第16話
「おし、出来た。もう目開けていいぞ~。」
「は~い。」
返事をするのと同時に、
そして、鏡に映った自分の姿を見て少しうっとりした様子になる。そして。
「ひゃぁぁあ!かわいい子が鏡にいるよ~!めっちゃ可愛いぃ~!!!」
そう叫んで急に椅子から立ち上がったと思えば、ぴょんぴょんと跳ね始めた。
「おい、ここそこそこ狭いんだからあまりはしゃぐんじゃねぇぞ。」
「分かってるってぇ~!!」
そう言いながらも
思わず溜息を吐きたくなったが、まあ、楽しそうだし許してやるか。
『お兄ちゃん、そういうとこ弱いよね~。』
『なんだよ、そういうとこって。』
モモは何故かジト目で見てくるが、意味がさっぱり分からない。
まあ、良いか。
「
どうやら凛の性格はあんな感じで行くらしい。名前に似合わねぇ性格な気もするが、まあ、名前と性格が合い過ぎてるのもかえって変だし、いいか。
そう思い、道具の片づけは
ホールに着くと、すでに依頼人と
「あっ、も~早くしてよぉ!もうほとんど打ち合わせ終わっちゃったんだからねぇ~!!遅い!とっても遅い!」
側に行けば、凛に滅茶苦茶怒られた。でも怖くねぇな、演技だし。
若干本心が混ざっている気がしないでもないが。
「悪かったよ。で、詳細は決まったのか?実際現場に行くのは君らだし、本人たちが一番理解していなきゃいけないわけだが。」
俺も凛に接している、という演技として、三人称やたとえの使い方、言い回しなどを多少変える。後で依頼人と一緒に
「うんうん、それはも~だいじょ~ぶだよ~!!!」
まるで女子高生のようなテンションだ。
「まあ、ならいいが。凛、君はいいとして、依頼人の方は分かっているのか?君は思い込みをしやすいし、そのテンションで相手を圧倒してしまって無理をさせることが多いだろ。一緒に確認しないと心配だ。」
実際、普段の
「えぇ~だぁいじょぉぶだってぇ~ねぇ~?
何やらこのキャラは伸びる音が多くて接しづらい。嫌いな性格のタイプだ。
「あ、はい、大丈夫です。凛さん―「凛ね。」―あ、えと、凛…は―「あと敬語はなし。」―あ、えとえと、うんと、凛は、私の昔の同級生ってことにして、街でたまたま久しぶりに再会して、色々話すっていうのが始まりで、えと、そのあとは凛が街のショッピングとかに誘ってくれて、あとは身を任せてくれれば、それでいいと…。」
なるほどな。てか、凛、口挟みすぎだろ。
「なるほど、承知しました。依頼人の方もちゃんと理解されているようですし、流れとしても悪くないです。身を任せるというのは、変に演技というのがなくなって、相手にも感づかれにくくなりますから、良い手と言えるでしょう。…そうですね、はい、承知しました。」
俺はとりあえずこんな感じのキャラで行くか。面識の薄い相手には敬語で物腰柔らかに。血縁、友人等には崩れた強気の口調で。我ながら変な奴だな。
「では、本日はもう外も暗くなってきましたし、顔合わせと打ち合わせだけで終わらせてしまいましょう。次回会う日程は、どうされましょうか。おそらく次回は場所を指定の上、実際に今回打ち合せされた内容を実行するという形になりますが。」
とりあえず依頼人にはそう伝える。あらかじめ空いている日程は把握しておきたい。
「あ、じゃあ、来週の月曜日でも大丈夫でしょうか。最近仕事の方が忙しくなってきていて、上司に休みを取れと、有休を入れられてしまって…特にすることが無いので、その日程でお願いしたいです。」
めちゃめちゃホワイトな環境で仕事してるな、この人。
まあ、情報としては仕事に生きがいとやりがいを感じていて、天職だと自他共に認めるほどの才能と業績の良さらしいから、会社も離したくないんだろう。
………あまりに、綺麗で出来過ぎているがな。
「承知しました。では、その日程で行えるよう、こちらでも準備を進めてまいります。その間に何かございましたら、こちらまでご連絡ください。」
そう言って、魔法社会になって当たり前になった通信魔法陣を依頼人の手のひらに描いた。その後、透明になる。ただ、依頼人には見える仕様だ。
「あ、ありがとうございます…でも、これ、他の方に見えてしまいませんか?」
「ああ、そこは大丈夫ですよ。何も心配はいりません。」
「そ、そうですか…。」
彼女は不安そうだが、仕組みを明かすということはそれすなわち身元を明かすことと同義。大変危険で、落下可能性100%の綱渡りだ。
それに、彼女はなんだか危険な香りがする。
絶対に、細大漏らさず隠さなければならない。
『コウ、空気が張り詰めてるよ。バレちゃう。』
『ああ、悪い、ついな。』
モモはなんだかんだで勘が鋭いので、俺と同じようなことを感じ取っていたらしい。
『危険な綱渡りだけど、本当にやるの?対価と代償が見合わない。』
『ああ、やるさ。これを逃したら、また情報が回ってくるのは……大体十年後だな。そんなとこまで待っていられない。』
『そう…。』
モモはそれ以上聞くことはなく、凛と依頼人の会話を眺め始める。
すると丁度会話は終わった。
『タイミング悪っ。』
『そう言うな。』
「では、本当に、ありがとうございました。何もかもやっていただいて…。」
「いやぁ~気にしないでぇ~!!これが私たちのお仕事なのでぇす!」
なんか、段々ひどくなってきてないか?テンション上がり過ぎたか?
「それに、まだこの依頼は終わっていませんよ。お礼なら、この依頼が成功したときに言ってください。今言われても……困ってしまいます。」
そう、この依頼は終わっていない。なのに感謝を言われても、困ってしまう。
だが、彼女は言った。
「いえ、もう、これだけで十分です。ありがとうございました。」
凛も
『『やっぱり。』』
彼女の姿が見えなくなった後、俺はそう呟いた。
モモも気づいていたようで、そう声が揃う。
『危険だね。』
『危険だな。』
盗聴器、盗聴魔法、その他諸々の心配を考慮し、俺はモモと会話する。
『あの女、なんか隠してる。用心した方がいいよ、コウ。』
『分かってるよ、モモ。』
久々の感覚に思わず笑みが零れそうになったが、そんな状況ではないため我慢した。
なんだか、楽しくなりそうだ。
最後には結局、笑ってしまった。
俺の恋人は現在幽霊 黒白ノ巫女 @kokubyakunomiko
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