第225話 猫族海賊(ニャーマン・パイレーツ)・(前編)
---ラサミス視点---
オレ達は言われた通り、武装解除して目の前の黒いログハウスの中に入った。
ログハウスの中は必要最低限の調度品しか置いてないが、そのセンスは良い。
シックな外観に合わせるように、内装もシックな雰囲気を漂わせていた。
そしてキジトラ
すると大広間のような部屋に通されて、
「――ここで待っていろ!」
と、言われたので部屋に中央に配置された長テーブルの前の木製の椅子に腰掛けた。長テーブルの左側にドラガン、兄貴、オレ、ミネルバ、族長アルガス、アイザックが陣取り、
それから五分ほど待たされた。
すると左右にお供の
体長は70セレチ(約70センチ)くらいか?
左目に黒い
頭には漆黒の海賊帽、上半身に白いシャツの上に
そして腰の剣帯に
それから海賊コート姿の
するとお供のキジトラ猫はその左隣に、サバトラの白猫は右隣に腰掛ける。
自然とこの場に独特の緊張感が走り、最初はしばしの沈黙があったが、
海賊コート姿の黒灰色のハイランダー
「皆様、ワタシが
キャプテン・ガラバーンはそこで言葉を切り、ゆっくりとした視線で室内を見渡した。なんというか思っていたより、穏やかな雰囲気を漂わせている。
だがそれでいて身体から強者特有の
「まず
其の一の項目である我々、
成る程、まず第一条件がそれなのは頷ける。
だから
「ええ、それに関しては我が
と、
だがキャプテン・ガラバーンはさも当然といった表情で言葉を続けた。
「了解しました。 では次の項目に移ります。其の二の項目――連合軍に加勢して魔王軍に勝利した際には、一億グラン(約一億円)の報奨金を出す、というのも本当ですかな?」
一億グラン(約一億円)かぁ。
この金額が低いのか、高いのかは現時点では判断がつかないな。
しかし金で釣るというアイデア自体は良いと思う。
「ええ、それに関しても我々、
と、大臣。
するとガラバーンは「うむ」と小さく頷いて、こう付け加えた。
「だがこの項目には敗戦した時の保障については書かれていません。
なので我々が連合軍に加勢した時点で、勝敗を問わず5000万グランを払っていただきたい」
「……それは私の一存では決めかねます」と、大臣。
「いや大臣、それは王族であるボクが保障するニャン。
なんならその書状に一筆書いてもいいだニャン」
マリウス王子が口を濁す大臣の代わりにそう言った。
するとガラバーンは顎に右手を当てて、「そうですか」と答えた。
まあこの辺は
オレが口を挟む問題じゃない。
しかしガラバーンの要求はそれで終わらなかった。
「ではもう一つ約束していただきたい」
「ウニャ? 何かニャ?」と、マリウス王子。
「この戦いに勝利した暁には
なっ、さ、流石にそれは無茶な要求じゃね?
そう思ったのはオレだけじゃなかった。
「最新鋭の戦闘型ガレオン船!? いくらなんでもそれは無理だ!」
「ええ、それに我が
「……流石にこの条件は呑めませんな」
大臣の言葉に追従するレビン団長とケビン副団長。
まったくだ。 いくら何でもこの要求は厚かましすぎる。
と、思った矢先、マリウス王子がガラバーンの要求に応じた。
「ボクはこの条件でも良いと思ってるだニャン」
「しかし殿下、こんな要求を呑む必要はありません」
大臣がやや興奮しながら、そう言った。
だがマリウス王子は落ち着いた口調で返答した。
「だが今回の戦いは
「ええ、元よりそのつもりです」と、返すキャプテン・ガラバーン。
「ですが殿下――」
「大臣、黙るだニャン! これは第二王子としての命令だニャン!」
「……分かりました」
するとマリウス王子はガラバーンを見据えながら、笑顔を浮かべて言った。
「……という訳だニャン。 条件はこれぐらいでいいかニャ?」
「……まだもう一つ条件、というかお願いがあります」と、ガラバーン。
「え? まだあるの?」と、マリウス王子。
おい、おい、おい、これ以上の要求は流石に呑むべきじゃねえだろう。
とはいえオレが口を挟める空気じゃない。
というかこの件に関しては、竜人族の代表であるアルガスも押し黙っている。
同様にお人好し――お猫良しのマリウス王子も口をつぐんで、ガラバーンの言葉を待った。そしてガラバーンはオレ達が想像もしなかった事を言い始めた。
「この戦いで勝利を収めた暁には、このセントライダー島に【セントライダー
「「「「「セントライダー
な、何言ってるだ、コイツ!?
そう思ったのはオレだけではなかった。
大臣、マリウス王子、レビン団長、そしてドラガンと兄貴も目を丸くしていた。
なんだ、それ?
つまり海賊を主体とした国家の建国を目指しているというのか?
そう思ったのは、オレだけではなかったようだ。
「……
つまり
「ええ、そのつもりです」
と、真顔で返すガラバーン。
「……流石にそれを無条件で認めることは出来ないニャン!」
「マリウス王子の仰るとおりです。 いくら何でもその要求は無茶だ!」
レビン団長は珍しく興奮しながらそう言った。
左隣に座るケビン副団長も「全くです」と相槌を打つ。
まあ当たり前だよな。
というか
だが動じた素振りも見せず、ガラバーン言葉を返した。
「勿論、その辺は理解しています。 なので海賊共和国を正式に承認する必要はありません」
「……それはどういう意味ですかな?」と、大臣。
「そのままの意味です。 我々が頃合いを見計らって海賊共和国の建国を宣言します。それに対して
「……え~と簡単に言うと、見て見ぬふりをしろということかニャ?」
「そういう事です」
「……」
う~ん、要するに表向きは無視するが、裏では国家の存在を認めろ。
あるいは海賊共和国のやる事に干渉するな、という事か?
成る程、そういう話なら聞く耳くらいは持ってやってもいいかもな。
「この件に関しては、あくまでお願いであります。
なので現時点ではそういう話もある程度に考えていてください」
と、ガラバーン。
「成る程、分かりました」と、大臣。
「それならいいだニャン。
では
「ええ、我が
「うん、よろしくだニャン!」
「ええ、こちらこそよろしくです」
マリウス王子とガラバーンはそう言葉を交わしながら、右手で固く握手を交わした。こうして
しかしこれは最低限の条件が揃ったに過ぎない。
だが次の戦いが始まるまでは、軽くリラックスしてもいいだろう、多分。
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