小説のアイデア
ふさふさしっぽ
本文
小説のアイデアというものは、パソコンの前でうんうんうなっていてもなかなか降りてこない。
はっきり言って、今がその状況だ。
KAC2022も7回目。今回は締め切りに余裕があると思って余裕こいてたらもう締め切り当日だ。休み前の自分を叱りたい。
出会いたいときに出会えない、それが小説のアイデアだ。
そして、別れたくないのに、いつの間にかお別れしている、それが小説のアイデアだ。
例えば、めちゃくちゃ忙しい仕事中、小説のアイデアは私の元にやってくる。突然やってくる。今呼んでないのに。
例えば、電車が駅に着いて、駅の階段を大勢の人と降りているとき、小説のアイデアは私の元へやってくる。突然やってくる。ちょっと待った、今スマホ出せないから。
仕事がひと段落したあとや、階段を降りきって、人込みを避けてスマホを取り出したとき、小説のアイデアは私の元を去っている。まだ別れたくないのに。
思い出せないくせに、すごくいいアイデアだったことだけは覚えているから、くやしくてたまらない。
この前も寝る前に「傑作!」というアイデアがひらめいたので、メモ帳に書き殴り、そのまま寝た。すごく眠かったのだ。
これで明日、仕事が終わったあと一本書けるな、と思うと自然と顔もほころぶ。いい夢を見れそうと思った。
夢は見たかもしれないし、見なかったかもしれない。忘れたが、次の日目覚めてすぐに、書き殴ったメモを見た私が唖然としたのは言うまでもない。
<メモの内容>
母親の介護をする娘。
五年目。
母を憎く思う。
そこに、不思議な人物があらわれ、
「お母さんを殺してさしあげます」と言う。
??? 何も分からん。
寝る前は、あんなに傑作だったはずなのに!
もっと詳しくメモをしろ! 昨日の私!
小説のアイデアは、とっくに私の元を去っていたのだった。
小説のアイデア ふさふさしっぽ @69903
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