青タイツ
あぷちろ
彼の名は社畜戦士メイワクマン
彼は私だけのヒーローだ。
青色のタイツで身を包み、丹念にホワイトニングした歯をむき出しにして高笑いする。
私が危機に陥るとさっそうとやってきては問題を物理的に解決してくれる。
「はっはっは、お困りかなお嬢さん!」
そして今もまた、私に訪れた危機を解決しに颯爽と訪れる。
「イエ、コマッテナイデス」
実際は職場で使っているプリンターがいじけてしまって大変困惑しているのであるが、彼に頼むと大抵は碌でもない結果になってしまうので、ここはなるべく目を合わせないようにして何事もなかった風にして顔をそらす。
「お困りかな、お嬢さん」
顔を逸らしていると彼は無駄にハンサムな顔を私の正面へと向ける。
「イイエ、チョットプリンターノ調子ガ悪イダケデス」
「お、こ、ま、り、か、な! お嬢さんッッ!!」
ひそひそと、同僚の同業OLたちがひそひそと彼と私を噂する。
『谷垣さん、またあのタイツ男に絡まれてるわ』
『あのタイツ男ってなんなの』
『社長の甥らしいわよ』
『職業ヒーローやってるらしいわよ』
『谷垣さんも毎度絡まれて大変よね』
『噂で聞いたのだけれど、彼と谷垣さんって付き合っているそうよ』
『え、ほんとう?』
『やーねえ、あくまで噂! 噂よ!』
「オコマリデス……」
これ以上あらぬ噂を広げられても困ると思い、観念して彼の手腕に頼る事にする。
「ハッハッハ! 素直にそう、と言えばよかったのだ。なあに、こんなもの叩けば直る!」
がつん、どがん、ぱらぱら。
何をどうすればこうなるのか、我が職場に設置されて1週間もたたないうちに真新しいプリンターは鉄くずと化したのだ。
「はっは! これでもう思い悩まなくて済むな!」
「はあ……」
彼は私だけのヒーローだ。彼の為す事、それが私にとっての悪行だとしても、彼は私だけを見るヒーローなのだ。
青タイツ あぷちろ @aputiro
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