親愛なる地球人へ
玄瓜亜礼
第1話 Where No One Goes
その少年の年頃は見たところ十代後半。肌の色は白っぽくて、髪は真っ黒。
アジア系の人間かもしれない。とすると、実際の年齢は見た目よりもっと下だろうか。
少年は剥がれかけた湿った木の皮や、水っぽい泥を不機嫌そうに睨んでいる。彼は手入れのされた都会の公園へ、気晴らしに来ていた。汚れた自然を見つけて少年は少し幻滅していた。
今まで乾いた平原に居たはずなのに、いつの間にか雨でも降ったのか 今は蒸し暑い。
景色も良かったのに、今では鬱蒼とした木々の中に閉じ込められてしまった。
トドメに、木の皮をいくら握っても空を飛べない。
急な状況の変化へのストレスと、クラスメイト達からの嫌味を上手く忘れられなかったのが相まって、余計に腹立たしかった。
(早く家に帰りたい。)
少年こと朝田圭は、そう思って来た道を戻ろうとするがそこに道はなかった。
そして、ついさっきまで遠くに何人か人がいた筈だが、それも見当たらない。
圭の目の前にあるのは、映像でしか見たことの無い大自然だった。
立っている場所は恐らくこの辺りで一番高い崖の端、それに気づいた圭は地面に引かれるように尻もちをついた。
恐る恐る身を起こして下を覗いてみれば、崖の下には荒れ狂う水流で小石が飛び散る川があり、その奥には大小様々な木々が森となって鎮座している。
空は今まで見たことがないくらい高く、台風が通った後の何倍も青く、青く澄み渡っている。
「…?」
何か異常な事が起きている。生まれて初めて目の前の光景が信じられなくなり、自分の頬を抓ってみた。
ジンジンとした痛みが顔の左側いっぱいに広がった頃 ぼんやりと手を下ろした。頬はきっと真っ赤に腫れている事だろう。
(現、実?)
空を飛ぶ遠くの鳥だけが、少年の登場を見ていた
親愛なる地球人へ 玄瓜亜礼 @Asuto0398
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。親愛なる地球人への最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます