第259話 意外な再会
---ラサミス視点---
オレは突然な展開に思考がついていかなかった。
ここは
そんな場所に何故この女――エリーザが居るんだ。
よく見ると金鉱町レバルで戦った
するとドン・ニャルレオーネは、オレ達の様子を見てこう云った。
「オマエさん方が驚くのも無理はない。
この三人は結構前からニャルレオーネ・ファミリーで面倒を見ているのさ。
コイツらだけじゃない、オマエさん方の元仲間マルクスも一時期、面倒を見ていたくらいさ」
「!?」
オレ達はドン・ニャルレオーネの予想外の言葉に虚を突かれた。
マジかよ、あのマルクスとも関係があったのか?
ドン・ニャルレオーネは、驚くオレ達を見据えながら、言葉を続けた。
「奴はオマエ等も知っての通り、無茶苦茶な男だった。
実は云うと最初のきっかけはウチの
だが奴はたった一人でウチの組員を二十人以上ぶっ倒した。
オレは怒ると同時に「スゲえ野郎だ」と思って、奴をウチの組にスカウトした。
まあ奴はその申し出を断ったが、組の面倒なシノギをちょくちょく手伝ってくれたから、ニャルレオーネ・ファミリーで結構な期間、奴の身柄を預かってたのさ」
「……そうだったんですか」
と、やや驚いた表情のドラガン。
どうやらこの件に関してはドラガン達も知らなかったようだ。
だがマルクスの事はいい、もう奴はこの世に居ないからな。
問題はこの眼前の三人組がここに居るかだ。
「まあ奴の最後は知っているよ。
奴らしいと云えば奴らしい最後さ。
でもアイツもああ見えて良いところもあった。
だけどその件でオマエさん方を責める気はないさ」
「……はあ」と、ドラガン。
「分かってるさ、オレがなんでこの三人を匿ってるかって事だろ?
まあ表向きの理由はマルクスと同じさ、でも裏の理由は、
いざって時の切り札の為さ、そうマルクス事件の発端となった
「……」
どういうつもりだ?
この男、何やら良からぬ事を考えているのか?
するとオレ達の反応を見て、眼前の
「あ~、勘違いするなよ。 いくら強欲のオレ様でもアレ――禁断の果実でシノギする気はないぜ。むしろ逆だ。 あの禁断の果実は表は当然として、裏でも出回らせる訳には、いかない
「……一応信じます」
「……同じく」
ドラガンと兄貴が低い声でそう答えた。
「ああ、一応でも構わねえよ。 とにかくさっき話した胡散臭い連中が
禁断の果実の情報を探ってたから、オレは組の者に網を張らせた。何人か尾行させたが、ことごとく撒かれた。 そしたら怒った組の若い衆が実力行使に出てよ。 その連中に襲い掛かったんだよ。 そして見事に返り討ち、という訳さ。 だからウチの組としても、このまま放置するわけにはいかねえのさ」
「成る程、そういう訳ですか」
と、ドラガン。
「だからオマエさん方とこの三人組で協力して、
連中を追って欲しいんだ。 勿論、報酬はちゃんと用意するさ!」
「……この三人と協力ですか?」
兄貴はそう云いながら、訝しげな表情でエリーザ達を見た。
まあこれは兄貴の気持ちも分かるぜ。
何せオレ達は散々やり合った仲だからな。
すると金髪の女エルフ――エリーザがこちら一目見て、
凜とした声で話掛けてきた。
「アナタ達の気持ちは分かるわ。
でも私やここに居るマライヤやギランもあの禁断の果実の件に
関しては、旧文明派のやり方に疑問を感じていたわ。
だからもし今回の件が予想通り、禁断の果実絡みの話ならば、
私は全力を持って、それが悪用されることを阻止したいのよ。
この言葉に嘘偽りはないわ」
「……」
だがドラガンと兄貴、アイラ、ミネルバはエリーザの言葉に黙ったままだ。
無理もない、金鉱町レバルや大聖林ではあれだけ暴れたんだ。
それを「反省しているから許して!」と云われて「はい、そうですか」
と云えるほど、オレ達はお人好しじゃないし、馬鹿でもない。
「まあオマエさん方としたら納得がいかない話かもしれん。
だがこの場はこのオレの顔を立てて、「うん」と頷いてくれんか」
そう云ってエリーザをアシストするニャルレオーネ。
どうやらこの男は最初からオレ達とこの三人を組ませるつもりだったようだ。
しかも自分の屋敷に招き入れて、周囲を自分の部下で固めるという
状況を作って、「はい」と答えるしかないように持っていくんだからな。
確かに見た目こそ
「……我々がこの三人と組むメリットを教えていただきたい」
ドラガンは表情を消したまま、そう問うた。
するとその態度が勘に触ったのか、
近くに居た黒服のキジトラの
「おい、おんどりゃあ! ウチのボスがこんだけ云ってるんだニャン!
オマエ等も四の五の云わんで「はい!」と云わんかいニャ!
鳴く子猫も黙るニャルレオーネ・ファミリーを舐めるなニャ!」
と、凄んでいるがイマイチ迫力がない。
だって
とは云えこのまま「ノー」と言い続けるのも難しい状況だ。
だがドラガンは毅然とした態度と口調でこう返した。
「勘違いしないで頂きたい!
我々は
我々は客人として招かれた筈でしょう?
……違いますかな、ドン・ニャルレオーネさん?」
うお、ドラガンも言うねえ!
でも周囲の黒服の部下達が一斉に表情を変えて、こちらを睨んでるぞ。
だが当の本人であるニャルレオーネは「ほう」と云って双眸を細めた。
「オマエさん、度胸があるねえ~。
流石は
そうさ、オマエさん方は客人だ。 だからオメエ等、おかしな真似はするなよ!」
「はい!」「……はい」
ニャルレオーネの一言で周囲の部下達は一斉に大人しくなった。
流石は名うてのマフィアのボスだ、この辺の部下の管理はしっかりしてる。
「分かった、そうだな。 無条件でオレ達に従え、というのもアレだな。
じゃあオマエさん方の要望とかを云って見ろよ?」
「まあそう云われると困るんですけどね。
具体的に何か欲しい、して欲しいという訳ではありません。
ですがタダ働きする気はないので、金銭でも物品でも良いので、
それなりの報酬は欲しいです!」
ドラガンはそう云ってこちらの要望を伝えた。
するとニャルレオーネは「フム」と笑顔で頷いた。
「分かった、金はそれなりに用意させてもらうよ。
後、欲しいアイテムや武具などもあるなら、
ニャルレオーネ商会で管理する
「それは助かります!」と、ドラガン。
「まあ後はこのドン・ニャルレオーネに恩を売る。と言うことで納得してくれや。 オレはこう見えて恩や義理は必ず返すタイプだぜ?」
「ではそういう事でお願いします」
「ああ、じゃあ早速だが今後について話し合おうじゃねえか」
そしてオレ達はニャルレオーネと今後の方針について話し合った。
まあと云っても基本的には、ニャルレオーネ・ファミリーと組んで、
彼等が追ってた怪しい連中を捕まえて欲しい、ってのが話の大筋だ。
とりあえずオレ達はリアーナ以外で活動しているニャルレオーネ・ファミリーと
協力して、
その為にニャルレオーネ・ファミリーの一員の証である金バッジを人数分貰った。
これを胸につけていたら、ニャルレオーネ・ファミリーの連中は無条件で協力してくれるらしい。
便利と云えば便利だが、リアーナ内ではつけられないな。
「暁の大地がニャルレオーネ・ファミリーと組んだ」という噂は流されたくない。
ウチには
「とりあえず何かあれば、この「携帯石版」と「
とりあえずオレ達は人数分の「携帯石版」と「
これがあれば連絡の際に便利だからな。
だからここは素直に受け取っておこう。
「じゃあそう云うわけだ。 エリーザ、マライア、ギラン。
オマエ等三人はこちらの『暁の大地』と組むんだ。
これはファミリーのボスとしての命令だから、黙って従え!」
「はい」「……了解」「……はい」
「じゃあ早速だが今から組んでくれや!
何かあれば、オレに直通で繋がるその金色の携帯石版を使ってくれ!」
「……了解しました」
「じゃあ、話はこれまでだ。 はい、解散、解散」
こうしてオレ達はエリーザ達と共闘する事となった。
これに関しては思うところは多々とあるが、こうなった以上、協力するしかない。
だからオレ達はエリーザ達を連れて、
それにしても今回の件は色々問題を抱えているな。
オレは禁断の果実――
まあ現時点ではオレの推測に過ぎないが、多分間違ってないと思う。
やれやれ、せっかくの休暇が丸々潰れそうだぜ。
だがこの件を放っておくと、とんでもない事になる。
ん?
確証はないが、心当たりはある。
そう、
だからこの件は必ず内々に処理するしかない。
やれやれ、こりゃ色々と面倒臭いことになりそうだぜ。
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