私専属ヒーロー鴉

白鷺雨月

第1話私専属ヒーロー鴉

今からおよそ五年前。

湾岸地区にある化学薬品工場が爆発事故を起こした。

その化学薬品工場からもれた物質を接種してしまったものから人間以上の能力を持つものがあらわれた。

彼らはケミカルミュータントと呼ばれ、やがて彼らは自分たちのことを選ばれた人間だと考えるものがあらわれた。

そして、そのケミカルミュータントたちは人間を支配するべく、宣戦布告をし、ミュータントと人間の戦争がはじまった。


「アルファ小隊、アルファ小隊。応答願います」

私は何度も無線機に問いかける。

しかし、返ってくるのはザザザッというノイズのみ。

私は首を左右にふり、無線機を机に置いた。


まただ。

また、全滅した。

人類に残されたわずかな戦力の一つがまたケミカルミュータントによって壊滅させられた。

彼らの中に天才的な頭脳を持つものがいて、今までの人類では創造しえなかった兵器を開発し、それによって人類はあっという間に総人口の九割が死においやられた。

私は首のペンダントを握りしめる。

そこにはかつての幼なじみの写真が入れられていた。

彼もケミカルミュータントとの戦いで行方不明になってしまった。

「会いたいよ、アーサー」

私は一人言った。むろん、返事はない。

気が弱く、すぐにビックリして私にだきつく幼なじみのアーサー。戦いなんか性にあわないのに私を守るためにレジスタンスに入り、行方不明になったアーサー。


一人、ペンダントを握りしめ泣いていると突然床が揺れだした。

えっ、なに、地震なの。

立っているのがやっとで私は机にしがみついた。

「みつけたぞ、こんなところに人間がいたぞ」

ガラガラの声が聞こえる。

その声の方向を見ると窓の外から奇怪な人物がこちらをのぞいていた。

その人物は全身岩だらけの姿であった。

窓をわり、部屋に侵入するとあっというまに私の腰をつかみ、そとに連れ出してしまった。

その圧倒的な力の前に私は必死に抵抗したが、その怪物から逃げることはかなわなかった。

「イヒヒッ、久しぶりの若い女だ。たっぷりと犯したあと、殺してやる」

私に対する悲惨な結末を宣言するとその岩男は私を抱えたまま、ある廃ビルへとむかった。そこで彼は先ほど宣言してことを行おうというのだ。

私は腰のサバイバルナイフを抜くと何度も突き刺したが、まるで効き目がない。

文字通り、岩に刺しているようだ。

「イヒヒッ、生きがよくていいのお。楽しみだ」

岩男は一人笑う。


くそ、こんなところでケミカルミュータントに犯されて、殺されるなんてまっぴらごめんだわ。


その時だ、バサリバサリと羽の音がし、何者かが舞い降りた。

その者は背中に黒い翼を生やし、黒い甲冑を身にまとっていた。兜も黒く、鳥のような形をしている。

そう、その者はまるで鴉のようであった。

「女を、ミカを離してもらおうか」

その黒きものは言った。


えっ、どうして私の名前を知っているの?


「貴様、何者だ‼️」

ケミカルミュータントは悪役らしいセリフを吐く。

「貴様らの宿敵だ、覚悟しろ」

鴉の戦士は言う。

「俺の邪魔をするな。覚悟するのは貴様の方だ‼️」

そう叫ぶと岩男は私を地面に投げる。

なにするの、痛いじゃない。

やっと解放されたのはいいけど地面にしこたま体をうちつけたのであちこち痛い。

ふらつきながら立ち上がり、私が見たのは腹部に拳大の穴があいた岩男であった。

えっ、どういうこと。

あの岩のミュータントに風穴を開けたのは鴉の戦士だった。

大量の血を吹きあげ、岩男は絶命した。

さっきまでの威勢はどこえやら、今はただの岩石に成り果てた。


鴉の戦士は兜をぬぐ。

その素顔は見知ったものであった。

「ア、アーサー」

私は叫び、彼に抱きつく。

うれしい、あきらめていたのに生きていたなんて。

「やあ、ミカ。遅くなってごめんよ」

そう言い、アーサーは私を抱きしめる。

よかった、本当によかった。


「いやあ、実験は成功じゃな」

アーサーの背後から、女性の声がする。

白衣を着た、金髪ツインテールの少女があらわれた。美少女ではあったか顔に斜めの大きな縫い後があった。

「このアーサーが着ている軍鎧バトルアーマーは人の思いをエネルギーに変える能力を持っている。おまえさんへの思いがアーサーをミュータントを一撃で葬る超人に変えたようだな」

そう言い、その金髪ツインテールはケケケッと不気味な笑いを浮かべた。

「あ、あなたは……」

私は訊く。

「私か、私はフランケンシュタイン博士。奴らケミカルミュータントの産みの親の一人じゃ。じゃがの、私は人間に味方することにした。アーサーの好きな人を守りたいという気持ちに動かされてのじゃ」

そう言い、フランケンシュタイン博士はヘヘヘッとまたもや不気味な笑みを浮かべる。

「は、博士、それは言わない約束でしょう」

アーサーは顔中真っ赤にしている。

うふっ、ちょっとかわいい。

「よし、ではちょっくら大掃除にでかけるか」

フランケンシュタイン博士はそう言い、私とアーサーの背中を叩くのであった。

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私専属ヒーロー鴉 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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