私だけのヒーローだっつってんだろ

凹田 練造

私だけのヒーローだっつってんだろ

 私は、か弱い乙女。

 突如、目の前に、怪獣ケマトルデが現れた。

 すると、怪獣ケマトルデと私の間に、割って入ったものが。

 私は叫ぶ。

「あなたは、誰なの」

 そいつも大声で答える。

「私の名は、ウルトラハイパワーテクニックマン。君だけのヒーローだ」

 あっという間に、怪獣ケマトルデをやっつけるウルトラハイパワーテクニックマン。そして彼は、振り返りもせずに去っていく。

 翌日。

 遠くで、若い女の子が、大怪獣デトッポに襲われている。

 またも現れるウルトラハイパワーテクニックマン。

 私は、ウルトラハイパワーテクニックマンを、後ろから羽交い締めにする。

 もがくウルトラハイパワーテクニックマン。

「な、何をする」

 私も、大声で怒鳴り返す。

「お前は、私だけのヒーローだっつったろう」

 ウルトラハイパワーテクニックマンは、ジタバタしながら往生際の悪いことを言う。

「いや、私は、正義の味方、みんなのヒーローだ」

「やかましい」

 私は、ウルトラハイパワーテクニックマンを、思いっきり投げ飛ばす。

 なおも立ち上がろうとするウルトラハイパワーテクニックマンに、飛び膝蹴りを食らわす。

 まだ諦めずにフラフラと立ち上がったウルトラハイパワーテクニックマンを、空手チョップと後ろ回し蹴りでノックアウトした。

 可哀想に、若い女の子は、お弁当のサンドイッチを大怪獣デトッポに持っていかれてしまったが、やむを得まい。

 さらに翌日。

 今度は、私の前に、超大怪獣ルギスワヨが現れた。

 だが、何ということだ。

 ウルトラハイパワーテクニックマンが現れないではないか。

 私は、耳をすませる。私の耳は、半径5キロ以内なら、どんな小さな物音でも聞き取ることができるのだ。

 ウルトラハイパワーテクニックマンの居場所を突き止めた私は、マッハ3の走力で、駆けつける。

 ウルトラハイパワーテクニックマンを頭上に持ち上げると、今度はマッハ15のスピードで空を飛ぶ。

 そのままの勢いで、ウルトラハイパワーテクニックマンを、超大怪獣ルギスワヨに投げつけた。

 ウルトラハイパワーテクニックマンは、全治3か月の大怪我を負ったが、仕方がない。

 ウルトラハイパワーテクニックマンは、私だけのヒーロー。

 そして私は、か弱い乙女なのだから。

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