出会いと別れと出会いと別れと

味噌わさび

第1話 旅人達

「……まさか、また会うとはな」


 酒場で、旅人の男性は信じられないという顔で目の前にいる人物を見ていた。


「あら。それはこっちの台詞なんだけど」


 そういうのは、男性の目の前にいる女性の旅人であった。


「……前に別れてから何年経っている?」


「そうね……三年くらいしかしら?」


「……もう二度と会うことはないって言ったはずだったんだけどな」


 男性は少し恥ずかしい気分だった。


 二人の旅人はかつて共に旅をしていた。


 そして、男性は女性のことが好きだった。しかし、気持ちをどうして打ち明ける勇気を持てなかった男性は、女性と別れ、一人で旅をすることにしたのだった。


 それが三年前。男性はこの三年間、一人で様々な旅をしてきた。そして、これからも一人で旅を続けるはずだった。


 しかし、男性は女性と再び出会ってしまった。


「で、これからどうするの?」


 酒場を出た女性は、男性に訊ねる。


「いや……どうするも何も、旅を続けるさ」


「一人で?」


 そう言われて、男性は言葉に詰まってしまう。女性の方は男性の答えを待っているようだった。


「……あぁ。一人で続けるさ」


 少し考え込んでから男性がそう言うと、女性はその答えをわかっていたという感じで、笑顔でうなずく。


「わかったわ。じゃあ、私も一人で旅を続けるわね」


 そう言って女性はそのまま背を向けて立ち去ってしまう。


「あ……あのさ!」


 と、男性は思わず声をかけてしまう。女性は振り返る。


「何?」


「……まさか、また会う……なんてこと、ないよな?」


 男性がそう言うと、振り返った女性は意味深に微笑む。


「さぁ? どうかしら?」


 そう言って今度こそ女性は立ち去っていってしまった。


 そうは言っても、流石にもう二度と出会うことはないだろう……男性の旅人はそう思いながら、その場を離れる。


 ちなみに、その三年後にも二人は再び出会ったこと、その時にはついに男性が女性に気持ちを伝え、二人は結ばれ、旅人たちの旅が終わったこと……。


 そもそも、女性の旅人は男性の旅人と別れたその日から、ずっと男性の旅路を追うようにして旅をしていたという事実は……その時女性と別れた男性は知る由もないことなのであった。

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