登校②

私はなにかあったのかなと心配になり、姫華さんに話しかけようとした瞬間、姫華さんが大きくため息を吐く。


「あぁ…。やっぱりこうなりましたか…。」


「え?え?ど、どういうこと?」


「えっとですね…。実は…」


なにかを知っている姫華さんが話してくれようとした時、校門前にいた人達の一人がこちらに気づくと、その周りの人達も気づき始め、なにやら騒いでいる様子だった。


すると、姫華さんは私に「少しだけ、ここで待っていてください。」と言うと、人だかりに向かって歩きだす。


私は訳がわからず、ただその姿を見守る。


姫華さんとその人達がなにかを話している。


なんだか、怒っている姫華さん。


謝っている集団。


そして、解散しだす。


姫華さんが足早にこっちに向かってくる。


「うぅ…。夢子さんほんとにごめんなさい…。」


なぜか、私に謝る姫華さん。


「え…。ど、どうしたの…?」


「実はあの方達…。わたしのファンクラブの方達なんです…。」


「そ、そうだったの…!?」


さすがに、顔までは知らなかったので驚いてしまう。


「はい…。そうなんです…。」


「あ、あれ?でも、なんであんなに集まって…。」


も、もしかして姫華さんと二人で登校していることに怒って、私のこと待ち伏せしてたんじゃ…。


で、でも姫華さんはファンクラブの人達は喜んでいたって言ってたし…。


「それがですね…。先に行ってもらった方達が夢子さんと一緒に登校することを同じファンクラブの方達に伝えちゃったみたいで…。そしたら、一目だけでも見たいと集まってしまったそうなんです…。」


「そ、そうだったんだ。」


わかっていたことだけど、やっぱり姫華さんの人気は凄いんだなと、改めて実感する。


「わたしもこうなる気がしてたのに、夢子さんに伝えたら嫌がられてしまうと思って黙ってて…。ごめんなさい…。」


「う、ううん。注目されて少し恥ずかしかったくらいだし。それに姫華さんのおかげで楽しく登校出来たから。だから気にしないで。」


「うぅ…。ありがとうございます…。夢子さんは本当に優しい方です…。」


そう言う姫華さんだったが、まだ少し元気がなさそうだった。


なにか元気付けられないかな。


そう考えていた時、姫華さんが「はぁ…。これじゃあ、お昼一緒になんて誘えない…。」と呟く。


私はそれを聞き逃さなかった。


「そ、それだ!」


「え?え?」


「お昼一緒に食べよう!」


「い、いいんですか…?」


「うん!」


「でもでも、わたしと夢子さんが一緒にいるとまた注目浴びちゃうかもですよ…。教室では今みたいに二人っきりにはなれませんし…。」


「あ!そ、それなら!とっておきの場所があるんだ!」


「とっておき…ですか?」


「そ、そう!その場所はね…」


私は入学してから、いざという時の為に、気持ちを落ち着けられる場所を見つけていた。


そこは学校の敷地内にある、教室から離れていて、人が滅多に来ない秘密の場所。


それを私は姫華さんに教える。


「そんな場所があったんですね!そこなら夢子さんにもご迷惑かからなさそうです!」


姫華さんは元気を取り戻してくれたみたいで、私も嬉しくなる。


お昼の予定が決まると再び、学校に向かう。


だけど、下駄箱に着くと一つ問題があることに気づく。


それは、どうやってみんなにバレずに抜け出すか。


私は主に一人だからなんとかなるけど、姫華さんはどうしよう。


それを、姫華さんに相談する。


すると、姫華さんはなにか考えがあるようで、その準備をするため、その場で一旦別れると、一人で教室に向かう。


自分の席に着くとスマホに姫華さんからメッセージが届く。


内容は、夢子さん!抜け出す準備バッチリです!お昼楽しみですね!とのこと。


私はその方法が気になったが今は質問せず、喜びと抜け出した後の合流場所を決めた。


それから、午前の授業を受け、お昼の時間になる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私を王子と呼ばないで たるたるたーる @tarutaru_ta-ru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ