第22話 仕事2
目覚めたのは二段ベッドの下の段。同じベッドが二つ並んで、定員四人に囚徒は三人。事前情報通りなら、上の段は空席だ。鏡はないが、
ときどき手や足を動かす気配から、隣のベッドの囚人の
覚悟を決め身の周りの爪や金属、薄刃状のものを探っていたところで、管のような妙な物体が窓から垂れているのに気がついた。窓は横長のガラスを数枚合わせたもので、どうしても隙間が残る。決して手抜きの安普請と云う訳ではなく、熱帯雨林の強烈な太陽光に日々抗するマレーシアでは涼を
改めて窓から垂れる管を見ると、ずっと固まっているように見えて実は細かく蠕動している。
マレーシアで蛇を見ることは珍しくない。毒蛇も在れば、人をも喰らうほどの大蛇も在る。なかでも最も恐れられているのはコブラで、実際この小さな暗殺者の手にかかる死者は、マレーシアでも百人単位で在るらしい。
今私のすぐ横を静かに進む者は、見紛いようなくそのコブラだった。地上の凡ゆる人類が忌み怖れ、
素早く首を捕まえると、蛇は残った躯を私の両腕に絡ませ、口を大きく開いて威嚇する。好戦的な姿勢で何よりだ。
プトレマイオス朝最後の女王、絶世の美女クレオパトラと同じ死因で生を
ナイルの宝石の最後の耀きがローマからの濁流に飲み込まれるように、激しい眩暈に襲われ私の意識はそこで途切れた。
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