第10話

俺を除いた全員が、お花見満喫ムードでほのぼのとした空気がただよっているとき。

突然に音が鳴った。


パリンッ


硝子ガラスの割れる音。

方向からしておそらく上階じょうかい

一瞬で空気は張り詰めたものになる。

流石だ。

侵入者たちはこの家の構造を調べていなかったようで、吹き抜けで、周りにある二人通るのが限界の広さしかない廊下には誰一人として足を付けられず、そのまま下階かかいに落ちてきた。

その瞬間に、落雷らくらい豪炎ごうえん洪水こうずいにフラッシュ、そして暗黒が満ちた。

それぞれが能力で応対おうたいした結果だ。

特にどこかが燃えるわけでも、水浸しになるわけでもない。

ただ淡々たんたんと対象に能力を使うだけ。


黄月おうげつは【雷、電気を操る能力】で落雷を落とした。


俺は【炎を操る能力】で豪炎ごうえんをまき散らした。


青月せいげつは【水、氷を操る能力】で洪水こうずいを起こし、ついでに凍らせた。


白月しげつは【光を操る能力】で強すぎるフラッシュをたいた。


黒月こげつは【闇を操る能力】で暗黒を生み出した。


白月しげつ黒月こげつの能力は補助系なため、敵を白月しげつはフラッシュで失神させ、黒月こげつは暗黒に包んでほっといている。

基本白月しげつ黒月こげつの能力使用後は、黄月おうげつ青月せいげつ、俺の誰かがとどめを刺すことになっている。

黄月おうげつは無表情で感電死死体に電気を流して遊んでおり、それを青月せいげつはこれまた無表情で見つめている。

白月しげつ黒月こげつはもう関わらないつもりらしく二人の世界を作ってお喋りし始めたので、俺が燃やしておいた。

他の死体も黄月おうげつが遊び飽きたようなので、燃やし尽くすと、ことは終わったとでも言うように黄月おうげつが口を開いた。

「なんだったんだろうね?あの人たち。」

それは独り言のようで、それでいてしっかりとこちらに向かって問われていた。

「さぁな。」

俺はそれだけ答えて、モモの方を少し見た。

モモは少し青ざめている。

まあ、さっきまで和気あいあいとしてたが、急にこんな殺人鬼みたいなこと平気でしだしたらそりゃビビるか。

『モモ、無理しなくていいぞ。』

怪しまれては居心地が悪いので、モモの方を見ないままそう言った。

『…う、ううん、大丈夫…。何でもない…。』

モモは明らかに大丈夫じゃないが、こういうときはきっと心配しすぎると逆に口をきいてくれなくなるので、『なら良かった。』とだけ答えて、モモとの会話は終えた。

白月しげつがタイミングを見計らっていたのか、丁度モモとの会話を終えたときに喋りだす。たまにこっちの心を読んでいるんじゃないかと思ってビビるんだよな。

「う~ん。なんなんだろう。今時銃火器じゅうかき持って突撃してくるってことは、魔力がない人たちか、能がない人たちか、だよね~。」

まるで世間話せけんばなしをするかのように、白月しげつは言う。

「そうだな。てか、あんだけ銃火器じゅうかき持ってたら、今の時代、昔より規制強まってんだから銃刀法違反じゅうとうほういはんで即捕まるぞ?」

魔法がこの世に誕生して以来、魔法を進んで使わせるため、本来争いや無駄な殺生せっしょうなどを避けるためにあると思われる銃刀法違反じゅうとうほういはん、またはそれに関係する法律等が規制力を強めたのだ。

今や家庭に包丁があることも許されない。

確かに<カッター>などの魔法を使えば何でも切れるが、思い通りに切るのは難しく、加えて風属性の魔法のため各家庭に必ず持っているものがいるとは限らない。

政府はそのあたりをちゃんと考えたのだろうか。

まあ、ああいう上に立つ奴らの考えることなど俺には一生分からないだろうけどな。






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