共鳴双生児サラとソラ 〜ようこそカザミド冒険団!〜

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

共鳴双生児はかく語る

「サラね、本当の騎士の人は、あんまり好きじゃないの!」


「おうちにいたころね、騎士の人が勝手に入ってきて、いろんなものを勝手に持っていったの!」


 冒険者ギルドからほど近い市場。

 共鳴双生児サラとソラは、その小さな体いっぱいで木の実の袋をかかえて、足よりさかんに口を動かす。


「パパがかわいそうだったの、いやがってるのに、騎士の人に捕まえられて、大切にしてたものいっぱい持ってかれたの!」


「本とか、鏡とか、宝石とか、なんかのお水とか、なんなのかソラは知らなかったけど、いろいろ持っていかれたの!」


「ママがいなくなっちゃってから、パパ頑張って集めてたのに、ひどいの!」


「必ずママとまた会えるよって、ソラとサラに優しくしてくれたパパだったのに!」


 昼前の日差しはやわらかい。

 市場の喧騒に囲まれて、サラの黒髪に混じる金髪と、ソラの黒髪に混じる銀髪はぴょこぴょこ揺れた。


「それでサラとソラ、パパと一緒に住めなくなっちゃったの!」


「それで新しいおうちに来たけど、ソラとサラは、別々にいなきゃいけないって言われたの!」


「サラとソラは、特別な力を持ってるから、それを有効活用しなきゃいけないって言われたの!」


「ソラはサラのこと、ソラはサラのこと、どんなに離れててもどこにいるか分かるの!」


「何を考えてて、何を見て何を聞いて、うれしいとか悲しいとか痛いとかおいしいとか、自分のことみたいに分かっちゃうの!」


「だから、そんな力があるんだったら、一緒にいちゃ意味がないって言われたけど、そんなことないの!」


「楽しいこと見て聞いて、食べて、笑い合ったりするのは、一緒にいた方が一番うれしいの!」


 袋の中を木の実が跳ねる。

 サラとソラは楽しそうに、喋り続ける。


「だからね、逃げ出したの! 二人っきりで!」


「星の明かりしかない夜をね! 森の中をね!」


「怖かったよね!」


「怖かった! 大人の人がいなくて二人っきりで夜に出歩くのなんて初めてだったものね!」


「それでね! 魔物に襲われたの!」


「ソラたち戦う力なんてなかったから、本当に怖かったの!」


 そこで二人はこちらを向いて、目を輝かせた。


「そこをね! 騎士さまが助けてくれたの!」


「かっこよかったの! 魔物の前に立って、ソラたちを守ってくれたの!」


「騎士さまにはもう会った? 本当の騎士の人じゃなくて、この冒険団にいるの!」


「髪を青くして、大きい剣を持って、いつもあこがれてる人を自慢してるの!」


「騎士さまはね、すごい騎士の人にあこがれてて、その人のマネをしてるの!」


「でもソラ、その騎士の人より騎士さまが一番かっこいいと思うの!」


「サラたちを助けたのは、そのあこがれの人じゃなくて、騎士さまなんだから!」


「騎士さまは自分のことかっこよくないって言うけれど、ソラは騎士さまが世界で一番かっこいいと思うの!」


「サラたちを守ってくれた騎士さまだものね!」


「他のどんな騎士の人より、騎士さまが一番かっこいいの!」


 きゃいきゃいと、双子ははしゃぐ。

 サラのかかえる袋から木の実がこぼれかけて、ソラがそれに手を伸ばして押さえて、それでソラの袋が傾いてこぼれかけて、それをサラが押さえて、お互いに体を押しつけて支えるような形になった。

 それがなんだかおかしかったのか、サラとソラは顔を見合わせて、きゃらきゃらと笑った。

 そしてまた、こちらに顔を向けて。


「今日はね! だからね!

 この木の実でお菓子を作って、騎士さまに食べてもらうの!」


「トッコおねえちゃんやコ・コヤおばあちゃんに、作り方を教えてもらうの!」


「他のみんなにもね! 食べてもらうの!」


「みんないい人だし、おもしろい人だし、大好きなの!」


「だからね! サラとソラは、ずっと冒険団のみんなと一緒にいたいの!」


「みんなずっと一緒にいたら、きっとずっと、毎日楽しいの!」


 歯を見せて、笑い合い。

 そして二人は、木の実の袋を置いて。


「あなたもね! 一緒にいれば、きっと楽しいの!」


「新しく来た人には、必ずこれを言うの!

 ソラもちゃんと覚えたの!」


 二人向き合って、息を合わせて、こちらに向けて高らかに告げた。


「ようこそカザミド冒険団へ!」


「ここは半端な者たちが集まる、最高に充実した集団パーティなの!」

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