運命の壊し方

 昔話を語ろうか。


 やがて敵軍が攻め入る城の玉座。深く座るは国王陛下。

 陛下の前にひざまつき、頭(こうべ)を垂れるは異世界の《魔女》。

 《魔女》が語る運命に、王はただ首を振るばかり。そんなことにはさせないと、剣を手に取り立ち上がる。

 一国の王と言えども、所詮はただの人間。

 やがて敵軍が攻め入った城の、王を守ろうとした《魔女》は捕らえられ、地下牢ヘ閉じ込められた。

 自由を奪われ、格子の窓から見える小さな空に、黒猫一匹。するりと降りて寄り添った。

 ああ、彼を助けたかった……。

 後悔ばかりが渦巻く牢に、裏切り者の足音が響く。


 全ての王族に呪いを。


 これで最後だと連れられたのは、まだ言葉も話せぬ赤子の前。

 《魔女》は龍を喚び出して、赤子の胸に印を刻んだ。

 これがせめてもの抵抗。呪いであり、護り。《魔女》は赤子を護るよう龍に願った。

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連なる世界 燐裕嗣 @linyuushi

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