2人目「ああ心の友よ」

 もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ…………はっ!!



 どうもこんにちは。私、そうですフレンです!


 ……え? もふもふ? もふもふがどうかしました――――はっ⁉


 もしかして口に出してましたっ⁉ 私のもふもふ、口に出してましたか⁉


 なんですと……こんなもふもふで頭がいっぱいの人、ただの変態じゃないですかぁ……え、最初から変態だったって⁉ 猫カフェにウサギを連れ込んだ時点で変態だって⁉


 あああああああああああああすいません私の欲望はどうにも制御できませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 ……許してください!


 ねこちゃんやウサギちゃんに愛情を注いでいる過程でちょっと変態気質になっているだけで何も悪いことはしてませんからあああああ!


 カフェは仕事だから頑張ってるんです!


 お客さんにモフモフを楽しんでもらうためには、まず自分がねこちゃんやウサギちゃんと仲良くならなくちゃと思って、私もモフモフを楽しんでいる……グヘ ヘ。


 ……っ! そんなことはさておき――今日は初めてこのカフェでイベントを開催しちゃいます!


 その名も何と『ネコとウサギのもふもふエブリバディ』!!!


 私が考えました!


 キリッ!


 店長には長すぎるって言われましたけど……あ、私、ねこちゃんとウサギちゃんのプロなので。


 ジャンジャンお客さん入ってきてください!



 1人目のお客さんがやってきました。


客A「こんにちは…………」


私「こんにちはっ!! 記念すべき1人目のお客さんです! サービスしちゃいましょうか! ね、店長!」


店長「あ、ああそうだな。飲み物は全部無料にしてやるよ」


私「じ、じゃあトロピカルジュースも……」


店長「あれはパフェ――食いもんだ。大体そんなメニューうちにないからな。裏メニューってったってトロピカルジュースってのが嘘だってんならそれこそ置けないな」


私「じゃあ店長! トロピカルパフェに改名してきちんとメニューに載せましょう!」


店長「食いもんがパフェ一つだけって変じゃねえか? 載せるならジュースの時みたいに追加でメニューを考えないと……ってお前、お客さん待たせてんじゃねえのか。失礼だろ。それに、前も言ったが人間の欲望が……」


私「……ああいけない私としたことが同じミスを二度も! …………すいませんお客さん! お待たせいたしました!」


客A「あ、ああ……大丈夫ですけど…………」


私「どうしましか? 元気がないようですけど……」


店長(囁き声)「フレン!」


私「な、なんでしょうっ⁉」


店長「デリカシーのないことを聞くな。聞かれたくないことだってあるだろうよ。もしそれで嫌な気持になったら二度とモフモフの欲望を発散できず、そのまま一生欲望を抱えて生きることになるかもしれないぞ」


私「なっ……それは大変……どころの話じゃない。やばい……私史上最大のミスだ……早くお客さんに……」


客A「――大丈夫ですよ」


私「うわびっくりしたっ! いつの間にここに!」


客A「途中から、です。あの、僕のことなら大丈夫ですよ。別に深刻なことでもないので」


私「い、いえいえ、デリカシーのなかった私が悪いですよ!」


客A「それでいえば不愛想な返事で心配させた僕も悪いですよ。お互い様ってことにしましょう」


私「わ、分かりました……。じゃあ、当店の説明をさせていただきます!   当店へのご来店は初めて……ですよね?」


客A「はい」


私「で、ではまず一つ。なんと当店では、全ネコ全ウサギがもふもふとなっております!」


客A「………………」


私「どうされましたか?」


客A「――なんですってぇぇぇぇ~~!!」


私「…………へ?」


客A「いやいや当然ですよむしろそうでなくてはならないと思うんですだって猫カフェでもあり兎カフェでもある最高のカフェ、そこにいるネコちゃんウサギちゃんがもふもふでなかったらひどすぎます改めてあなたにそういわれると僕ってここにいていいのかなぁ天国過ぎるけど僕ほんとに生きてるかなあとか考えちゃって…………」


私「――――」


客A「……あ、ごめんなさい。僕、ネコとウサギが大好きで、このカフェに来るためにこの町へ越してきたんです」


私「――――」


客A「あ、あのー。どうしましたか? ボーっとしてますけど」


私「…………そうです、よね…………」


客A「え……?」


私「あーやっぱそうですよねえ! 仲間の匂いがしてたんですよああもうなんで早く言ってくれなかったんですかあそうなんですよネコとウサギを堪能できる天国を作ったのは私ですよ自前のうさぎを連れ込みました! 私だけではなくたくさんの人にこの幸せと感動を味わってほしくて……! もう……ネコちゃんやウサギちゃんがいないと、生きていけない……ああ心の友よ」


客A「心の友……そうですね。なんかいいです、それ! 夜まで語り明かしましょう! いや、いつまでもずっと!」


私「はい!」


店長「おいフレン仕事サボるな――」



?「だめええええええええっ!」



店長「――よ……って今の声……」


私「だ、誰?」


客A「誰ですかね?」


?「だめだめだめ! ダメって聞いてたら何二人して! 私をハブる気なの! 最っ低!」


私「え、クルミちゃん……?」


クルミ「ダメだよフレンちゃん。お客さんとイチャイチャして」


私「いやこれはイチャイチャじゃなくてね――」


クルミ「――イチャイチャだよっ! ネコちゃんウサギちゃんの話を二人だけでっ! しかもいつまでも語り明かそうだなんて、それのどこがいちゃいちゃじゃないのっ!!」


私「クルミちゃんも入る?」


クルミ「……入る」


店長「いやお前ら仕事終わってからにしろよ。まだ開店したばっかだぞ。何のためにイベント開催したと思ってんだ。更にそのお客さんはまだモフモフしていない!」


私「そうだった!」


店長「フレン……たしかにウサギを連れてきてくれたことは今となってはとても感謝している。だが……だからといって――」


私「………………」


店長「ちゃんと仕事しなかったら給料なしだぞ」


私「あああああすみません店長。それだけはご勘弁をぉ! 絶滅してしまいます!」


店長「じゃあ頑張れ。いつも言ってるがクルミを見習って……いや今は見習うな」


クルミ「エヘヘエヘヘねこちゃんうさぎちゃん……ぐへ……ぐへへへへへへへ」


店長「いつも掃除とかはちゃんとやってくれて偉いが、ネコやウサギのこととなると、フレンみたいになっちまうんだよな……。フレンは接客してるから知らんだろうが、クルミは裏で――」


クルミ「――ああ店長なに勝手に言ってるんですかっ!」


私「なになに? クルミちゃんなにしてるの?」


クルミ「何もしてない!」


店長「まあクルミは俺もよく分からんがいろんな資格持っててすごいんだよな。フレンと同い年でまだ若いのに、ネコやウサギのケアに関しては一流だし」


私「私を馬鹿にしてます⁉」


店長「いやフレンも接客を頑張ってくれてるし、一番のムードメーカーだと思ってるよ。このカフェが暖かいのもフレンのおかげだと思うし」


私「なっ……珍しいですね店長にしては私を褒めるなんて……『やっぱり馬鹿にしてますよね?!』って台詞を準備してたんですけど」


店長「俺全然信用ないんだな。……でも本当のことだしなあ。嘘つく気はないし」


私「それいつも私たちに言う『ひどいこと』は本当に心の底から言ってるってことですよね……⁉」


店長「いやな言い方するなよ」


客A「なんですか『ひどいこと』って。僕……ひどいことする人は嫌いですよ」


店長「おいフレンお前のせいだぞ!」


私「何のことですか?」


店長「惚けるな!」


クルミ「ねえフレンちゃん」


私「なんですか⁉」


クルミ「『私たち』って言ったよね。それって私も含まれてる? 私、店長さんに『ひどいこと』なんて言われた覚えないけど……」


私「E……⁉ クルミちゃんはあの所業を許せると……なんと寛大な御方でありましょうか」


クルミ「え? 全然わからない……」



客B「あの」



一同「――ひぇっ⁉ いつの間に⁉」



客B「あれ、準備中でしたかすみません」


店長「い、いえいえ大丈夫ですお客様。申し訳ありませんお騒がせして……」


私「こんなに誠実な人だったんだ……」


客B「あ、うさぎがいっぱい……パラダイスゥゥウゥ……!!」


店長「……ああそうか。やっとわかったぞ、俺がおかしいのか。欲望にまみれた人間しか集まらんのかここは。そうだよな。猫と兎のカフェだもんな」


私「好きにもふもふしていいですよ……」


クルミ「ど、どうぞ……」




客A「僕も……ここでバイトしよっかな……」


店長「あ……バイトは……大歓迎だけど……ちゃんと仕事する気あるんですかね?」


客A「ありますよ」


店長「名前は?」


客A「リセイです」


店長「うむ。理性保てないくせによく言った」


リセイ「明日から月曜以外来るってのはOKですか?」


店長「OKだ。だが、そんなに来て大丈夫か? 健康第一だぞ。まあフレンは毎日いるが……」


リセイ「心配してくださってありがとうございます。ですが、僕はこの場所に毎日のように来たいんです。しかし僕はフレンさんのように理性を保っていられない」


店長「うむ。名前詐欺だな」


リセイ「なので僕は月曜は自分を見つめなおす時間にしたんです」


店長「その時間が逆に危険に感じるんだが」


リセイ「いや欲望が爆発するなんてことあるわけないじゃないですか」


店長「フラグを立てるな」


リセイ「というわけで今日まではお客です。もふもふしていいですよね?」


店長「あ、ああ……もちろんだ。だってそのためにこの場所をつくったんだからな」




私「お客さん! 居心地は!」


客B「まさに天国! 最高! 楽園! 何だこの空間は!!」


私「そしてここはカフェ! 裏メニュー・当店秘伝のトロピカルパフェはいかがですか?」


客B「パフェ……? なんで猫&兎カフェでパフェなんですか? ウサギ

ちゃんたちが食べちゃったらどうするんですか?」


私「食べても大丈夫なものしか入っておりません! パフェと言ってますがほぼフルーツです。生クリームとかも入っていませんし……あ、でもだからといって餌として与えないでくださいね!」


客B「じゃあそのパフェを」


私「本当ですか? ありがとうございます! トロピカルパフェ入りま~す、そして作りま~す! はいでは行ってきます!」


客B「パフェ作る人、他にいないんですか?」


私「私が作った裏メニューですので。メニューにないものは私にしか作れません。あ、ちなみに私の裏メニューを頼んでくれたのはあなたが初めてですよ。本当に、本当にありがとうございます!」


店長「フレン。早くパフェ作ってこい。……あ、何かわからないことがあれば私に。このカフェの店長マスターです」


客B「あ、あなたは……もふもふしないんですか?」


店長「え、あ、私は仕事でやっていますし、そんな……」


客B「じゃあなんでこのカフェを始めたんですか……?」


店長「それは………………」


クルミ「それ、私も聞いたことない……です」


リセイ「僕も気になりますよ、店長さんもふもふしようとしないですし。もふもふしないなら何のために……」


私「何それ私も聞き――あ、いや、なんでもないです」


クルミ「どうしたんですか?」


私「いやぁさっきデリカシーのないこと聞くなって言われたし、これもデリカシーのないことなのかな……」


店長「それはお客さんに対してだ。俺に対してはどうでもいい」


私「でも私がどうでもよくないんです。私――店長のことも、お客さんとねこちゃんやうさぎちゃんに対してと同じくらい大事に思ってるんですよ」


店長「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」


私「な~んてね、冗談です。やっぱり嘘でしたごめんなさい。私店長のことそんなには大事に思ってませんでした」


店長「おい⁉」


私「でも――」


店長「えっ…………」


私「やっぱり店長は店長ですから。それ以外でもそれ以外でもなく、大事に思っているとかそういうのでもなく、私にとって店長はずっと変わらず店長なんです。だから私は――店長が本気で嫌がることはしたくありません」


客B「あの、すみません……」


店長「あ、申し訳ありません。もうすぐパフェは作り終わると思うので……」


客B「いやそんなことはもう……失礼なことをお伺いしたようなので……」


店長「いえいえ。違いますよ。まあ、このカフェを始めた理由、それは、簡単に言えば――――猫が好きだから、に決まってますよ。あ、ウサギはこいつが勝手に連れてきただけで元は猫カフェだったんですよ」


客B「そうだったんですね……」


店長「私はもふりたい欲望でカフェを開いた、とかではなくて、ただ――猫に家族として一緒にいてほしい、みたいな感覚なんですよ」



 はい! 店長のいい顔が見れました!


 イベントは成功したのかもしれない!


 いつもの雰囲気とは少し違いますが、暖かいです!


 張り詰めたような空気があっても、私たちはそれを壊せます!


 私たちの情熱は絶大です!


 絶対にこの絆は引き裂けません!


 私たちは――――このカフェで働いています!




 このイベントは――まだまだ続きます。

 まだまだ――始まったばかりです。


 全てはモフモフをたくさんの人に感じてもらうために!



                       【続くかもしれない】

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NEKOUSAGI -CAT and rabbit- 星色輝吏っ💤 @yuumupt

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