第14話

安藤あんどう 深月みつき…。」

「は、はい。」

「ああ、いえ、覚えるために反復しただけです。」

「あっ、そうでしたか。」

依頼人の名前を覚えるのは大事なことだ。

今後どこかで名前を見かけたら、すぐに思い出さなければいけない。

「では、少し話してきますので待っていてください。すぐに終わりますから。」

「はい、分かりました。」

『お兄ちゃん、なんかカッコいいね。』

会議室に向かう途中、モモにそう言われた。

『…そうか?』

『うん、カッコいい。』

『そうか…。』

ちょっと…嬉しいな。

そうか、これはモモにとってカッコいいのか。そうか。

『お兄ちゃん、分かりやすい。』

『あ?あ~おう…。』

そんな顔に出てたか?

『戸惑い過ぎじゃない…?』

『最近褒められることなかったからな。』

あいつらは認めはするが、褒めはしない。

そうしたら上下関係が出来るとかなんとか言ってたが…。

『お兄ちゃん、なんか前よりいいとこ来たんじゃん?』

『…まあ、そうだな…。』

確かに、前に比べたら、良いかもしれねぇな。

久々にモモとそんな会話をしていたら、あっという間に会議室に着いた。

「ね~おそ~い。」

会議室に入って早々、黄月おうげつにそう言われた。

「んなこと言ったって、たかが数分だろ。」

「待ってるほうは長く感じるものなのです。」

青月せいげつはいつの間に用意したのか、紅茶を飲みながらそう言った。

「とにかく、そう言うなら依頼人待たせるわけにもいかねぇし、会議すんぞ。会議。さっさと情報頭ん中入れて、役割決めるからな。」

「「は~い。」」

「分かった。」

「分かりました。」

白月しげつ黄月おうげつの返事相変わらず緊張感なさすぎんだろ…。

「はぁ…。貰った情報としては、この写真に写ってるこいつらが依頼人を付けてる奴で、そいつらを何とかして欲しいって言う内容だな。んで、こいつは俺らを作った奴でアイラスって名前だ。顔と名前、覚えとけよ。依頼人の名前は安藤深月みつき。こっちもちゃんと覚えとけ。とりあえず誰か一人に友達のフリしてもらって護衛してもらう。白月しげつ黒月こげつは何かあったときのための隠れ護衛。いつも通りだな。青月せいげつ黄月おうげつがいいかと思ってるが、とりあえずその辺の分担はちょっと調べてから決めるぞ。俺はいつも通りあれで指令飛ばすからな。急に来ても大丈夫なように心の準備だけはしとけ。まあ、とりあえず今言えることはこんぐらいだな。お前ら大丈夫か~。」

全部を一気に言い終えて、確認をする。

「うん、大丈夫だよ。」

「だいじょ~ぶ!」

「把握しました。」

「承知した。」

全員の理解が得られたところで、次は情報収集だな。

「じゃ、ちょっと集めるから待ってな。」

『ん?どうやって集めるの?』

『まあ、見てろ。』

おそらくあの依頼人の近くにいるだろうな。

あの写真から取れる情報は…。

よし、あそこら辺だな。

あのあたりの通行人の記憶を見て…。

『お兄ちゃん⁉なにしてるの⁉それなに⁉』

モモは初めて見るからな。まあ、こういう反応するよな。

あいつらも最初ビックリしてたもんな~。

左目は白目が黒に。その下には黒いツタのような文様が浮き出てくる。

視界、聴覚、嗅覚、記憶、知識。

そのすべてを読み取っていく。


―――あった。ここだ。こいつだ。


もっと情報がないか?こいつは持ってる。

ははは、どんどん出てくる。

「よし、こんなもんだな。集まった。友人のフリすんのは黄月おうげつだ。名前は凛って名乗れ。いいな?」

「は~い!分かったよ~!んじゃ、準備お願いね?」

「ああ、そうだな。んじゃ、始めっか。」

そうして、やっと依頼がこなせそうな状態が整った。

後は依頼人との打ち合わせと、行動だな。

ふう…頑張るか。

あいつまで、一歩だけ、近づいたんだからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る