私だけのヒーロー【たっくん、5歳。 ママ、守ります!】 KAC20228

桃もちみいか(天音葵葉)

たっくん、5歳。へんし〜ん!

「ママを守る! たっくんマンが悪からママを守るんだ!」


 チャラララララ〜ン♪


『たっくんレッドは5歳。幼稚園に通うりんご組の年中さんの姿は仮の姿。正体はママを守るヒーロー、たっくん戦隊たっくんレッドなのだ〜!』


 かっこいい登場音とともに現れたのは我が息子。


「パパ怪獣を倒す! パパ、たっくんレッドじゃなくてたっくんマンなんだよ」

「たっくん仮面でもいいよな」

「……仲間がたくさんいたほうがすぐに勝てるからたっくんレッドでいいや。ピンチになると仲間のブルーとか助けに来てくれるんだよ。パパ怪獣はでっかくて手強い敵だから、協力してやっつけなくちゃだめなんだぞ」

「ははははっ。そうだそうだ、パパ怪獣は手強いんだぞー!」

「ぎゃー、卑怯だぞ。抱っここうげきとは卑劣なやつめ。優しくして戦う気をなくさせるつもりだな、パパ怪獣! びびびびびびび〜! 必殺技だ。たっくん稲妻ビームだ」


 我が家はアクションフィールドと化す。


「パ〜ンチ! キィィィック! パンチだキックだ。やあっ! えいやッ!」

「いたっ、いたたたた。やめやめ、たっくん。パパ、パパ怪獣は降参だ」

「とどめだ〜! たっくん、スーパートリプル最強パ〜ンチ」

「や、やられた〜」

「ハッハッハッ。正義は勝つのだ」


 戦いが終わるとたっくんレッドはただの甘えん坊幼稚園児に戻るのだ。


「ママ〜。たっくん抱っこしてぇ」

「ママは今、赤ちゃんがお腹の中にいるから、パパが抱っこしてあげるよ」

「え〜、しょうがないなあ。パパで我慢するよ」

「ははは。たっくんは格好いいヒーローだね」

「たっくんはママだけのヒーローだからね、ママパパ」


 私だけのヒーローか。うふふふ。

 今はパパに甘えて抱っこされてるたっくんヒーローは、もうすぐお兄ちゃんになるんだね。


「あっ。赤ちゃんがお腹を蹴った。お兄ちゃんのたっくんレッドは格好いいねって言ってるみたい」

「赤ちゃんが? ボク、お兄ちゃんになるの?」

「そうだよ。じゃあ、たっくんはママと赤ちゃんのヒーローになる?」

「ううん。赤ちゃんが生まれたら一緒に戦隊ヒーローになる。だから二人でママを守るからね」

「パパ、一人かあ……」

「そっ、パパ怪獣は強敵なんだからずるい。一人でやって」

「そっか。そっか。パパは一人で強敵か」


 息子にそう言われてまんざらでもないパパ。

 そういや結婚する時にこの人に「君だけのヒーローであり続けます」とかクサい台詞でプロポーズされたんだっけ。


 我が家には私だけのヒーローが二人もいて心強くて頼りになる。


 たっくん。赤ちゃんが生まれたら、たっくんとママとパパと三人で赤ちゃんを守る優しくて格好いいヒーローになろうね。



         おしまい♪



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