ヒロイズムの証明

月乃兎姫

第1話

 どの業界、たとえばスポーツやクリエイター関連、または国家においてヒーローとという存在は時に意図して作られていることがある。それは業界の活性化及び必要悪と対比する形で英雄主義ヒロイズムとも呼べるものなのだ。


 特にそれは危機的状況化においてなお、より効率的にまたは効果的にも真価を発揮するが本質的に考えるならば、そうしたものはみな例外なくもゆっくりと衰退していき、ある一定の期間を経て新たなヒーローを生み出す。


 誰しも子供の頃は特撮やアニメの主人公やヒロインに憧れるものだが、いつの頃からか、そうした気持ちは意識せずに消え去っている。それは世の中の仕組み、また社会という一端を担う性質上、失われた自らの夢や希望なのかもしれない。


 自分の身近には存在しえない……だからこそのヒーローという虚飾きょしょくがテレビなどを通じることにより、目に見える形として現れた実態なき虚像の成れの果て。


 社会性においては、こうしたヒーローとは無くてはならない存在とも言える。何故ならば、人々は自らの夢や希望というものを失った時点で何かで補う必要が出てくる。それは現実という辛いものから目を背けるため、また他人から与えられた叶わぬ存在であり、またもう一人の自分なのだ。


 テレビなどに映るヒーローたちと自分の無き姿とを重ね合わせることで、一種のヒロイズムに酔い痴れることで、一時の安らぎを得る。


 それは時に社会不満や自らの境遇を回避するための装置なのかもしれない。それが意図して与えられたものなのか、はたまた自ら現実逃避する防衛手段なのか、それだけの違いにすぎない。


 今を生きる人々には、そうした自分だけのヒーローという存在が不可欠なのだろう。

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