第12話

ああ~しゃぁねぇな。

あとで踊ってやるか。

あのモモの笑顔見たら、断るわけにはいかねぇんだよなぁ。


ピ~ンポ~ン


カラフルなダンス会場に、突然チャイムが鳴った。

「対応してまいります。」

「ああ。」

おそらく来客だろう。

こういう時は青月せいげつが対応すると決まっている。

「ええ~来客ぅ~?せっかくお花見大作戦決行しようとしてたのに。できなくなっちゃうじゃんっ。」

「まあまあ、そう言わずに。」

黄月おうげつはかなり不満げだが、そこは白月しげつが何とかしてくれた。

『お兄ちゃん、この人子供みたいだね。』

モモに子供って言われる黄月おうげつって、かなり子供なんだな…。

『お前も子供だろ…。』

『違うもん。子供じゃないもん。』

モモは不貞腐れて言う。

『そういうところが子供なんだろ。』

『むぅ~。』

可愛いから許す。

紅月こうげつお兄様。どうやら依頼のようです。」

モモの愚痴?に付き合っていると、青月せいげつが客人を連れて戻ってきた。

「おお~んじゃあ、そっちのソファで話すか。お前らは戻ってろよ。青月せいげつはお茶入れて、黄月おうげつは端っこにいろよ。」

基本依頼対応するのは俺で、来客対応が青月せいげつ

黄月おうげつは何かあったときのための護衛みたいな感じだな。

で、白月しげつ黒月こげつはそういうの向いてないから自分たちの部屋で待機して、何か仕事が出来たら裏からこっそり仕事をこなしていくっていう。

つまりは裏方だな。

「承知しました。」

「おっけーおっけー。」

青月せいげつはいいとして、黄月おうげつの返事軽すぎないか…?

『ねーねー、私はー?』

『お前はそのままでいいだろ。』

『りょーかーい。』

モモも返事軽いな…。

まあいいや。とりあえず、依頼の内容聞かないことには受けるかどうかも決められないからな。


「お待たせいたしました。こちら緑茶ですが、よろしかったでしょうか?」

青月せいげつがお茶を持ってきた。

ちゃんと聞くところ、青月せいげつがメイドできんだなぁって思うんだよな。

「あ、えっと、私緑茶苦くて飲めなくて…。すいません、わざわざ出していただいたのに…。」

「いえ、構いません。何がよろしいですか?他には麦茶、煎茶せんちゃ、ほうじ茶、珈琲コーヒー、ココア、ミルクなどありますが…。」

いや、ありすぎだろ。うちどんだけ飲み物充実してんだ…。

『カフェ並にあるねぇ~。飲み物には困らなさそう。』

モモはニコニコと嬉しそうだ。飲めないのに。

「えっと、じゃあ、珈琲コーヒーいただけますか。」

依頼人は少し戸惑った様子だったが、待たせてはいけないと思ったのか、すぐにそう言った。

「俺にも珈琲コーヒーくれるか。」

「承知いたしました。少々お待ちください。」

今この家の正式なあるじ白月しげつなんだが、ほとんど俺があるじ代理みたいな感じなんだよな…。料理人も兼任してるが。青月せいげつは普通の使用人10人ぐらい凝縮ぎょうしゅくしたら青月せいげつになるんじゃないかって思うぐらい、かなり仕事が早いし完璧。どうやったらそんなに出来るのか不思議だが。

「まあ、とりあえずただ待つのもなんですし、早々に依頼内容を聞きましょうか。」

初対面には敬語で。殺し屋の鉄則。

別にもう殺し屋はしてないんだけどなぁ、癖だな。

「はい、実は――」

そうして、また新しい一日が本格的に始まった。






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