第2話 イルヴァ
俺の主となった彼女、イルヴァとは同い年だった。だが、その知性は他の王家の血を引く者達とは頭一つ分抜きん出ていた。また、魔法の腕もピカイチだ。
魔法には、火・水・風・土・雷・光・闇・無、と八つの属性がある。その内、無属性を持つ者はほとんどいないと言われる。なぜなら無属性は、それ以外の属性の長所を伸ばす事ができるといった特徴を持つ属性であるため、それ以外の属性を全て持つ者でなければ会得できないとされているからだ。また、属性数には個人差がある。おおよその目安としては、平民で一つ、下級貴族で二〜三つ、中級貴族で四〜五つ、上級貴族で六つ、王族で七〜八つといったところだ。先にもあるように、無属性を持つ者はほとんどいないため、全属性を持つ王族もなかなか珍しい。そんな中イルヴァは、まだ五歳という幼さながらも全属性を持つ、いわばエリートだ。
『クランツ!!一緒に魔法の練習しましょ!』
『あぁ!』
そんな彼女と一緒に魔法の特訓をするようになったのは、八歳の頃だ。クランツはイルヴァに拾われたあの日から、自身の能力を隠すようにして生きてきた。世の中にはその能力を持ち喜ぶ人間の方が多いが、クランツには到底そのように思える日が来るとは思えなかった。
イルヴァは、八つある属性のうち光属性を最も多く持っている。光、と聞くと閃光をイメージしがちだが、実はそうでもない。光属性を用いて出来ることは沢山あり、攻撃面、防御面共に応用することができるため、八つの属性の中でも有用性の高い属性だ。もとより、全属性持ちのイルヴァには属性を切り替えれば解決する問題だが。ちなみに俺は、闇属性が一番強い。闇属性も光属性と同様に攻撃面、防御面共に申し分ない属性だが、軽々しく使用すると自分にまで影響が出る厄介なものであるため、時と場所をよく見極めて使わなければならない。所有属性の偏りは当人の性格に左右されるとされているが、現状では詳しい事はまだ分かっていない。
『クランツー!!起きてー!!』
特訓を始めたばかりの頃、よほどそれが楽しかったのかいつもは寝坊ばかりするイルヴァが、まだ早朝だというのにも関わらず俺のベッドルームまでやって来て魔法を使って起こしてきた時があった。あの時、イルヴァはよりにもよって火属性を使ってしまったために俺の部屋を丸焦げにしてしまい、ご主人様にこっぴどく叱られていた。
君を守るため 雪蘭 @yukirann
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