追放されたハーフエルフの少女は拳の女神と勘違いされる(専属メイドのせいで)

  前回までのあらすじ


  女の子がゴブリンの群れに襲われて大ピンチ。そんな時、私が私の内に宿ってる何かの声を頼りに拳を突き出すと、あら不思議。拳を当ててもいないのにゴブリンの群れが全滅。女の子は無事救われましたとさ。


  ……夢みたいなあらすじだって?私もそう思う……。でも、実際それが私の目の前で起きたんだよ……信じられない事にさ……


「流石です!!お嬢様!!!」


有り得ない光景を目にして呆然とする私に声をかけてきたのはネリネ。その瞳は何故かキラキラと輝いて誇らしげな表情をしていた。


「流石は私のリアナお嬢様!まさか、拳を突き出すだけでゴブリン達を殲滅してしまうなんて!拳の女神様のようですね!!」


ネリネがそう言って大袈裟に語る。いやいやいや……私があの『拳の女神様』な訳ないでしょ……


拳の女神様。数十年も前の話。世界中のあちこちで瘴気が発生し、世界中であらやる災厄が蔓延するようになった。エルフの国であるアズリアル王国も被害を被ったという。

  そんな時、1人のエルフの女性と、異世界より召喚された勇者がその危機に立ち向かった。そのエルフの女性こそが『拳の女神様』なのである。

  『拳の女神様』は拳一つであらゆる全ての事柄を解決し、勇者と共に瘴気で満ち溢れてしまった世界を何とかしたとされる、エルフ族からも英雄のように扱われた人物である。その見た目の美しさも相まって『拳の女神様』と呼ばれるようになったとか……


かく言う私は、魔力0で魔法が使えない落ちこぼれなハーフエルフな上、見た目はエルフの血が半分あるおかげで悪くないと思うが、問題は……その……


「ん?どうしました?お嬢様?」


私がチラッとネリネのある部分を見ると、その視線に気づいたネリネが首を傾げる。

  エルフ族の女性は見目麗しいだけでなく、女性特有のある部分が大きい事で有名だ。そう。ズバリ胸である。

  ネリネも身長は私よりも低く、童顔な顔をしているのに、その女性らしさを強調する部分は圧倒的に私を凌駕している。

  えっ?肝心の私はどれぐらいの大きさかって?分かりやすく言うと、可もなく不可もなくと言う言葉が当てはまるだろうか……

  おまけに、私はこの世界ではかなり珍しい黒色の髪色をしており、国王様やあの元義兄からは死神か悪魔の子ではないかと言われる始末……そんな私が拳の女神様な訳がない。私がネリネに反論する為に口を開いた時


「あの……!やはり……!貴女様はあの拳の女神様なのですか……!?」


ゴブリンに追いかけられていた女の子が、私達から若干距離を開けてそう尋ねてきた。

  って!?さっきネリネが拳の女神様の事を言ったから勘違いされてるじゃない!?私はすぐに否定の言葉をかけようとしたのだけど


「その通りです!!こちらにおられる方こそ!神より選ばれし!2代目の拳の女神様です!!」


と、大声でネリネがそう宣言したのである。


「やはりそうだったのですね!!助けていただき誠にありがとうございます!!!」


ネリネの宣言を聞いた女の子は、そこが普通の地面であるにも関わらず、額に土をつける勢いでその場で平伏し、感謝の言葉を述べてきたのである。


(ちょっ!?なんてことを宣言してるのよ!?完全にこの子私を拳の女神様と勘違いしちゃってるわよ!?私は役立たずのレッテルを貼られて国を追い出されたハーフエルフなのに!?)


(大丈夫です!きっとお嬢様なら2代目拳の女神様にだってなれますよ!)


私はネリネに小声でそう言うも、ネリネは親指をグッと上げて根拠も何もない事を言い出してきた。


「あ……!あの……!?助けていただいて厚かましいのを承知でお願いがあるのですが……!?どうか聞いていただけないでしょうか……!?」


ようやく顔を上げた女の子は、そう言って私に助けを求めてきた。

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