第6話
俺は7時半、約束通り屋上に来ると、先輩が立っていた。
「先輩、来ましたよ」
先輩が振り向いた。
いつもと違う浴衣姿で、髪をおろしている先輩もすてきで、かわいかった。
「霧島くん。これあげるよ。ここに座って」
俺は先輩に近づき、タッパーを受け取って、先輩の隣に座った。
タッパーは蓋を開けると、クラッカーにチョコと焼きマシュマロがはさんであるものがあった。
「スモアだよ。食べて」
俺は食べてみた。
クラッカーの塩味と、溶けたチョコとマシュマロの甘さがあって、おいしい。
「おいしいです」
「それはよかった」
先輩はそういうと、空を見上げた。
つられて俺も空を見ると、空には満天の星空が広がっていた。オリオン座もあった。
「霧島くん、私だけのヒーローになってください」
「……え……?」
俺の反応に、先輩はくすくす笑った。
「ごめん、わかりにくかったかな?私ね、今日気づいたんだよ」
何のことだ?と思いながらも、俺は空を見上げたままで、先輩の話に耳を傾ける。
「いままで霧島くんとかかわったことはたくさんあったけど、今日は一段とドキドキした。だから、わかったんだ。私、霧島くんのことが好きなんだって」
俺は思わず先輩のほうを見た。
俺の顔は赤く熱くて、寒くなんてなかった。
「私は、霧島くんのことが好きだよ。霧島くんは、私だけのヒーローであってほしいんだ。霧島流星さん、付き合ってください」
俺のほうに目線をうつして、静かに言う先輩。
その視線はまっすぐに俺をみつめていて、本気なんだってことが伝わってきた。
俺も、今言われて初めて気づいた。俺も、先輩のことが……す、好きなのかもしれない。いや、好きだ。
俺も先輩の目をまっすぐに見つめた。
「先輩。俺も先輩のことが好きです。俺でよければ、ですけど……付き合い、ましょう」
自分で言ったくせに、恥ずかしくなってしまう、情けない俺。
先輩は、瞳をウルウルとさせてから、無言でぎゅっと俺に抱き着いた。
「だめなわけ、ないでしょ。私は、霧島くんだから、いいんだよ」
「……ありがとうございます」
俺は先輩のほうをうつむいた。
先輩は俺の胸の中から顔を出すと、俺の顔に先輩の顔を寄せた。
そして、唇と唇が触れた。
こうして俺のハツコイ・初告白は、幕を閉じた。
好きだよ、私だけのヒーローさん。 雨夏 @mirukukoka
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