新世界の探索者~始まりのプレイヤー

N-jun

第1話始まりと上陸

西暦20XX年三月。とある事件が日本、札幌市で起こった。


まだ雪があり、外は肌寒いこの日に、一件の通報があった。


男性の体から炎が出ている。


詳しく聞くと、その男性は裸であるのに燃えているのだという。警官はすぐに駆けつけ、その異様な光景を目の当たりにした。男は口から血を吐きながら蹲っており、体の至るところから裂け目を作る様にして炎が出ている。


同じく通報を受けていた消防隊がなんとか消火しようと試みたが、消えることはなかった。炎が消えたときには既に男は炭となっていた。これと同様の事件が、世界で相次いで起こった。


当時、世界の各地で政府関係者や、官僚も亡くなったことからテロかとも疑われた。


この一連の事件は後に「走入火魔事件」と呼ばれ、世界で初めて「魔力」というものが確認された出来事であった。


この魔力が後に世界に大きな激震を走らせる。




鳴海迅なるみじんは高校二年生だ。


迅は一年後に大学入試を控え自分の進路を本格的に決定する時期である。


しかし、迅は本当にやりたいことが何なのかわからずにいた。心踊るものに巡り会えず、とりあえず勉強こなす日々。




四日前、太平洋に「新大陸」が現れたと話題になった。ネットニュースや、テレビでここ二日間ずっと騒がれている。


大陸の大きさはオーストラリア大陸の2倍程で、日本の南鳥島から10海里程の距離にあり、衛星からの映像では、人工の建造物や未知の生物も確認されているという。


世界は「走入火魔事件」以来の事態に慌てて自国への影響に対応していた。大気が不安定となりハリケーンや高潮が起こった地域もあるらしい。


また、どの様に新大陸を管理するのかも世界で決まっておらず、どの国も調査員等を送れずにいた。


そして重要なことに民間人の大陸への接近及び上陸が規制されていなかった。




目的もなく時間を浪費する毎日を送り、本当にやりたいことを探していた迅にとってこの事件は衝撃的であった、、、




迅の心はかつてないほどに興奮していた。まだ手付かずで、ましてや日本に近い。迅はその事を好機と捉えすぐに親友の森本空雅もりもとくうがに連絡した。


空雅と迅は、将来に対する考えや、物事に対して熱くなる所など似ているところが多く、高校に入ってすぐ仲良くなった。二人で起業しようかとも話し合っていた矢先にこの出来事だ


「空雅、これはチャンスだと思う。しかも、逃したら一生後悔するほどの、、、」


「ああ、俺もそう思う。だが親になんと言おうか。」


「部活の合宿があるとでも言ったらどうだ?」


「でも二週間だろ?」



二人はある計画を立てていた。それは明日の夏休み初日から、叔父の龍樹たつきが所有するプライベート船で大陸へ向かうというものだった。


以前叔父から、夏休みに家を空けているから来て良いとの話があり、今回決行するに至った。



「まあ俺と勉強合宿するとでも言っとけよ」


「うーん、、、そうだな、、、」



高校生である二人には長期間の外泊は難題であったが、二人は最終的に迅の叔父の家で二週間勉強合宿するということで両親から許可を得た。


空雅の家では難航したようだが、、、


命に危険があることや将来に支障が出ることです周りに迷惑をかけることになることも二人は分かっている。しかし、それらを鑑みて尚、彼らは旅立つことを決心した。




当日、


「迅、龍樹によろしく伝えてね。優しいからって迷惑かけないようにね」


「は~い、んじゃ行ってきま~す。」


母に内心申し訳なく思いながらも、意気揚々と家を出る。


叔父の住む海辺の町までバスでいくため、空雅とバス停で合流した。



すると空雅が、

「よかった~許可出て、お前ん家の両親が大丈夫って言ってくれてなかったらやばかったな。なんかあったら本当に親に申し訳ない。それに叔父さんに一番迷惑かけちまう。」


と不安そうな顔をしている。


「まあ、叔父さんが十五日の四時に帰ってくるからそれまでに帰っておけば大丈夫だろ」



家の主である龍樹本人は仕事で遠くにいて15日間もの間家には迅と空雅の二人だけなのである。しばらくバスに揺られ景色などを楽しみつつ無人島生活術等を調べながら向かった。




叔父さんの家の近くにあるバス停に到着した。


すると、叔父は車で迎えに来ており、快く二人を迎えてくれた。


「君が空雅君かよろしく~」


「よろしくお願いします!」


「うん!自分の家だと思って好きにしていいからね。それと~食費とかお小遣いは机の上の箱に有るから好きに使って~」


『ありがとうございます!!』





家に到着し二人が荷解きをしていると、


「こんにちは~お邪魔しまーす」


迅は思わず声のする方を見た。そして、驚きのあまり声がでなかった。声の主は迅のよく知る人物であった。


――彼女―――粕村茜かすむらあかねは、迅の幼なじみである。



昔は迅もここの近くに住んでおり、茜と家が隣同士だった。しばらく会っていなかったが、人当たりのよさや明るさは変わっていなかった。少し大人っぽくなっていたが、、

「茜、久しぶり」


「迅くん久しぶり~!」


「ん?へ?」


空雅が困惑してたので

「えっと~幼なじみで、こちら茜」


「あ~ね?成る程」

不思議そうにする中、


「茜ちゃんも家に二週間いることになったからよろしくね~」


叔父さんの間の抜けた声が聞こえてきた。


「そんじゃ仲良くね~」





叔父さんが出ていった後二人は茜に本当の目的を伝えた。すると、、

 

「私も連れていってくれるんでしょ?」


『へ?』


「あーー叔父さんに言っちゃおー」


『はい!もちろんです!』


「ならよし」


結局三人で向かうことになった。




そして、昼になり明日乗る船を下見しに行った。


船は大きなクルーザーだ。そして、既に送り迎えをしてくれる人を見つけていた。漁師として45年のベテランで大型船の免許〔一級船舶免許〕も持っているおじいさんだ。

おじいさんとはよく家族で釣りに行っていた時からの仲だ。


「次郎さん明日と帰りお願いします!」


「任しとき~」


「ありがとうございます!」


「迅も茜ちゃんもおっきくなっな~友達連れて迅が帰ってくるとはの~」


「まあ、親にはこのことは内緒ですけどね」


「男は冒険してなんぼじゃよ」

と次郎さんは朗らかに言った。



三人は続いて、物資の調達のためホームセンターと電気屋に行った。


ホームセンターでは生活必需品や、棒、ナイフ、ライト、紐、布、医療キット、マッチ、包丁、鉈、手袋、防寒具、防水鞄、スパイク付きブーツ、食料等を買った。電気屋では、ドローン3機とバッテリー等を買い揃えた。


次郎さんが、最近買ったでかいテント等キャンプ用品は貸してくれるらしい。





翌日、朝四時に三人は、眠たい体にムチ打ち停泊所に向かった。


幸い天気は良く、海から日が登る様子がとてもきれいに見えた。


自分達の向かう方向が朱色に輝いており、眠かった体は自然と目覚め、やる気と気迫に満ちていた。


「おーい」

次郎さんが呼んでいる

三人は急いで船に乗り、出発を待った。


船の中では三人とも興奮しており、

「遂にか、緊張が全然とれねー」


「だよな、何も出来ないんじゃないかって言う不安もある」


「そうよね、でも確実に何かしらあるのよね」

「ああ、俺たちが最初に見つけてやる」


そう、迅は南鳥島付近からの写真を手に入れていたのだ。そこには明らかに人工物が写っていた。そして、その写真をとったのは次郎さんなのだ。


「あの写真のとこに下ろしゃ良いんじゃな?」


『はい!』


 


船内で、、、


「今回動画も撮ろうと考えてんだ。再生数も絶対取れる。」


「到着する様子も撮らなきゃな。」


「着いたら私が持つよ」


「お、ありがと茜」


そうしてカメラ係が決まり、作戦などを話し終えると


「へぇ~学校ではそんなかんじなんだ~」


「そうなんだよこいつすぐ隣のやつとしゃべって怒られてんの」


「迅はね~泣き虫だったんだよ~!すぐお母さんに怒られてた」


「へ~信じられん」

など、主に迅に対する愚痴や、昔のはなしだった。


「おい!お前ら俺の話ばかりじゃねーか!」


「そんなことより、迅と茜ちゃんって付き合ってるの?」


「んな分けねーだろ!」


「私は全然いーよ」


「、、、、、、」


茜の大人な対応により、否定した迅が子供っぽく見えてしまった。


他愛もない会話は続き船内で楽しんで、、、



そうこうしている内に陸が見えてきた。



  




三人は言葉を失った。


船から見える限りでもその土地の異様さは伝わる。


大陸の上空は晴れているが所々色が違う所があり、見えている森からは神聖な気が漂う。


森の中から垣間見える明らかに人工物だと思われる建造物を発見した時には、興奮を隠しきれなかった。





更に近づくとより森と陸地から神秘さを感じる。


船は海岸に近づき三人は意を決して上陸することにした。


一番背が高く、足が届きやすい迅が海岸の岩場に足を伸ばした。




迅が岩場に両足で立った途端





  


  《初めて人類の上陸を確認しました》



  《人類の魔力への適合を開始》


 




何処からともなく声が聞こえた、、、

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