第五章 兄弟(きょうだい)
第22話 ニャルララ迷宮(前編)
王都ニャンドランドから二日ほどかけて、
山を越えて俺達は目的地に到着。
ニャルララ迷宮。
この迷宮がいつの時代に出来たかは詳しい事は未だにわかっていない。
既にこの迷宮の存在を示唆するような文献があるので、
少なくとも千年以上前からあったと思われる。
このウェルガリアの世界各地に迷宮やダンジョンと呼ばれる物は
数多く存在するが、千年以上前の建造物となると、そう多くはない。
迷宮やダンジョンはモンスターにとっては格好の
冒険者や考古学関係者などの一部の人種しか訪れない為に、
どんどん繁殖して文字通りモンスターの巣窟と化す場合が多い。
俺達はニャルララ迷宮のすぐ傍にある避難所も兼ねたログハウスで
小休止して、下準備を終えてニャルララ迷宮の入り口の前まで進んだ。
俺達は奥を
前一列にドラガンと兄貴とアイラ。
後一列に俺とエリスとメイリンが並び、手に魔石で作られた
魔法のランタンをぶら下げて、ゆっくりと迷宮内を進む。
魔法のランタンは魔石に魔力を注入する事で明かりを灯すので、
松明や普通のランタンより、遥かに便利なのでこういった迷宮や
ダンジョン探索には欠かせないアイテムだ。
魔法のランタンの灯りで周囲を灯しながら、俺達はドンドンと前へ前へと進む。
視界を埋め尽くす薄茶色の壁面と天井が何処までも続いている。
「……ちょっと止まってくれ」
というドラガンの言葉に皆が従い、その場で足を止める。
するとドラガンは首にぶらさげたゴーグルをくいっと目元に押し上げた。
そしてゴーグル越しに双眸を細めながら――
「う~ん、やはり魔力数値が高いな。 それと邪気と瘴気も漂っている。
前に訪れた時はこうではなかった。 これは先客が居るかもしれんな」
「ねぇねぇ、ドラさん。 そのゴーグルってなにか意味あるんですか?」
俺も疑問に思っていた事をエリスが訊いた。
「ああ、これはニャーグルというゴーグルだ。 これをかけて周囲を見れば
魔力数値などを測れる魔法道具だ。 ちなみに首にかけている小瓶は
戦闘力と魔力が跳ね上がる優れものだ。 ……ただの飾りではないぞ?」
なるほど。 前々から思っていた疑問が氷解した。
意味はあんのね、一応。
「……先客というとマルクスかしら?」と、アイラ。
「……恐らくな。 ただこの漂う邪気と瘴気が気になる。マルクスは暗黒魔法を
得意とするが、邪気や瘴気が関連するスキルや魔法は持ってない筈だ。
となると奴が
と考えた方がいいだろうな」
ドラガンの言葉に兄貴も「ああ」と頷き、同意する。
「奴も一人で我々に立ち向かうほど馬鹿ではないだろう。
恐らく三、四人の仲間を引き連れていると考えるべきだろう。
となるとこの邪気の正体はその仲間が持つスキルや魔法が関連すると思われる。
つまりはドラガンの云うとおり
「はい、一通りは使えます。 要するに
「ああ、恐らくそうなるだろうから、その時は頼む!」
「はい! お任せくださいなのです!」
神聖魔法は
神聖な力を持つ
モンスターの標的にされやすく、特に
故に自身を護る為に神聖魔法を取得するのは、
また少人数で効率よく敵と戦う場合、スキルや魔法で
何かを使役するのが基本戦術だ。
それは精霊だったり、使い魔だったり、時には悪霊や死霊だったりする。
だが何かを使役するには、自身の魔力を激しく
消費するので長時間の継続は難しい。
しかし例外もある。
それが悪霊や死霊などの
故に周囲の環境などに非常に左右されやすい。
そして更には自分より強い魔力や邪気の持ち主の前では隷属する傾向がある。
だから
魔法を持つ
更にここは日の光の届かない迷宮。
基本的に夜間にしか行動出来ない。
だがこのような日の光のない迷宮では、神聖魔法や聖水などで
浄化しない限り、
だからこういう迷宮で相手が
使役してくるとなると、少々厄介である。
「……俺とドラガンが
ラサミスとアイラでエリスを護ってくれ。 メイリンは迷宮内だから
あまり破壊力の高い魔法の使用は避けてくれ!」
「了解」「ああ」「はいです」「はいッス」
兄貴の言葉に俺達は返事をして、ランタンを片手に迷宮内を進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます