第127話 雑魚呼ばわりすんじゃねえよ!
「うおおおおおおっ……おおおおおおっ!!」
そう雄叫びを上げながら、眼前の
俺は全身に風属性の
俺は風の
そして両手に無属性の
「ぐおおお……おおおっ!」
眼前の
こいつの体長は大体五~六メーレル(約五~六メートル)。
オークやオーガよりは大きいが、あの漆黒の巨人程ではない。
だからこれくらいの巨人なら、今の俺なら必ず勝てる。
俺は大きく跳躍して、
「う、うごっ……うがああああああっ!」
弱点である一つ目を攻撃されて、悶え苦しむ
だがこれで終わりじゃない。 俺は再度、両手に無属性の
そして巨人の鼻先を足場にして、左右の拳を交互に繰り出した。
左、右、左、右、左、右、左、右。
立て続けに四発のワンツーパンチで
俺は
さてここから止めをさすべく喉下か、口内を狙うか。
と俺が思っていると、後ろから兄貴が猛スピードで駆けて来た。
「ラサミス、素手では時間がかかり過ぎる。 ここは俺に任せろ! 行くぞっ! ピアシング・ブレード!!」
兄貴は素早く
そして手にした白銀の長剣で巨人の額目掛けて、強烈な突きを繰り出した。
「う、うぎ、ぎ、ぎゃああああああっ……あああっ!!」
断末魔を上げながら、兄貴の一撃を受けた
でもここは俺に任せてもらいたかったぜ。
なんか美味しいところを持っていかれた感じ。 まあいいけどね。
「ほう、少しはやるじゃねえか。 だが所詮はヒューマン。 我等、魔族の敵ではないな」
ヒューマン言語でそう言いながら、凄まじい威圧感を放つ漆黒の鎧を着た魔族が前に出て来た。 やや短めの
「我が名は魔王軍千人長ガブゲイル。 長髪のヒューマン、貴様の名は?」
おいおい、この俺を無視するなよ?
俺はややムカつきながら、前に出てこう言った。
「おっと、貴様の相手はこの俺だ」
「なんだ、小僧? 雑魚がしゃしゃり出てくるなっ!」
カチン。
この野郎。 雑魚とは言ってくれるじゃねえか。
確かに小僧だが、これでもそれなりに修羅場を潜っているんだぜ?
「雑魚は貴様だろ? てめえ如きがうちの副団長と戦おうなんて百年早い。 まずはこのラサミス・カーマインが相手だ。 ああん?」
「ふん。 弱い犬ほどよく吼えるな」
この魔族、マジムカつくぜ。
だが俺もここでキレれる程、ガキじゃない。
逆に煽るように――
「同感だぜ。 能書きはいい。 さあ、やろうぜ?」
俺はわざとらしく両手の指をポキポキと鳴らした。
すると眼前の魔族は小馬鹿にするように、小さく嗤った。
「ふん、昔も今も馬鹿は変らんな。 だがいいだろう。 とりあえず身の程知らずの小僧を最初の生け贄にしてやろう」
そう言いながら、その漆黒の
「ラサミス、油断するなよ? 相手は魔族の千人長だ。
これまでの敵と同じと思うなよ?」
「分かってるよ、兄貴。 まあ俺の戦いっぷりを見ててくれよ」
「分かった、お前を信用しよう」
俺はそう言葉を交わして、前へ出た。
とりあえず光の
相手は
リーチの差では、向こうにやや分がある。
だがこれから先こういう戦いが増えるだろう。
だからここで魔族相手の対人戦に慣れておく必要がある。
ガブゲイルは身長180以上に加えて、鎧の上からでも分かるほどに、筋骨が隆々としている。
単純な力比べでは、勝てそうにない。
だが戦いは力が全てではない。 技と頭脳も大事なのだ。
「どうした、小僧? かかって来ないのか?
ならばこちらから仕掛けさせてもらうぞ! フンッ!!」
そう言いながら、間合いを詰めて来るガブゲイル。
そして右手に持った漆黒の
ぶるん、ぶるんと
一撃、一撃が凄く重そうだ。 これは
しかし当たらなければ、問題ない。
これまでの経験と積み上げられた自信を信じて、
俺はガブゲイルが振るう
「チッ……ちょこまかと逃げやがって……ぐっ!?」
俺は文句を言うガブゲイルの鼻っ柱に左ジャブを繰り出した。
更にもう一発、二発、三発と左ジャブを当てた。
わずかに身体をよろめかすガブゲイル。
この
俺は腰を内側に捻り、渾身の右ストレートでガブゲイルの顎を強打。
「ぐ、ぐっ!?」
綺麗に右ストレートが決まり、眼前の魔族は身体を硬直させた。
更に追撃すべく、左、右とワンツーパンチを繰り出したが――
「――小僧、調子に乗るな!」
左腕で
そしてガブゲイルは右手に持った
「――シャドウ・クラッシュ!」
闇属性の初級
だが初級だがその振りは鋭い。
俺は後ろに小さくバックステップして、ギリギリのタイミングで
俺はこの絶好のカウンターチャンスを逃さなかった。
「――貰ったあああっ!!」
俺はがら空きになったガブゲイルの胸部に『
カウンターに加えて、魔族の弱点属性を突いた事により、強烈な衝撃がガブゲイルの胸を駆け抜け、その巨体が後方に大きく吹っ飛んだ。 背中から地面に倒れて、ガブゲイルは口から胃液と少量の血液を吐きだす。
「おおおっ……アイツ、少しはやるじゃねえか。 というか今の技は何だ?」
「恐らく体術スキルの『
ボバンがそう言うと、アイザックがぽつりとそう答えた。
ふふふ、いいね。 この感じ。 悪くないよ、というか良い感じだよ。
とりあえずこれで最低限の面目は保てたぜ。
「千人長がやられたぞ。 あの小僧、なかなか手強いぞ!」
「ああ、正直連中を舐めていたぜ。 俺達の想像以上に強い!」
周囲の魔族達も警戒気味にそう口にした。
これは流れが完全にこちらに傾いているな。
この間隙を突いて、攻勢に出るべきだ。
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