第13話

「実は、最近常に誰かの視線を感じてて…攻撃するわけにもいかないので、探知魔法を使っていつもどこから見てるのか、調べてたんですけど…。」

依頼人はそこで一度話を切り、俯く。

なるほど、魔法探知が利かなかったのか。

「分からなかったから、ここに来たと、そういうことですか。」

「はい、ただ、性別やどんな姿をしているのかは、写真でなら分かっているんです。友人が写真を撮るのが好きなもので、一緒に出かけた際に写真をよく撮っていて…その時に後ろに小さめではあるんですが、映り込んでいたんです。」

依頼人はバッグからファイルを取り出すと、数枚の写真を取り出した。

「わざわざプリントしてきたんですか。」

写真はどれもスマホで撮られたであろう画質の良さだった。

「ええ、友人に相談した際にここの存在を教えてもらって、写真を持っていくならプリントした方が向こうも見つけたときに比べ易いだろうって…。すいません、ご迷惑でしたかね。」

「いえ、スマホ内の写真をただ見せられるより、こうして貰ったほうがこちらもやりやすいので、ありがたいですよ。」

「そ、そうですか。良かったです。」

どうやら依頼人は、他人の意見に流されやすく自己肯定感が少ない。自分に自信がなくて他人との会話も苦手で、周りに常に気を使っているような人らしい。

友人とやらはこういったことを相談できる間柄で、他の交友関係は乏しそうだな。

「見させていただきますね。」

「は、はい。お願いします。」


その写真に写っていたのは、アイラスだった。


『あれ?アイラスさんじゃん。なんで?』

何故こいつがこんなところに写っている?

何故こいつはこの依頼人を監視している?

こいつは……。

「あ、あの、何か不備がありましたでしょうか?何かあったなら…。」

余程しかめっ面になっていたのだろう。依頼人はとても不安そうな顔になっている。

「ああ、いえ。何でもありませんよ。不備もありません。少し考え事をしていただけです。」

『お兄ちゃん、これ…。』

モモも不安そうな、それでいて不思議そうな顔をしている。当たり前だ。

こいつは、アイラスという人物は、

人造人間MARIONETTOマリオネット

それが俺らの商品名だ。

「分かりました。この依頼、引き受けましょう。お名前を伺っても?」

初めて復讐へ一歩近づきそうなのだ。このチャンスを無駄にするわけにはいかない。

「あ、ありがとうございます!私は、安藤あんどう 深月みつきと言います。」

礼儀正しい自己紹介と共に、彼女は安心したように笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る