。別の場所に行こうと考えたのだ。だが私だけでその問題を解決するのは厳しいと判断し、協力者を探す必要があると考えていた。

「リリス、リリシアこれからのことを話そうと思っているが、まずは確認だ、君たちの目的を聞いてもいいか?」

「私の目的はただ一つ、復讐を果たす事よ」

「私は元の場所に戻る事ですが、魔王、あなたに協力する事に異存はないので、この世界に来た目的を達成する事をお手伝いしましょう」

二人は、復讐と言う単語を口にするとお互いを睨むようにして話始める。私はその光景を見て頭を抱えるのと同時に、リリスの願いも、リリシアの望みもこの二人にとっては、最優先事項になっているということに驚きを隠せなかったのだ。なぜならリリスにとっての一番大切な事は、私との約束を守ることだから。

「まず初めにリリスは、魔王に協力して欲しいことがあると言っていたはずだが」

「それは私の目的を達成した後の話でしょ? あんたに関係ないわよね?」

「確かに関係ないな」

そう言ってから俺は苦笑いを浮かべる。それからリリアさんの方を見ると同じように困った表情になっていた。

私はその話を聞きながらも内心はどうするべきか考えていたのだ。私は、今の今まで、リリムの体を使って現れた人物が誰なのかがわかっていなかったので、目の前に現れた女性が私の味方かどうか判断できずにいた。だが、目の前にいる少女が自分の事を『私の配下の一人だ』と自ら発言したので、おそらくではあるが私と敵対関係ではないという結論に達したのだが。

しかしそうなると、ますますわからなくなってしまったのである。なぜなら私の知る限り。この世界で魔王を名乗る人物はリリアただ一人だけだったはずなのだ。なのに、私と同じ姿と名前の人物が現れたということは、彼女は偽者ということになる。そうなると問題は誰が私の姿と名前を使いリリムちゃんと、リリアさんの仲を引き裂く為に動き出したのかという話になってくるのだ。しかも、それがリリムちゃんに恨みを持つ人物だというのであれば尚更、私一人で対処するには危険すぎる。それに相手の目的が本当に私と敵対するものなら最悪、私が死ぬ可能性があるので。慎重に動かなければならなくなる。私はリリスさんに事情を話すように告げたのだ。そして、その話を聞いたリリスさんが怒り始めたのだが。

私がリリスさんに同情するように彼女に声をかけた。すると突然、リリスさんが倒れたのである。私が、慌てて駆け寄ると、リリスさんを抱き抱えるが反応はない。だが脈拍はあるようなので死んでいるわけではないようだが、一体彼女になにが起きたのか全く分からず戸惑っている。そんな中リリアさんは何かに気付いたようで私の手を取る。私はいきなりの彼女の行為に驚いた。そしてそんな私のことなどお構いなしと言った様子でリリアさんの瞳から涙が流れた。

それからしばらくして、彼女は落ち着きを取り戻したようだ。そして私にリリスさんの体に何か異変が起こった事を話してきてくれたのである。そしてリリアさんが話し終わるのとほぼ同じくらいに勇者が苦しそうにしながら、こちらにやってきたので、私が彼に向かって声をかけたところ、リリスが私に向かって何か伝えようとしているのだと教えてくれ。それから、勇者が急に苦しみ始めたのだ。そして勇者の様子を見た私は、魔王の仕業なのではないかと推測した。

私はすぐに魔王に近づいて、勇者の様子を尋ねると、魔王は何とも言いづらそうにしていたが。何かを言いかけようとしたところで勇者が叫び出す。それを見た私はリリスの体を横目で倒れないように気をつけながら地面に座る。そして私は倒れそうになるのを防ぐために地面に手を置き耐えることにした。するとその時だ。なぜか魔王の手から膨大な量の魔力が漏れだしてきたのである。

私はその魔力量に圧倒され動けずにいると、いつの間にか私と魔王の周りを囲むようにして魔法陣が展開されていたのだった。そして私の耳に魔王の言葉が聞こえてきた。その言葉を聞いた私は驚いてしまった。なぜなら私は、リリスの体の中にいたリリアと話をしていて、リリスの中にリリシアの魂があることを聞かされていたからだ。だがリリスの体を手に入れたはずのリリムの口から出た言葉はその言葉を否定したのである。そして私にはその言葉を信じられなかったが。魔王が真剣にリリムの体の中に居るであろうリリシアに話しかけていたことが嘘ではないことを確信したのだ。そして魔王は、リリスの中にいるリリシアに対してこう宣言したのであった。

「俺に従えリリス、リリシア」

そう口にした魔王が笑みを溢したのと同時に、私の体が勝手に動いていく。そんな事あり得ないはずなのに、体が言う事を聞いてくれない。

私は魔王の一言によって体を奪われてしまうのであった。そんな私達を見下すような形で見ている勇者。そして、なぜか私の体を乗っ取った魔王と、リリシアを操り、リリスの中から抜け出そうとするリリシアの戦いが始まろうとしていたのであった。

私は魔王がリリスに話しかけたことで、私とリリスの体の主導権争いが始まったのだろうと推測する。そしてそれと同時に私の体の主導権を握ろうとする魔王の意識をリリスの意識の上から排除しようと試みるも、上手くいかないどころか魔王の意思が強くなっていることに危機感を覚え始めていた。

このままではいけない。私は、この状態を維持していてもいずれ押し負けると思い、一刻も早く魔王を正気に戻さなければいけないと考えるが、そんな私の考えなどまるで無視するかのように魔王の行動に迷いがない。

魔王は私の体を完全に支配するつもりなのか、自分の部下達に対して指示を出し始める。

私は魔王の部下達を見渡すが、そこに居たのは人間達ばかりだった。

私はなぜ人間の国である王国に戦争を仕掛ける気になったのだろうと考えていたが。答えは簡単であった。魔族側の人間が魔王側に付いたのだから、当然その相手側は魔王の側になる。だが人間はそう簡単には魔族に従うことはしない。そこで考えた結果が今回の作戦だったのだろう。そして私に攻撃を仕掛けてきたのが人間だと言うことも理解出来た。だがその攻撃方法は魔族側がやったとは思えない。なぜなら魔王軍の主力である、四天王は魔族側に付き。この世界の魔族のトップとして動いているはずだからである。

そんな事を考えていた私の元に魔王軍の部隊長と思われる女性が近付いてきた。その女性の外見年齢は十五歳前後であり、その女性の後ろに控えるようにして、他の者たちも集まっていた。

私はこの人達が何の用があるのかわからず、警戒しているのだが。その女性が私の前に立つと膝をつき頭を垂れたのだ。そしてその後ろにいる者も同様の行動をする。私はそんな彼女たちを見てから疑問を口にする。

「魔王の命令か?」

私が魔王の配下の者達からそのような態度を受ける理由を思いついた中で、一番可能性がありそうなものを尋ねた。

「はい。我らは魔王様に命令を受け貴方様に仕えます。なのでどうか我々を配下に加えてください」

そう言ってから顔を上げる。

私は、彼女達の言っている意味がわからないが。とりあえず魔王の目的がわかっているので、彼女の問い掛けに答えることにする。

まず、彼女達は魔王の命令でここに来ており、彼女達が所属をしているのは魔族では無く魔王の部下であるという。さらに魔王から彼女達に命が下されていたのだ。それは、魔族の中で最強と言われている存在。魔竜王の娘を見つけ出し、仲間に加える事。魔竜王の娘と魔族たちは相性が悪いとされているので、もし彼女が見つからなくても。せめて彼女を一目でも見ることが出来ればそれで良いと言うことらしい。その事を聞いて私はある事を思いつく。そこで彼女に提案をした。すると、私の考えを理解してくれたのか。嬉しそうな表情を浮かべると。了承してくれることになったのだ。私は、その行動の意味を理解することは出来なかったが。この先に何が起こるのか、少しだけ予想出来てしまい。これから起こるかもしれない最悪の状況を回避する為の準備に取り掛かる。そして私の思惑通りに物事は進んだ。そしてその結果、私が考えていた通りの状況に陥るのであった。

私は、自分の体の中に入っていた魔王がリリスの体の中から抜け出すことに成功したとわかりほっとする。だがその直後。私と魔王がいるところに、膨大な魔力が流れ込んで来た。それを受けた私は咄嵯に、リリムちゃんとリリシアが戦っているのだろうと察した。私は、魔王の事が気がかりだったが。まずはこの流れ込んでくる莫大な力の正体を確かめるために動き出していた。そして私の目の前には、先ほどまでと違う格好に変身していたリリシアの姿があり。リリシアが放った攻撃は魔王の作り出した障壁で防がれてしまっていたのだった。

私の視界に現れたリリシアの姿を見て驚愕してしまった。なぜならその姿はかつて、私と一緒に過ごしていた時とはまるで違った見た目になっていたからだ。その理由を考えるとおそらくではあるが、今の魔王とリリスとリリシアの状態と関係しており、リリスとリリシアの中に入り込み魔王の人格が完全に消えたことによって魔王の力が暴走し始めたのではないかと推察したのだ。私はその事実を知って魔王の心配をするが今はどうする事もできない。今私が優先するのはリリシアを止める事だと決めて彼女に問いかけることにした。私はリリシアに向かって私の声が届くのか分からないが声をかけていくと。どうやら聞こえたようでこちらを振り向いてくれる。そして私が話しかけている内容を聞いたリリシアの瞳から大粒の涙が流れるがすぐに彼女は笑顔になりこちらに手を差し伸べてくる。それを見た私は驚きを隠せなかったが、そんな事を無視してリリシアは私の体を使って、私の魂を引き抜く。

それから私の体を動かしたのはリリスの魂が入っているはずのリリスであったがリリシアと同様にその体は変化していく。

それからすぐに私にもリリスと同じ変化がおき始めたのである。それが終わるとリリシアの体に私の体が移ったようであった。

私は、自分の体の感覚を確かめた後で、魔王の様子を確認すると、やはりというべきか魔王が魔王城ごと吹き飛ばされそうになっているところを発見する。

その事に焦ってしまった私は、リリスの体に魔王が宿っているため下手に動くことができないと気づき、魔王を庇おうとしているリリスを止めようとしたのである。だがその前にリリスが魔王の前に立つと、両手を広げ魔王を守る体制に入る。

そしてその直後に魔王城を覆っていた黒い膜が砕け散り。そこから放たれてきた圧倒的な力を内包した魔力砲に飲み込まれてしまったのだ。私は、すぐにリリスの安否を気遣うが、私の目に飛び込んできた光景は想像を絶するようなものだったのである。私は、一瞬目眩がしてしまいそうになるがすぐに気を取り直した。そして私の前ではリリスに守られていた魔王と、それを助けたであろうリリシアが対峙する場面であった。私は二人の様子を伺うが、お互いに動けないような状況だと理解する。それなら今のうちに何とかするしかないと思い。二人の意識を自分へと向けるために魔王がリリスに対してかけた拘束を解く。それを見た私は、自分が使える唯一の技を発動させたのである。

その瞬間、魔王とリリスにかかっていた束縛が解けたのと同時に私の体は限界を迎えたのであった。私はそのままその場に倒れ込む。魔王は驚いたように慌てて私の元に駆け寄って来て何かを話し始めるが私の耳には届いてこないので何を話しているのかはわからなかったのだ。

そしてその言葉を最後に私は気を失った。

私は魔王城に居る。私を助けてくれたリリシアと話をすることにした。彼女はなぜかこの世界の人間では無い。それは魔王から聞いた話ではあるのだが。

魔王の話を信用すればリリスが魔王の事をパパと呼ぶようになった理由がわかるのであるが。そんな事があるわけがないと思っていたのだ。そんな話を魔王が私にするはずもない。だが私を救ってくれた魔王を信じたかった気持ちも強いのでリリシアに聞いてみる事にした。

私はそんな質問に対してリリシアは少し考えるそぶりを見せるがすぐに答えてくれたのである。

その答えを聞いて私は困惑した。なぜならば魔王に恋心を抱いているなんて答えられるとは全く思ってはいなかったからである。だが、リリシアが嘘をつく理由も思いつかなかった。私は、リリシアの話を聞いてから。なぜこの世界の住人が私を救えたのか理解したのである。その疑問を解消させるために私はリリシアと会話を続けていくと一つの結論にたどり着いた。

私は魔王とリリスが戦う事になることを覚悟したが、その前にこの国に住む住人たちに危害を加えないように魔王と話し合いをしてみることにする。私はそう決意すると。

リリィの体を操り王都に向かい始める。私は、私の後をついてきてくれているリリィに対して、私がこれから魔王と対話をしに行くと伝えたのだ。そう伝えると、彼女からは心配する言葉を掛けられたので安心させる為に大丈夫と言っておいた。

そう言った後に王都に到着するまでの間でリリィとの仲がさらに良くなり始めていたのだ。だがその時に魔族側の勢力に襲われてしまう。だが私とリリイはすぐに戦闘を始め。敵を殲滅することに成功した。

その後私はリリスと話すためにある場所に訪れることにしたのである。

そこは魔族の里と呼ばれている場所で。この世界に存在している魔族の本拠地でもあったのだ。

私は、その場所を訪れるのは初めてだったので戸惑いを感じていた。魔族とは今まで敵対関係であったために魔族の集落がどこなのかは知らなかったのである。なのでその事もあってこの場でどうやって探すべきなのか困っていたがその答えをくれる人物がいたのだ。その人物は魔族の青年でその者はリリアと名乗り。そしてこの里のことを説明してくれた。

そのお陰もあってこの場所について詳しく知ることができたのだ。

そんなリリアスの案内のもと。私は目的地に着くことが出来た。そこには大きな木が生えており。その木の中には大量の魔力を感じ取れたのだ。私はそこで、魔族の中でも最上位の力を有していると言われている存在がいると聞き警戒するが、どうやらその者の魔力はかなり弱まっていたらしく。私がリリシアとして近づくと私の存在に気づいたようで。私がここにきた経緯を説明することになると。あっさりとリリスを解放してリリスと共に暮らすことを許してもらった。そしてその際にリリシアから魔王が目覚めるまでの期間に出来るだけ魔竜王を倒すための準備を進めておいて欲しいと言われる。私は、リリシアの言葉に納得してリリス達と合流すると、魔竜王の娘の居場所を聞き出すのだった。そしてその場所に私たちは向かい始めるのだった。

魔王城の最上階に向かうための最後の関門となる場所には巨大な扉が存在していた。

それを見て、ここを通れば魔王の元まで一直線だという事を認識し。私たち三人はその部屋の中に入り込むとその先にあった光景を目の当たりにしていた。そこで私が見たものは完全に意識を失わされてしまい床に寝かされている一人の女性と、その女性が纏っている衣服を身につけており、まるで眠っているかのような表情をした男性の姿を捉えたのである。

私はその姿を確認して男性の方に視線を向けると、彼の体に違和感を感じた。なぜなら彼はリリスが纏っている服装と同じ物を着ていたからなのだ。その事実を理解した時、私の目の前には私にとって予想外の光景が映し出されることになったのであった。なんとそこに映っていたのはリリスの姿で。それを見た瞬間私は動揺し、すぐにその場から離れようとする。

そんな私をリリスが止めに入り、リリスに抱えられてしまう。リリスの腕の中で抵抗を試みようとしたがリリスによって簡単に拘束されてしまって身動きができなくなってしまう。それから私を解放させたあとリリスと魔王が何やら話し合っていたようであったが私には何もわからないまま時間が過ぎていきついにその時が訪れてしまうのだった。魔王が目を開け、こちらを向くとその目は赤くなっており、先ほどまでの魔王とは違う雰囲気を感じることになったのだ。私は魔王の事を気にしながらも必死になって抜け出せないか試すがやはり不可能で魔王の動きを観察しつつ行動を決めようと試みることにしたのである。

そうこうしている間にリリスが突然苦しみ始め。その体は光を放ち始めたのだ。そしてしばらくしてその光が止むとそこには元の姿に戻っていたリリスが居たのであった。

「魔王が暴走しています。急いでください」その言葉を聞いた私は即座に行動をしようとするが、リリスに抱きかかえられて動けない状況に陥る。そしてそのままリリスの胸の中に包まれて、リリスと私はどこかに移動させられると魔王と対面していたのだ。そしてすぐに私とリリスは、魔王に戦いを挑んだのである。しかし圧倒的な力を前に私たちは負けそうになった。このままじゃまずいと思って私は最後の手段をとる事を決意する。私は自分の体を使って魔法を行使していくと。自分の魂の一部を切り離し。それを元に私の肉体を再生させ、魔王と戦うために立ち上がるとすぐに魔王の元へ移動した。私は魔王を拘束する事に成功したのである。それからすぐに魔王がこちらを振り向き攻撃を仕掛けてきたが、私の体に攻撃を命中させる事はなく。私はそのまま攻撃を避け続けていたのだが突如として体に激痛を覚える。それは魔王の拳が私に当たったというわけではなく。魔王の魔力が急激に増大したためであり。それによって発生した痛みであったのだ。その証拠に私の腕が一瞬にして灰になり。それと同時に魔王の一撃を受けて私の意識は暗転していった。だがここで倒れる訳にもいかないと思ったのだ。そしてその想いだけで意識をつなぎ止めることに成功したのである。その時には魔王から受けた傷は完治しており、魔王との戦いが再開されることになる。そんな私だったが、魔王の攻撃に対して何も出来ず。ただひたすらに逃げ回るしか出来なかったのである。だがそんな私の目の前に現れたのは私の親友であるリリシアとリリリスであった。彼女たち二人は魔王に捕まり、魔王の手によってリリスと分離されてしまう。私はそんな二人を救いたいと思い魔王に向かって全力の攻撃を放つことにする。そして私は魔力の殆どをその技につぎ込み魔王を攻撃するがその威力に耐えきれなかった魔王城は全壊してしまい地上にまで影響が出る。その爆風で魔王はダメージを受けるが魔王城の崩壊に巻き込まれながらも無事であったのだ。そして私達は魔王と戦い。何とか勝利することができたのである。その後、リリス達が意識を取り戻した事で、私とリリシアは一緒に魔王城を離れることになり。今は私の家に居候している状態である。

俺は自分の意識が徐々に覚醒していく中で俺を呼ぶ声が聞こえたのでそちらに顔を向ける。そこには二人の少女の姿を見て、片方の女の子が泣き崩れてしまったのだ。だが、もうひとりの少女はなぜか微笑んでいるように思えた。俺はその子がなぜ微笑んで居るのか気になったのだが、その質問をするよりも早く体が動くようになり。俺は慌てて二人の少女を抱きしめた。その時に、自分がどういう状況になっていたのかを思い出すが。なぜか記憶が曖昧で。何がどうなっているのかよく分からなかったが。それでも、その二人を抱き寄せるのを止められなかったのだった。

私は今、この世界で最強の存在が戦っているのを見つめながら魔王の事を考える。私とあの魔王の間にはどんな繋がりがあったのだろうかと。魔王は私との記憶を失っているような気がしたのだ。だけど、その事は寂しいと思うが悲しくはない。むしろそれで良かったと思っている。私は魔王に好意を持っていたけど。魔王と結ばれたいとまでは考えてなかった。それに私は勇者を魔王が倒してくれればいいと思っていたからだ。

でも私はその願いすらも打ち砕かれてしまう。私が魔王に恋心を抱いている事に魔王自身が気づくと。それを拒絶してしまったからである。魔王は私に恋心を抱かないと言うのだ。その事実は私にとっては辛い出来事ではあったが。それ以上に魔王との仲を深めることができなくなってしまったことが辛かったのだ。だからといって私が何かをしてあげられることもできず、この世界から去るしかなかったのだ。

だが、そんな状況を変えてくれた人物がいた。その人物はリリスさんといい。その人のおかげで、私はもう一度。私の意思で行動する事が出来るようになったのだ。そのおかげで、魔王との再会を果たすことも出来た。だが、私の心の中に、この気持ちは伝えられずに、この世界から離れる事になったとしても後悔しないという思いが生まれているのが分かる。私は魔王に対して、この気持ちを伝えるつもりは無いのに。魔王に会いたくてたまらないのだ。そのせいでリリスに嫉妬してしまう事もあった。そして魔王の過去を知った時。魔王が何故、リリスの事が忘れられないのか理解できた。リリスの過去に魔王は救われた事があると聞いた時だ。その話を聞いて、私は嬉しかった。魔王とリリスの関係を羨ましく思うこともあったが、それ以上に、私がこの場に存在することで魔王の幸せになるのならいいかなと思えるようになっていたのだ。私は魔王の力になれるようこれから努力しようと考えていた。私は魔王に笑顔を見せた後に、ミレアさんの元へと向かう。そして彼女に案内される形で魔王の部屋に辿り着く。

その部屋の中は綺麗で落ち着いた部屋だった。その部屋の真ん中にある大きなベットの上に横になっている人物がいた。その人物がリリスだと分かったので私とミレアさんはすぐに彼女の側に行き。彼女が目覚めるまで待つことにしたのである。それからしばらくしてから、リリスは目覚めた。その瞳は虚ろな目をしていたものの、しっかりと私を見て。すぐに涙を流し始めたのである。私はリリスに話しかけようとするが、それよりも先に彼女からの感謝の言葉を受けたのである。

リリスが落ち着きを取り戻すまで待ち、それからリリスにどうしてここにきたのかを説明した。最初は驚いていた様子だったリリスだったが、私が嘘をついていないことが分かったらしく、リリスは魔王と私を会わせると言ってくれたのだった。そして私はリリスと一緒に魔王の元に向かうのだった。リリスに魔王の元へ連れてこられた後、私が目にしたものは眠っている魔王の姿で。私が魔王に呼びかけても魔王は起きてくれず。その事に疑問を感じていたらリリスから真実を聞かされる。その話を聞いた私は怒りがこみ上げてきたのだ。

だがその感情をぶつける相手は目の前の魔王ではないと悟り、リリスと魔王の関係を聞いたあと。その魔王にリリスは本当に愛情を抱いていたことを確認してから、その思いを魔王に伝えることに決めるのであった。その前にまずはこの世界を救う為に戦うことを決意するのであった。そして私はリリスと協力する形で戦いに臨むのであった。その途中で私はリリスに自分の気持ちを伝えたのだ。その言葉を聞いたリリスは驚きの表情を見せ、そのあとに少し考え事をしたあとで私に感謝の言葉を伝えてきた。

私と魔王の戦いは苛烈を極めたが、リリスの機転によって魔王を倒すことに成功したのである。その結果に安堵しながら、魔王との戦いが終わりを迎える。すると私の元にリリスが現れたのである。彼女は、私と魔王の関係について知りたがっているようで、その事を聞かれると私は答えたのだ。そして私はリリスに魔王への告白を頼んだのである。そのあとは魔王が起きるのを待つことしかできなかったが、しばらくしてからリリスが魔王に私達の存在を告げる。するとすぐに目を覚まし。私はすぐにリリスの元に向かおうとしたが。それを魔王に止められてしまう。

だがそこでリリスが魔王に抱きついた事で私は動揺し。魔王に自分の想いをぶつけたのだ。魔王は困惑していたみたいだが、その言葉を真剣に聞いてくれる。そして魔王は自分の本音を私に伝えてきてくれて、それがすごく嬉しかったのだ。

その後、リリスはリリスなりの思いが伝わったようで、リリスから魔王に対してのプロポーズが行われたのであった。魔王はそれを受ける覚悟があると答えたのである。そして私は、リリスに、自分の代わりに魔王に気持ちを伝えられるかを確認すると、リリスはそれを承諾してくれたのだ。私はリリスと魔王の間に結ばれた愛の深さを知ることが出来た気がするのであった。

僕は夢を見始めると。そこには、僕がよく知っている少女と魔王の姿があり、僕たちは楽しげに談笑している姿が映し出されていたのだ。僕はそれを見た時に、なぜか胸の奥が苦しくなるのを感じてしまう。そんな僕の様子を心配してリゼさんとミレアが駆け寄ってくるが。その瞬間に映像が切り替わる。今度はリザという女性に魔王が襲われそうになっており。そこにリリシアが現れて助けたのだ。しかし、その直後に現れた人物に魔王は倒されてしまい。僕の体は徐々に消滅していく感覚を覚える。そして、最後に残ったリザと呼ばれた女性がこちらに振り返り、こちらに向かって何かを訴えかけるが、僕は意識を失い。その女性の最後を見ることが出来なかったのだった。

魔王との会話を終えた俺とアリサさんがリリスの方を見ると。二人はなぜか感動したように涙を流していたのである。俺はなぜ二人から涙が出ているのかが分からなかったのだが、とりあえずは魔王の体に何が起きたのかを聞く事にして。その後には二人と今後の事を話すことになった。そして、その前に魔王の状態をどうにかしないとダメだと思ったのだ。そのため俺は、二人の手を掴み。俺の中にある力を解放する。

私はリリスとリリシアの二人が仲良くなっている様子を見守りながらあることを考えてしまう。リリスが私の方を見て。私にも魔王のことを好きになって欲しいと言い出すのではないかと不安になっていたのだ。そんな状況の中で、魔王が私の方を見てきたのである。そんな彼に視線を合わせると彼は優しく微笑みかけてくれたので、私もそれに応えられるよう笑顔を作ったのだった。

「魔王様。これからどうします?」

俺達が話し合いをしている間。俺の膝の上で眠り続けていたリリスを俺のベットに移してから俺は、魔王に今後の事を確認してみたのだ。だが魔王から帰ってきた言葉はあまり要領の得ないものであったのだ。だが魔王はどうやらリリスの事を考え続けているようだ。

魔王はリリスが自分の意思とは関係なく。魔王城に封印されていることを知ったことで。自分がなぜあそこまで取り乱したのかを思い出しているようである。その事が魔王の記憶を取り戻したいと思う理由でもあったのだが。俺は魔王にそのことについて聞こうとする。だがその直前に魔王が口を開いたので俺は慌てて耳を傾けることにした。

俺はその言葉を聞いて驚くことになる。魔王の言った内容があまりにも予想外で信じたくない内容だったからだ。それは魔王の記憶が戻らない原因と、その解決方法にリリスが関わっていたからである。そのリリスは今、リリスの部屋で寝息を立てながら眠っているのを俺は見ていたからだ。俺は魔王からリリスの過去について聞き出したあと。彼女の元へ向かう事にしたのである。だがそんな時にリリスを救いに行った際に感じたあの感覚が再び訪れたのであった。だが今回は前回とは違い、あの感覚が訪れたと同時に。その正体を一瞬で見破ることが出来ていた。

それは魔王に危機が迫っていると。その予感の正体にたどり着いた時だった。だが、その気配の主が誰なのか分からないのだ。しかもその人物はこの王都の中に存在していて、さらに言うなら。この場所の近くに存在していることが分かのだ。だからこそ俺は魔王の元から離れ。リリスに危険を知らせるためリリスの元に向かうことにしたのだった。その最中でリリアとも遭遇することになる。その時の彼女の様子は普段の彼女からは想像できないほど焦っていたのだ。なのでリリスがどこにいるのか尋ねると。リリスは現在。魔族の兵隊と交戦中で。敵はリリスを殺す気がないようなので今のところ無事だとリリアから教えてもらったのだ。

リリアと分かれた後。俺は急いで魔王の部屋に駆けつけるが。部屋の中からは既に誰もおらず。ただ床に散らばった血痕だけが残されていたのである。この場に残された魔力を探ってみると。かなり遠くまで転移魔法を発動したことも分かり。俺も転移魔法の発動を試みるが、その途中で何者かから襲撃を受けてしまう。だがそれもなんとか凌ぎきり。再び魔王の元へ向かおうと試みた。だがそこでリゼさんの妨害に遭い俺はその場を動けなくなってしまう。

そしてリーゼは、リリスを助けに向かい走り出し。私はそんな彼女を援護するため動き出そうとするが。そこでミレアに制止させられる。私達は魔王からの指示に従うためにも、まずは私達が戦う相手と話をつける必要があると説明を受けて。それからは私達も魔王城へ向かい戦いに挑む準備を始めたのである。その道中での話で。私達の魔王に対する感情の変化をミレアは指摘されてしまい。私は少し照れながらも否定はしなかったのである。

私が魔王の元へ向かっていると。その魔王の元に辿り着いたリリスと鉢合わせしてしまう。その彼女は何故か泣きじゃくっており。一体彼女に何があったのか聞くが。彼女はまともに答えてくれずに魔王の元に向かうと告げてきたのだった。そんな彼女を止めることはせず私は、魔王の元へ案内をお願いしたのだ。それから魔王にリリスがたどり着き。私がその後に続く。リリスはすぐにリリスを呼び起こそうとすると。そのリリスの行動に対して、魔王は驚き戸惑っているようで。そんな彼を放置してリリスは強引にリリスを起こしてしまう。そしてリリスから、魔王との記憶がない事を伝えられた私は。自分の行動が正しいのか分からなくなり困惑してしまったのである。その事を知ったリリスは自分の行動を後悔しているようで落ち込んでしまい。魔王がそんなリリスに対して声をかけるも。やはりリリスは何も答えることなく。魔王から離れてどこかへ姿を消してしまったのであった。その事に私は非常に困ってしまうが。それでもリリスを一人にするわけにもいかないので、魔王に事情を説明して、私も同行する事にしたのであった。

私と魔王は二人でリリスの後を追いかけることになったが。私はまだ魔王との付き合い方を迷っていて。そんな状態のままでいいのかと悩んでいたのだ。そんな中で私達はついに、魔王城を目の前にすることに成功していたのである。その時にはもう既にリリスとリリスは戦闘を開始したようで。リリスの声と思われる音がここまで聞こえてきてしまっていたのだ。そんな状態で私達が魔王城の中に突入すると。私達に襲いかかってくるのは無数のモンスターたちであり。私と魔王はそれを切り抜けることに専念しなければいけなかったのだ。そして、何とかリリスのもとにたどり着けた私は、リリスの手助けをしてあげたいと思ってしまった。その結果として、私はリリスと一緒にリリスが倒した敵を一掃しに行くことにしたのである。

その途中で、魔王が何か言いたげにしているのを感じ。魔王が何か言おうとした時に、私はリリスを呼んで、二人同時に相手をすると言う作戦を提案し。私はそれを承諾してもらうことに成功したのだ。そしてリリスと魔王に攻撃をしかけて来た奴らを一蹴して、私とリリスで魔王とリリスのフォローを行うことになったのである。そして私達四人は魔王城に潜り込み。奥へと進んで行くとそこには巨大な門が存在しており。そこを開けるとそこは大広間になっていて、そこには私に襲いかかって来た女性。リザとリリシア。そしてあの時私達の前に現れて、魔王を殺しにきたという少年がいたのである。そしてリリスはその少年を見ると私に魔王に告白しろと言い始めたのだ。

その言葉に私の心臓は早鐘のように脈打ち、私は自分の頬に汗が伝うのを感じた。私は、リリスがなぜ魔王に告白するように指示を出したのか。私は、リリスが私の知らないうちに魔王と特別な関係を築けていたことにショックを受けてしまい。どうしてそんな大切なことを相談してくれなかったのかと憤りを感じていたのである。そんな状況で私に魔王への想いを吐露してきてくれた魔王に。私は、私の想いを伝えることができたのだ。だがそんな時に魔王がリリスの様子が変だと告げると、その直後の出来事に私は驚愕する事になる。それは魔王を救ってくれたリリスの姿にだ。

私はリリスに近づこうと思ったのだが。その直前に、リリスは何かを感じ取ったように突然その場を駆け出す。だがその先にはリザと、彼女が召喚したらしい魔人の姿があり。しかもその二人はなぜか魔王の姿を見つけると嬉しそうにして、攻撃を仕掛けようとしてきたのである。そしてそんな二人を止めに入ったのは、あの時、私と魔王の前に現れた少年だった。その光景を見て。魔王に何かが起こるかもしれないと思った私は魔王の方を見ると。魔王もどうしたら良いのか分からず狼籍えており。その表情を見て私の胸は締め付けられるような思いを抱くが。私は私なりにできることをやろうと思ったのだ。

それからはリリスが魔王に助けを求めるように仕向けるのを黙々と眺めているしかなかった。だけどその時。リザから魔王が何者かに助けられて記憶を失ったと言う事を聞かされて私は魔王の側に駆けつけることを決意する。だが魔王を救いに向かった先で、私は魔王の体に触れる前に誰かに吹き飛ばされてしまい。その攻撃に気を失いそうになる。だが魔王がリリスに向かって行ったことでなんとか魔王を助けることが出来た。そのあとは魔王の言葉を聞き入れながらなんとか態勢を整えることに成功して。そこで私は自分が今までずっと魔王に甘えて来ていたことに気づき、自分を見つめ直すためにも。魔王から少しの間離れることにしたのだった。そしてそんな時に魔人が襲いかかってきて。魔王はそれに対処しようと試みるが。リリスの暴走によって窮地に追い込まれてしまう。その事に慌てる魔王に、今度は魔王を襲っていた女性が魔王を襲いかかり。その女性は魔族を統べる魔王だと知って私は混乱してしまい。魔王を守るために動くことが出来ない。そんな状態の魔王にリリスの攻撃が当たりそうなのを見た私は。咄嵯の行動に出てしまう。私はそのまま魔王を突き飛ばして。リリスとリゼの攻撃を回避することに成功するが。その際に腕を切られてしまい。そこで私は魔王が何者かに襲われていることに気づくことになる。だが魔王を襲う敵の正体を知ることは出来ない。なぜならその敵は私の目に映らなかったからだ。

そんな時。魔王を何者かが助けに入り、魔王は助かるのだが、その者は、その魔王を庇った私を邪魔だと思い殺しに来たのか。もしくは、その者が魔王を殺そうとしたが。そこに現れた魔王に止められた事で、その行動を取り止めたのか。そのどちらかの可能性が高いと思っていた。

しかし私が魔王の元に駆けつけると、そこには、あの時に魔王に命を救われていた。あの男がいたのだ。

私は、私を救い。さらに魔王の命をも救い。そのついでで、私達の魔王の命までも救ってくれたこの男性に感謝をしていた。だから私に危害を加えてきた魔人のことは気にせずに魔王を救うべく行動する。だが魔人からは簡単には逃げられる訳もなくて。私は魔人を足止めするために動き回るしかない状態に陥る。そんな中で、ミレアが加勢に来てくれたお陰で、その隙を突いて逃げ出す事に成功し、ようやく安全な場所にたどり着くことが出来たのであった。その途中でも、あの時の男が姿を現したがその事はとりあえず置いておき。私もあの少年について調べる必要があると考えていたら魔王が現れてくれて。そして私は彼を信じても良いと判断して彼に全てを預ける事にしたのだ。その結果として私達の仲間に加わった彼は。私の思っていた通りの人物で、彼の事を信頼することができたのだ! そんな事を考えていながら歩いていると目的地に到着していて。リザは、私達と向かい合う形で立っていたのである。彼女は相変わらず何を考えているのかよく分からない感じであったのだが。私が声をかけるより早く彼女は、ミレニーに視線を向けたかと思うと、いきなり魔法を行使し始めたのだ。

私が慌ててその行動をやめさせようとすると。リザからリリアの知り合いであると言われてしまい。私とリゼでそのリリアという人を呼び出すことになってしまったのである。

そしてすぐにそのリリアという人物が駆けつけてくれて、私達はその人物と一緒に、アリンが眠っている部屋へと向かうことにしたのだ。その際もリザがこちらの様子をうかがっているのがわかり私は警戒してしまう。だがその途中、リザは私に話しかけてきたのである。その内容は、リリシアが私の元を訪れているという話をされて私は動揺した。まさかその話が出てくるとは思っていなくて私は、彼女にリリスが目覚めていない理由を話すが彼女は納得していないようだった。

その話に、私は不安を抱きつつも。そのリリシアという人物に心当たりがあった。それは私の妹であるリリスの妹のリリアのはずなのだが。リリシアは一体何者なのか疑問を抱いてしまったのだ。

私は、リリシアに話をするため。彼女がいるであろう場所へ向かうと。そこで彼女を見つけたのだが。リリスと、リディアと、そしてその隣にいるのは、おそらく勇者のユウト君なのだろう。その三名が一緒にいて何の話をしているのかと思い。盗み聞きをするとリリスがリディアに何かを頼んでいたので、もしかすると私達が知らない間にリリスはリリスなりの覚悟を持って今回の事件に臨んでいるのだろうと察することが出来た。そしてリリスはその事を確認するためだけに、ここに来ていたのだろう。それを知った上で私はリリスにこれからの戦いの無事を願ってあげた。そんなリリスに、リリスに頼まれたのかリリスを元気づけるためかはわからないが。リリシアとミレアの二人が私に話しかけてきてくれたので。私もそれに応じて三人での会話を始めることにする。そしてその中でリリシスのことを聞かれてしまい、そこで初めて会ったと嘘をつくがリリシアの質問責めにあい。その事がリリシアに伝わることになってしまう。リリシアにリリスの事を教えるわけには行かないから仕方がないのだ。そして私は、私の妹のリリシアについても聞いてみたがリリシアについては何もわからなかったのだ。

それからしばらくして、リリシアはその場を離れようとするが。それを止めたのはリリシアではなくて魔王の方で、私はその光景に驚いていたのだ。私はその時、なぜ魔王はリリシアを止めたんだろうかと不思議に思ってしまったが。その理由は魔王の言葉を聞いた後に理解することが出来た。その言葉は、あの時のあの少年に対しての言葉だったのだが。その時に私は、なぜその少年はリリスを助けたのに魔王を襲ったのかと疑問を抱いていたのである。そしてその少年は魔人を引き連れて魔王に攻撃しようとしていたのである。私はリリスを守るために動こうとしたが。私ではリリスを守ることができない。だがその時にはもうすでに手遅れになってしまっていて。その攻撃によって魔王の体に異変が起きたのか魔王の姿が一瞬だけ消えてしまい、リリシアがその事に気付いたらしく、私は魔王に攻撃が当たる直前に魔王の手を引っ張り回避する事に成功したのだ。だがそんな私達を見てリリスの様子がおかしいと魔王は言うが。私もその時に気付いていた。リリスの雰囲気が明らかに変化していて、まるで別人のようになっている事に。そして魔王がそのことに気付いてくれて本当によかったと安堵した。なぜならもしリリスの変化を、魔王以外の全員が知っていたなら。間違いなくリリスが私達に敵対し始めていたはずだからである。そうなっていたらきっと魔王の命は確実に無かったはずである。それだけは阻止できたのだから良しとしなければいけないのだろう。そう考える事ができたのである。だがその直後の出来事だった。突然、あの少年が現れて、リリスに何かをするが、その直後。リリスの口から魔王に対する宣戦布告をされてしまったのだ。私はその事に愕然としてしまい動けなくなってしまった。そのせいもあってリリシアが暴走を始めてしまったのだ。

だがそんな状況でも、魔王が何とかしてくれると信じて私とリリシアの動きを抑える事に専念していると。やはり魔王がどうにかしてくれたので安心していたのだが。魔王がなぜかリリスに向かって行きリリスを助けるべく動いている姿を見てしまい、私は魔王を疑う気持ちが生まれていたのだ。なぜなら、魔王にリリスを託されたのはリリスが私よりも信用を置いているからであり。魔王はリリスを救おうと行動していたが。魔王を襲ってきた相手は、魔王を殺すつもりだったと私も思うからだ。だがその時、私はリリスの言葉を思い出して、あのリリスは偽物だと言い聞かせて、目の前の状況に集中して魔王を手助けしようと考える。しかし、魔王の事を一番良く知っているはずのリリシアの妨害を受けてしまい、思うように動けなかった。そしてリリシスに隙が出来たので私は彼女の元へ向かい攻撃をするが。リリシアに邪魔をされてしまう。それから何度もリリスを助けるべくリリスを攻撃している魔王を助けるために動くが上手くいかない状態が続いていた。しかしそんな状況の中で、突如、魔王をリリスから引き離すことに成功して。私はようやく落ち着く事に成功するのであった。その後。私はリリスをなんとか正気に戻そうと頑張ったが無駄に終わるのであった。そんなこんなで私達は魔王が戻ってくるまでこの城の人達を安全なところに避難させるために動いていたが、途中でリゼと合流して協力してもらう事になっていた。

私はそこでミレアとレイナさんと出会っていた。どうやらミレア達もあの時に現れたリリスと名乗るリリスではないリリスについて何かを知っているみたいで。リリシアは、魔王の妹らしいと言うのである。私はそこで疑問に思っていた。その事をリゼも口に出して魔王に尋ねていたが答えが帰ってこないので困ったような顔をする。だけどそこに現れた魔王が私の問いかけに応えてくれた。なんでも、ミレアが助けてくれている少女こそ本物のリリスらしいのだが、今は意識不明の状態で眠り続けているようだと教えてくれる。そして魔王はそれだけではなく、その魔王に襲いかかってきた女性こそがミレニーの言うリリス本人で、リリサスの正体を魔王は知って、リリリスのフリをしていたそうだ。その事を魔王から聞かされた私は混乱したが。リゼがリリアを仲間に引き入れて、リリシアの正体を暴くために協力してもらえることになったのだ。

そのリリアは今どこにいるのかという質問をミレアが魔王にするが、そのリリアはすでに私達が保護していて。安全な場所に移動させた後でここに来ると言っていたみたいなので、その話を聞いて私は少しだけ胸を撫で下ろすことが出来たのであった。だがその瞬間。あの少年が現れたのだ! しかもその少年の側には、リリシアと思われる女性が立っており私は慌てて警戒してしまったのだが。そんな事を考えている暇も無くて。私は、この部屋で暴れ回る二人の力に圧倒されていたのだ。その戦闘の余波は私達にも及んでいたのだが。そんな中で私は魔王がその二人を抑え込もうとしているのを目にして私は加勢しようと動き出したが、ミレアの方に気が向いており私はミレアの行動を止めることが出来なかったのである。

そしてミレアのその行為は私の想定外なものであり。リリアを、いやその体に入っているのであろう人物を傷つけてしまう恐れもあったのに、その事に全く気づいていないようで、そんなミレアの行為を見て、私は怒りのあまりその行為を制止させようと動いたのだ。だが私は、私より先にミレアの元にたどり着いた人物がいたのである。その人物とは魔王であり、その魔王はリリアではなく、リリスを助けようとしており、それを見た私はリリアの体を心配するのではなく。魔王が怪我をしそうになった際にその事を心配しないといけなくなったという複雑な心境になってしまい。

それでもそのリリアという人物が傷ついてはいけないと考え魔王と争う事になるが、結局はその人物が圧倒的な強さを見せつけてきて私は魔王と離れる事になってしまったのだ。それからはリリスがリリアに攻撃を仕掛けたり、その攻撃を避けながら攻撃をしたりで大変だったが、私が援護に入る事でようやく戦況が落ち着きを取り戻したと思ったその時、その女性は急に苦しみ出し始めたのだ! それからすぐにリリシアの体に入っていた人物が倒れて、魔王は、急いでリリスの元へ駆け寄り、そのあとで私は気を失ったのである。だがすぐに目覚めることができた。そして目覚めてからすぐにミレアと魔王と合流し、ミリスを救出に行こうとしたが、既にミリスは目を覚ましており魔王とミレアとリリスがミリスの説得を始めた。だがリリスはそれを頑なに拒絶したのであった。そんなやり取りをしている時に私はある事に気づくことができた。そのミリスに説得をしているのは魔王とリリスであって、リリシアとリリシアの姿をしたものは黙っているだけで何もしていないのだと。そんな状況を見ていた私はリリスと目が合ってしまい嫌な予感を覚えてしまい、そこで、私は自分の意思に関係なく口を動かされてリリスと会話をさせられる事になり、そこで私は、これから何が起こるのかを聞かされたのである。その話を要約するとこうだった。私はこれから先。リリシアに殺される未来があり。その時に私の魂だけが肉体から抜け出し魔王の中に入ってしまい、その事が原因で魔王に私の記憶が流れ込み魔王の精神を壊すことになると。そして、これから行われる儀式が失敗してしまうと私は命を落とすことになってしまうと聞かされ私は怖くなりその場から離れようとするが体が動かなかった。その時に魔王が私の元に現れて私を守ってくれる。

だがその時にリリスと魔王は何か言い争いをしており。魔王はすぐに立ち去るようにと促していた。そして魔王の言葉を聞いた直後に、私は意識を失ってしまったのだ。そして次に目覚めた時は見知らぬ部屋のベッドの上で横になっており私は起き上がり周りを確認するとそこには誰もいなかった。私は、その時になって初めて、ここが自分のいた世界とは違う事に気づき、自分が別の世界の別の場所に来てしまったんだということを理解したのだった。

「あははははっ! もうこれであなた達は私達の思い通りに動かせる駒を手に入れたのよね? でもその前に私からお願いがあるんだけどいいかしら?」と言ってきたのはリディアであり。彼女は目の前にいる僕に対してこんな要求を口にしてきたのである。その内容と言うのは、まずはこの城の中で過ごしてほしいという内容で。そして、僕の側に付きっきりの者を用意するが絶対に危害を加えないようにしてほしいと言われたのだ。その言葉を聞いて、リゼはリリスを疑っていたが、その言葉は、この国では有名な魔族の血を引く一族の末裔だと言われてしまっては、信じるしかないだろうと判断したようであった。

リゼは僕とリリシアに説明をして納得してくれてリリシアもしぶしぶだが、一応は承諾してくれた。しかしそれからしばらくしてから突然。この城の兵士達が次々と苦しみだし始めて。リリスは慌てだしてしまい、その原因を調べるべく行動をしようとした時だった。

僕はリリスに抱きつかれてしまったのである。その行動によって僕がリリスに殺されかけたことは記憶に新しい出来事だった。だけどそんな事をしたにも関わらず。なぜ僕を抱き締めてきたのかが理解できないでいるとリリスの方からも事情の説明をしてくれることになる。どうやら魔王と敵対している勢力の連中が来たみたいで、それがリリス達を狙っているのかもしれないとリリゼに言われてしまい、僕は慌てて彼女を連れて避難する事にしたのであった。だけどそんな時でも兵士の人たちの事は気になったけどリリシアの事も心配だったのだ。だが、そのリリシアは既に姿を消していたのである。おそらくこの騒動の渦中に自ら飛び込んでいったのだろうと予想していた。そう考えれば彼女が消えていたのは自然なことであり。だからこそ彼女の無事を祈りつつリリスに着いて行きリリスが向かった方向へと進むのである。だがその場所というのが最悪で。まさかこんな場所で戦闘が始まるだなんて思ってもみなかった。その相手というのは勇者を名乗る者達と、それとは別にもう一人男がいたのである。そんな敵と戦う為に、リリスの魔法により生み出された大量の魔物達が押し寄せてきてしまい。その戦いの中で。敵の増援としてやって来た男が、なぜかは分からないがリリシアによく似た容姿の女の子を連れた男だということに気付き驚いたが。それはリリアの姿を見て、この国の王女であることを思い出し、そのせいでリリスが混乱してしまったのだ! その混乱の隙をついて敵の攻撃が僕達に襲いかかってきたが。そこでリリスに助けてもらった。その後はリリスのおかげでどうにかなったのであった。そんな感じで僕達もなんとか敵を蹴散らして事なきを得たのであった。

その後。リリスは一人で、リリシアの行方を探すと言い出してしまい、そのことに反対をしたが。そんなリゼの意見を聞き入れない状況が続きどうしようもなくて、そのまま別れることになってしまった。それから数時間後。再びリリスが現れて城に残っていた人達を集めてくれと言われてしまう。そして集まった人々を前にしてリリスは語り始めたのだ! その言葉とは、この国に、かつて大賢者と呼ばれた魔法使いがいたのだが、魔王を封印するために自らを犠牲にしてしまい亡くなってしまいましたと言う内容から始まったのである。

私はあの少年のことをずっと考えていたのだが答えが出ることはなかったのだ!

(どうして私を助けたんですかね? あの子なら確実にあの女を殺しに行くはずなのに、それにしても、やっぱりどこかで見たことがあるような気がするんですよね)

私は少年が言っていたリリスという名前がどうしても気になっていたのである。リリスと言えば確かリリアが話をしていた気がするが。詳しい事までは覚えていないが、その名前が出てきた時には嫌な予感しかしなかったのは確かだった。その時に私は、その話を聞いていたリリアの顔を見て、何故かわからないが恐怖を感じていた事を覚えている。だから少年の事が引っかかっていて仕方がなかったのだ。だがそれでもその疑問に結論が出ないまま時間だけが過ぎていって。私はその少年に話しかけることにした。

「君はリリアの友人なんだよねぇ? えっと」と私が質問すると彼は首を傾げながらもこちらを向いてくれてそして笑顔を浮かべてくれたのである。その表情が私にとっては意外で私はつい嬉しくなってしまい。それで少し緊張しながらも話を続けることにしたのだ。

「私はリリアの妹のミリスと申します。あの時はお姉ちゃんの知り合いだと勘違いをしたとはいえ、失礼な態度をとってごめんなさい!」と私は謝罪をする。その私の言葉を聞いてその男の子は慌てるが、私は続けて話すことにする。

「実は私とリリアさんはとても親しい間柄なのです。私と彼女は昔からとても仲が良くて一緒に過ごした時間は一番多かったかもしれません。私はいつも彼女に振り回されてばかりだったけど。でもその度に私は楽しく過ごすことができていて、そしてそんな日々がこれから先、いつまでも続くと思っていたのです。ですがそんな幸せな日常は突然終わりを迎えてしまい。私の大好きなお姉ちゃんはその日に居なくなってしまいました。それからは毎日のように涙を流し。私も悲しんでいました。だけどそんな中に突然現れた貴方に私は興味を持ちました。そして私は知りたかった。そのリリアさんという人が今どこにいるのかを! 私はそれから必死に調べて。ついに彼女の居場所を知ることができたんです! そして私は会いに行き、そこで彼女の変わり果てた姿を見てしまい。私は全てを知ってしまい絶望しました。だって、彼女は、もう死んでしまっていたから、私が憧れ尊敬したリリアさんの本当の正体を知ったから! 私にとってリリアさんとは憧れの存在でもあり。私に魔法を教えてくださった先生でもあるのです。私はその人のようになりたいと強く願い努力を重ねていき。遂に念願のリリアさんの使っていた魔法の技を習得することができた! だけど私の実力はまだまだ未熟で。結局はこの国を守り抜くこともできずに、無力なまま逃げてきてしまった。その事に私は罪悪感を抱きながら、でもそれ以上に、リディアという存在に私は恐怖を感じてしまった! だからもう私にできることはないと分かっていても私は城に戻って戦おうと思い立ち。そしてここまで戻って来たんだ!」と言って、私はその言葉を最後に口を閉じた。すると私の話を静かに聞いてくれた彼は私にこんな提案をしてきてくれたのである。私はその発言に驚いていた。何故ならば、リリスと名乗った少女が私のことをリリアだと勘違いして。しかも、私がリリアに変装していることがすぐにばれてしまったからである。その事に私は驚きながらも冷静に考えを巡らせていた。なぜなら、もしここでこの子が本当にリリスだとしたら、間違いなく私よりも遥かに強いということになるからだ。だから、もしもの場合を考えつつ、でもそれをおくびにもださずに私はこう口にした。「リリス。あなたがリリアの妹さんなのは間違いないのですね?」

僕はリリシアからそんな言葉を言われたことに驚きを隠せない状態に陥ってしまう。だが僕はその事には触れず、今はこの場にいるリリアに化けた女性をどうにかしなければならないと考えていたのだ。そして僕がそんな風にリリシアの事を警戒をしていると、彼女は突然僕の手を掴み握り締めてきて僕のことを見てくすりと笑ってきたのである。その行動に対して僕は困惑しながら、リリシアの手を振り払うと彼女はこんな事を言ってきた。

「やはりこの程度では騙されませんか。では今度は私に身を任せてください」と言うと、リリシアの姿から一瞬にして姿を変えて僕の前に現れた。

その女性は美しい金髪をツインテールにしており。その顔はまるで天使のような美しさを誇っていた。そして彼女の容姿の特徴はその瞳で、髪色と同じく金色の瞳をしていたのである。

その女性がいきなり自分の服に手をかけ始めると、その行為を目にしてしまった周囲の兵士達は騒ぎ始めてしまい。リゼもリリシアもリリスでさえも顔を赤くさせており。僕は恥ずかしい気持ちを抑え込みつつ目の前の女性に話しかける。

僕はまずその女性の目的を聞くことにしたのだ。僕がそう質問すると目の前の女の子は笑いながら答えてくれる。その表情はまるでいたずらっ子が、僕に意地悪している時のそれだった。だから僕はその態度にムカつきはしたが、それよりも重要な事を聞かなければならない為。怒りを抑えて彼女に質問をする事にした。その目的はリリリアに会うことなのかと尋ねると、目の前の少女は自分の名前を明かしてきたのである。

その名はリリアと名乗り。僕はその名前を聞いて驚いたが、どうやら彼女が本物のリリシアでは無く、リリスという名前を名乗っている人物なのだと言うことは理解できた。だからこそ僕は、そのリリスと名乗るリリシアの妹のリリスの言葉を聞き、彼女がリリアに復讐をしようとしているのではないかと考えたのである。だけどリリスは僕の考えを否定した。そして彼女はこんな話を始めたのであった。それは、彼女の過去に起きた出来事である。それはこの国に住んでいた人達のほとんどが知っている内容であった。そうして彼女が語り出した内容はこの国が魔王の配下に襲われて、多くの人命が失われた出来事についてだ! 彼女は当時まだ幼かったらしいが、リリリアは、この国の為に命を懸けて魔王と対峙することになったそうだ。

その結果。彼女は魔王と相打ちとなり死亡したと言われているが、それはどう見てもリリスが言っていたような結末ではなく。ただの嘘っぱちだった。彼女は魔王と死闘の末、敗北し命を落としたのである。しかしリリスの母親は諦めずに戦い。リリアの遺体に魔法をかけることに成功したのである。その魔法のおかげで彼女は蘇り。リリスの母親と共に戦い抜いたが。その母親も亡くなった。だから彼女は自分一人でリリリアの代わりを務めなければならなかった。だからリリスは自分が偽者だということは言わずにリリリアになりすましたのである。その話をリリスは真剣な眼差しで語ってくれたのである。だがそんな彼女に対し僕は疑問を抱く。なぜそこまでして彼女の母親の行動を無駄にしたくないと思ったのか? 確かにこの話はリリスの母親が娘の仇を討とうとして起こした結果かもしれないが。別に彼女自身に関係あるわけではないはずだ? それに、彼女の話が本当だとすると。リリスとリリアの関係性は何なのだろうかと? 僕はリリスが何を考えているのか分からなかった。それにそもそも魔王を倒したのがリリアなら。どうしてこの国にはまだその魔王が復活していないのにリリスがわざわざ現れたのかが不思議でならなかった。

そしてその答えを知るために僕はリリアが残したと言われる武器を探す為に地下へと降りていった。

私が目を覚ました時。最初に見たのは真っ白な天井であり、私は起き上がろうとした時に全身に痛みが走ったのだ。

(あれ? なんでこんな場所に私は居るの? 私は確か。あの黒い鎧の男の人に斬られてそれで意識を失ってしまったはずなのに。なのに今私の身体はどこも傷ついていなくて。むしろ前よりも調子がいい気がする?)そんなことを考えていると。突然部屋の扉が開く音がした。そしてその部屋に一人の人物が入ってきたのだ。その人は銀色の髪の毛をしており。私と同じ色の髪を持つ人物であった。その人は私の顔を見ると泣き出してしまい私に抱き着いてきてしまった。

私は何が何だか分からず困っていると、私の頭を優しく撫でながら抱きしめてくれているリリスさんと目があったのである。私はその瞬間。全てを思い出したのだ!

(そうよ!私達あの男に捕まってしまっていたのね。あの男に私は首を切られたんだわ)

私はそこで思い出した事実に焦りを覚えて何とかこの拘束から抜け出す方法はないのかと考えようとした。だけどそこで私は違和感を覚えた。何故かしら私の体がリリスさんに包まれていて全然動かせなかったから。その事がどうしても気になった私は声をかけてみることにする。

「あのリリスさん?」

「あぁごめんなさいリリスさん! ごめんなさい! ごめんなさい! 私が弱かったばかりにリリアお姉様を助けられませんでした。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 本当に申し訳ありませんでした」と私の質問には反応してくれずにリリスさんの懺悔は続いた。だから私は何も言わずに黙って彼女のことを見つめ続けたの。だけど、私の視線を感じたリリスさんが突然私の方を振り返ってきて、そこで目が合ってしまう。そして彼女の目には涙が溢れ出し、私の胸に顔を埋めるようにして泣きじゃくり始めてしまったの。私はその光景を目にした時に思った。この子は私が思っているよりもずっと幼いんだなって。だからそんな彼女を私は包み込むようにギュッと力強く抱きしめてあげたの。そしたら、ようやく落ち着いてくれたようで、リリスさんは私から体を離すと、私に謝罪してきたの。

「リリアさんごめんなさい。もう泣かないですから許してください!」

「いえ気にしないでください! それより私こそあなたに謝らないと、私はあなたの妹さんのフリをしてあなたに迷惑を掛けてしまったんですから。ですから、私の方がすみませんと言わなければなりません。本当に私はあなたの妹ではないんですから。それにしてもリリアが生き返ったのは良いけど、まさかリリアにこんな可愛らしい妹がいたなんてびっくりしちゃった」と言って私とリリスさんの二人はお互いに笑顔を見せると、その会話を見ていたリリシアは「えっ!? ちょっと待て、どういうことなんだ? リリスとリリシアは血の繋がりがないのか?」と言いながら慌てだしてしまう。その言葉に私が答えようと口を開く前に、リリスさんはこんな事を言ってくれた。その言葉は衝撃的すぎて私は何も言えない状態になってしまう。だって私にはまだこのリリスが本物なのかは判断がついていないのだから、もしかしたらリリスも私と同じくリリアの振りをしている偽者の可能性があるからだ。

僕は地下通路のさらに下に降りる為の入り口を開けて中に入っていく。そして僕はそのまま先ほどリリスに説明して貰った事を思い出していた。

(まず僕が疑問に思ったのは何故リリスの母親がそこまでして、娘のために行動を起こしたのかということだ。僕にはその事が良く分からず。ただ単にこの国の為を想っていたとか。そう考えることにした。そして僕には更にわからないことがあった。その魔王と呼ばれる存在は魔王本人では無いのだろうと言うこと。つまりリリスの言うとおり魔王は復活をしておらずにリリアが魔王を倒すことができたというのは間違いない。だけどリリスは僕に本当の事を言う気はないようだ。まあ僕としてはその方が都合が良かったのだが。リリスに質問をされた時。僕はその事に全く触れないようにして話を合わせておいた。それに、その話を詳しく聞けば聞く程リリスの事を信じられなくなるからだ。リリスが言ってくる話はどれも信憑性に欠けるような内容でしかなかった。そしてリリシアが魔王を封印して。その魔結晶の力で魔王をこの国に再び召喚させたという事を話していた。しかし、その話の内容ではどうもおかしい所がある。リリスはリリリアがその魔王と戦ったと言っていたが。それではリリリアはその戦いの中で死んでいないということになる。それならどうしてリリリアの遺体が無いのだ? もしかしてその事は誰にも分からないのかもしれないな。そして次にリリリアと僕との関係性について聞いてきたのだ。

それは僕の質問に対してリリスは何も答えてくれなかったが。代わりに僕の質問にリリスが返事をしてくれたのである。リリスの回答によると。僕の事を本物のリリアと勘違いしているのかもしれないなと思った。僕はリリアではなく。リリスに対して自分の名前がリリアだと告げたが。やはりと言うべきか。その返答は違っていて。その事で、僕がこの世界の人ではなく別の世界から来た人間であることを説明する必要が出て来てしまったのである。

それから僕は彼女に、リリスはどうしてこんな所に居たのか? リリシアに恨みを持っているのか等々の事を尋ねたのである。僕の予想だが。このリリスと名乗るリリシアの妹の見た目はリリスより年上だが。中身は子供っぽい気がしたので、僕の問いにも素直に答えてくれると思い質問を投げかけてみた。するとリリスは少し困った表情を見せた後、こんな答え方をするのだ。

「私もこの国に住んでいた人なのですが、あの男のせいで国を離れなければならなかったんです。そして今はこうして隠れて生活をしています。この国は魔王が復活した際に多くの命が失われてしまいました。しかしリリシアが魔王と戦っている間に私は魔王の部下の討伐に成功いたしました。そうすると今度は私の居場所が無くなってしまったのです。魔王が倒される前まではこの国の為に尽くしたいと思っていたんですが。あの男のせいで再び家族を失いそうになっています。そして私はここに逃げてきたというわけ

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異世界で魔王になります! ―未経験勇者の受難記― あずま悠紀 @berute00

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