第6話 夜の珍味、或いは肝試し
円卓が五台並ぶ間に、痩せた犬が寝そべっている。カウンターの向こうの棚に鎮座する白猫は惰眠を貪り置物のようだ。オープンエアのレストランは犬も猫も出入り自由である。
イスラムでは犬は不浄とされるが、私の周りには犬を可愛いと云うムスリムも多い。尤もそこには外国人と交流する開明的な人だからと云う事情があるのかも知れない。現に非ムスリムが犬を飼うときは周りのムスリムの目を気にすると聞く。
太陽光が強烈にアスファルトを灼いている。
猛暑の午後を部屋で涼んだ後、夕方になってまた別の
昨夜は海岸沿いの大きな広場だったが、今夜は少し内陸側に入った通りにある、コンパクトなものだ。
日の
人々の間を縫って屋台を覗いていくと、さまざまな食材が
「食べますか?」
と来た。
日本から来た殺し屋を試すような
兎も角、稚気じみた意地でそれに応える
勢い、卓子の上には野趣溢れる珍味が山と盛られた。或いは、肝試しにも似た逸品たち。
トカゲは歯応えがあって意外と美味しい。牡蛎の玉子とじは半生で、ロシアンルーレット並の危険度だが運を天に任せて次々口に放りこむ。
問題の蛙は四肢を割かれて、白米と共に炊く土鍋料理になった。鶏肉に近いとよく聞く通り、見た目に反して上品な味わい。骨つき肉は元の姿を髣髴させるがそれも珍味の醍醐味というものだろう。
ところがポーリィさんを見ると、自分用には至ってノーマルなチャークエチャオ(平麺の焼きそば)を頼んで、澄まして食べていた。
「私は精をつける必要ありませんから」
とでも云いたげな顔だ。迷いない表情は路地の胡散臭い灯りの下にも凛と
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