第15話

『準備⁉準備って何するの⁉ってかさっきのあれ何⁉』

隣でモモが騒いでるが、今はちょっと返事できそうにねぇな。

『あとで説明するからちょっと待ってろ。』

『むぅ…。』

不機嫌な顔も可愛い。

よし、準備すっか。

「目ぇつぶってろよ。」

「はいは~い。」

俺は黄月おうげつ青月せいげつと共に化粧部屋に来ていた。

もちろんメイクだのなんだのされんのはこれから「凛」になる黄月おうげつだが…メイクすんのは俺なんだよな…。

青月せいげつはそう言うのにうとくて出来ねぇし、白月しげつは男用のメイクしか出来ねぇし、黒月こげつはそういうの興味ないから出来ない。

つまり俺しかいないってわけだ。

俺はまあ、殺し屋してた時に変装しまくってたからな。

殺し屋は基本素性はバレちゃいけねぇし、こっちとしてもどこに俺がいたかって言うのはバレて欲しくないことだからな。

だからメイクで別人の顔にするのは得意なんだよな~。

『え、お兄ちゃんメイクなんか出来たの?初耳なんだけど。』

モモは意外に驚いている。

『まあ、お前いなくなってから習得した技だからな。』

『ああ…そういう。』

モモはそれだけで納得する。

それだけ信頼されてるってことなんだろうが…なんか、大丈夫か?

心配になるんだが。

「ねえねえ紅月こうげつ深月みつきちゃんの年齢とか聞いた?設定合わせないといけないから聞いときたいんだけど~。」

黄月おうげつは器用に口だけを動かして聞いてくる。

「………女性に年齢を聞くもんじゃねぇだろ。」

「ええ~!!紅月こうげつ、いつの間にそんな気遣い出来るようになったの⁉昔は私たちの年齢ふっつ~に聞いてきたのに!」

黄月おうげつは余程ビックリしたようで勢いよくこっちを向いた。

「うおっ!ちょっ!動くな!ズレる!」

「あっ、ゴメンゴメ~ン。ビックリしすぎてつい…。」

黄月おうげつはそう言いながら鏡に向き直る。

「にしても、ほんとにさあ~そんな気遣い、いつの間に出来るようになったの?そんな紅月こうげつ私知らないんだけど~。」

黄月おうげつは少し不満げだ。何が不満なんだか。

でも、俺ってそんなに気遣い出来ない奴に見えるのか…?

『お兄ちゃんはデリカシーっていうか、相手の気持ち云々うんぬんを考えるのが苦手よね。』

モモにまで言われるか…。ってことはかなりデリカシーない奴に見えてるな。

「失礼ながらお姉さま、お兄様は年齢を聞き忘れただけかと思われます。」

それまでそばで控えてるだけだった青月せいげつが急に喋ったと思ったら、図星なことを言われた。勘鋭すぎだろ。

「ああ~、そういうことかぁ~。」

余程青月せいげつの言っていることを信頼しているらしく、すぐに納得したような声を上げて、ニヤニヤと悪戯な笑みを作る。

紅月こうげつも可愛いとこあんじゃん?」

「お兄様は素直じゃないのです。」

「あのなぁ…次髪やるぞ~。」

なんでこいつらはこういう連携はあるのか…。

「はいは~い、ちゃんと目つぶってるからね~。」

「おぅ~。」

変装する時は本人は鏡を一切見ない。

服は着替えるときに流石に見えるが、まあ、服はそこまで重要じゃないし大丈夫だ。

顔を変えるってことは、そう言うことだ。

「ちゃんと見張っておりますので、ご安心ください。」

目が開かないようにするのが青月せいげつの仕事。

氷の能力を応用して出来るんだよなぁ。俺はやったことないけど。

「頼んだ!青月せいげつさん!」

「ふざけないでください。」

「えへ、ごめ~ん」

仲良すぎか。






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