第11話

「ね~。早くお花見しよ~よ~。余計な横槍入ったせいでまだ楽しめてないんだけど~。」

黄月おうげつはつまらなそうに言う。

「そうですね、余計な横槍が入ったせいで、まだ楽しめていません。」

青月せいげつ黄月おうげつの言葉をそのまま引用して同調する。

黒月こげつの眠気が吹っ飛んでくれて、僕は嬉しいけどね~。」

白月しげつ黒月こげつに向かって笑顔で言う。

「私は白月しげつとの幸せな時間が邪魔されてとても気分が悪い。」

黒月こげつは何故か俺の方を見て言う。

「なんで俺の方を見んだよ。俺なんもしてねぇだろが。」

『そうだよ~。』

通じないと分かっているはずなのに、モモは俺の言葉に同調する。

「まぁ~しょうがないよね!一番狙われてんのは紅月こうげつだし~。」

黄月おうげつは変なテンションでそう言う。

「そうですね。ですが、私達も様々な場所に顔が割れていますから、人のことは言えないんですよね。」

青月せいげつが言う。

確かにこいつらも何回か狙われてるし、俺と一緒にいたら確実に狙われるからな…。

ほんと、こいつらは何で俺と一緒にいるのか不思議でしょうがない。

「僕は承知の上で一緒にいるからね。君みたいな誠実な人が狙われてるなんて耐えられないから。」

白月しげつはいつも通りの微笑みでそう言う。

言いながら、黒月こげつとはべったりだから見てらんねぇ…。

ちゃんといいこと言ってたのにな…。

「まあ、別に文句を言いたいわけではない。私だって承知の上だ。白月しげつだけを危険な場所に連れられるわけにもいかないしな。」

黒月こげつ白月しげつにくっつかれながら、白月しげつだけを視界に収めて言う。

こいつらホント仲良いよな…。

『コウ、嫉妬してる?』

モモが上からひょっこりと顔を出してくる。

『するかよ。』

あいつらはああやって自分たちの平穏を少しでも保とうとしてんだから、嫉妬もなにもねぇだろうが。

『ふ~ん。私とあんな感じのことしたいな~とか思わないの?』

モモは後ろに引っ込んでから言う。

まあ、お前が今も生きてたらって、思うことはあるよ。

でも、それは弱さを見せるってことで。

それを俺が許さないから。

自分で自分が許せなくなるから。

弱さは、見せない。絶対に。

『昔はあったな。』

『昔は?』

『昔は。』

『昔は、ねぇ…。』

モモは考え込むように黙ってしまった。

そこに出来た隙間に入り込むように、黄月おうげつの快活な声が飛ぶ。

「も~!なんでそんなどんよりになっちゃうのさっ!早くお花見しよ?楽しんじゃえば、全部どーでもよくなるんだってさ!ね⁉」

黄月おうげつは勢いよく立ち上がると、踊るように飛び跳ねる。

そんな黄月おうげつをリードするように青月せいげつが合わせて踊る。

「楽しめばいいと黄月おうげつさんが言っているのですから、楽しめばよいのです。黄月おうげつさんは楽しむプロですから。」

「そうだよ~♪」

それに合わせるように、白月しげつ黒月こげつの手を取って立ち上がる。

「楽しいって良いよね~♪人生楽しんだもん勝ち、な~んて、よく言ったものだよ。まさにその通りでさ。」

そのまま流れるように黒月こげつと踊りだす。

「楽しさはなかなか感じられるものではないからこそ、楽しいと感じるんだろうな。少なくとも、私はそう思っているが。」

黒月こげつ良いこと言うね。」

「ありがとう。」

そこはまるでカラフルなパーティー会場。

ダンスをして、誰もが楽しさだけにおぼれている。

『コウも踊ればいいのに。』

後ろからモモの声が飛ぶ。

『踊る相手がいねぇだろ。』

『私じゃだめ?』

『実体ないからな。』

『じゃあ、あとで二人だけの時に踊ってよ。』

『なんで。』

『私がコウと踊りたいから☆』

モモはそう、無邪気な声と花のような笑顔でそう言った。



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