追放されたハーフエルフの少女は拳一つでゴブリンの集団を全滅させる
「ちょっ!?リアナお嬢様!?待ってくださぁ〜いッ!!?」
後ろから私の事を必死で追いかけるネリネの声が聞こえるが、私は気にも留めずに全速力で走り出す。お義母様に何かあった時の為に身体を鍛えてもらった事が役に立つ日が来るなんて思わなかったな……
「はぁ……!?はぁ……!?誰か……!?助けて……!?」
「グキャ!!」
「ゴギャ!!」
「ゲギャギャ!!」
全速力で走った先で私が目にしたのは、1人の女の子が複数のゴブリンに追われている所だった。
女の子はただの村娘のように見える。そして、そんな女の子を追いかけているのは魔物であるゴブリン。ゴブリンは魔物の中で最弱と言われているゴブリンとは言え、普通の村娘の女の子が1人でどうにか出来る相手ではない。しかも、それが複数もいるなんて……
私はこの時ネリネを置いて走り出してしまった事を後悔した。ネリネは私とは違って魔法を使えるから、ゴブリンぐらいなら複数いようと簡単に対処出来るはずだ。
このままだと、あの女の子はいずれゴブリンに捕まるだろう。そうなれば、ゴブリンの性質から考えて女の子は永遠に自分達の性欲を満たす道具として扱われるのは間違いない。何も出来ない自分の悔しさから思わず拳を握りしめる私。
「この国では魔法や魔力が絶対とされています。ですが、本当に魔法や魔力で全てを解決出来ると思いますか?」
ふと、私の頭の中に私が小さい頃お義母様に言われた言葉が浮かんできた。
「確かに魔法は強さかもしれません。魔力があれば沢山の魔法は強力で強大な魔法を行使出来るでしょう。しかし、もしも魔法でどうにも出来ない事態が起きたら……貴方はどうしますか?」
お義母様の問いかけに私は答えを返す事が出来なかった。私が答えを出せない事を分かっていたのだろう。お義母様は私に優しく微笑み
「強くなりなさい。リアナ。魔法や魔力……それがダメだと思うなら身体を鍛えるのもいいでしょう。けれど……もっとも強く鍛える必要があるのは……」
お義母様はそう言って私の胸を指差し
「心です。己の心を強く育むのです。そして、貴方はその強い心で困ってる人を助けられる人になりなさい。それこそが、魔法や魔力なんかよりも強い力となるはずです」
お義母様のその言葉を思い出し、私は再び女の子がゴブリンに追いかけられている姿を目に映す。今、あの子は私がどうにかしなければゴブリンに捕まってしまう。助けたい。困っているあの子を……
《大丈夫だよ》
私の中にある何かが私に強く言葉をかける。
《君なら助けられる。あの子を。強い勇敢な心と、君の拳があればなんとでも出来る。それが君の力なんだ》
私はその言葉に従うように拳を握り、女の子を追いかけるゴブリン達を倒すイメージを頭に浮かべる。
《後は拳をただ前へと突き出すだけでオールオッケーさ!!》
「って!?最後の最後で言葉が軽すぎでしょッ!!?」
私は思わずそのツッコミの勢いのまま拳を前へと突き出す。すると……
ブオォォォォ〜ーーーーーー!!!?
『グギャギャギャアァァァ〜ーーーーー!!?』
「えっ?」
「はへ?」
ただ拳を突き出しただけでゴブリン達に当ててすらいないのに、突如私の拳から突風が放たれて、その突風がゴブリン達に向かっていき、ゴブリン達はその突風を受け苦悶の叫びを上げ倒れ、魔物を倒した証の魔石へと全て変わってしまった。
本当に一瞬とも思える出来事に、ゴブリンに追いかけられた女の子も、女の子を助けた(?)私も呆然と立ち尽くすしか出来なかった。私なんか思わず間抜けな声まで上げちゃったし……
こうして、無事にゴブリン達の撃退には成功したけれど、私達はしばらくの間呆然と立ち尽くしていた……
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