第99話 熊狩りの時間
「ギ、ギギギッ!!」
「マンドレイクの
皆、避けろ! 命中したら体内に根を植えつけられるぞ!」
兄貴の言葉に従い、全員散開して回避行動を試みる。
今、交戦しているモンスターは、かの有名なマンドレイクだ。
人型に似た形状の植物のモンスターで、その根っこの部分は魔法薬や錬金術の材料にもされる。
大きさは精々三十セレチ(約三十センチ)くらいだが、その
「極力接近戦は避けるんだ! メイリン、マリベーレ!
お前達二人の魔法と狙撃で奴等を仕留めろ!」
「了解ッス」「わかったわ!」
そうだな、ここは兄貴の判断に従うべきだな。
万が一にも
「我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! ――行けえっ! ……『スーパーノヴァ!!』」
次の瞬間、メイリンの杖の先から激しく燃え盛る紅蓮の炎が生み出された。
紅蓮の炎が激しくうねりながら、マンドレイクに目掛けて放射される。
「ギ……ギ……ギオオ……オ―――ッッ!?」
紅蓮の炎が激しく燃え盛り、マンドレイクを消し炭にする。
根っこの部分を持ち帰れば、ギルド辺りで良い値で売れるのだが、今はそんな事言っている場合じゃないな。
「――そこよ!」
メイリンに続くようにマリベーレも立ち撃ちでマンドレイクを狙い打つ。
銀の魔法銃の銃口から放たれた合成弾が次々とマンドレイクに命中。
恐らく火炎属性と風属性の合成弾を使用したのであろう。
弾が命中する度にマンドレイクの身体が炎に包まれて、激しく揺れた。
その後もメイリンの魔法とマリベーレの狙撃で確実にマンドレイクを倒す。
十五分も経つと、周囲のマンドレイクはほぼ全滅した。
その後も兄貴とアイラ、ミネルバが先陣を切り、
その後、しばらく何の問題もなく森の中を進めていたが、森の中で流れる川に到着したところで異変が起きた。
「これは……」
俺達は兄貴の言葉に釣られて、川に視線を向ける。
すると川の近くでネイティブ・ガーディアンの兵士の死体が地面に転がっていた。 その頭部や胸元が激しく損傷している。
「敵にやられたか。 あるいは大型モンスターにやられたのか?」
「傷口からして、大型モンスターだろ。 多分熊とかそんな辺りだろう」
兄貴の言葉にそう答えるドラガン。
確かにこの手の傷はモンスターにやられたものだろうな。
「マリベーレ、このフォリスの森には大型モンスターは居るのか?」
「うん。 レイジング・ベアという獰猛な熊のモンスターが出るわ」
ドラガンの問いにマリベーレは的確に答えた。
レイジング・ベアか。 名前からするとかなりヤバそうな熊だな。
そんな奴が何体も出てきたら、結構洒落にならないよな。
「でも変ね。 レイジング・ベアは確かに狂暴だけど縄張りさえ荒らさなければ、人には危害は加えない筈。 彼等は穴の中で暮すから、この川辺は縄張りじゃないと思うわ」
と、マリベーレ。
「なる程、それは少し妙な話だな。 何か匂うな」
「ドラガンもそう思うか?」
「ライル、お前も何か感づいたのか?」
「ああ、例えば敵に
……あり得る話だ。
あの漆黒の巨人の戦いでも敵に
なんだっけ?
あの赤髪のエルフ、あいつも
「……その推理は当たっていると思うわ。
気がつかない? 私達、いつの間にか囲まれているわよ!」
「なっ!?」
俺はミネルバの言葉に思わず呻き声を上げた。
そして周囲に目を配ると、大きな熊の姿があった。
奴等は俺達を包囲するように、囲んでいる。
数は五体、いや六体か!
よく見ると大きな熊の首に漆黒の首輪がはめられていた。
そして漆黒の首輪が、青白い光を放って明滅し始める。
これと同じ物を漆黒の巨人戦で見た覚えがある。
確かあの時も
「クソッ……嵌められたな。 全員、戦闘態勢に入れ!」
忌々しそうにそう言いながら、兄貴は剣帯から白銀の長剣を抜剣する。
それに釣られるように、残りの者達も武器を手に取り、身構えた。
俺も覚悟を決めながら、背中から戦斧を取り出した。
こりゃもうやるしかねえな。
俺は乾いた唇を舌で舐めながら、前方に視界を向けた。
前方には逞しい肉体の森の熊さんがこちらを睨んでいる。
さあ、犬狩りの次は熊狩りの時間ですよ、ってか!
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