第2話恐怖と決意


「なんだぁ〜何か言ったかい?」


お爺さんにも聴こえているようだ。




「いや、何も、、、、」




答えた途端体が暖かくなるのを感じた。丹田の辺りが妙に熱を帯びている。暫く困惑し、立ち尽くしていると熱が収まった。






《適合完了》




《新大陸での活動が可能になりました》






また声が聞こえて来た、、、


驚きと困惑を隠せぬまま三人は、顔を見合わせると、空雅は、


「今、魔力って言ったか?もしかして俺ら、、!?」


興奮冷め止まぬ様子で尋ねてきた。




「ああ、俺らはいままで謎だった「魔力」の秘密に一歩近ずいたんだ!」




茜を見るとなんとも優秀なことにしっかりとカメラを回しており、こちらも興奮気味に




「ねえ!早くドローン使おうよ!」


と迅に言い募って来た。




側で困惑していたおじいさんが




「本当に大丈夫なんか?子供三人でこんな所に二週間も、、、」 




と何度も引き返すことを催促してきたが、三人は危ないことはしないと言って納得させた。




「んなら、本当に行くぞ、、二週間後の10時に来る、頼むから死ぬんでねーぞ」


『はい!!』




最後は凄く心配していたが、とりあえず、到着して自分達だけになれた。




船が離れた後、三人は開けていて、海水もこなさそうな場所を探し始め、意外と近くに良さそうな場所があったのでそこにテントを建てた。


ペグもしっかりと刺さり安全だろう、、、テントは十人用でタープ付きのなかなか良いもので、お陰で物資も全ていれることができた。




テントも立て、荷物を運んだりしている内に午後四時になり、ドローンを飛ばす事になった。


「うわ〜楽しみ〜」


「だよな〜」


ウキウキの二人を他所に迅は一人黙々と設定を行なっていた。


そして、


「準備できた〜!」




ドローンの設定が終わり、三人の掛け声で飛ばす事になった。


「それじゃ『しゅっぱ〜〜つっ!!』」




ドローンは垂直に飛び上がり、遥か高くへと行く。


夕暮れの陽の光と相まってなんとも込み上げてくるものがあった。


それに共に、自分達が先駆者であるという実感がやっと湧いて来た。


映像を見てみると、今いる地点からは暫く眼前にそびえる巨大な森が続いていた。


そしてその中に、船から見えた遺跡があった。


ピラミットのようになっており、ティカル遺跡の大ジャガー神殿のようにも見える。


その背後には大きな山がそびえ立ち、崖の様になっており、頂上からは滝が流れ遺跡まで水がきているようだ。




「よし!次の目的地はあそこだ」




三人は目的地を遺跡へと定めた。


、、、ドローンを低空飛行させながら遺跡に近づける際に『それ』は映った、、、


遺跡に向かって森を通り過ぎようとした時、森の真ん中にポツンと大きな岩がそこにはあった。


最初は大きな岩だと思った『それ』はこちらを見た。興味がなさそうに『それ』は向き直り胡坐をかき始めた。三人は声が出なかった。


6メートルほどの筋骨隆々の体躯に凶悪な顔面、額から生えた1本の50cmほどの長い角を持つ二足歩行の人型


、、、『それ』はまさしく『鬼』だった、、、、。




三人はショックを受けた、正直ここまでの事を想定していなかったためである。




それもそうである、三人は自分より大きな生き物に動物園という保障を通さず出会ったことがない。


それも自分達がこれから歩いて行くところに居るという状況に、映像ではあるが、『鬼』の存在に驚愕と恐れを感じていた。




三人はドローンを急いで引き戻すことにし、低空で迂回しながら森を通り過ぎようとしたが、カメラが森の中にいる生き物ーーたくさんの小鬼達を捉えた。よく見ると大きなウサギや、角を持つ猪などもいる。三人は急遽話し合うことにした。テントに戻り空雅が話を切り出した。




「なぁ、ほんとにあの遺跡に向かうのか?」






『、、、、、、』






しばらく沈黙が続き、迅が話を切り出した。




「行こう、、、せっかく来たんだ。」




迅はここにくる計画をたて下調べやイメージをある程度固めてきているため、二人程恐怖や焦燥に駆られてはいなかった。だが、興味や目新しさに惹かれてついてきた二人はとても狼狽していた。




「少し考えさせてくれ、、、、」


「わ、たしも、、」


「ああ、、、」




迅は失念していた、二人がどういう感情でついてきてたのかを。たくさんの初めてが集約され過ぎていて迅自身もとても怖かった。普通、人の手が加えられていない森に入ること自体恐ろしい、それに加え見知らぬ生き物や明らかに常軌を逸した生き物までいるとなれば、特殊な軍の訓練した人間でさえ恐怖を感じざるを得ない。殺生をする可能性も出てくる。あるいはその逆も、、、




結局誰も口を開かず、その場でどうするか決まらずに夜になってしまった。




持ってきたカップラーメンとお菓子を食べながら迅が


「明日最終的にどうするか決めよう。そのために今日は酒での飲んでぐっすり寝よう!」


と少しふざけ調子の悪い顔をして言った。


「何で酒があんだよ、、、はぁ、そうだな、今日の事は取り敢えず忘れよう」


「まあいっか〜そうしよう」




三人は夜しっかり寝るために未成年飲酒を行った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




夜、三人は夢を見た、、、




迅は草原にいて、周りには『味方』前方には『敵』がいるーーーーここは戦場だーーーー


体は押し寄せる眼前の敵に向かって走り出す。小鬼や豚鬼を一太刀で殺し、尚群がる敵を切り伏せる。


『魔力』を体と刀に纏わせ奥にいる『鬼』に死角から飛びかかる蒼色に発光した刀で首を落とす。


斬っても斬っても湧いて出てくる敵に疲弊し、周りを見渡すと、味方の死体に群がり食い出す小鬼、奥からやってくる巨大な化け物達、周りに生きている味方はいない、、、それでも一匹でも殺さんと刀を振り続ける、、、、最後には疲弊した体に突進され地に伏し頭を潰された。






、、、、早く、、、もっと強く、、、なれてれば、、






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












三人とも同じような夢を見ていた。そして、最後には不自然なまでに遺跡に惹かれていた、、、、












それぞれが悩みに悩んだ、、、自分が恐怖を抱いている事、正直甘く見ていた事、、酒を飲んだことで互いが互いにぶつけることができた、、、、まだ誰も到達し得ぬ謎の為に、、、、、








二日目、朝日を浴びながら三人は遺跡まで向かう決意を固めた。


ーーーーーーーーーーーー文字通り命懸けになる戦いに挑むことを決心した。






最短距離だと『鬼』とぶつかり、迂回すると沢山の『敵』に遭遇する最短距離は鬼のテリトリーなのか敵はいない。




迅は思い付いた、、、最高に狂ってはいるが、勝率が高い方法を、、、、、、










    「、、、あのデカブツの頭にあるツノぶち抜くぞぉぉぉ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新世界の探索者~始まりのプレイヤー N-jun @niwaniwa28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ